関心ゼロ地点から社会を動かす――ヘルスケアコミュニケーションこそPRの真骨頂

マーケティングPRのなかでも、とりわけ高度な専門性と知見が求められるヘルスケアコミュニケーション。オズマピーアールでは、医療・福祉などヘルスケアの各分野に精通した経験豊富なスタッフが専門チームを編成しています。10年以上にわたりヘルスケアPRに携わってきた野村康史郎が、その難しさと面白さを語ります。
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制限の多いヘルスケアPRはつまらない?いや、いちばん楽しい!

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▲ヘルスケアPRのプロフェッショナル 野村康史郎

その情報は、はたして信頼できるのか――?コミュニケーションをなりわいとする者にとっては、基本の“き”ともいえる、情報の信頼性。

ことに医療・ヘルスケアにまつわる情報については、ひとの健康や命に直結する可能性を考えれば、間違った言説や誤解を招くような表現を厳しくチェックするフィルターが必要です。また薬事法や医療法などの法律に抵触しないよう、専門的な知識も求められます。

安易な健康・医療情報が氾濫し、問題視されている昨今。本当に必要な情報を、生活者や患者をはじめとするステークホルダーに有効に届けるためには、確かな知見に裏打ちされた情報構築力を備えていなければなりません。

野村は製薬会社などのヘルスケアコミュニケーションに10年以上従事しているスペシャリスト。医療従事者や患者に向けた疾患啓発活動や、医師と患者のコミュニケーションツール開発などの事例を数多く手がけています。

ひときわ厳しい法規制やセンシティブなテーマ、製薬業界の専門性や複雑さ……ともすれば、がんじがらめに縛られ、コミュニケーションの幅も認められないかのように捉えられがちな、ヘルスケアコミュニケーションの領域。ところが野村はそうは考えていません。

野村「いくら面白いこと、興味を惹くことを考えても、一歩間違えれば法律にも抵触するわけですから、しっかりした土台がないと企画は一気に転覆してしまいます。そういう意味では、縛りが多く自由度が低いと考えるPRパーソンもいるかもしれません。
でも私からすると、ヘルスケアの領域は、PRの真骨頂が体感できる、とても楽しい仕事なんですよ」

コミュニケーション業務を通じて、多くの社会課題に取り組んできた野村は、PRの意義をどのように捉えているのでしょうか。オズマピーアールに入社する前の活動に、その原体験がありました。

PRがひとの意識と行動を変える――PRの力を目の当たりにした経験

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▲PRアワードグランプリ受賞時の1枚(左上3番目が野村)

野村がPRの仕事に携わることになったきっかけは、スポーツにかかわる仕事がしてみたいと、大学在学中に長期インターンに入った国際NGO「スペシャルオリンピックス日本」での経験でした。

当時の代表には、天性ともいえるPRの才能がありました。「知的障害のある人とスポーツ」という、一般には興味をもたれにくいテーマにもかかわらず、ほぼ広告を使わずにPR的な仕掛けを次々に実施。最終的には、2005年にスペシャルオリンピックスの世界大会を日本に初めて誘致・開催したのを契機に、開催前にはほぼゼロだった認知度を約7割まで引き上げるという成果を出したのです。

野村「PRの可能性に、すっかり魅了されました。とはいえ、私が見てきた成果はカリスマ性のある代表の元でこそできたこと。自分も同じことができるようになるには、PRの基礎や具体的な手法をしっかり身につける必要がある――そう考えて、団体のパートナー企業だったオズマピーアールに入社することにしたんです」

そして、野村はヘルスケア領域を中心にコミュニケーションのノウハウを習得し、PRによる啓発活動を次々と実践していくことになります。

野村が所属するチームでは2014年から2016年にかけて3年連続で、日本PR協会の「PRアワード」を受賞(※)するなど、社会的にインパクトのある実績を積み上げてきました。

2016年に実施した「心臓病の子どもたちの“初めての運動会” ~Challenging Heart Day~」は、「生まれつき心臓病を抱えるこどもたちの自立をサポートしたい」、そんな想いを抱えた患者会、医師、そして製薬会社の願いからスタートしたプロジェクトです。

生まれつきの心臓病(CHD)を抱えている子どもは、長く生きるのが難しいとされていましたが、医療の発達により、今では9割以上の患者さんが成人を迎えています。

その半面、小さな頃から体が弱く、ご家族が手厚くケアしてきたために、大人になってから自分で病気の管理ができない、あるいは運動や活動を制限され続けることによって、自分の病気と向き合うことができないという課題が生じているのです。

「Challenging Heart Day」は、CHDの患者さんが“できないこと”の象徴である運動会に参加してもらうことで、患者さんとその親御さんに、自立について考えていただく契機をつくろうという試み。

この企画を通して、患者さんには自分の病気と向き合うことやチャレンジすることの楽しさ、親御さんには、お子さんの将来の見通しや、もっとチャレンジさせてみようという気持ちなど、それぞれ新たな希望の一歩を踏み出していただくことができました。

