「ドドーン!」オフィスに和太鼓?! 社内外の“壁”を壊したコミュニケーション改革

倉庫・運輸関連業を手がけ、年間1.6億梱包の国内配送実績を持つ大塚倉庫(2017年現在)。日本国内に物流拠点を持ち、医薬品・食品飲料・日用品では国内最大級の物流量を誇りながらも、拡大する事業所間のコミュニケーション不足が課題に。その状況をいかに改革してきたのか、社長の濵長一彦と総務人事部の下林千恵美の奮闘をご覧ください。
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「個」から「組織」で仕事をするために

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▲社員全員で(前列左から3番目が濵長)
「社内外の全ての“壁”を取り除こう!」

この旗印でスタートした私たちの改革は、2011年からはじまりました。

大塚倉庫は大塚製薬工場の運輸倉庫部門としてスタートし、2017年現在は大塚製薬だけでなく、他社の物流も担う「共通プラットフォーム」で効率良い運用を提供しています。ですが、私たちの会社において、「コミュニケーション」の効率はあまり良いとはいえなかったのです。

本社機能が東京と大阪に分かれ、役員は常に行き来をする毎日。部署ごとに部屋が分かれ、廊下ですれ違っても社員同士の名前がわからない。どこかの部署で問題があっても、それさえ知らずにフォローに回れない……。

そこで、社員が個々で仕事を進め、淡々とこなすことが求められていた環境を、2011年6月から代表取締役社長に大塚太郎(現在は代表取締役会長)が就いたのをきっかけに、改革していくことに決めました。

目指したのは、今までの仕事のやり方とは正反対である「組織で解決」する仕組みづくり。そして「仕事も遊びも一生懸命」をモットーにすることです。

社内のコミュニケーション不足、社外のドライバー不足にどう応えるか

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▲オフィスに置かれた太鼓
まずは社外、社内を見渡して、課題を調べました。

社外は、大塚倉庫のみならず業界全体の問題でもありましたが、物流量の増加や労働環境の著しい変化によって、配送ドライバーの不足が深刻化していました。

大塚倉庫は自社でトラックを持っていない業態をとっているため、「ドライバーから選ばれる荷主」にならなければ、事業が成り立たない恐れもありました。荷物を取り巻く方々やステークホルダーに対して、「大塚倉庫としてできることは何か」を常に考え、提供しなくてはなりません。

では、「提供しなくては……」という大塚倉庫の社内を見ると、社員間のコミュニケーションが大幅に不足している状態でした。

「仕組みを考える」本社と、「実際に荷物を運ぶ」支社に機能が分かれ、部署単位でも担当者以外はわからない業務があったり、他部署の誰が何の仕事をしているかがわからなかったり。社員の視野がみんな部署内にとどまっていたのです。

下林 「2011年からの改革では、私は総務人事部として主に社内に対しての働きかけに携わりました。各ステージごとの導入時には、社内外から必ずと言っていいほど不平不満の声が上がりました。
それでもひとつずつ壁を壊し、課題を解決していくことにより、社員一人ひとりが働きやすい環境へ、そして社外からも感謝される大きな成果に繋がりました。ただ、改革をはじめた当初は、社長であった大塚の話していることの全てはわかりませんでした。
だって、オフィスフロアの中心に大太鼓を設置すると言うのですから(笑)」

3つの「壁」を壊すプロジェクトを推進

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▲緊急時、社員が法被を着る姿
大塚倉庫のコミュニケーション改革がはじまりました。

2011年に「本社の壁」を壊すことから取り掛かったプロジェクトでは、本社機能を東京に一本化すると共に、オフィスでは部署の壁を“物理的に”取っ払ってしまい、全部署が入る400坪の大部屋へリニューアル。

さらに、役員も最初は首をかしげたのが、大塚の発案で盛り込まれたフロアの中心にある和太鼓でした。

濵長 「太鼓で何を変えようとしているのか、各自は何も知らなかった。でもやりながら、そういうことか!と(笑)。みんなに発破をかけるときにもドン!と叩き、新規営業の獲得や、子どもが生まれた社員がいればドドーン!と全員で喜びを分かち合う。そんなふうに祭りがはじまる知らせとして繰り返すうちに、社員にも太鼓を鳴らす意図が次第に広まっていったと思います。
喜ぶときは喜び、反省すべきことは反省し、みんなで共有する空気ができていったんです。今でも太鼓を叩くと全員集合しますし、社外の方が来られたときには“おもてなし”として叩く、コミュニケーションツールに活用しています」

また、部署に問題が起きたときは、これまたお祭りのように、その部署の社員が赤い法被を着るようにも変えました。当人たちにとっても気が引き締まるだけでなく、目に見える形でまわりに緊急度を告げることで、他の部署も状況を察知でき、応援に駆け付けやすくなりました。

