販売チャネルの枠を超え、自由な購買体験を提供できるのがニトリの強み

▲O2O推進室室長の宮入 功明

店舗でも、ネットでも、欲しいものを買いたい方法で買える。

生活者の立場で考えると、こんなに便利なことはありません。一方で、店舗が実物を見るだけの“ショールーム化”してしまうと、販売事業者にとっては大きな打撃となります。

そこで、小売店や飲食店などの実店舗に顧客を呼び込むための施策として注目されているのが、O2Oマーケティング(Online to Offline)で、ネットクーポンの配信などが代表的な例になります。

宮入 「当社の O2Oは、一般的な意味合いよりも定義が広いのが特徴です。オンラインの施策をきっかけとしてご来店いただくもよし、店舗でご覧いただいた商品をネットやアプリで購入されるもよし。販売チャネルの垣根を低くし、いつでも、どこでも、どんな方法でも、お客様にとって 1番便利にお買い物を楽しんでいただくことを目指しています」

そう語るのは、O2O推進室を率いる宮入 功明。O2O推進室は、ニトリが顧客に提供するさまざまな買い物のかたちと利便性の向上を、新しいサービスの開発やデータ分析によって実現していく部署です。

店舗でも、ネットでも。

しかし、そもそもなぜニトリでは、販売チャネルにこだわる必要がないのでしょうか?

宮入 「その理由のひとつは商品特性、もうひとつはネット販売と連動した店舗網が挙げられます。ニトリの商品の多くは、当社が独自に企画・開発する PB(プライベートブランド)です。そのため、様々な事業者で販売されている NB(ナショナルブランド)商品と違い、店舗やネットといった『ニトリの販売チャネル』のどこかで、ご購入していいただけると考えています。

また、通販事業では、オンラインだけでなくオフラインでのお客様への対応・サービス提供が、商品のご購入や利便性に大きな影響を及ぼします。ネット販売においても、国内にあるニトリの店舗は、お客様にとって、購入する前に商品を確認する、質問・相談をする、購入後に商品を受け取る、返品する場となっています。オフラインの店舗とオンラインのネットが、互いに相乗効果を出すことができる事業構造を確立しています」

だからこそ重要となるのが、オンラインとオフラインを行き来する顧客の購買行動に対し、効果的な施策やサービスを展開するO2Oの取り組み。

いかにしてチャネルを問わず顧客との接点をつくるか。どんなシーンにおいても、顧客満足につなげられるか。

ニトリのO2O推進室では、新サービス開発・One to Oneマーケティング・顧客データ分析という3つの役割を備え、より便利で、新しい顧客体験の創出を目指しています。

顧客の心に寄り添うサービスを、テクノロジーで実現していく

新サービス開発においては、テクノロジーを活用したお客様への利便性の提供を担っています。たとえば、公式アプリに搭載している画像検索機能「カメラ de サーチ」。アプリで欲しい商品の画像を撮影して検索すると、該当商品や類似商品が提示され、簡単に希望の商品を見つけることができます。

宮入 「画像検索は、店舗従業員にとっても有用な機能です。店舗ではお客様が、スマートフォンの写真を見せて『このような商品ありますか?』とお問い合わせをされることが増えています。そこで、従業員用の業務スマートフォンにも同様の機能を搭載することで、スムーズにご案内することができるようになりました。より良い顧客体験を提供するため、新たな機能を考え、カタチにするのがわたしたちの役割です」

一方、One to Oneマーケティングで注力するのは、ひとりひとりのお客様への最適なアプローチの探求。商品購入や行動履歴データに基づき、購入した商品の関連商品をお勧めするなど、Eメール・アプリ・LINEなど様々な方法で、お客様へ情報提供を行い、購買行動に働きかけていきます。

そして顧客データ分析の役割は、その名が示す通り、数千万人規模の顧客データを活用することです。商品の売れ行きと顧客特性の相関を導き出したり、分析結果から効果が見込める施策立案につなげたりしています。また、最近では、データ分析の対象を拡大し、需要予測なども行っています。

ミッションのもと3つの役割を果たすよう日々業務を行っていますが、いずれも中長期的なスパンで物事を見ているのが特徴です。短期的に売上を伸ばすだけでなく、半年後や1年後の売上創出や顧客体験の向上に焦点を合わせています。

宮入 「ニトリの商品には身近な日用品も多数ありますが、いわゆるスーパーのように週何度も買い物をするような商品ではありません。だからこそ、年に何度かのお買い物をしてくださるお客様の心をつかみ続けるためのコミュニケーションが重要になります。

そういった意味では、スマートフォンアプリという身近なツールをお客様との重要な接点と位置づけ、継続的にお客様とのコミュニケーションや利便性の提供を行っていく。すなわち、アプリを通して O2O推進室の 3つの役割を連携させることで、顧客体験の向上や購買促進につながっていくのです」

また、ニトリが定義する“O2O”の名の通り、オンラインとオフラインの境界線をシームレスにしているのも特徴的です。

たとえば、アプリの機能に、店舗で商品のバーコードを読み取りネットで購入する「手ぶら de ショッピング」サービスがあります。これは、まさしく店舗で実物を見てネットで購入するという“ショールーミング”を仕組み化したサービスです。

