「人に笑顔や感動をもたらす人になりたい」ベトナムで活躍する社員のビジネスへの想い

“人生100年時代”――。「働く期間」が長くなる一方で、国内市場は成熟から縮小へ。企業にとって、グローバルへの展開はより重要性を増してきています。学生時代の安藤洸代も、海外を意識して漠然とした焦りを感じていたひとり。しかし今、出向先のベトナムで安藤が描くのは、グローバルを舞台にした将来展望です。

海外研修で直面した言葉の壁。再訪して芽生えた「現地で働きたい」という想い

▲NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 安藤洸代

2014年、安藤洸代は新卒でNTTデータに入社しました。最初の配属先は、キャッシュレスな決済サービスの構築・運用を担うカード&ペイメント事業部。

主なお客様は、国庫金収納を行う金融機関です。納付者による電子申請の受付けから収納までをワンストップで処理する、共通システムの維持・運用を担当するチームのメンバーとして、安藤の1年目はスタートしました。

安藤 「根底にあるのは『人に笑顔や感動をもたらす人間になりたい』という想いです。加速度的な進化の途上にあり、まだまだ新たな可能性が広がっている ITを使って、周りの人たちをハッピーにできたらいいな、そんなことを考え入社しました」

また、就職活動のなかで、国内市場の成熟を背景に多くの企業がグローバル展開へ向かう様子を目の当たりにするうちに、好むと好まざるとに関わらず「自分もいつかは海外で働くことになる」――そんな確信を抱くようになりました。

安藤 「海外旅行が好きなわけでもなければ、英語もほぼ話せませんでしたが、『ある程度の年齢になって初めて海外勤務を経験するくらいなら、なるべく若いうちに行っておきたい』という気持ちは入社前からもっていました」

そんな安藤に、入社2年目の冬、転機が訪れます。初めての海外研修で、NTTデータベトナム(以下、NDVN)を訪問することになったのです。

しかし、英語があまり得意ではなかったため、現地のメンバーとうまくコミュニケーションをとることができませんでした。そして、1週間の滞在を終えると、ある決心を胸に日本へ帰国します。

安藤 「『英語を勉強しなければ』とその時思いました。準備不足で研修を有意義なものにできなかったことをすごく反省しましたし、何より、引っ込み思案になっていた私にも優しく接してくださった NDVNの皆さんにきちんとお礼を言いたい。その一心でした」

数カ月後、安藤はプライベートで単身、ベトナムを訪れます。NDVNのメンバーと再会を果たし、急きょ結婚式にも招待してもらうなど、思い出深い滞在になったと言います。この2度目のベトナム訪問によって、安藤のなかで何かが変わり始めました。

その後も複数回、ひとりでベトナムを訪れただけでなく、代々木公園で毎年開催されるベトナムフェスティバルにスタッフとして参加。日本にいる間も、ベトナムの文化やベトナム人と接する機会をもてるよう、自ら行動しました。

安藤 「研修で訪れるまで特別な思い入れなどなかったのに、知れば知るほど、ベトナムのことが好きになっていきました。次第に『ベトナムで働きたい』と強く願うようになりました」

手にした期限付きのチャンス。知識とコミュニケーション不足を乗り越えて

▲最初の研修でお世話になったNDVN(データベトナム)のメンバーと。このメンバーがいなかったら今の安藤はいないという(写真中央)

「ベトナムで働きたい」。この時入社3年目の安藤は、その想いを当時の上司にぶつけます。しかし、上司の返答はNO。言葉や文化の違いを乗り越え、現地のメンバーを巻き込みながら仕事をしていくことの難しさを思えば、ある意味当然の反応でした。

しかし、諦めない安藤の熱意に押され、当時の直属上司が海外のペイメント事業を統括する部署に掛け合ってくださり、ようやく4カ月という期限付きで、ベトナムのVietUnion Online Services Corporation(以下、VU)社への“長期出張”の許可が出ました。

グローバルペイメント&サービス事業部の事業部長ご自身が若手時代の海外駐在の折、相応の苦労を経験していたため、とくに精神面でのストレスを懸念し、まずは海外勤務への適性を見極めるようにと、異例ともいえる道筋をつけたのでした。

