社員だけでなく、家族にも好評な体験型リゾートワーク

私たちが2018年に運用を始めたリゾートワーク制度は、体験型の教育・研修制度です。2018年には11名、2019年(10月現在)には8名が利用しました。

この制度を利用すると、任意の期間、宮古島に滞在してリモートワークもしくは有給休暇の取得が許可され、滞在時は社員と同行する家族の人数に合わせて、会社から一律の手当を支給します。制度利用の条件はふたつ。滞在期間中に宮古島市の小中学校で出張授業を実施することと、その体験をヌーラボのブログで執筆・公開することです。

出張授業は各社員が好きに企画していて、その内容はさまざまです。基本的には各自の体験をもとに授業を構成しているようで「やりたいことは決めきらなくていい」というキャリア系や、「身体を使ってプログラミングを学ぼう」というエンジニアリングを生かしたもの、海外赴任の経験を持つ社員による「海外で働くってこんな感じ」など。

社員のご家族からは「子どもに父親の働いている姿を見せることができた」「小学生という多感な時期の子どもに、旅行そのものを含めいろいろな体験をさせてあげられた」などの声をもらっており、家族みんなにとって貴重な時間を過ごせているのがうかがえます。

しかしその一方で、制度の企画・運用を担当している管理部人事労務課人事係の安立沙耶佳は、これから継続的に運用するにあたり課題を感じ始めていました。

そのままの内容でリゾートワーク制度を運用し続けるとマンネリ化してしまい、“社員への刺激”と“制度としての新鮮味”が失われると考えたのです。多様な使い方ができるように何か工夫がしたい、もっとできることがあるはず──。

そう思案した安立の頭に思い浮かんだのはふたつのアイデアでした。

新たなリゾートワーク拠点で「いいまちづくり」を活性化

▲代表の橋本正徳(写真左)と、パートナーシップ提携を締結した北海道東川町長 松岡市郎氏(写真右)

ひとつ目のアイデアは、リゾートワーク制度の実施拠点を追加すること。

安立 「きっかけはすごく小さな理由なんですけど、ヌーラボには、宮古島出身者がいるんですよ。なので、宮古島でのリゾートワークはその人にとってただの里帰り(笑)。それにせっかく “リゾートワーク ”とうたうなら、どこでも仕事ができる感を出したいので、最低でも北と南はそろえたいなと思いました」

そうして選んだ地は、北海道上川郡東川町。道内屈指の米どころで“写真の町”とも言われており、人口減している街が多い北海道の中で、数少ない人口増している街です。

東川町は役場全体でまちづくりに力を入れていて、職員はプロジェクトマネージャーのように働いています。ボトムアップで、各自がプロジェクトを企画し運営しているのです。写真を軸に「写真写りのいいまちづくり」を活性化させていて、2014年には「写真文化首都宣言」を発表しました。毎年夏に開催されている「写真甲子園」には、全国の500以上の高校から応募が届きます。

ふるさと納税を行うことで、東川町の株主になることができる制度もあります。株主になると町営の施設が割引価格で使用できるほか、投資額に応じて土産品が贈呈されます。

町民は北海道最高峰の旭岳から流れ出している雪解け水という地下水を無料で活用しており、生活用水のすべてがミネラルウォーターという状態。まさに住んで良し、観光して良しの街なのです。

さっそく安立が問い合わせてみると、すぐに「OK」と返事をもらえ、企業としてパートナーシップを締結できました。社員が滞在中は、町営の施設を安価で利用させてもらえることになり、一方私たちは日本語学校の生徒向け就職プログラムとして、ヌーラボ独自の授業を提供することになりました。

そして2019年10月、東川町のリゾートワーカー第1号が誕生。これからどんな化学反応が起こるのか楽しみでなりません。

社外とのコミュニケーションで進化するリゾートワーク

▲プラハさんとコラボし、授業計画の作成や教育委員会との連携を共同で実施

ふたつ目のアイデアは、他社とのコラボレーション。

私たちは「リゾートワーク制度を運用する」と発表して以降、社外からもたくさんの反響をいただきました。その中で一番多く寄せられたのは、「うちの会社も導入したい(by経営者)」「うちの会社にも導入してほしい(by社員)」という声。

安立 「去年より進化した制度にするなら、地域拡大ともうひとつは横展開かな、と。幸い『やりたい』と言ってくれる会社さんは多くて、その中でも実現可能でアクションに移せた株式会社プラハさんとコラボすることになりました。コラボすることで、対外的にこの制度の認知度を上げ、共感してくれる人を増やせたらいいなと思っています」

横展開することにした理由はほかにもあります。それは「宮古島により貢献できる」と思ったから。もともと誘致事業を進めている宮古島は、私たちが行くこと自体に大きなメリットを感じてくださっています。だからこそ規模を拡大し、より貢献したいと考えました。

また、これからリゾートワーク制度の実施拠点を増やすことで、各地を訪れる人数が分散されてしまいます。そうなったときに、人数が減ると受け入れてくれる宮古島や東川町のメリットが減ってしまう。それは防ぎたいという強い想いがあります。

現在、リゾートワーク制度の利用が決まった社員の授業のレビューを、オンラインで2社をつないで協力して行っています。この時点で2社間のコミュニケーションが生まれていますが、このコミュニケーションが双方の社員にどのようないい影響を与えるかは計り知れません。

地域も社員もメリットを感じられる関係性をつくりたい

社員のエンゲージメント向上が注目されている昨今、私たちのリゾートワーク制度はそれに寄与していると言えますが、目的はそれだけではありません。日ごろ自分が働いている環境を見直す機会をつくり、「会社の文化」や「働くこと」への理解を深めること。そして、各自が自社のことを発信できるようになることです。

参加した社員は、現地で自社のことを説明したり、体験したことを授業に反映することで「自分が勤務している会社への理解」が深まります。いわば、社員全員が“広報”になり“エヴァンジェリスト”になるのです。その結果、マネジメントやリーダーシップを学ぶ研修にもなりますし、地域交流を通して、地方ではまだ認知度が高くない私たちのサービスの広報活動も行ってもらえます。

安立 「長期的な目線で見れば、このリゾートワーク制度をきっかけにお客さんも増えると考えています。まず現地の役所や教育関係の人たちに私たちがどういう会社なのか、どういう考え方なのかを知ってもらい、街や周りの人たちに『東川町(あるいは宮古島)の人たちはみんな知っている会社だぞ』と思ってもらえればいいかなって」

その上で、より地域にも社員にも還元して両者がWin-Winになれる関係性を強化したいと考えているのです。そのためには制度をパッケージ化し、誰もが取り入れやすいようにする必要があります。

現状だと、現地の学校はどんな人がどんな授業をやるのかわからない状態です。「こういう授業をしてほしい」という要望があるのにも関わらず、実際に行われた授業はまったく違うものだったという状況も今後ありえるでしょう。

学校側のニーズを拾った上でマッチングできれば、両者のメリットが大きくなるはず。たとえば、地域創生を考えている地域の教育委員会がパッケージを使用してどこかの企業にお願いできる、というような形もいいかもしれません。

「リモートワーク」という言葉の認知は上がっていても、実際の利用者はまだまだ少ない今の時代ですが、これから確実に増えていきます。そうなったとき、リゾートワーク制度という選択肢があれば、あらゆる企業や地域が活性化するはず。私たちはその第一人者として、制度の質をより高めていきたいと考えています。