進むはずだった小学校教諭の道を手放し、未知の世界だったIT業界へ

▲NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 江川 真樹

大学時代は教育学科に在籍し、小学校の教員免許も取得している江川 真樹。一度きりの「新卒」なのだから複数の選択肢を探ろうと、就職活動を始めた当初は教育や人材業界を中心に見ていました。

江川 「もともと、IT業界にはあまり関心がありませんでした。合同説明会で、たまたまNTTデータを知ったのが最初のきっかけです。自分の中で、『これをしたい』というものが明確に定まっていなかったのですが、IT業界なら、IT&○○の掛け合わせでいろいろな業界との接点があるはずと。今思うとふわっとした志望動機でしたね」

2013年にNTTデータ入社後、最初に配属されたのは、政府系金融システムの大規模開発プロジェクト。基盤チームのメンバーとして、設計から開発、試験に至るSIの一連のプロセスを経験します。

江川 「入社1~2年目は、見聞きするものすべてが新鮮で、とにかく勉強の毎日でした」

SIプロジェクトにおいては、フェーズごとの納品物が厳格に定められているため、社内メンバーやお客様との繰り返しのレビューの機会を通じて、正確な成果物の作成や要点を突いた説明を意識するよう鍛えられたこと。

また、基盤という、複数の業務システムを横断する領域を担当する立場上、さまざまなチームのメンバーと会話する場面が多く、業務に必要な知識とコミュニケーションスキルを高められたこと。

──これらの経験は、SIかつ大規模なプロジェクトだからこそ得られたもの、と江川は言います。

江川のプロジェクト参画と同時期にスタートした開発は、4年半を経て完了します。

このころには、江川は自身の仕事について、入社当時には無かった明確な意志を抱くようになっていました。

スキルアップを目指し、異動。決済系サービスの創出を担う組織へ

▲開発チームのオンラインミーティング。インドのメンバーと共に開発をしています
江川 「4年半にわたりひとつのプロジェクトを経験してみて、今後はより短期間で回っていく小規模な開発に携わりながら、もっと自分の経験の幅を広げたいと思うようになりました」

そこで、自ら希望して、現在所属するデジタルペイメント開発室への異動というチャンスをつかみます。

デジタルペイメント開発室は、NTTデータにおいて決済系システム全般を扱うカード&ペイメント事業部直轄の組織。他の多くの業界と同様、決済業界においても「DX」(デジタルトランスフォーメーション)の実現を各社が模索する中、よりスピーディかつ柔軟性を持って新たなサービスを提供するというミッションのもと、従来の組織とは異なる体制や開発プロセスを採用しています。

江川 「開発室内には、10名以下のメンバーからなるチームが複数あり、アジャイルのフレームワークを用いて開発を行っています」

SI案件では、初めに要件定義を行い、それに基づき設計以降のフェーズに順次移っていきますが、江川が所属するチームが扱うのは、主に要件が明確化する前のビジネスアイデア段階の案件。サービスとしてデザイン、そして具現化するためのプロトタイプの作成や実証実験(PoC)を行い、そのビジネス価値を見極める役割を担っています。

それゆえに、開発にはスピードが求められます。短いスパンで多くの案件に携わることを希望していた江川にとって、理想的な条件がそろっていました。しかし、異動した当初の役割は、江川が思い描いていたものとは少し違っていました。

江川 「チームメンバーのマネジメントが主で、自分で手を動かす機会がほとんどありませんでした。そのため、異動を決意した際に抱いていた『より幅広い開発スキルを身に付けたい』という自分の想いとのギャップを感じました」

また、メンバーのマネジメントを行う上でも、マネジメント業務から一歩踏み出す必要を痛感します。技術スキルの高いメンバーとの会話が、当初まったく成立しなかったのです。

江川 「デジタルペイメント開発室では、パブリッククラウドやコンテナ技術、また言語も新しいものを使っています。私のそれまでの知識では歯が立ちませんでした。しかも、日本語がそこまで流ちょうではない外国人メンバーも複数いるため、しっかりと意思疎通するには、私自身が実装レベルで会話できるようでなければ難しいと感じました」

そこで、江川は奮起します。技術に詳しい同僚に質問をしたり、WEB上のフォーラムや外部の勉強会に参加したり。さらに、開発タスクをメンバーに割り振るだけでなく、自らもタスクを持つことで、技術に関する知識と感覚を磨いていきました。

