宇宙物理学科卒。“手の届かない”星に別れを告げ、ITエンジニアの道へ

▲NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 丸田弥生

子どもの頃から、プラネタリウムや天体観測が好きだった丸田。そんな“好き”の気持ちが高じて、高校生になると宇宙の研究を志すようになります。もともと苦手教科だった物理を必死で勉強し、大学では理学部に進学。宇宙物理学専攻という進路を選びます。

丸田 「大学では、太陽系よりもずっと若い星に着目し、周囲にある塵の構造を研究していました。いかなる変遷を辿れば、太陽系のような構造になっていくのだろう…と。仮説を立てて、シミュレーションをして、“確からしい”結論を導き出す研究です。プロセスの追究にロマンを感じていました(笑)。壮大な『なぜ』を突き詰めて考えるのが好きな性分なんだと思います」 

宇宙にまつわる「なぜ」を追究する学問の面白さに突き動かされながら、研究に情熱を傾けていた丸田。しかし、次第に物足りなさを感じるようになります。

丸田 「私が研究していたのは、“確からしい”とは言えても、決して “確かである”とは言い切ることのできない領域でした。自分が生きているうちには、実際に行って見て確かめることができないくらい、遠く離れた星が研究対象だったからです」

仮説の “その先”に辿り着ける領域へ。そして、自らの試行錯誤が “社会の役に立った”と実感できる領域へ――。そんな想いを抱き、進路選択に際しては、研究の道ではなく企業への就職を選びます。

丸田 「もともと、人と話すことが好きなので、就職したら色んな人と関わりながら仕事をしたいという思いがありました。また、何か自分の強みと言えるような専門分野を持って、お客様と対峙できるような仕事がいいな、とも。その2つの軸で幅広い業界を見て回り、最終的に縁あってNTTデータに入社しました。採用面接でも『なぜ宇宙からIT!?』とはよく言われましたね(笑)」

配属先は、ネットワークソリューションを専門に扱う部門。宇宙物理を学んでいた丸田にとって、ネットワークは当然、未知の領域です。それでも、テレビ会議やIP電話といったコミュニケーションツールに関する大規模なシステム構築のプロジェクトに携わる中で、少しずつその知識を深めていきました。

そんな丸田には、入社当初から、自身の“ありたい姿”として掲げていたフレーズがあります。それが、「喋れるSE」というもの。入社2年目にはお客様先を訪問する機会も増え、お客様とのコミュニケーションを通じ、その素地を固めていきました。

「インド研修」と「営業経験」が、日本の組織と自己を客観視するきっかけに

▲学生時代の研究で訪れた ハワイ マウナケア山頂

入社3年目に、丸田はその後の仕事観に影響を及ぼす2つの経験をしています。

その1つが、インドにあるNTTデータグループ会社での1ヵ月間の研修。社内教育施策の一環でした。現地では、プロジェクトマネージャーのアシスタント業務を経験。その中で、一人の人間が様々な役割を兼ねることが多い日本のプロジェクトとは異なり、個人の専門領域が明確に線引きされている組織のあり方を目の当たりにします。

丸田 「恐らく、インドと同じように組織を構成している国は多いと思います。どちらが良い、ということではなくて、日本とは異なるチームのあり方で海外の組織は機能している、という事実を知りました。同時に、日本のチームのあり方というのは、実はかなり柔軟性があって、そこは強みでもある、とも感じましたね」 

また、コミュニケーションの面でも、日本と海外の違いに気付くきっかけになりました。

丸田 「どんなことでも、きちんと言葉にして、相手が『理解してくれたこと』を確認するところまでがコミュニケーション。曖昧なやりとりで『理解してくれているはず』というスタンスでは、前に進むものも進まない、ということを学びました」

それまで、海外に対して漠然とした苦手意識を持っていたという丸田。しかし、インドで現地の人々のフレンドリーな人柄に触れたり、研修メンバーと共にいろいろな「初めて」にチャレンジしたりすることで、それが薄れるのを感じたと言います。

そしてもう1つ、丸田にとって忘れがたい経験となったのが、ソリューション営業として、提案フェーズの技術支援を任されたこと。開発チームに籍を置きつつ、約半年間、自部門のソリューションの提案業務を担当しました。

丸田 「提案が成就したらまた次の提案へ、とスピード感を求められるミッションで、自身の業務遂行能力の向上が実感できて面白かったです。ただ、これまで開発チームとして、プロジェクト完遂によって得られる『達成感』や『お客様からの感謝の言葉』がモチベーションの源泉となっていたこともあったのか、提案の先、構築フェーズまで自ら関与してやり抜きたい、と感じるようになりました。

自分のモチベーションの拠り所が何なのか、何を自分のミッションとしていきたいのか、を再認識するきっかけになったのは貴重な経験でした」

ほどなく、自ら志願して開発のプロジェクトに復帰。入社4年目には、小売業のお客様向けに、業務電話の構築を行うプロジェクトチームのリーダーを務めるようになります。

世界数十か国をつなぐ、グローバルSCMの「ネットワーク担当」として

▲インド研修生メンバーと、世界遺産タージマハル前で

そして迎えた5年目の春。丸田は、大きな転機を迎えます。お客様先へ、単身での常駐を命じられたのです。海外にも多数の拠点を持つ小売業のお客様のもとで進行中のグローバルSCM構築プロジェクトにおいて、ネットワーク領域の業務支援を担当することになりました。

