「自分たちにこそ必要だった」──社内から向き合った働き方改革

▲共創空間 Open Innovation Biotope “Sea”

飛行機や自動車の製造を経て、戦後はオフィス家具や店舗運営用品など、数多くの企業を支えてきた株式会社オカムラ(以下、オカムラ)。長期間の使用に耐える、安全で確かな商品がブランドの信頼を支えてきました。

2018年には社名を「岡村製作所」から「株式会社オカムラ」へ変更し、2019年現在はオカムラらしい働き方改革、「WORK MILL」の活動を通じて、新しい“働き方”を発信しています。

「WORK MILL」は、「共創空間」「メディア」「社外共創」という3つの対外的な活動と、「社内改革」「研究活動」の2つを加えた5つの活動を展開。ビジネス誌の発刊、ウェブマガジン発行、多様なステークホルダーとの活動を行う共創空間の企画運営など、活動の展開拡大にともない、社内外さまざまな部署と推進し、社内部門の横展開のつながりを促進しています。また、この活動はオカムラが考える働き方改革を社内外へ広報する役割も担っています。

オカムラでは、40年ほど前からすでに「オフィス研究所」という部署を持ち、働く環境やオフィス設計、デザインなどハード面についての研究を重ねていました。研究の成果や働き方についての知見が蓄積されている一方で、社内やお客様に対して、時代とともに変化する働き方についての発信や改革は十分できているとは言えない状況でした。また、社内にはまだ、古くからの働き方に疑問を持つ人が少なかったのです。

「WORK MILL」の活動の中で、他企業との共創プロジェクトやコラボレーションをすることで、新しい“働き方”のかたちを推進している、フューチャーワークスタイル戦略部デザインストラテジストの庵原悠は、こう語ります。

庵原 「新時代のオフィスを提案するべき会社であるにもかかわらず、オカムラ自体が旧態依然とした働き方をしてしまっていたんですよね。

たとえばいつでもどこでも働ける時代になってきているのに、固定席でじっと作業することが当たり前になっていたり……。

お客様からは固定席を持たないフリーアドレスオフィスや、在宅で仕事をするテレワークなど時代にフィットした働き方についての相談が増えているのに、肝心の社内はそんな状態だったんです。かなり危機感がありました」

また、WORK MILLのメディアにおいて編集長を務めている、ワークプレイストラテジストの山田雄介も振り返ります。

山田 「これまでも研究所では、新しい働き方と働く場所の関係性をまとめた『オフィスはもっと楽しくなる』という書籍を発刊するなど、ハコやモノにフォーカスした活動はしていたんです。
2016年からはそこに、「WORK MILL」というオカムラの働き方改革プロジェクトを通して外部とつながり、常識にとらわれないワークプレイスを創造する会社に変わっていこうという流れが加わりました。体験や共有などの、“コト”に目を向けることを意識したんですよね。

なかなか変われなかった自社の反省も、『変えてみたけどダメだった』という失敗も、『こうしてうまくいきました』という成功も、自分たちでやってみてお客様に提案しようと」

製造業から働き方の提案へ。“モノ”から“コト”への軌跡

▲デザインストラテジスト 庵原悠

2009年には社内でも一部フリーアドレスを導入し、ライブオフィスとしての機能をスタートさせていました。そして、2011年の東日本大震災をきっかけに、お客様からの関心は一気に高まります。

庵原 「東日本大震災を経験して、誰もが働き方というより、生き方を真剣に考えるようになったと思います。事業の持続性を考える上で、まさにテレワークや在宅ワークができる環境が必要だと考える企業も増えましたよね。

同時にオカムラの中からも、『クライアントや時代の意向に沿った企画を、もっとこちらから仕掛けていかないといけないんじゃないか』という声が上がり始めました。 2012年に「 Future Work Studio “Sew ”(そう)」という共創空間を自社オフィスにつくったあたりから少しずつ、活動を広げていったという感じですね」

人と人の“つながり”に注目し、はたらく環境のあり方を考えた書籍『はたらく場所が人をつなぐ』の構想に基づき、東京・紀尾井町にオープンした「Sew」。共創の場づくりとして、イベントやワークショップなど様々な企画を立ち上げてきました。

その空間には当初、オカムラの社名も家具も一切出しませんでした。

庵原 「当時のオカムラにはまだ、『製造業』というイメージが強かったんです。でも Sewに関しては、働くための “モノ ”ではなく、働く “コト ”にフォーカスしたかった。だからオカムラの名前も製品も使いませんでしたね。私たちはものづくりに関して高い評価をいただいている会社ではあるのですが、働く環境についての研究にも、実直に向き合ってきました。
だから自分たちの研究の成果を知識や情報として、伝えなければいけないという想いはあったんです。きっと必要としてもらえるだろうという自信もありました。結果、Sewでは『こういう情報が知りたかったんだ』と言ってくださる方が増えてきて。私たち自身も学びを増やし、リアルな場での感覚を鍛えられたと感じています」

