「地域活性の未来はコンテンツがつくる」温泉むすめが始動1年弱で得た手応えと今後

2017年3月に本格稼働をはじめた、温泉をモチーフとした地域活性クロスメディアプロジェクト『温泉むすめ』。キャラクターの声を担当する声優が出演するイベントを全国各地で行ない、すでに7枚の音楽CDと小説をリリース。プロデューサーの橋本竜が「予想以上の盛り上がり」と語る、この1年弱を振り返ります。
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予想外の成長。すべてのはじまりは、ある温泉地からのオファー

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▲2017年12月に行なったライブの様子

「温泉むすめ」プロジェクトが始動したのは、2017年3月15日。それからの1年は、私たちにとって、大きな“飛躍”の年となりました。

有馬温泉の特別観光大使やスカイマークの応援キャラクターへの就任、2017年12月に行なった2ndライブでは、のべ2,000人以上の方が来場。2018年3月に行なう大分県・別府市でのミニライブのチケットも、ファンクラブ限定の先行販売で規定枚数以上の申し込みがきました。

こうした想定外の盛り上がりを見せるようになったきっかけは、神戸市にある「有馬温泉」との出会い。2017年6月、神戸市で行なったイベントの後に有馬温泉観光協会から「何かご一緒できないか」とオファーがあったのです。こうして、有馬温泉特別観光大使に就任したり、名物の「炭酸煎餅」のパッケージに採用されたりと、様々なコラボレーションが実現しました。

橋本 「正直、1年弱でここまで広がるとは思っていませんでした。プロジェクトを立ち上げた時には、2020年の東京オリンピックに合わせたインバウンド需要に向けて、温泉地のある周辺地域や外国人観光客、若い世代をターゲットとする企業とパートナーシップを結びながら、緩やかに盛り上げるつもりでした」

この活躍をけん引したのは、温泉むすめの中心ユニット「SPRiNGS」のメンバーです。SPRiNGSは、キャラクターの声を担当する声優9人をメインキャラクターに据えたユニット。彼女たちの活躍もあり、過去2回開催した(2018年3月現在)単独ライブは、ほぼ満席となりました。

橋本 「地方にもある程度の人を動員できるコンテンツに成長させることができました。それは、声優の力が非常に大きいです。
SPRiNGSのメインキャラクターを選ぶオーディションでは、歌唱や演技審査に加えて、一人ひとりと面談をしました。みなさん本当に真面目で勤勉で、ストイック。地方出身の方が多く、地元を盛り上げたいという気持ちが強いんですよね。温泉むすめの掲げる『地方を元気に笑顔に』というコンセプトに対して真剣に取り組んでくれています。
そういった地方活性への願いは、我々のような世代だけでなく、20代の若い方々も持っているんだなと、彼女たちの熱意と想いに改めて気付かされました」

モチベーションの高い声優とハイクオリティなイラストレーターが作り上げる

さらに橋本は、彼女たちの“本気の想い”を受け止められる環境づくりに尽力してきました。

橋本 「たとえば、2017年12月に開催した2ndライブのためのダンスレッスンは、彼女たちの『もっともっと練習をして、いいパフォーマンスをファンに見せたい』というリクエストを受けて、元々予定していたレッスン回数をほぼ倍に増やしました。
それ以外でも彼女たちから要望があれば運営としてできるだけ応える。使命感と環境、その両方があるからこそ頑張ってもらえているのかもしれません」

また、週に2キャラのペースで発表される、新たな温泉むすめのイラストの反応も上々です。その理由は、イラストレーターの“力”であると橋本は考えています。

『温泉むすめ』は先行する擬人化作品と異なり、全キャラクターに異なるイラストレーターを起用。イラストレーターの採用も、橋本自身が担っています。イラストレーターが紹介されている図鑑やイラストの投稿サイト、SNSを日々精査し、イベントや展示会にも足繁く通って、「この人なら間違いない」というイラストレーターに声をかけているのです。

橋本 「イラストを発注する際に『温泉むすめを描けてうれしいです』と言ってくださるイラストレーターが多く、ありがたい限りです。
『温泉むすめ』のキャラクターを発注する時って、モチーフとなる温泉地と身長、体重、3サイズ、性格やパーソナリティー、全体的なイメージくらいしか指定がなくて、とても自由度が高いんです。しかも、ひとり1体のみを描くから手を抜けない。さらに2018年3月現在で、すでに90体以上ものキャラクターが公開されているため、他のイラストレーターが描いたイラストと差別化しながらも、キャラクターに個性を持たせるという高いレベルが求められます。
それでも各イラストレーターのみなさんが担当する温泉地などについてしっかり調べてくださって、どのキャラクターも可愛らしさとご当地らしさが随所に盛り込まれているんです」

