「勝てる土俵」をこの手でつくる! グローバルを舞台に本質主義で挑む若手社員の奮闘

柏井亨太は、ベトナムにあるNTTデータのグループ会社に駐在中の社員です。好奇心が強く、大学時代からグローバルに働く将来像を思い描いてきました。現地で自らに課しているのは、「本質主義」であること。日々、「グローバルな環境で働くこと」の難しさと楽しさをかみしめているという柏井の仕事観をご紹介します。

「楽しい」を運んでくる、「新しい」「わからない」を求めて

▲NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 柏井亨太

柏井にとって、グローバルがキャリアを描く際の重要なキーワードのひとつになったのは、大学2年生のときに経験した約3週間のドイツ滞在がきっかけでした。

柏井 「日本から外に出たのは、そのときが初めてです。自分にとって新しいことずくめの外国での滞在は、とにかく楽しかった。そのあと、真冬のカナダで 1カ月間の林業研修のようなことを経験したり、交換留学で 1年間ドイツに渡ったりと、いろいろなことにチャレンジしました」

3年生では、文化人類学を専攻。フィールドワークのため、約1カ月間アフリカの農村にも滞在しました。

柏井 「普段の生活とのギャップが大きい分、アフリカ滞在中は大変な想いもしましたが、あとになってかみしめるほどに『あぁ、楽しかったな……』と。いつかまた、そんな未知の環境に身を置いた刺激的な経験ができたらな、という想いをずっと持ち続けていました」

そんな柏井が就職活動に際してIT業界を選んだのは、誰もまだ経験したことのない「新しい」フィールドにアプローチしやすい領域だと考えたから。IT企業で、グローバルに活躍する自身の将来像を思い描いていたと言います。

当時、グローバル展開に重きを置いた戦略を明らかにしている国内のIT企業が多くない中で、法人分野による海外展開を明確に打ち出しているのが、NTTデータだったのです。

2013年に入社後、柏井はオンライン決済に関するシステムを手掛ける事業部に配属されます。大規模なSIというよりは、開発担当者が比較的小規模な案件を複数担当するアプローチを取る部署。柏井も決済サービスに関するさまざまな開発プロジェクトに携わり、要件定義からサービス開始に至るまでのプロジェクトマネジメントの経験を積んでいきました。

また、アメリカのベンダーと協業して不正検知の新たな仕組みを構築したり、中国のオフショア先との窓口業務を担当したり、ヨーロッパのパートナー会社向けにバックアップサーバを構築したりなど、幅広い経験にも恵まれます。

柏井 「入社当初から、できるだけ国内以外のことにチャレンジしたいと言い続けていました。僕のそんな想いを、上司が聞き届けてくれたのだと思います」

順風満帆な日々。しかしそれが1年2年と経つうちに、「日本にいながらにして海外のベンダーと協働する」というレベルでは、柏井の内心に湧きあがるグローバルへの好奇心を満たしきれなくなっていきます。

また、自身のキャリアを考える上でも、入社3年目になるころには「まったく新しい価値を見いだせるようなことに挑戦したい」という想いが募っていたと当時を振り返ります。

柏井 「生活面も含めわからないことが次々と目の前に立ちはだかるような環境の方が、おもしろいし幸せ。自分の中にはそんな想いがあります。だからこそ、海外に身を置いて、ローカルのお客様がターゲットのビジネスに、手探りの状態から携わってみたかったのです」

初めての海外駐在。タイで磨かれたオールラウンドな対応力

“未知”の経験を求めていた柏井に転機が訪れたのは、入社4年目のとき。タイにあるグループ会社NTT DATA Thailand(以下、NDTH)のPayment BUに、PMO(Project Management Office)として赴任することが決まったのです。

PMOとは、プロジェクトの管理機能を担い、PM(プロジェクトマネージャー)を支援するポジションのこと。柏井は、現地のPMが率いる複数のプロジェクトを見て回るうち、個々のプロジェクトではなく、全社的な視点での課題設定と対策の必要性を感じるようになります。

