「負けてもいいから勝ち越せ」──。“完敗”のコンペから学んだ、営業の心得

高橋勇は、製造業のお客様を担当する顧客営業です。ITツールと人との会話が大好きだという性分、そして技術の知識を得るために独学に励む勤勉さを生かして会社に貢献しています。そんな彼を顧客営業として大きく成長させたコンペでの経験──「2勝1敗」の軌跡をご紹介します。
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ガジェットフリークで、会話が好き。そして選んだSIerの営業職

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▲製造ITイノベーション事業本部 高橋勇

昔から新しいガジェットが好きで、とくにスマートフォンは最新機種が出るたびに買い替えていたという高橋。大学時代は、いろいろな経験がしてみたくてさまざまな職種のアルバイトにチャレンジしたと言います。なかでも就職活動において営業職を志望する原体験となったのが、初めての“職場”に選んだバーでの接客業務。

高橋 「自分がコミュニケーションをとったお客様に喜んでいただけると、それが売上にも結び付いていくんですよね。それを実感できたのが嬉しかったですし、お客様と会話をする中で自分の知識がどんどん広がっていく感覚があって、それも心地よかった」

その後、バーでのアルバイトとは対照的に人との会話がほとんどない職種も経験した上で、「たくさんの人と接して会話をすることが好き」という自らの志向を強く自覚していきました。

2013年、NTTデータに入社。その理由を、次のように語ります。

高橋 「 ITの進化を目の当たりにして、『これからの暮らしや社会は、 ITでもっと便利になっていく』という確信を抱いたんです。営業として ITの世界に携わる仕事に就きたい。そう考えて、この会社を選びました」

顧客営業として初めて担当することになったのは、通信基地などの特殊な施設を扱う建設業のお客様で、AIやIoT、データ分析といった最先端領域に強い関心を持っていました。法学部卒でこれらの分野に関する知識がまったくなかった高橋は、自社の技術者とお客様との会話についていくため、必死に勉強したと言います。

高橋 「商談では、『技術の話はすべて技術者にお任せ』というわけにはいきません。技術者メンバーがお客様にしている説明を、咀嚼して自分の言葉で話せるレベルになることを目標に、技術者職の新人向けに推薦している書籍を課長に紹介してもらうなどして少しずつ知識をつけるようにしました」

元来、新しい知識や情報のインプットがまったく苦にならないタイプ。知らないことがあればすぐに調べてそれをアウトプットすることに喜びを感じると言います。その性分が、たとえ自分にとって未知の領域であっても、お客様の前では「知っている」ことが求められる営業の仕事で大いに生きることになりました。

ビギナーズラックが招いた慢心。上司の叱咤と敗因分析が自戒のきっかけに

2019年現在、入社7年目となる高橋には、大きなコンペ案件を主担当として任された経験がこれまでに3度あります。

1度目は、入社2年目のとき。お客様が所有するサーバールームに無線LANを導入する案件でした。当社が保有する技術資産の優位性が求められる規格にうまく当てはまり、自身初となるこのコンペで見事“勝ち星”を獲得。さらに、ネットワークの基盤とあわせ通信機器も受注することができ、受注額は当初の想定を大きく上回る規模になりました。

高橋 「初めてのコンペで、思い描いていたアプローチが通用したので、自分の “天性の勘 ”は使えるぞと(笑)。周囲にも持ち上げられて、完全に天狗になっていました」

そして翌年。2度目のコンペ案件の話が回ってきます。1度目と同じお客様の監視系システムの更改に関するコンペで、案件の規模感は1度目のコンペの優に4倍という大規模なもの。しかも、高橋の入社以前から先輩社員がコツコツとアプローチを続けてきた案件でした。

高橋が入社3年目を迎えたタイミングで、この更改案件の話が本格的に始動。高橋は提案のとりまとめをメインで担当することに。元々、システムの基幹部分にあたる監視機能は競合が担っていた領域で、NTTデータは別システムを手掛けていました。この更改で監視機能も含め一括で獲得するというもくろみだったのです。