安藤 「上司や人事の方々、本当にたくさんの方に配慮していただいたおかげです。今振り返ってみれば、この時点では『ベトナムで働きたい』という想いだけが先行していて、現地で具体的に何をやりたいのか、ということまであまり考えられていなかったのですが……。みなさんが私の想いを汲んでくださいました」

こうして、チャンスを手にした安藤は期限付きでVU社へ。現金支払いが主流のベトナムにおいて、VU社は2008年に創業、2012年からビルペイメントを中心とした決済関連サービスを展開しています。2019年現在では年間取扱高が約3,000億円となるまで成長します。

NTTデータグループに参画したのは、安藤が派遣される半年ほど前の2016年6月のことでした。

ここで安藤は、日系航空会社向けのシステム導入を任されることになります。担当業務は、開発以外のすべて。お客様への提案や、開発チームとお客様との間での調整という、日本では経験したことのない業務にもフロントとして対応しなければならないポジションです。

ただし、VU社の製品についての知識はゼロ。しかも、英語はおろか、ベトナム語の資料もあまりそろってはいない状況下でのスタートでした。

安藤 「周りのメンバーと話をすることで、少しずつ知識をつけていきました。また、日本からきたお客様に VU社のサービスを紹介するうちに、知識が深まっていったと感じます」

互いにネイティブではない英語でのたどたどしい会話ながら、とにかくVU社のメンバーと「話すこと」を心掛けたという安藤。

しかし、当初は少なからず“壁”を感じる場面もあったと言います。欲しい情報を出すよう依頼をしても、なかなか出してもらえない――。その原因を、安藤は「信頼関係がまだできていなかったから」と分析します。

安藤 「少しでも距離を縮められるように、簡単な内容ならベトナム語で話しかけるよう心がけました。あとは、飲み会などではしっかりと溶け込むことですかね(笑)」

もちろん、業務面の苦労だけではなく、生活面においても異国ゆえに不便な思いをすることは多々ありました。

しかし、約束の4カ月を終えた時、安藤の胸にあったのは、「サービスをきちんと開始させ、安定した取引量を得てとにかく会社に貢献したい」という強い想いでした。苦労や不便を上回るやりがいを、VU社での業務に見出していたのです。

「みんなにとってのハッピーなポイントは?」――信頼関係を土台に問い続け

▲VU日本人メンバー、社長、VUのローカルのダイレクター。VUポーズで集合写真。(右から4番目)

日本への帰国後、安藤は海外のペイメント事業を統括する部署への異動と、VU社への正式な出向を願い出ます。これが認められ、“長期出張”改め“出向”扱いで、2017年6月よりVU社での勤務を開始しました。

VU社に戻った安藤は、最初の2カ月間、日本からSkypeなどを駆使し、遠隔で日系航空会社向けのプロジェクトを進めていました。

その後そのプロジェクトを無事に開始させることはできましたが、プロジェクト立ち上げ当初からの一連の経過を振り返り、こう反省の言葉を口にします。

安藤 「 VU社の開発チームは人数に限りがあります。ですから、システム構築においては、ひとつの業種やお客様に特化したものではなく、ほかへの横展開が可能な汎用性のある機能を担保してビジネスを展開していくことが戦略上とても重要です。

でも私は、お客様のご要望に 100%応えようとするばかりで、 VU社の開発や営業担当の思いを尊重した交渉や調整ができず、とくに開発チームに大きな負担をかけてしまっていました。開発の窓口となってくれていたローカルのメンバーにその点を後日指摘され、初めて気が付いたんです」


この教訓を踏まえ、いま、安藤は業務に臨む上でとくに大切にしていることがあると言います。

安藤 「『(決済サービスを提供する)お客様にとって嬉しいこと』『(サービスを利用する)エンドユーザーにとって嬉しいこと』『 VU社にとって嬉しいこと・譲れないこと』、この 3つを意識して、どのようなソリューションがベストなのかを考えるようになりました」