下林 「たとえば、ある部門でトラブルがあっても、そこと連携する部署でなければ、そもそもマズいことだと感知できません。でも、たとえトラブルの内容はわからなくても、雑用をするとか、飲み物を配るとか、いろんな助け合いはできる。
法被を着ることで、自分に何ができるのかを考えながら、みんなで助け合えるようになっていきました」

2014年からは「距離の壁」を壊しました。

全国26営業所に大型モニターと、ネットで常時つなぐライブTV会議システム「Office One」を導入。まるで「全事業所がひとつの部屋」になって働く環境になりました。また、そのシステムを活用して、社長と社員10名ほどでの「テレランチ」を年に100回実施しています。

濵長 「テレランチでは、ふだん話しにくい営業所をメインにつないで、雑談をしながら会社への意見交換を行っています。たとえば、本社へ意見した改善案が進んでいないようなら、その場で本社の担当者を呼んで説明してもらうことだってあります。北海道から沖縄まで事業所があり、400名の社員がいますが、自分たちの考え方や行動の仕方はひとつなんだという思いから、Office Oneと名付けているんです」

さらに、2016年からは「会社の壁」を超えることにもチャレンジ。

走行中の車両をトラッキングできるシステム「ID運輸」を構築することで、荷主が配送状況を把握できるようにし、弊社への問い合わせを激減させました。また、弊社で荷物を受け取るドライバーが、荷受け時間をWebから予約できるシステムを導入することで、待機時間をなくす仕組みも走らせています。

濵長 「会社の方針としては、リレーションシップと話しています。リオ五輪で陸上の男子400mリレーで、日本が“バトンのつなぎ方”で銀メダルを得たように、荷主と運送会社の間にいる大塚倉庫がより良いリレーをすることで問題を解決しようと」

双方のシステムを利用してもらうべく、大塚倉庫はドライバーに専用アプリが入ったスマートフォンを付与し、利用メリットを説くといった地道な活動も続けました。デモを体感してもらうべく、早朝の3時に行ったこともあります。結果として荷受けの待機時間が減り、ドライバーは家族との時間を増やすことにもつながるなど、効率化だけではない成果も出せています。

実践から課題を見つけ、さらなるコミュニケーション改革を

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▲ランニングの部活、“濵ラン部”

実績値としても「改革」の効果が出ています。2011年から約6年間で売上は40%上昇、物量は32%増えましたが、有給取得率は2013年に比べると29%上昇しています。ドライバーの平均待機時間も55%減となる1.2時間の減少です。

また、「改革」の波及効果は数値だけではありませんでした。

下林 「コミュニケーション改革しようと思ったときには想像もしていなかったんですが、今では社員もプライベートの時間が増え、交流の機会も増しているようです。たとえば、社内の部活動ができてきていて、2週間に1回ぐらい朝に集まって、社長の濵長も参加してマラソンする“濵ラン部”があったり。積極的に声が上がって、社内イベントができるようになりました」
濵長 「イベントは、規模や頻度もだんだん加熱している感じすらありますね(笑)。でも、イベントをやるのは社内コミュニケーションだけでなく、仕事にも大きな効果があります。たとえば、イベントの段取りを決めて仕切った経験は、お客さんとやりとりをするときにも援用できるはず。特に若手社員には学びの場にもなっているんですね。そういう意味では、遊びも仕事も一緒なんです」

そして、大塚倉庫のコミュニケーション改革はまだまだ続きます。

今後もITを活用した仕組みづくりを進めていく予定です。

濵長 「物流事業には災害や天災が大きく関係してきます。その状況では決済権を持つ役員陣がつかまらないのでは話にならない。PCやスマートフォンでテレワークができれば、より現場に即した判断ができる。もちろん、積極的に社員にも利用してもらうつもりです。育児休暇や病児保育をする社員にも使ってもらえば、コミュニケーションの継続性は高まると考えています」

2018年10月末には、東京の晴海にある倉庫をリノベーションした新オフィスが完成予定。大塚倉庫の取り組みを含めたデモンストレーションができるように計画中です。バーチャルに倉庫見学できるように仕組みを導入し、さらに社内と社外のコミュニケーションを密にするきっかけをつくりたいのです。

濵長 「大きな声では言いにくいですが、こういった取り組みの話を聞いて、自社でも実践することを頭の中で想像できる人はたくさんいらっしゃると思います。ただ、そこから行動するかどうかには大きな差がある。私たちも実践して見えてきた部分も多く、常に課題には取り組んできました。だからこそ、大塚倉庫としての課題は“常に実行することだ”と話しています」

大塚倉庫は、これからも“大塚倉庫らしい”改革を実行し続け、社内外で日々進化していけると信じています。

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