1度目のコンペの時と同様、提案の前段にあたる構想策定では、NTTデータが主導権を獲得。現場担当者と緊密にやりとりを行い、要件定義から設計までを受注しました。そのため“開発“以降のフェーズがコンペの対象となりました。

高橋 「正直、最初のコンペと同じアプローチで進めて『大丈夫だろう』と安心しきっていたんです。あとは金額でさえ負けなければ競合に獲られるはずがない、と。提案書も開発部隊には相談せず、最低限必要な数字を出してもらっただけ。ほぼワンマン状態で提案準備を進めてコンペに臨みました」

結果は──まさかの失注。

敗因分析を兼ねて設けたお客様との懇親会の席で告げられたのは、「競合はNTTデータの何倍もの厚みの提案書を出していた」こと。また“厚み”だけでなく、お客様の実現したいことをよく汲み取った提案内容により、「うちのことを分かってくれている」との信頼を得ていることが、お客様の口ぶりから伝わってきたと言います。

しかも、高橋が気にかけていた金額面でも上をいっていたのは競合の方でした。すなわちそれは、高橋の提案の“完敗”を意味していました。

高橋 「結果を受けて、統括部長からは圧倒的な情報収集不足を厳しく指摘されました。それから 『 “個 ”でできる仕事は無い。“面 ”で当たらないとコンペなんて獲れないよ』と、諭すように言われました」

自分の慢心が招いた結果に、高橋はその後しばらくの間、悔しい思いを抱えて過ごすことになります。1度目のコンペでは通用した担当者レベルの情報収集だけでは、提案で抑えるべき核心に迫ることができていなかったのです。

高橋 「旧システムは 3.11を耐え抜くことができたのですが、お客様は今後も未曽有の事態に見舞われる可能性を考慮し、より一層堅牢なシステムを、という考えをお持ちでした。接触しようと思えば十分できたキーマンへのアプローチも疎かにし、更改の根本に関わるお客様の要件を掴むことができていなかった。自分の怠慢が招いた失注なのだと強く自覚しました」

こうして初の“黒星 ”となった2度目のコンペは、高橋に大きな教訓をもたらすことになったのです。

あらゆる人の知恵を借り、“面”で臨むことで見えたもの

高橋 「 2度目のコンペで敗れた時、統括部長から掛けていただいた言葉がもうひとつあります。『全勝しなくてもいい。ただし負け越すな!』。負けをしっかりと振り返って勝ちにつなげるように、というメッセージでした。

その時のホワイトボードの内容まで記憶しているくらい印象に残っています。この言葉があったから、次こそは必ず、と奮起することができたんです」

その後も、顧客営業として引き続き同じお客様を担当するなかで、たとえコンペでの失注を補うのは難しくとも少しでも取引を拡大しようと、 IoTに関する提案をコツコツ重ねていった高橋。

胸にあったのは「二度と同じ失敗はしたくない」という強い決心でした。そして “次”にかける前向きな想いを、折に触れて周囲に発信し続けました。

そんな高橋に、3度目のチャンスが回ってきます。それまで担当していたお客様と同様、監視系システムの更改を検討中のお客様を新たに担当し、コンペに向けた提案を任されることになったのです。今度は、並み居る競合3社を相手にしてのコンペでした。

高橋が一貫して心掛けたのは“面”で情報を取りに行くこと。

高橋 「上司と協力して先方の担当者にアプローチする傍ら、開発メンバーや他事業部の事業部長にもヒアリングをお願いして多角的な情報収集に努めました。もちろん前回の反省を生かし、キーマンにも早い段階からコンタクトをとり続けました」

統括部長に「心配性すぎるくらい心配性になれ」という叱咤を受けながら、とにかく思いつく限りの手を打つ──。慢心は、一欠片もありませんでした。

そして提案書づくりは、「どの会社にも負けないものをつくりたいです!」という高橋の宣言で幕を開けます。アジェンダを検討する段階からあらゆる上長に意見を請い、関わるすべての部門の担当者に助言を求めて、まとめ上げたと言います。