ニトリならではの販売網がベースにあるからこそ実現できるのですが、それ以上に、お客様の心情に寄り添った購買行動モデルを公式サービスとして提供している点が非常に画期的なのです。

このように、O2O推進室が提案するサービスの根底には、徹底した顧客視点が息づいています。

数字やデータを重視しつつ、見つめるべきはあくまでもお客様の心

▲ショールーミングを仕組み化した「手ぶら de ショッピング」

さかのぼれば、O2O推進室が産声をあげたのは2017年12月のこと。

当時はプロジェクトとして始まり、翌年の夏に現在のO2O推進室として組織化されました。

宮入 「ニトリがベンチマークしているのは、アメリカの小売業です。現地の事業者を視察してみても、オンラインとオフラインの両面で事業展開できなければ、勝ち残っていけないことは明白でした」

とはいえ、たとえば最先端のテクノロジーやマーケティングツールを導入すればそれで良いのかと言うと、そんなシンプルな話ではありません。ニトリが何より大切にしているのは、顧客視点の考え方。「お客様の利便性向上」という目的のために、テクノロジーをどう駆使するかがカギとなってきます。

宮入 「現在所属するメンバーの多くはプロパー社員で、店舗運営の経験は豊富ですが、必ずしもITやデータ分析のプロであったわけではありません。専門的なスキルが必要となる場面では、外部パートナーや社内関係部署と連携して解決しています。

ただ、ニトリは『自前主義』でなんでも自分たちでやる会社ですので、将来的には、自分たちがやった方が良い分野については、 O2O推進室・自社内で一貫してできるようにしていきたいと考えています。

店舗経験から得た徹底した顧客視点と、デジタル分野を専門としてキャリアを積まれた方の専門的な視点と、双方からアプローチし昇華させられたら良いですね」

データ分析をはじめ、O2Oの施策は数値評価が基本。成功も失敗も客観的な数字で明らかにできる分野です。その一方で、数字に頼りすぎないのもニトリのO2O推進室ならでは。ときには、お客様と接してきた経験をもとに、感覚的な判断を選択することも少なくありません。

宮入 「データを重視していますが、お客様と直接やり取りをした経験から培われる感覚も、判断するポイントです。どんなにデータや数値から正しそうに見えても、実際に店舗を訪れるお客様や、接客するスタッフにとって“しっくりこない”ことは採用しません」

数値に基づく信頼性の高いデータや効率的なマーケティングツールを活用し、確度の高いアプローチを具体化していくこと。でも、数字だけで判断することなく、あくまでも顧客視点に寄り添って考えること。

相反するようなふたつの視点を合わせ持ち、常に顧客の購買行動を真摯に見つめる姿勢が、ニトリのO2O推進室らしさなのです。

責任あるチャレンジが仕事の醍醐味。臆せず踏み出す一歩が可能性を現実に

既成概念にとらわれず、より便利で新しい顧客体験を提供するために──

O2O推進室の取り組みは、点ではなく線、面での展開が重要です。

宮入 「ただアプリをつくるだけ、メールを送るだけ……が、我々のミッションではありません。お客様の購買行動を一気通貫で考え、施策全体を設計する。目の前の施策から、その先の店舗、お客様への広がりを見つめています」

焦点を合わせるべきは、お客様やニトリの事業にとってフィットしていること。テクノロジーの活用や新しいサービスの開発はあくまでも手段であり、それ自体が目的にはなりえません。

宮入 「すべてはお客様との接点の創出、そして顧客体験の向上につなげるため。ニトリとしての全体最適を目指す、と言い換えることもできます。具体的な KPIで言えば、お客様 1人当たりの年間購入回数や年間購入金額、あるいはアプリ会員数や利用率などを重視しています」

新たな試みをミッションとするO2O推進室だからこそ、そのチャレンジは試行錯誤の連続。数値で成否を明らかにしながら、手探りで前に進んでいきます。

宮入 「現状否定と新たなチャレンジを奨励するのはニトリの社風。業界のリーディングカンパニーとして、新たな分野に積極的に取り組んでいくスタンスは特徴のひとつですね。

あとは、自前主義であること。店舗勤務から突然データサイエンティストになることを求められるような会社ですが、その変化を成長の機会と捉えられる人には、ワクワクするような仕事だと思います」

O2O推進室のチャレンジは、まだまだ始まったばかり。「新しい顧客体験の創出、効果的なマーケティングなど、アイデアをしっかりと具体化していきたいですね」と、宮入。そこには、ニトリという企業だからこその自負と責任も垣間見えます。

宮入 「ひとつの商品、ひとつのサービスをとっても、社会に与えるインパクトが大きい会社なんだと自覚しています。それはありがたいことであり、期待が大きい分だけ果たすべき責任も大きい。やりがいのある仕事だと、私自身、強く実感しています」

仮説構築から問題解決までを自らの手で考え、実行できる。もちろん、思った通りの結果が出ないケースも多々あります。それすらも楽しめる心があるかどうか。

チャネルの枠を超えた自由で新しいチャレンジへ。ニトリのO2O推進室では、そんな好奇心あふれる方との出会いを楽しみにしています。