「温泉むすめ」の裏側へ――衣装デザインを手がける2人が抱く今後の野望

「温泉むすめ」は本格始動から1年余り。温泉地の魅力をアピールするキャスト陣をより輝かせていたのは、その世界観を体現した衣装でした。そこで今回は衣装のデザインをし、スタイリング担当として地方公演にも帯同してきたオサレカンパニーのあまめろさん、ハルティーナ☆☆☆さんの2人に、彼女たちだからこそ知る裏側を語ってもらいました。
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あらゆる意味で「360°かわいい」衣装を目指す

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▲左からあまめろさん、ハルティーナ☆☆☆さん

オサレカンパニーの衣装づくりのコンセプトは、「360°かわいい」。この、「360°かわいい」衣装を目指すにあたって2人には大きなこだわりがあります。

あまめろさん 「 『360°かわいい』には、前から見た時だけでなく、横や後ろ、上や下などどこから見ても同じようにかわいく見える衣装をつくるという意味が込められているんです。あとはスカートの端や襟の一部といった、細部まで見てもかわいらしさを感じてもらえるようこだわっています」
ハルティーナ☆☆☆さん 「その一方で、ドームなどの大きい会場ではこだわるポイントが変わってきます。どういう場面で必要とされるか、というのは常に考えていますね」

オサレカンパニーの母体は、ステージとの距離が近い劇場から東京ドームまで成長していったAKB48グループのスタッフです。だからこそ、規模の大きさにとらわれずみんなに共感してもらえるデザインを目指していけます。

あまめろさん 「近くから見ても、遠くから見ても同じようにかわいいと思ってもらえるものが理想です。また見た目だけでなく、考えかたという意味でも『360°かわいい』を志していて、見る人によって好みは当然ありますが、できるだけみんなに受け入れてもらえる、共感してもらえるデザインを目指しています」

「360°かわいい」衣装を目指すにあたって、デザイン以外にも通気性や脱ぎやすさもかわいさを構成する大きな要素なのだと2人は語ります。

あまめろさん 「着られるキャストさんや演者のパフォーマンスの邪魔にならないよう、できるだけストレスがかからない形、着心地を心がけています」
ハルティーナ☆☆☆さん 「肩の切り替えや飾りが付いている場所とかでも、着ている方に負荷のかからない身体のツボみたいな箇所があるんですが、そういった部分を熟知したうえで衣装にアレンジを加えることで、見た目は派手でも着心地がいいものにしています」
あまめろさん 「ファンのみなさんが想像されるより、衣装ってずっと軽くて簡単な構造をしているんですよ。たとえば『純情-SAKURA-』の衣装は一見大きく見えますけど今あるSPRiNGS(『温泉むすめ』の中心ユニット)の4種類の衣装で一番軽いくらいですし、上はマジックテープを外し、チャックを下ろすだけで脱げるようになっています」
ハルティーナ☆☆☆さん 「キャストさんにも『着るのが楽でかわいい』と思ってもらえていたらいいですね」
あまめろさん 「特に『温泉むすめ』はライブ中心で活動すると伺っていたので、レッスン着と同じくらいの感覚で着られるように気を付けています」

あらゆる意味での「かわいい」を追求し、これまで「けものフレンズ」やアイドルの「たこやきレインボー」の衣装など、数多くの衣装をオサレカンパニーでは手がけてきました。

その中で依頼された、「温泉むすめ」の衣装制作。2人は、これまでにない「アニメとイベント両方の衣装を手がけることができる」という点に強く惹かれたと振り返ります。

あまめろさん 「楽しそうな印象を受けましたし、アニメ系の衣装にも興味があったのでふたつ返事で『やります』と言いました。アイドルファンの方とアニメファンの方の両方を満足させたり、キャストさんも演じるキャラクターと自身のキャラクターと……二次元と三次元の両方を行き来したりする中で、イメージを固めるのが大変な一方ですごく面白いですね」
ハルティーナ☆☆☆さん 「通常の衣装制作だったらアーティスト本人を輝かせることに専念するのがメインですが、二次元と三次元を行き来している『温泉むすめ』というプロジェクトはもっと多くの人の夢や思いを背負っている気がして。そういった精神的なことを考えるのは好きなので『やりがいがありそうだね』と話したのを覚えています。
実際に、最初にPVで自分たちがデザインした衣装をキャラクターが着て動いているのを観た時は感動しました」
あまめろさん 「ずっと三次元の衣装を手がけてきたので、デザインした衣装を二次元に落とし込んでいただくなんて初めてで。うれしかったですね」

アイドル衣装は全然違う案だった?