柏井 「わかりやすいところでは、人員不足がまず大きな課題でした。このことから、 PMOとしての範囲に留まっている限り何も解決できないと感じました。人事担当者と組んで中途採用チームを立ち上げ、現地での採用活動にも取り組みました」

さらに、営業支援や会議体の再設計というような領域にも参画したり、週次で行われる会社の意思決定会議では、司会進行役を任されていました。また、プロジェクトの中に自ら入ってPMとしての立ち位置で動くこともあったと言います。

柏井 「全社員 200名前後という小さな組織です。そのため、 PMOという当初の役割を超えて、とにかくいろいろなことを経験させてもらいました。日本にいたときには経験したことのない領域ばかりでしたが、周囲の協力を仰ぎ助けてもらうことで、自分ひとりの力では難しいこともできるようになるものだ……と、タイでの 2年半を経て強く実感しました」

また、本業であるPMOとしては、開発標準を策定。開発標準とは、システム開発の工程ごとに、必要な作業や成果物、プロジェクト管理の方法を定義したもの。システムの品質確保やプロジェクトの生産性向上を目的に適用されます。

もともとNTTデータがAPAC地域のグループ会社向けに展開している開発標準はありましたが、あくまでそれは原型。現場の実態とタイの一般的なお客様像に見合った開発標準に落とし込む必要があると考えたのです。

柏井 「開発標準を提供するわれわれの自己満足にならないように、という点を最初から意識していました。当然、本社とも連携しつつ、現場のメンバーとは何度も話し合いの場を持ちながら、原型に盛り込まれている項目を一つひとつ精査して、オリジナルの開発標準として整備しました」

現地メンバーとのコミュニケーションは基本的にすべて英語。身振り手振りはもちろん、ホワイトボードによる筆談も交えながら意思の疎通を図ったと言います。また、タイ語を少しでもマスターしようと地元の語学学校にも通いました。

柏井 「言葉がわかると、それだけで日々入ってくる情報量が格段に増えますからね。それに、言葉は現地メンバーとの信頼関係を築いていく上で何よりの足掛かりになります」

「本質主義」のススメ。脱・思考停止を実践するアプローチ

▲NTTDATA Thailand Payment BU のときのメンバーと

日本とはまったく異なる環境で仕事をすること。それは、柏井自身が強く望んだことではありましたが、やはり並大抵のことではありませんでした。

「毎日がトラブル」──そう振り返るように、2年半のタイ駐在期間中は日々、大小さまざまな出来事が起きたと言います。その理由を柏井は、「そもそもの考え方の違い」だと考えていました。

柏井 「現地メンバーは、自分も含めた日本人の駐在メンバーとは異なるバックグラウンドを持っています。だから、物事の捉え方や考え方が違って当然なんですよね」

その違いを認識しているからこそ、柏井が自らに課していたことがあります。それは、「固定観念を持たず真剣に相手の話を聞くこと」。誰しも自分にとっての “当たり前”が「正」であり、それに当てはまらないものは「誤」として捉えてしまいがち。しかし、それでは「思考停止」になってしまいます。

また、自らもその“思考停止状態”と無縁ではないという自覚があるからこそ、現地メンバーの言動を「日本人である自分」の経験則で読み解くのではなく、相手のより深いところにアプローチすることを心掛けました。

柏井 「彼らのやりたくない・できないというリアクションに対して、『面倒だからでしょ』とわかった気になってそこで会話を終了するのは簡単ですが、それでは何も解決しない。
やりたくない・できないという言葉の裏側には、『自分たちがわかっていない何かがあるはず』というスタンスで、相手の言葉を受け止めるよう意識していました。本質を捉えるようにしたいからです」

実際、より深いところまで話を聞いてみると、文化的な背景やほかの阻害要因、あるいはそもそもあまり意義を感じていないなど、そこには何かしらの理由が存在していたのです。

