人をつなぎ、情報をつなぐ――大分市発、全国ネットワークとITで注目される会社の軌跡

1991年、当時24歳だった甲斐武彦が大分市で設立した株式会社ネオマルス。電話とテレビ、インターネットの融合が進む中で、全国の工事会社とネットワークを作り、電気通信工事業を展開しています。オリジナルのシステムを開発・運用して、自社のみならず全国の工事業者の生産性をアップした舞台裏をご紹介します。
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はじまりは1軒の飲食店。社名に込めた思いは壮大だった

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▲代表取締役・甲斐武彦

1991年、大分市で創業したネオマルス。2018年現在は電気通信工事業を主軸としていますが、全く違う業種からスタートしました。

代表取締役の甲斐武彦は、大分県生まれ、大分県育ち。学生時代から、人を集めて何かするのが好きなタイプでした。

甲斐 「私自身にズバ抜けた才能がないので、人の得意なことを見つけたり、人のやりたいことをサポートしたり、人と人をつなげたりするのが好きで。学校を卒業後、一度も会社に勤めることなく、自分で仕事をはじめて、20代前半でこの会社を立ち上げました。
社名のマルスは、火星のこと。太陽のまわりには、軌道を描いて回る惑星があるでしょう? 太陽は会社の理念みたいなもので、その引力に魅かれた人たちが、それぞれの才能を生かしてそれぞれの距離感で仕事をしているような、そんな会社になればいいなという思いを込めて名付けました」

最初は、飲食店と衣料品店を核にしていました。「理念はあるものの、当面はとにかく生活するために仕事をしていた」——甲斐はそう振り返ります。

しかし、店舗を展開する仕事は、予想以上にハードでした。しばらくすると全てをリセットして、ひとりで再スタートを切ることを決意しました。

情報が伝わりにくく煩雑な工事の受発注をスムーズに

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▲創業当初のオフィス

それからも甲斐はさまざまな人と出会い、新しい事業を模索する日々が続きました。そして1996年、今につながる転機が訪れます。CSデジタル事業に参入したのです。

ネオマルスは、CSやCATVなど放送設備の普及に伴い、放送設備関連の工事を行うようになりました。数年経つと、電話とテレビ、インターネットサービスの融合が進み、通信の分野へと参入。クライアントから電気通信工事を受注し、工事会社に発注するという事業です。

工事の受発注には多くの人が介在するため、いろいろなトラブルが発生しがちです。現場に正確な情報が伝わっていなかったり、現場ごとに仕様書が違っていてミスが起きたり、計画通りに工事が進まなかったり……。

さらに、この業界は工事の依頼から現場まで、全て電話やFAXでやり取りするのが一般的でした。仕事はどんどん増えるものの、クライアントが工事を依頼するために当社に電話をかけても、話し中でつながらずに受注のチャンスを逃すことがあったのです。

また、現場で問題が発生して工事会社に電話で問い合わせても、「今は担当者がいない」「担当者にしか状況がわからない」というやり取りになり、対応が遅れがちでした。

当社は、2003年に全国の工事ネットワークを構築し、業務センターを開設。2010年になると協力工事会社が600社を超えて、膨大なやり取りと情報管理に限界を感じるようになっていました。

甲斐 「通信はどんどん普及していくのに、効率が悪くクレームも増えはじめて……。もっと効率よく、正確に情報を伝えられる体制を早急に作らなければと焦りました」

オリジナルの進捗管理システムで“見える化”して、効率を格段にアップ

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▲2018年現在のオフィス

試行錯誤を重ねて、2008年に当社オリジナルの進捗管理システム「stella」(ステラ)を構築しました。

もともとは自社の業務効率化を目的として開発したシステムをアレンジして、全国の協力工事会社が利用できるように「stellaパートナー」として提供。さらに顧客向けの「stellaクライアント」、作業員向けの「stella worker」を開発し、2015年には全てをつなぐ「stella cloud」も完成しました。

stellaは、工事の進捗を“見える化”して管理するサービスです。当社では、全ての工事の進捗状況を大型モニタに表示し、業務センターで管理しています。クライアントと工事会社にも一部の情報を公開しており、工事の状況などを共有できるため、当社への問合せは激減しました。