2019年2月現在は、VU社が提供するサービスの加盟店の担当もこなし、さらに自ら新規開拓したレストランチェーン向けの企画・提案にも取り組んでいる安藤。

VU社のサービスや戦略、またベトナムのマーケットに関する知識が増えたことで、お客様・エンドユーザー・VU社の3社にとっての“ハッピーなポイント”を、以前よりも見出しやすくなってきたと言います。

とはいえ、スムーズにいく場面ばかりではなく、互いに納得のいくポイントを探るため、何時間も議論することも少なくありません。

そしてもうひとつ、安藤には心がけていることがあります。それは、VU社のメンバーやお客様と、いかに信頼関係を築いていくかということ。信頼関係を重視するのは、それが「人に笑顔や感動をもたらす人間に」という自身の信念と通底すると考えているからです。

かつて読んだ本の中にあったという「緊張と緩和」のメカニズムを引き合いに、こう想いを打ち明けます。

安藤 「笑顔は、『緊張』の後に訪れる『緩和』の瞬間にやってくる。でも、それにはひとつ条件があって、当事者間に信頼関係が成立していること。その時に初めて、緩和とともに笑いが生まれる――という内容でした。

それを読んだ時に、仕事も一緒だと感じたんです。開発がようやく終わり、無事にサービス公開した時に心からの笑顔で喜び合えるかどうかは、互いの信頼関係に関わっていると思います。そして私は、関わる人と笑顔を交わせる関係でありたいと願っています」


ローカルのビジネスを知るほどに湧き出る「やりたいこと」を道標にして

▲VietUnion Online Services Corporationはベトナムを代表するフィンテック企業であり請求収納代行(ビルペイメント)のパイオニア

自らが理想とする、仕事で関わる人と一緒に喜び、笑い合える関係の土台に「信頼」を据え、VU社のメンバーとの距離を縮めるための努力を惜しまなかった安藤。その姿勢は、お客様に対しても一貫しています。

お客様から何らかの引き合いがあれば、必ずその企業の理念やマーケット、戦略を綿密に調査した上で提案をもっていくようにしているのです。

安藤 「調べ始めるときりがなくて大変ですが、対話のなかで信頼してもらえると、お客様の笑顔が見られる。それが嬉しいんですよね」

現在は、入社4年目の若手社員。しかし、その職掌範囲は通常日本にいる場合よりもかなり広く、慌ただしい毎日を送っています。しかし、「日本に帰りたい」と思ったことは一度もないと言います。

安藤 「やりたいことは尽きませんが、総括するなら『ペイメントの観点からベトナムの経済・文化に貢献したい』、これに尽きます。もう少し長期的な展望としては、アジア各国のローカルの会社に深く入り込んで、各国の状況を加味しながら、各社にとって望ましい方向性を見通せるような力をつけていきたいです」

また、業務のほかに、事業部がターゲットとするアジア各国を念頭に、NTTデータブランドの認知度向上や、各社のビジネス機会の探索を目的としたマーケティング活動にも取り組んでいます。

今後、NTTデータがグローバル展開を進める過程で、ローカルの会社を傘下におさめることで“NTTデータグループ”としてのつながりは希薄になっていくのではないか――。そんな見通しに立った上で、自らの希望をこう語ります。

安藤 「 “NTTデータ ”というブランドを掲げる同じチームという意識をもちながら、『一緒におもしろい世界をつくりましょう』と言い合える、そんな互いに情熱を燃やせるような信頼関係をつくっていけたらと思っています」

そして、紆余曲折を経ながらもベトナムで奮闘してきた今だからこそ、「海外で働くこと」に漠然と憧れを抱く後輩に対しては、こんな想いをもっていると言います。

安藤 「よく言われる、『のんびり仕事ができる』『英語が上達する』というイメージだけで『海外勤務ってなんかいいよね』と思っている後輩がいたら、まずは一度、『その国でどういったビジネスをしたいのか』を考えてみるように勧めると思います。

やはり日常生活は不便も多いですし、英語圏の国でなければ、そうそう簡単にはネイティブと対応に話せるほどの会話力は身につきません。おもしろくないことも辛いことも山のようにあるので、それが気にならないくらい、心から楽しめるビジネスであることが大切ですから」


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