データセンターの未来創造に向け 自らの建築物への熱い想いとともに

企業が事業活動を行ううえで、土地や建物、設備などのファシリティは重要な経営資産となります。建築学科を卒業し、「建物の一生にかかわりたい」という想いから、ファシリティマネジメント(以下、FM)というNTTデータのなかではめずらしいキャリアを歩む奥野宏将の仕事観に迫ります。
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建物を「建てる」より、その「一生にかかわる」仕事に就きたくて

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▲NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 奧野 宏将

奥野宏将のNTTデータ入社は2013年。幼いころから大の“建物好き”で、毎週土曜日の朝はテレビ朝日系列の番組「渡辺篤史の建もの探訪」を欠かさず視聴。そんな子ども時代だったと言います。

成長してからも建物への情熱が薄れることはなく、大学、大学院ともに建築学科を選択。大学院で建物のエネルギーについて研究するうちに、奥野の関心は建てることそのものから、“ 建てることのその先 ”にシフトしていきました。

奥野 「建物というのは、建てるときはもちろんですが、実際は建ててからの方がエネルギー消費量や CO2排出量など環境に与える影響が大きいことを大学院の研究で学びました。
それで、『建てる』よりも、『長く使う』立場で建物のライフサイクル全体に関わる仕事に就きたいと考えるようになったんです」

システムインテグレーターとして知られるNTTデータのなかに、「建築系職種」の採用枠があることはあまり知られていないかもしれません。

しかし、全国21拠点にデータセンター(以下、DC)を有し、日本有数のDC事業者としての顔ももつNTTデータ。それらの建設・運用・維持を担うFM事業部には、建設系と電気系それぞれのプロフェッショナルが多数在籍しています。NTTデータが手がける情報通信サービスを、日夜、基盤から支えているのがFM事業部です。

建築を専攻した学生の多くが設計事務所やゼネコン、サブコンに就職するなか、奥野が「たまたま目にした」FM事業部の新卒募集。自社で建物を保有している会社で、その“一生”にかかわることができる仕事ならば、自らの希望をかなえることができるかもしれないと判断し、NTTデータへの入社を決心したと言います。

奥野 「 DCの建設・運用にあたっては、事業継続性の確保が大前提です。そして、それを支える FM事業部のミッションも極めて重い。
しかし、同じ社内でも新入社員にとってはなじみが薄い領域であるのも事実で、入社当初は、IT部門で採用された同期から『建築採用なんてあるんだね』『 FM事業部って何しているの?』とよく聞かれていました」

そんな奥野が最初に担当したのは、品川にあるアレア品川ビルの建築設備工事でした。ここで、熱を帯びるマシンを冷却するために重要な、空調設備の更改に携わります。

実際に、図面を書くのは設計会社の担当。工事の現場監督として職人に指示を出すのは施工会社の役割です。ほかにも、工事にはゼネコンやサブコンといったさまざまな協力会社が関与します。

奥野の役割は、それら各分野のプロフェッショナルを発注者として束ねること。予算管理に始まり、計画にもとづくパートナー各社との協議、ユーザーとの折衝、工事の仕上がりの確認まで、その業務は多岐にわたります。

品川の案件以降も、奥野は複数の建築設備工事に携わります。そのうちのひとつで、前任の担当者から引継ぎを受けた際に、ある大切なことに気づかされたと言います。

奥野 「 『この居室には、このようなシステムを構築するマシンなどが入ります』とか、『この居室には事業部の担当者だけでなくお客様も一緒に入居する場所だから、両者にとって利便性の高い場所にしてほしい』、『この居室は絶対に停電が起きてはいけないところ』というように、その空間や場所の利用者にとって重要だと思われる要件を一つひとつ前任の方から説明してもらったんです。

事業部の先にある、真のお客様の存在をあらためて認識することができました。お客様のビジネスを支えているんだという実感というか、自信と誇りのようなものもそのときに強く芽生えた気がします」

ステップアップのため一級建築士の資格取得に挑戦。二次試に苦戦するも……

大学時代に6年間、建築を専門に学んだ奥野ですが、仕事でかかわるパートナー企業メンバーは、ゼネコンや現場監督などさまざまな領域のスペシャリストであり、現場経験も豊富なプロフェッショナル集団。

学問を通して得た知識だけでは必ずしも十分ではなく、現場の知識や経験不足を補うため、自ら積極的にコミュニケーションをとるようにしたと言います。

奥野 「入社 1~ 2年目は、周囲の方々に比べると『自分にはまだまだ、技術力がないな』という自覚がありました。だからこそ、社内外問わず、わからないことがあれば正直に『教えてください』とたびたび聞きにいっては、話についていけるように努力していましたね」

そして、入社3年目を迎えた奥野は、大きな挑戦を自らに課します。「一級建築士」資格の取得です。当時は、受験資格として「2年以上の実務経験」が必須とされていたことから、その年に初めてチャレンジが可能になったのでした。

その年の一次試験は、見事一発合格。しかし、二次の製図試験には苦戦しました。翌年から、毎週土曜は自宅でドラフター(製図台)に向かい、日曜日は専門学校に通う日々。業務と両立しながらわき目もふらず、製図の特訓に明け暮れました。

奥野 「入社 4~ 5年目は、週末に遊んだ記憶がほとんどありません。どうやって息抜きしていたんだろう……(笑)。一次試験が免除されるのは合格後 2回までなので、なんとか 3年目の挑戦で決めようと必死でした」

そして、入社5年目の秋、奥野は3度目にして二次試験を見事クリア。名刺には、「一級建築士」の肩書きが加わりました。

奥野 「一級建築士という資格を取得したことによって、コミュニケーションの入り口の段階で、対等なプロフェッショナルとして認めてもらいやすくなったな、という実感があります」