柏井 「たとえば、日本の銀行のモバイルアプリは簡素なつくりのものが多い印象ですが、タイには優れたユーザーインターフェースで機能的にも充実したものがあります。日本における “当たり前”とは別のやり方で、客観的に見ても優れたモバイルアプリにたどり着いている。つまり、日本のやり方が絶対ではないということですよね」

QCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)への根本的な考え方も日本とはギャップがあります。それはシステムを開発する側だけでなく、受容する側のお客様、さらに言えば社会そのものの考え方が日本とは異なるからこそ──というのが柏井の考えです。

だからこそ、PMOとしては無理に日本のやり方に当てはめるのではなく、「お客様にとってのベスト」から逆算して最適なあり方を検討。おのずと、ローカルのやり方に寄り添うケースが多くなりました。

あるプロジェクトがサービス開始を迎えたとき、メンバーのひとりからかけられた「あなたがいてくれて良かった」という言葉が忘れられないと言います。

柏井 「 PMOとして導入した施策は、必ずしも目に見えるわかりやすい成果が出るものばかりではないですし、メンバーにとってはある種の “負担 ”になっていたかもしれません。それでも、最後にそんな言葉をかけてもらえたことが非常に嬉しかったですね」

柏井の、本質を見極めお客様に寄り添うというスタンスが評価され、報われた瞬間でした。

ベトナムで迎えた海外駐在第2章。そして、ここから描く未来

▲VietUnionのメンバーとの社員旅行 in マレーシア

2019年春、2年半に及んだタイでの駐在を終えた柏井。間髪を入れずにベトナムのグループ会社VietUnion Online Services Corporation(以下、VU社)での駐在が始まり、ようやく数カ月が経とうとしています。

VU社のビジネスもNDTHのPayment BUと同様、キャッシュレスなペイメントサービスがメイン。2016年にNTTデータグループに加わった、社員200名強の企業です。

同じ東南アジア圏で、会社の規模や事業内容の面でも共通点はあるものの、やはりまったく違う文化を感じると言います。

柏井 「ビジネス感覚は、タイ人よりもベトナム人の方が、日本により近いかもしれませんね。ただ個人的には、『日本と比べてどうか』という物差しで推し量るのはあまり意味がないかな、と思っています。
これまでの経験上、物事の考え方とか仕事への取り組み方の面で、日本というのは結構ユニークな存在だという気がしているので(笑)。
だからこそ、コミュニケーションにつまずいたときほど、『相手が何を思っているのか』という本質を大切にしたいと考えているんです」

タイにいたときと同じく、ベトナムでも幅広い業務に取り組む毎日を送る柏井。目下の課題は、現在の軸足である「PM」のほかに、第2、第3の軸足を見つけることだと言います。

柏井 「今後どうすれば、グローバルに活躍できる人財になっていけるか。それを模索中です。世界各国それぞれ、相手国の土俵に乗っても勝ち目は薄いと思っています。なので、日本人であることの強みを見いだして、自ら新たな土俵をつくって勝負したいと考えています」

「新たな土俵」にこだわるのには、実はある経緯があるのだとか。タイの駐在中、現地でできた友人数人と街のメキシコ料理店を訪れたときのこと。たまたま催されていたクイズ大会に飛び入り参加した際、「土俵」の違いを痛感しました。

柏井 「『インターナショナルでフェアなクイズ大会です!』という触れ込みだったのですが、ふたを開けてみると、アメリカの歴史や文化についての問題がものすごく多くて。当然答えられなくて、ものすごく悔しかった(笑)。
これはあくまで一例ですけど、そのときに、よって立つ土俵の違いを思い知ったというか……。だからこそ、誰もまだ名乗りを上げていなくて、僕たちが強みを発揮できるような土俵をつくるところから始めなければ、と」

「あと10年は、海外のさまざまな拠点で仕事をしたい」と語る柏井。自らの立ち位置を冷静に客観視しながら、向き合う相手への敬意と尽きない好奇心を抱いて、「新たな土俵」を追い求める柏井の旅は続きます。

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