取扱高1,143億、だけど数多の黒歴史あり。しくじり、隠さず公開します!

インターネット決済・セキュリティ・コミュニケーションの分野でサービスを提供するネットムーブ株式会社。常に時代に先駆けたビジネスモデルを確立してきましたが、全て成功しているわけがない。数々の失敗の上にこそ成功はあるのです。正直に、隠さずお話しします。
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突然のWebチーム大量離脱の申し出——。そのとき、社長は?

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▲今でこそ盛況になるイベントブース。ここに至るまでは平穏は道のりではありませんでした
最初の山は、2003年。創業から3年目。ネットブームは大きな赤字を出しました。

創業時のネットムーブは、決済、アプリケーション、コミュニケーション事業の3つの柱で経営は安定。それぞれがバランスよく利益をあげていましたが、Web制作会社の乱立による価格競争が勃発。業界の制作単価が瞬く間に下落するなど、コミュニケーション事業が大打撃を受けます。

その当時の様子を創業メンバーである取締役・ソリューション事業部長の三股泰彦は、こう分析します。

三股 「仕事はどんどん入ってくるけど利益が薄い。結果的に、事業にかかわる人数と売上のバランスがものすごくいびつになってしまった。仕事は選ばなければありました。でも、驚くほど短納期だったり、きつい仕事が多かった。継続しているクライアントの仕事はもちろんやるけれど、新規案件を積極的に受けられない……。売上は立っても中身はよろしくない時代でしたね」
ただ、決済とアプリケーション事業では、大手教育事業者との取引がはじまったこともあり、ビジネスは安定。そうなると、自然と会社もそのふたつの事業に目がいきます。

また、セキュリティサービスという新規事業にもスタートしており、デザインメインのWeb受託制作よりもセキュアなWebサービス開発において、会社の特色を出そうという空気に。そうなると、純粋にデザインがやりたい人材にとっては、方向性が変わってしまう……。そんなとき、Web部門の責任者が、代表取締役社長の澤田に相談をもちかけました。

「いまのチームメンバーで別会社をつくりたいと考えています。つまりネットムーブを、みんなで退職したいんです」——。

想定外の相談に、それでも澤田は「抜けていいよ」と即答しました。なぜなら会社のいち部署としては、管理費や固定費もあるから赤字だが、数名でマンションの一室を借りてやるなら経営的に成り立つ。正しい判断だと澤田自身もすぐ理解したからです。クライアントも了解したので、引き渡して円満に独立が成立しました。

澤田 「実際、僕らもコストが減ってラクになりました。何の問題もなかったんです。お互いにプラスになった。そういう辞め方だから、いまでも彼らとは付き合いがありますよ」

ただ、円満な独立であり大きな影響はなかったものの、この一件があった2004年以降、ネットムーブ自体のコミュニケーション事業は休眠状態になるのです。

会社をかけて乗り出した新規事業が次々失敗。読みが当たらない……

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▲地方出張の夜。代表と取締役は夕食でも仕事の議論が続く
創業からBtoBでやってきたネットムーブは、新たにBtoC向けに「Lizard」というバックアップ復元ツールを開発。簡単にいうと、Windows版パソコンがクラッシュしたときに、復元ボタンひとつで元に戻るというもの。つねにするどい嗅覚で、新規事業を嗅ぎ当ててきた澤田が、売れると確信したツールでした。

澤田「2007〜2008年頃、Windowsはマイクロソフトが提供するウインドウズアップデートでさえ適用するとクラッシュすることがあった。

だから、これは来るなと思ったんだね。未知なるウィルスに感染しても確実に元の状態に復元できるツールだから。僕自身、Windowsの悪夢から解放されると思った、だから売れると。でも、大外れでした(笑)」

大きな期待を背負った「Lizard」でしたが、結果、鳴かず飛ばずでオフィスには在庫の山積みが……この敗因はBtoCの事業が初めてがゆえ、その売り方を知らなかったことだと三股は振り返ります。

中小企業向けに販売するという方向転換もありましたが、ネットムーブにはその販売ルートがない。それなら代理店という手もあります。実際に声をかけましたが、とんでもない仕入れ値を要求されました。

三股 「ちゃんとマーケット調査をしないとダメだという当たり前のことを学びました。商品そのものは面白いと今でも思っていますよ。でも売り方まで考えられてなかったんですね」

その次に取り組んだのが、「FAVOMART」というオンライン上のショッピングシステム。新しいことにチャレンジしたいという思いが根底にあり、澤田は過去にオンラインショッピングの経験もある。そして決済システムも持っているネットムーブにとって、格好のチャレンジでした。