丸田のミッションは、世界数十か国にあるお客様拠点のネットワークに対して、これから立ち上げるグローバルSCM向けに最適化を図ること。お客様のインフラ担当者と一緒に、まずは現状ネットワークの全容を把握することからスタートしました。

それまでのプロジェクトでは、ネットワーク上で動かすコミュニケーションツールに比重を置いた業務を担っていたこともあり、ネットワーク自体の知識については少なからず負い目を感じていたという丸田。しかも、国内のみならず、海外にも対象が及ぶ壮大なプロジェクトです。

丸田 「初めは、どこから手をつければいいのか…という状態でした。それでも、SCMの全体構想に沿ったかたちで、新たなグローバルネットワークの構想をお客様と一緒に練り上げるところから参画できたので、少しずつ、プロジェクトの中での自分の役割を確立していくことができました。

常駐者は、NTTデータの構築メンバーとお客様とをつなぐ “コミュニケーションハブ ”としての役割も担っているので、お客様はもちろん、プロジェクトに関わりのあるベンダー各社の方々とも積極的にコミュニケーションをとるようにしていました」

時には、お客様の意向と構築チームの考えにギャップが生じることもありましたが、お客様の要望については真の目的を確認したうえで優先度を明らかにして、交通整理を行ったといいます。

丸田 「お客様と近いところにいる分、『要件』になる前の、“ふわっ”としたご要望段階で話をいただくことも多くあります。意識しているのは、『それによって本当に実現したいこと』を確認すること。それが分かれば重要度も判断できますし、より適切な別の手段がないかを検討することもできますから。

お客様の言葉を鵜呑みにせず、かといって否定もしすぎず、というスタンスでいるよう心がけています」

国内外の主要拠点のネットワーク構築が一段落し、現在は海外各拠点の調査を進めている丸田。各拠点の担当者とは、TV会議を通じたミーティングに加え、実際に現地を訪れて打ち合わせを重ねています。

ネットワーク構成図を一緒に覗き込みながら会話をしていると、思わぬ追加情報が示されることや、会話から新しいアイデアが生まれることも多く、対面でのコミュニケーションの大切さを再認識しているといいます。

丸田 「インド研修の経験があるので、日本人同士なら暗黙の了解であったり簡単に済ませたりしてしまうやりとりでも、もう一歩踏み込んで発言するように意識しています。『きっとこう考えているんじゃないか』という想像も働くようになりました。

外れることも多くありますが、外してしまう可能性も見越したうえでアプローチします。つたない英語ではありますが、通訳の方の力も借りながら、コミュニケーションをとることができています」

プロジェクトメンバーを巻き込み、総力戦を可能にするリレーションの起点に

▲チーム内コミュニケーションを密に図り、プロジェクトを前進させる

お客様先に常駐を開始して2年目を迎えた今、丸田はかつて持っていた“ネットワーク”と“グローバル”への苦手意識を克服しつつあります。

丸田 「今では、お客様にも『ネットワーク担当の丸田』として受け入れていただけているな、という実感があります」

しかし、プロジェクト参画当初は、まだ若い丸田に対し「実を言えば不安もあった」という率直な思いを、最近になってお客様から打ち明けられたといいます。言わば、マイナスからのスタート。そうした中でも信頼を得ることができた理由を、丸田自身は次のように分析します。

丸田 「技術のことに限らず、色々なことが『なぜ起きたのか』という疑問を持って、それを明らかにできるように動くようにしています。自分一人の知識や経験だけではまだ足りないことも自覚しているので、NTTデータの本社メンバーにも『一緒に考えてもらえませんか?』とお願いしたり、プロジェクトに参画している他ベンダーさんのところにも積極的に聞きに行ったり。

色々な人を巻き込みながら、得られた情報をお客様に還元する動きをし続けられたことが良かったと思っています。“総力戦 ”でお客様を支えるイメージです。自分の仕事の根幹に、コミュニケーションがあると感じます」

また、お客様先に常駐して業務支援をしてきたからこそ、自らの担当領域である「ネットワーク」の先にあるお客様の業務や、さらにその先の利用者、プロジェクトにかかわるステークホルダーがそれぞれ抱える事情にも思い至るようになったことは、自らの成長実感につながっていると言います。

そして、自身のこれからについてはこんな想いを口にします。

丸田 「NTTデータの強みは、ネットワーク単体ではなく、上に載るアプリケーションや、それを使う業務の領域にまで踏み込んで、トータルでお客様に価値提供できるソリューションを生み出せることだと思っています。だから私自身も、ネットワークを軸にしつつも、どんどん新しい技術にも触れて、自分の強みと言える領域を広げていけたらと思っています。

あとは何と言っても人と話すことが好きなので、色々なコミュニティに参加して、知見を広げていきたいですね」

入社以来蓄えてきたネットワーク領域の専門知識と、目的を達成するためなら到達が困難にも思える“問い”に挑み続ける追究心。そして自他共に認めるオープンマインドで“お喋り好き”なキャラクター。これらの強みを持った丸田は今、自身が描いた理想の通り、「喋れるSE」としてお客様に価値を提供するべく、奮闘を続けています。