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▲最初に考案されたアイドル衣装のデザイン画

オサレカンパニーは、「温泉むすめ」の中心ユニット「SPRiNGS」のアイドル衣装を手がけています。SPRiNGSがこれまで着てきた衣装は4種類ですが、そこにはすべて違ったこだわりや制作秘話があったのです。

最初に手がけたのはSPRiNGSメンバー初イベントで披露された「袴衣装」でした。

あまめろさん 「これは『温泉むすめ』の衣装だ、と言わなくても、それが頭に浮かんでくるような衣装、プロジェクトにとっての制服をつくるというコンセプトでした」
ハルティーナ☆☆☆さん 「具体的には『温泉むすめ』のロゴをイメージしていて、袴の色はそこから来ています。そのうえで華やかさと清楚さのバランスを取って。最初はもう少しシンプルな案もありましたけどね」
あまめろさん 「あまり特徴がないと新しいコンテンツで着る意味はないし、逆に突飛過ぎても長くは使えないですしね。あとは和服をイメージしているので女学生風に茶色のブーツを履かせ、ハイカラなイメージを出したり、着物には珍しいレースを襟に付けて衣装感を出したりです」
ハルティーナ☆☆☆さん 「袴の下部にあるラインなんかも、制服だからこその要素ですね」

そんな袴衣装と同じタイミングで披露されたのがアイドル衣装です。衣装制作の裏側からは2人の細部に対する衣装への強いこだわりと完成までの長い道のりが見えてきました。

あまめろさん 「最初のPVに出す関係で、実は制作はこちらが先でした。『温泉むすめ』という二次元と連動するもので、しかもこれからはじまるプロジェクトということでいろいろと考え過ぎて一番苦労したかもしれません。普段はそんなことはないのですが〆切ギリギリまで不安で、最後の晩にもう1案描いて。結局その案が今の衣装になりました」
ハルティーナ☆☆☆さん 「産みの苦しみがありました。和風のイメージとアイドル衣装の要素をどう融合させるか……たとえばスカートの白地の素材は温泉の泡と湯気のイメージだったり」
あまめろさん 「トップスの銀のボタンは光が当たった水面の感じですね。全体的に水滴みたいなイメージを出そうと思い、トップスやスカートの水玉もそうだし髪飾りもそう」
ハルティーナ☆☆☆さん 「スカートの黄色いパーツに入った水色のラインも、普通のアイドル衣装ならここまで穏やかな色になっていなかったと思います。『温泉むすめ』だからこその柔らかい優しい色使いです」
あまめろさん 「目立たない部分ですけど、スカートの横にあるリボンは組紐的な要素として下まで紐を垂らして。目立たないけど、ステージで回ると一緒に動いて余韻が残ります……と、完成した今だからこそいろいろと喋れますけど、そういった要素をどう取り入れるか悩みまくりました(笑)」

その後、1stライブで披露された『純情-SAKURA-』の衣装。3作目となった衣装は今までにない挑戦の連続でした。

あまめろさん 「和のイメージでつくる3つめの衣装だったので、テイストをガラッと変えようと“和ロック”風にしました。ちょっと挑戦というか、見慣れない雰囲気だと思うので、お客さんはびっくりしたかもしれません」
ハルティーナ☆☆☆さん 「キャストさんには『かっこいい系を着てみたかった』『好き』など言ってもらえて好評でした。この頃になると『温泉むすめ』の勘所がわかり、曲を聴いても“ハードながらかわいい”というイメージが湧きやすかったです。この衣装から、同じ衣装でも3パターンつくりはじめたんですよ」
あまめろさん 「パターンをつくることでキャストさんが演じるキャラクター性も盛り込んだ面白さを出せたらな、と。でも、たとえばセクシーな登別だからと言って、ずっとセクシー路線のままだとお客さんの想像を超えられないでしょうし、これからどんな工夫をしていくか楽しみにしてほしいです」

最後に紹介するのが、2ndライブで披露された白い新衣装です。この衣装は“新しさ”を意識したものになりました。

ハルティーナ☆☆☆さん 「これはSPRiNGSが『Hop Step Jump!』でメジャーデビューして次のステージに飛躍する、『温泉むすめ』にとっての新しい制服というイメージと共にラフを頂きました。ネクタイとか制服っぽいですよね。あとは『純情-SAKURA-』で赤を経験したからこそのギャップやキャラクター性を盛り込みつつ、フレッシュな感じに落とし込みました」
あまめろさん 「個人的には、襟にキャラクターの缶バッジが付いているのが感慨深くって。そんな衣装は初めてだし、衣装を着るキャストさんとキャラクターの要素がミックスしていて『温泉むすめ』ならではですよね。これからこのプロジェクトがどうなっていくのか期待が高まりました」
ハルティーナ☆☆☆さん 「これも3パターンつくりましたね」
あまめろさん 「デニムの濃淡だとかスカートの上部の長さだとか、少しずつスタイリングを変えて。オーソドックスな衣装に見えますけど、細かなところで違いが楽しめる衣装です」