その仕組みは、出店料はとらず売上から手数料をもらうビジネスモデルにしました。出店側には大きなメリットのはずでしたーー。

三股 「しかし、フタをあけるとまったく集まらなかった。あるいは無料だから適当にやろうという意識の店舗が多かったり…...。

それでも出店者には、素人写真のままじゃダメだからとか、私たちがいろいろ手助けをして、想像以上に深く関わってしまったんですね。初期の負荷がかなりかかってしまって……早々に撤退せざるを得なかった」

後に同じモデルをYahoo!が成功させます。出店料は無料でも、もともとスケールがあり、また有料の頃から出店していた会社が残っていたことも関係し、クオリティが維持できたのでは、と三股は分析します。

三股 「そういう意味では、FAVOMARTも、もうひと捻りできればうまくいったのかもしれませんが、詰めが甘かったというのを露呈してしまいましたね。これは本当に勉強になりました」
そんなふうに新たなヒットが打ち出せずもがいていたころ……創業以来の大きな局面が訪れました。

急遽進んだ親会社からの独立。社員総意で荒波へーー

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▲海外企業とのリレーションも活性化し、事業は軌道に乗るが……
あるとき、親会社から「オフィスを移転しないか?」という提案を受けます。親会社である日商エレクトロニクスは、ネットムーブを含む子会社4社をひとつのビルに集めたいというのです。

澤田 「会議室も共有できコスト削減になるから、引っ越しはもちろん否定できない提案。ただ、引っ越しだけでは済まない話も出てきました」
ネットムーブは、当時株式の90%を日商エレクトロニクスが、残り10%を社員が保有していました。その10%を親会社が買い、ネットムーブを100%子会社化して他の子会社との一体化を図るという話です。

そこで澤田は全社員を集め、『規模は大きくなり安定するかもしれない。それとも、波乱万丈かもしれないけど、みんなで荒波に漕ぎ出すか。どうする?』と問いかけたんです。すると、全員が荒波を選ぶと。

澤田「良くも悪くも、会社って、そこで働いている人で文化が作られていると思うのです。ネットムーブはベンチャー気質なんだと思います。大きくなって安定するという言葉はみんなに響く言葉ではなかったのです」
澤田は社長として想いを告げに、親会社へ話し合いに臨みます。「株主という立場は10%だろうと90%だろうと変わりはない。逆に、90%をこっちに売ってくれ」という無茶な交渉でした。

独立までの道のりは、まさに茨の道。大変でしたが1ヶ月後には、なんとか資金を工面し、2012年6月、マネジメント・バイアウト成立。新たなネットムーブの出発でした。

幾多の危機を乗り越えてーー新生ネットムーブ、始動

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▲新しいオフィス。ここから右肩上がりの成長がスタートします
そして2017年現在、ネットムーブはいま、2003年以来、休眠だったコミュニケーション事業の復活に一歩踏み出しているのです。“旅行プランニング”というプロジェクト名で、地方に送客していくような仕組みをつくろうとしています。

三股 「たとえば、いまは海外旅行客が訪れるのは、北海道や京都、沖縄と知名度の高いところに限られます。それ以外の地方都市は露出がないので行かない。

地方の大命題としてインバウンドや地方創生があるなか、じゃ、どうやって露出すればいいか……非常に悩ましい課題。そこにもう少し均等に機会を与えられるきっかけになるようなサービスはないかと考えているんです」
澤田「それに海外からの観光客はもちろんカードを使いたい。うちはカード決済の端末も扱っているから、ぐるっと回ってうちの他の事業にも関連すると思ってますよ」
この新たな試みのリーダーはカード業界からの転職者。前職でインバウンドに関連する事業を担当していたので、知識もノウハウも豊富です。今回のプロジェクトに関して、三股はこれまでのネットムーブ流とはまた違う「緻密な仕事の進め方」と評します。

ちなみにそのリーダーは前職時代、ネットムーブとの取引の窓口を担当していました。自分でやりたい企画があり、ネットムーブなら実現できるのではないかと企画持参で入社へと至ったのです。

三股 「実は、そういう人は社内に意外に多い。私たちにとっても、人となりも知っていますし一緒に働くメンバーとしては歓迎です。ネットムーブだったら自分の自己実現の場としてふさわしいと思ってもらえているからこそだと思います」
ひとつの組織の中にいると、自分たちの延長線上のことは発想できても、まったく新しいものはなかなか難しい。それは澤田も三股も同意する部分。

三股 「そういう視点では、新しい人材が新しい風を吹き込んでくれるのはすごくいいなと思いますね」
澤田 「僕たちがこれまでつくってきた部品をうまく使いながらね」
ネットムーブは、これからも新しい風を取り入れ続け、有機的な化学反応を繰り返し、失敗を確実に成功へと昇華させていきます。

※タイトルにある取扱高1,143億円は2016年度時点での数値です。

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