自ら学び、手を動かし、新たな技術スキルを獲得。そして見えた次なる目標

▲デジタルペイメント開発室の有志で、学びをアウトプットするために技術書典に出展

自己研鑽の甲斐あって、江川の知識はめきめきと向上。メンバーとも実装レベルで難なく会話ができるようになっていきました。そして、技術面での理解が追いついてからも、自ら開発タスクを持って手を動かすスタンスは崩しません。

江川 「まずは自分がトライしてみる、というスタンスを大事にしています。チームの成長のためにはどんどん新しいプロセスや技術を適用する必要があるため、マネジメント業務プラスアルファで、自らもプレイヤーとして手を動かす時間は大切にしたいと考えています」

そうして、異動から2年目を迎えた2019年夏、江川に大きなチャンスが巡ってきます。

アパレルメーカーのお客様の協力のもと、デジタルデバイスを活用した試着室決済サービスの実証実験(PoC)をNTTデータが行うことが決定。その開発業務を、江川のチームが主導することになったのです。

PoC本番までの期間は3カ月。かなりタイトなスケジュールでした。

江川 「決済に使用するPOSやRFID(Radio Frequency IDentification:電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム)は他社の担当なので、各社とコミュニケーションを取りながらスピーディに開発を進めていくのはなかなか大変でした。初めての試みなので、ハード間の連携に関するバグも多くて。『エンドユーザーにとっての使い勝手』という観点から対応の優先度を付けて、PoC直前までチーム一丸となってバグの解消にあたっていました」

アジャイル型のプロジェクトでは、サービスの全体像が固まりきる前に、ビジネス的な価値が見込めるアイデアを小さな単位で具現化して順次リリースを行います。そのため、ビジネス価値に照らし合わせた優先順位づけが極めて重要だと江川は言います。

江川 「ユーザーにとって不要なものや、価値の低いものから実装を始めてしまうと、いつまで経っても価値の低いサービスにしかなりません。そのため、開発の担当者といえども、ビジネス的な観点を持って判断していくことが不可欠だと思っています。

私自身はまだまだその点が弱いので、開発に軸足を置きつつも、よりビジネス的な視点を養っていきたいと考えています」

ゆるぎないビジョンへの想いを、前進し続けるエネルギーの糧として

▲日本メンバーと共に。なんでも言い合える雰囲気を大切にしています

異動後に直面した自身の想いと現実とのギャップを乗り越え、早くも次なるステップアップへの意欲をのぞかせている江川。今は、充実した毎日を送っていると言います。

江川 「自分に与えられている役割への満足度も高いですし、メンバーや上司にも恵まれてとても楽しく仕事をさせてもらっていると感じます」

また、業務のかたわら、2019年度からは新入社員のトレーナーも務めています。

江川 「もともと人の成長というものに興味があって大学で教職課程をとっていたくらいなので、トレーナーも楽しんでやっています。口であれこれ言うのではなく、私の姿を見てまねしていってほしいな、という考え方です。私自身、人に言われたことをやるのが好きではないので(笑)」

そんな江川が、仕事への取り組み方として常に念頭に置いているのは、自らの担当領域以外にも進んで手を貸すこと。

江川 「私の担当はこの範囲だから、ここまでしか考えません、やりません、というスタンスはとらないようにしています。ビジネスサイドのチームの助けになるなら代わりに資料もつくりますし、起きている故障が他のベンダーさんの範疇だとしても、可能な範囲で解析を手伝います」

日々の関わりの中で築いた信頼残高があれば、自力では対応しきれないような困難も必ず克服できる。そう信じているからです。実際、自身の業務範囲に線引きをしない江川のもとには、メンバーから日々さまざまな相談ごとが持ちかけられています。異動から3年足らずで、組織にとって欠くことのできない存在になりました。

ふわっとした動機でIT業界に飛び込んでから、2020年で8年目を迎えます。江川には、この業界で実現したい夢ができました。

江川 「誰かにとってのマストハブになるプロダクトをローンチすること。今の目標はこれに尽きます。迅速な仮説検証と改善を繰り返し、プロダクトのローンチ・グロースをアシストできる人財になりたいです。そのためにも、開発スキルのさらなる習得とビジネスサイドの知見の吸収にも努めたいと思っています」

未知の領域に尻込みせず、自身がレベルアップすることで確かな一歩を踏み出す。その繰り返しでつかんだ「夢」を実現するため、江川は今日も笑顔で前を向きます。