野村「心臓病と運動会という、もっともかけ離れたイメージのふたつの事象を組み合わせることで興味を喚起し、気づきを与える。それによって患者さんやご家族の意識が変わっていくのを見ることができたんです。PRの意義を心から実感することができた、貴重な経験でした」

※2014年:グランプリ「ピリピリ!ジンジン!チクチク!見えない痛みどう伝える?産学共同プロジェクト『オノマトペラボ』『痛みのオノマトペ』で医療現場におけるコミュニケーション課題を解決」
※2015年:ソーシャル・コミュニケーション部門 優秀賞「日本人三大死因の心臓病に地元食材で美味しく挑む!産官学で地域の健康課題に取り組む『ご当地ハートレシピ』プロジェクト」
※2016年:シルバー「心臓病の子どもたちの“初めての運動会” ~Challenging Heart Day~」

製品力に依存しない、興味ゼロからのスタートゆえに、PRの真価が問われる

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▲野村が担当した「心臓病の子どもたちの“初めての運動会” ~Challenging Heart Day~」

ヘルスケアという、ある意味“まじめな”領域でコミュニケーションを考えると、正しい情報ではあるものの、誰も興味をもたない、面白みのない情報になってしまいがちです。

それをどのように、社会にインパクトを与えるイシューにするか――それがPRパーソンの腕の見せどころ。野村はPR企画の提案の際には、「そこに驚きはあるか?」を常に意識しています。

野村「商業施設やクルマ、食品、消費財などは、生活者がある程度興味をもっているところをさらにどう訴求していくかという話になります。ヘルスケアPRの場合、もともと生活者が興味関心を抱いていないのがスタート地点。そこにいかに興味をひく切り口を提示して、意識や行動の変容を促すかというのが勝負になります。製品力に依存しない、純粋にPRの力が問われる戦いです。
もともと同じものでも、見方や視点を変えることで、それがすごく新鮮にうつる。まさにPRの力が活きる場面であり、それが成功すれば、実際に困っている人の役に立つわけです。これぞ本当のPRの楽しみだと、私は思うんです」

野村がこう考えるようになったのは、オズマピーアール入社直後に担当したクライアントが、PRには切り口やアイデアが大切だという考えをしっかり持っていたからだといいます。

また、クライアントから耳の痛い指摘を受けたことも、PR企画というものをあらためて考えるきっかけにもなりました。

野村「あるとき、クライアントに言われたことがあったんです。『PR会社の企画って、企画じゃないよね、施策だよね』と。確かにひと昔前は、広告会社がメッセージを考えて、PR会社はニュースリリースや記者発表などの実施案を担当するだけという時代もありました。でも、そう言われて、はっとしたんです。
PRパーソンにとっては『つまらない』といわれるのがいちばんショックなことじゃないですか。それ以来、意識するようになりました。その提案には、何か新しい発見はあるのか、感嘆符がつくことはあるのかと。『やっぱりオズマピーアールに頼むと、おもしろいアイデアが出てくるね』と言っていただけるかどうかを、ひとつの基準にしていますね」

売り手、買い手、世の中の三方良し×突破するアイデアがPRの本質

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情報の流通やメディアの変化が大きいこの時代、様々なPRの手法やチャネルが生まれています。しかしPRの原点はあくまでも、企業などの組織と生活者、そしてそれを取り巻く社会の3者の合意形成。その軸をぶらさずにコミュニケーションを達成していくことが、私たちオズマピーアールのコア・コンピタンスです。

たとえば新たなWEBメディアやサービスが興隆する昨今でも、医療情報については、情報ソースをたどるとレガシーメディアである新聞であることが多いものです。これは、専門知識をもつ記者が取材をして執筆することの信頼性は今でも保たれていることの表れ。

PRパーソンは世の流れや最新のテクノロジーを把握しつつも、手法の新規性に踊らされることなく、何が適切な情報経路なのかを見極めて使い分ける必要があります。

そして何より大切なのは、いうまでもなく情報の中身。オズマピーアール創業者の柳勲がことあるごとに口にしていた「PRは、近江商人の三方良しなんだ」という言葉が、野村はPRの本質を表す言葉だと常々思っています。

野村「売り手良し、買い手良し、世の中良し。お客さんも、世の中にとっても、みんなが幸せになる発想がPRの本質。その視点がぶれていたら、私たちは軸のない根無し草になってしまいます。自分はそこが考えられる人間なのかということを、ずっと突き詰めたい。
しかもそれだけでは、情報は広がっていかないんです。社会に働きかけるに足るPRのテーマ設定と、それを増幅させるために、新しい発想の転換や視点の提示を促すコアアイデア、両方が必要です。なおかつ適切な情報流構造を逆算してそこに乗せていく、それがすべてうまくいくことで初めて、社会が動くPRになる。
増幅のためのコアアイデアをどう生み出すのか、うまく言語化できていないのですが、これがPRでのクリエイティビティなんですね。この仕掛けがうまくいくと、我々としては、しめしめという感じです(笑)。これぞPRの醍醐味ですね」

コミュニケーションの本質を常に意識しながら、様々なアイデアで社会に対して働きかける突破口を切り拓いていく野村の姿勢は、オズマピーアールがめざすPRのあり方そのものでもあるのです。

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