3年越しの努力なくしては、決して刻まれることのなかった肩書き。プロジェクトでかかわる初対面の相手に名刺を手渡すと、そこに目をとめてもらえることが多いのだと言います。

十数年ぶりの大型新設案件に参画。「建てる」→「利用する」のシフトを経験

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▲常に関係者と綿密なコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進める

2016年夏。一級建築士の資格取得と前後して、奥野はFM事業部を挙げた一大プロジェクトのメンバーに加わりました。新築プロジェクトとしては2003年に竣工したアレア品川以来、10数年ぶりとなる新築プロジェクト、DC「三鷹EAST」の建設です。

三鷹EASTは、“国内最大級”、“最新鋭”を旗印に、NTTデータグループのノウハウを結集したDCとして計画されました。延床面積は約3万8,000㎡で、最大5,600ものサーバーラックを収容可能。

震度6~7の大型地震にも耐えうる免震構造を採用し、災害から通信ケーブルを守る地下トンネルを確保したビルには、AIやIoTといった先進技術に加え、空調設備についても冷却効率の高い最新鋭の方式を取り入れています。

入社4年目の奥野にとって、三鷹EASTはもちろん初めての新築DC案件です。年次を経ることで、“慣れ”が“マンネリ”に少しずつ変化していく微妙な時期にさしかかっていただけに、このプロジェクトに関われたことは嬉しかったと言います。

一方で、新築プロジェクトには、既存ビルであれば当然存在する、それまで踏襲されてきた“ルール”もなければ、協業する施工会社の顔ぶれも既存案件とは異なるものでした。それまでとは違った責任を感じ、戸惑うことも少なくなかったと言います。

奥野 「新たな局面を前にしたワクワク感と楽しさ……そしてつらさ。というのが当時の正直な心境です(笑)」

2018年3月、三鷹EASTは無事に竣工に漕ぎつけ、4月1日にサービス提供を開始しました。2019年現在、奥野は三鷹EASTの建築設備工事担当としての業務を主におこなっています。

「建てる」プロセスを経て、「利用する」ステージへ。ライフサイクルが一段階進んだ三鷹EASTと伴走するなかで、新たに気づいたことがあると言います。

奥野 「『建てる』ときには見えなかったことが、『利用する』段階になって初めて見えてきたりもします。『利用する』ときのことをもう少し見通せていたら、工事のやり方ももう少し違ったものになったかもしれないな、と。新築工事段階と、運用開始以降の工事担当。その両方を任せてもらえたからこそ、得ることのできた視点だと思います」

運用後に認識した改善点については、保守担当のメンバーや、施工会社との打ち合わせのなかで対応方法を協議しています。

自らの成長とFM業務の展開。その可能性に胸膨らませて

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▲企業の重要な経営資産であるファシリティの価値を最大化すべく、プロフェッショナルたちは日々業務に取り組んでいます

FM事業部のなかには、大学院時代の奥野の研究とリンクするような、「効率化」や「省エネルギー化」に寄与する業務を担当しているメンバーもいます。

しかし、現在までのところ、そういったテーマに直結する事案に携わったことはないという奥野。学生時代の関心分野とは少し離れたところで、入社の動機でもあった“建物のライフサイクルにかかわる仕事”に従事するうえで、ふたつの“パートナー”の存在を大切に考えていると言います。

ひとつは、FM事業部が手がけるDCのユーザーである、各事業部、そしてクライアント企業。

奥野 「 DCという建物のサービスを提供する FM事業部と、実際のソリューションを提供する事業部が連携することで、NTTデータとしてお客様に一気通貫でサービスを届けることができる。だからこそ、お客様の目的をしっかりと把握して、目の前に見えている以上のところまで思いをはせながら、建築設備工事の業務に携わっていきたいと思っています。
真の目的を、忘れそうになりがちなので、各事業部とクライアント企業の目線に立って考えることを意識しています」

もうひとつは、施工会社や設計会社といった日々現場で協働するプロフェッショナルたち。一級建築士の資格を保有しているとはいうものの、個別の専門知識に関しては、やはり委託先の各担当者にはかなわないと言います。

そうしたなかでも、発注者としての立場である以上、うまくコミュニケーションをとりながら目指した通りのものを完成させなければいけません。

奥野 「プロジェクトにかかわるパートナーをうまく巻き込んで、いかに相乗効果を発揮しながらつくりあげていくか。それが、今の私に課せられている最大のミッションだと認識しています」

現在のFM事業部は、大きな変化の真っただ中にあります。2018年秋、NTTデータはNTTグループが新設したグローバルの持株会社の傘下に入りました。これまでFM事業部がターゲットとしてきたのは主に国内のDCでしたが、今後は海外のファシリティに携わる業務が増えていくことが予想されます。

また、国内では目下、大規模DCの建設がブーム。長年FM事業部が培ってきたDC運用のノウハウに、新たな活路が開けそうです。こうした潮流をふまえ、間もなく入社8年目を迎える奥野は、自身の今後に想いをはせます。

奥野 「幸いにも、これまでずっと工事担当としての立場で経験を積むことができました。今後もこの道を究めて工事のプロフェッショナルとして進むのか。あるいは、CO2排出量の数値化など新しいビジネスを企画提案、営業をしていくといったことで自分の仕事に幅出しをしていくであるとか……。
グローバル展開に向けた海外の資産や DCの運用活用にも興味があります。さしあたって自分の強みは、一級建築士の資格と、『建物が好き』という想いだと思っています。それをよりどころにしながら、これからのキャリアを描いていきたいですね」

穏やかな語り口ににじむ、建築物への熱い想いと、 自己の研鑽に一切の妥協を許さない奥野の目には、多数の“パートナー”の姿とともに、FM事業部の未来が映しだされています。

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