社外から社内を変える。WORK MILL認知を目指して

▲ワークプレイスストラテジスト WORK MILL編集長 山田雄介

Sewでの成功や機関紙での情報発信など、さまざまなスモールスタートを積み重ねてきたオカムラ。

「WORK MILL」はオフィス研究所で蓄積した知見をはじめとした、社内のさまざまな活動ををまとめることを目的として、2016年11月に発足しました。「働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変える」をコンセプトに、“当たり前”を捨てた働き方やワークプレイスをデザインするWORK MILL。

プロジェクトにはオフィス研究所のスタッフだけでなく、広報や製品開発、現場のデザイナーや営業のメンバーも参画。部門を超えたスタッフが集まりました。

内部の若手を中心に、各部門の意見を集約することは意識していたと話す山田。一方で社内での認知は最終的に、外部から深められたとふり返ります。

山田 「創業以来、ものづくりに特化してきた会社です。社内では私たちの活動がビジネスとして成り立つのか?という意見もありましたし、本業とはかけ離れたことをしていたので、最初のころは『何をやっているプロジェクトなんだ?』と理解も十分ではなくて……。社内に関しては、イベントにスタッフとして参加してもらうことや、ワークショップを通じて、少しずつ理解してもらえるように働きかけてはいました。
けれど歴史が長く、土台のしっかりした会社だからこそ、内部から変えるのは難しいだろうという予感はあったんです。そのため私たちは早い段階から、共創空間での活動を通じて外部とつながることを強く意識していました。お客様やパートナー会社から働き方改革について言及されるようになってきたことで、社内の気づきや意識改革は加速されたように感じています」

実際に共創空間を体験したお客様からは、「なぜオカムラはWORK MILLを前に出さないのか」との声も上がり始めます。内閣府が打ち出した働き方改革も追い風になり、トップの意識が強くなったこと、また現場ではすでに必要性が認識されていたことで、WORK MILLは一気に流れを強めていきました。

そして、そんな社会の流れと社内の意識がひとつになったタイミングと時を同じくして、「岡村製作所」は「株式会社オカムラ」として、新たなスタートを切ったのです。

発信とリアルな交流で、WORK MILLの活動を促進

▲WORK MILLのWEB、ペーパーマガジン『WORK MILL with Forbes JAPAN』、共創空間 Sea

WORK MILL発足にあたり情報発信を重視したチームはまず、ウェブマガジンを立ち上げました。

山田 「まずは既存の価値観にとらわれない新しい働き方や、ビジネスにフォーカスしたオリジナルのインタビュー記事の発信。そして自分たちの研究による知識や経験も発信し、活用してもらうことで世の中の働き方を良くするアクションが起こるという想いで、ウェブマガジンをつくりました。
その後、ウェブだけでなくリアルな媒体である紙でも届けようという話が出て、 Forbes JAPAN編集部に声を掛け、コラボレーションすることになったんです。年に 2回、特集テーマを定め、国内にとどまらずヨーロッパやアジアなど海外の働き方を紹介するビジネス雑誌『WORK MILL with Forbes JAPAN』を発行しています」

またメディアによる一方通行の情報発信だけでなく、情報を受けとった人とのふれあいの場を持ちたいとの想いから、共創空間を意見交換や議論の場として活用し、WORK MILLを浸透させています。

“モノ”から“コト”へと方向を定め、WORK MILLを進めてきた結果、オカムラは2019年に意識改革やマネージメントの部門でグッドデザイン賞を受賞。

山田 「ソリューションカンパニーとしての活動に対して、ひとつ評価を得られたのではないかと思っています」
庵原 「 WORK MILLを通して出会った人たちからの『オカムラっぽくないよね』という言葉をいい意味でとらえ、これからも社会に対して新しい価値を提供していきたいですね」

WORK MILLを通して、興味や関心を軸に社内外に仲間が増えていくことに、活動のおもしろさと意義を感じています。2018年には、オカムラ自身の働き方改革を進める社内プロジェクト“WiL-BE(ウィル・ビー)”が発足。全社をあげた、さらなる本気の社内改革がはじまったところ。

これからもWORK MILLは、新しい“働き方”にチャレンジしていくこと。今後は“ワーク”と“バケーション”を組み合わせた、「ワーケーション」にも目を向けていきたいといったさらなる展望を描きながら、オカムラの働き方改革は、次なる未来へと進んで行きます。