こうした、数々のこだわりを持つ温泉むすめ。ファンや温泉地の関係者のみならず、業界関係者や制作サイドにも認知が広がっています。

その運営をする中で、橋本はプロジェクトの性質に“変化”を感じていました。

たとえ赤字でも地方には行く。今後はさらに足回りのいい対応も

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▲鹿児島県で開かれたアニソン系ライブイベントにも出演。地方からのオファーも増えている

それは、2018年1月。有馬温泉の新年会での出来事でした。

橋本「新年会の会場にいらっしゃった、国会議員や県議会議員、市議会議員などの政治家の方たちに、『温泉むすめ』のお話をしたところ『存じ上げております。期待しています!』とおっしゃっていただけました。実際に有馬温泉では色々な企業が集まり、『温泉むすめ』を活用するプロジェクトが進行中と伺っています。
そうした話を聞くと、プロジェクトに社会性が出てきたと感じます。その期待に応えられるように、今後も有馬温泉のような蜜月の関係を他の温泉地とも築いて、たとえ興行的に厳しいとしても色々な地方に赴き、『温泉むすめ』を知らないファンや自治体、地元の企業に知ってもらおうと考えています」

そうした姿勢が実を結び、地方からイベント出演の引き合いも増えてきました。2018年1月には鹿児島県の鹿屋市教育委員会からのオファーに応え、アニソン系ライブイベント「りなメロ♪」への出演を果たしました。橋本は「りなメロ♪」への出演は、ひとつの“挑戦”だったと振り返ります。

橋本「これまでは地方イベントにも、メインユニットである『SPRiNGS」の9人がそろって行くことが多かったんですが、メンバーが忙しくなってきて、スケジュールを合わせるのが難しい状況でした。今後の展開を鑑みて『りなメロ♪』では鹿児島の温泉地のキャラクターを担当する声優をセンターに据え、そこに近隣の県のキャラクターの声を担当するふたりを加えた3人編成で臨んだんです。
メインユニット以外の声優が、たった1回のイベントのために、数週間という短期間でダンスと歌を覚えるという、未知への挑戦でした。結果、パフォーマンスはすごく好評でしたし、多くの地元の方がCDを買ってくださったんです』

選抜メンバー以外でも、パフォーマンスのクオリティが高ければ、受け入れてもらえるーー橋本はそんな自信を手にすることができました。

2018年3月現在、温泉むすめは90体以上。今後もチャンスがあれば、その地方のキャラクターを担当する声優をセンターにして、地域の盛り上げに協力していきたいと考えています。

ゲームや動画番組も携え、さらなる送客で「地方を元気に」

▲温泉地紹介ロケ企画「温泉むすめの旅」PV

おもに声優によるライブやイベントによって、全国の温泉地を盛り上げようとしている『温泉むすめ』ですが、2018年夏頃にはその手段のひとつとして、iOS/Android用のスマホゲーム『温泉むすめ ゆのはなこれくしょん』が加わります。

さらに、ゲームに先駆け、動画番組『温泉むすめの旅』や『温泉むすめ 写真部』の活動もスタートします。これは共に『温泉むすめ』に出演する声優が温泉地を紹介するロケ企画です。

橋本 「『温泉むすめの旅』の第1回は那須塩原に行ってきました。『温泉むすめ 写真部』も声優がカメラを片手に温泉地にロケに行きます。
立ち上げのきっかけは、2017年に有馬温泉を声優たちと巡った様子をレポートした記事です。この記事を公開したところ、同じように聖地巡礼してくださっているファンの方が結構いらっしゃいました。そのようなファンの皆さんの自主的な活動をSNSで拝見したことで、旅のきっかけだけでなく、観光地を巡る参考になるような動画や写真を提供することで、見た人がどんどん地方や温泉地に行けるような流れをつくりたいと考えました」

ゲームや動画番組、部活動という新たな媒体やアプローチを得て、『温泉むすめ』はさらに多くの人々の足を温泉地に向かわせようとしています。プロジェクトの規模は大きくなる一方ですが、原点はあくまで「地方を元気にする」という橋本の強い想い。2018年も、地方でのイベントを止めることはありません。

橋本 「ありがたいことに色々なオファーを頂いていて、2018年は様々な地方に行く予定です。中には意外な取り組みもあり、立ち上げ前に夢として話していた世界進出も発展次第では叶うかもしれません。ただ、まだまだ地固めのフェーズですし、今後も声優や地方の方々の想いを受け止めて進めていきます
2018年はSPRiNGSメンバー9人が担当する温泉地で、イベントを開催するのが目標。もちろん他の温泉地も含めて、温泉地の関係者や地元企業や地方自治体の方からもお気軽にご連絡をいただけるとうれしいです」

2年目のさらなる飛躍を目指す、温泉むすめの地域活性プロジェクト。地方の未来はコンテンツがつくる――時代かもしれません。

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