高橋 「お客様は私たちが提案書に込めた力の入りように驚かれ、『こんなにも NTTデータには強みがあるのか』という言葉をいただきました。あらゆる方の力を借りたおかげで、当初は描けていなかった『 NTTデータの強み』をずいぶん肉付けすることができたんです」

こうして、高橋は自身2勝目となる大金星を獲得します。

高橋 「受注の報せを受けた時は、胸に込み上げるものがありました。大勢の方に力を貸していただきながら、足を動かして手を動かして頭も動かして、たくさん汗をかいた。やはりコンペ案件は、生半可な取り組み方では獲れないんだと痛感しました」

ただ、そこで終わらないのが高橋のチーム。 コンペ後はしっかりと“勝因分析”を行いました。

高橋 「構想策定から入り込みキーマンの考えをしっかりと掴めていたこと、また一元性のない提案になりがちな競合に対し、 “One NTT”による一元的なサポートが可能であることがお客様には響いたようです。

ただし統括部長からは、『営業活動としてはまだまだ足りないところがある』とのご指摘もいただきました。極力、全勝に近い方が望ましいですからね(笑)」

目指すは成功事例の積み上げと、横展開可能な“メソッド”の確立

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▲チーム一丸となり“面”で臨み、お客様との長期的な関係を築く

高橋たちがとことんお客様に深く入り込み、練りに練った提案で臨んだ3度目のコンぺは、何物にも代えがたい「お客様との信頼関係」を揺るぎないものにしました。

そして監視システムの更改案件の受注からほどなくして、顧客管理システムのライセンス販売に関する提案で、大口の契約を獲得することができたのです。ここでも“ワンマンプレー”に走らず、関連部署の協力を仰いでチームで取り組んだことが奏功したと高橋は振り返ります。

高橋 「やはり、いかなる提案も自分ひとりの力では不十分だな、と。社内の有識者の協力を得ながらベストを尽くすことの大切さを、再度実感しました」

2勝1敗。3度のコンペを“勝ち越し”た高橋が、次なる目標に見据えているのは、3度目のコンペでとった戦略をトレースして、別のお客様においても難度の高い案件を受注に導くこと。

高橋 「先輩や上司の話を聞いていても、自分にはまだまだ圧倒的に経験が足りないという自覚があります。前回のコンペで掴めたものを生かして、まずは新たな成功事例をつくることが今の目標です。

ゆくゆくは、自分以外のほかの営業メンバーがやっても案件が獲れるような、営業としてのメソッドというか、行動指針を打ち立てられるようになりたいと思っています」

そんな高橋は、お客様との「パートナーシップ」を築くことができる営業であることを近頃特に心がけています。

高橋 「営業である以上は、粗利を重視しながら、何はさておき目先の利益を追いかけるようなスタンスも、悪いとは思いません。ただ、その思惑は必ずお客様にも伝わってしまうものだと思っています。

まずは、お客様の成長にどうすれば貢献できるかを第一に考え、実践する。その結果、NTTデータとしてもしかるべき利益を上げ、お客様とは長期的な関係を構築していく。そんなスタンスが理想ですね。お客様に寄り添うことのできる営業でありたいと思っています」

高橋は周囲を巻き込み、確かなステップアップを遂げてきました。それでも「今はまだまだ足りていないところがある」と語る彼の、営業として思い描く姿とは──。

高橋 「部門を超えて社内のたくさんの方の力を借りることで、お客様が唸るほどに強みが満載の提案をまとめ上げることができました。その経験があるからこそ、ステークホルダー全員が最後に『良かったね』と頷き合えるような仕事をしていきたいです。

お客様からは『 NTTデータの高橋の言うことなら信じてやってみよう』と、社内からは『営業の高橋と一緒ならいい仕事ができる』と思っていただける。そんな存在を目指しています」

失敗を通して直面した自身の甘さから目を逸らすことなく、そこから見出した学びを実践的な行動に昇華させていく。ときに苦痛を伴うこのプロセスを、前向きに諦めずに突き詰められる者だけが得られる確かな手応えとともに、NTTデータの顧客営業 高橋勇の挑戦は続きます。

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