これまでと違った“温泉むすめらしさ”を届けていく

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▲女性ファン向けにつくられたぽか女将Tシャツ

2018年5月の3rdライブにはSPRiNGS以外のグループも多数登場しました。その中で、先陣を切って行なわれた3月の大分のライブでは、SPRiNGSのライバル「AKATSUKI」の衣装を手がけました。

あまめろさん 「初めての別ユニットということで、パッと見でもSPRiNGSとは違うことが伝わらなきゃいけないというのを念頭に置きました」
ハルティーナ☆☆☆さん 「AKATSUKIは最強のライバルグループなので、神っぽいスクエア(四角形)をモチーフに使ったり、鶴をイメージしたり。同じ和風の世界観でも、SPRiNGSとは違う方向の強くて雅な雰囲気です」
あまめろさん 「これまでの『温泉むすめ』は親しみやすさがあったけど、AKATSUKIのイメージは異世界感がある和風ですね。でも『最強のライバルグループって何だろう』とか考えさせてくれるのは『温泉むすめ』だけですよ。そんなオーダー、生身のアイドルだと絶対ないですし(笑)」

オサレカンパニーでは「温泉むすめ」アイドル衣装だけにとどまらず、Tシャツのデザインも手がけています。

少しさかのぼりますが、2017年12月に行なわれた「温泉むすめ ぽか女将限定!表参道でスイーツ女子会だってYO!」用に作成されたのが、ぽか女将Tシャツでした。

あまめろさん 「『温泉むすめ』の現場は男性がほとんどで、グッズも男性向けのものが多い中、1割くらいの女性ファンの方も来てくださってるのをずっと見ていました。
そんな中、女性限定のイベントがあるということで、そういったぽか女将(女性ファン)が胸を張って着られるTシャツをつくろうと思いました。それで逆にぽか旦那が着られないものを考えてセーラー服のデザインにし、ファンの方にとって一番イメージの強そうな袴の色を使いました」

ぽか女将Tシャツは多くの女性に着てもらい、好評でした。その結果、いずれはぽか旦那も販売してみてはという声も多く上がっています。

「温泉むすめ」の現場にいるから見えるメンバーの裏側、今後のビジョン

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▲今回紹介した4つの衣装。左から袴衣装、アイドル衣装、『純情-SAKURA-』の衣装(赤黒衣装)、白衣装

SPRiNGSの衣装を手がける中で、多くの地方公演に帯同している2人。

地方公演を通じて2人はSPRiNGSのメンバーの成長を感じてきました。

あまめろさん 「キャストさん全員、本当に着替えが早くなりましたね。2017年6月の神戸イベントではもう泣きベソをかきそうなレベルで焦っていて、『慣れてないんです』と言うキャストさんに対して『大丈夫です、私たちが手伝いますので』なんてやり取りをして落ち着かせていたんです。ですが最近はステージ袖に戻ったら『次はこの衣装ですね、わかりました』『じゃあこれを先に着ておいたらいいですね』と率先して動かれていて、とても頼もしいですね」

また、SPRiNGSのメンバーを近くで見ているからこそ、意外な一面を知ることができると2人は語ります。

ハルティーナ☆☆☆さん 「高橋花林さんはステージではフワフワしている印象ですが、着替えのときは『次はこれだよ』とかほかの子に教えてあげていたり」
あまめろさん 「隣の隣の子くらいまで見えていて。『桑ちゃん、そこは先にスカートを履いたほうがいいよ』『そっかー』みたいなやり取りに心が和みます」
あまめろさん 「高田憂希さんはステージではすごく明るくカラッとしているのに、実は緊張するタイプなんですよ。すごく静かで緊張しているのがわかるので、『大丈夫だよ』って声をかけたりしています。何回やってもいい意味で初々しく、かわいいですね」
ハルティーナ☆☆☆さん 「逆に長江里加さんは緊張するとすごく言葉数が多くなって、もう喋るスピードが倍速になるくらい(笑)。ハートが強いのは桑原由気さんで、いつでも平常心です。SPRiNGSでは“お姉さん”的な存在なんでしょうね」

そんな舞台裏を知る2人は、「温泉むすめ」に取り組むうえで、今後はさらなる挑戦をしたいと語ります。

あまめろさん 「これまでは和風とか温泉とか、そういった既存のイメージをベースにしていましたが、それを超えた“『温泉むすめ』らしさ”のある衣装をつくりたいですね。そういったイメージをつくることができたら、また新たな広がりが見えてきそうです」
ハルティーナ☆☆☆さん 「これまではSPRiNGSがメインでしたけど、彼女たちとは別のグループがたくさんある中で、いろんなイメージをつくっていけたらいいですね」
あまめろさん 「あとは海外の温泉のイメージがある衣装を日本の温泉むすめが着るとか、その逆とかも。そうやって温泉があるところ全部がつながっていくと、いろんな衣装ができて面白そうです」

今後は国内だけでなく、海外を見据えている「温泉むすめ」。2人の挑戦はさらに続いていきます。

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