また、仕様書や図面などはシステム上で参照できて、発注から進捗管理、現場での報告書作成と共有、納品まで一括して管理できます。自社のみならず、業務全体の効率化を実現したのです。

一方、受注金額の低価格化が進み、競争が激化する電気通信工事の業界において、当社ならではの付加価値を生み出す必要性を感じていました。そこで、クライアントへの対応や仕様変更、報告書作成など、通常は工事会社や現場作業員が行う業務を、当社の付帯業務サポートセンターで代行しています。工事会社は現場に専念できて、工事がスムーズに進むようになりました。

大変便利なシステムですが、定着までに、実はかなりの時間を要しました。

甲斐 「システムを現場で使ってもらうことに、相当苦労したのです。現場はこれまでのやり方を変えることに抵抗があり、反発が大きかった……。業務の見える化を図り、作業負担が大幅に減ることを地道に説明していきました。浸透するのには5年ほどかかりましたが、現場の作業員にとっては、特に事務所に帰って報告書を作る手間がなくなったと、大変喜ばれています」

掲げる理念は「価値創造」――人や才能をつなぐプラットフォームになりたい

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この事業に取り組みはじめた頃、当社の従業員は10数人でした。あれから20年、2018年現在は大分の本社と業務センター、東京支店、福岡の2オフィスに拠点を広げ、電気通信工事業を全国で展開しています。契約している協力会社は全国で600を超え、従業員は250人になりました。

さらに、全社収益管理システム「Ceres」で、全ての工事案件の収支も見える化しています。工事ごとに原価を明確にして、利益率が悪い案件は原因を探り、改善を図る。利益率がよい案件は担当者にフィードバックすることで、従業員のやる気が高まっています。

他社にはマネのできないユニークなビジネスモデルをITで確立したとして、経営産業省の「中小企業IT経営力大賞2013」IT経営実践認定企業、2017年には「攻めのIT経営中小企業百選」に選定されました。「stella」は「中小企業IT経営力大賞2014」を受賞しました。

現在は、電気通信工事業を主力として、人材事業とIT推進事業、BPO事業の4事業を展開しています。

甲斐 「これまで数々の事業をやってきましたが、事業自体がうまくいかなくても、何かしら財産が残っています。
一番印象に残っているのは、最初に飲食店をオープンしたときのこと。たくさんの友人知人に案内のハガキを出したら、絶対に来てくれると思っていた人たちが来てくれず、苦手だなと思っていた意外な人たちが来てくれた。自分を支えてくれるのは、調子のいいことを言ってくれる人じゃないと気付きました。だから、今でも苦手な人や自分とは全然違うタイプの人とよく話すように心がけています。勉強になることが多いので。
CSのテレビ局をM&Aしたとき、仕事で全国を回って各地に友人ができました。テレビ局は軌道に乗らなかったけれど、全国に工事会社のネットワークを作るときの基盤として大いに役立ちました。電気通信工事業を先頭に立って推進してくれる女性取締役とも、このテレビ局買収で出会いました。そう考えると、“失敗”ってないんだなと思います。
私がやりたいのは、人のスキルを必要な人とマッチングするような、プラットフォーム事業。人をつなぐ、情報をつなぐ――ひとりでできることは限られているけど、人や情報がつながることで、限界がなくなる気がするんですよね。そこからみんなで価値を創造していきたい」

ITがあれば、今後あらゆる業界に入っていくことができて、あらゆる人が働ける社会になると私たちネオマルスは考えています。これからも価値ある取り組みを創造し、提供していく会社であり続けたいと願っています。

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