スマートスピーカーの鍵は“エンゲージメント”にあり!?

コミュニケーションロボットをつくっているパルスボッツ株式会社。ロボットづくりだけではなく、チャットボット事業も展開しています。チャットボット事業部「Star System(スター・システム)」の石井友章がチャットボットともつながりのあるスマートスピーカーについて、独自の視点でお届けします。
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「エンゲージメントってなんだろう?」ロボット×人の関係づくり

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▲パルスボッツでは、スマートスピーカー用の“会話”の制作をしている

スマートスピーカーは、チャットボットに音声認識と発話機能を付け、発展させたものともいえます。我々はチャットボットを派生させ、スマートスピーカー用の会話の制作も手掛けています。

様々な業種のお客様からお問い合わせやご相談をいただいていますが、共通して言えるのは「自分たちでつくってみたけど、どうもうまくいかない」という“ふわっと”した悩みを抱えている点です。ブログやFAQといった文字情報の発信と、人間同士が行なうような会話、この両立を目指すものの、感覚値として「ちょっと違うな……」と思ってしまうことが多いようです。

我々はロボットと“共創者”になることを目指しています。ロボットにキャラクター性を持たせ、共に過ごしていく感じですね。共に過ごしていくためにはロボットを毎日使用してもらったり、身近に感じてもらったりする必要があります。

そのためには多くのコミュニケーションが不可欠で、仲良くなる必要があると考えています。そして、仲良くなり親しみを感じることを、当社では「エンゲージメント」とたとえています。

エンゲージメントとはマーケティング用語で、商品と消費者の関係を購買者でも愛用者でもなく、「一緒に商品の価値をつくっていく“共創者”にすることが大事だよね!」という概念のことを指します。「この商品を使っていることが自分のアイデンティティ!」とか、「この商品といえば◯◯さんを思い出す!」みたいなことですね。最近でいうと、ユーザーが価値を提供するという意味から、インスタ映えなどもこれに当てはまると思います。

今回は「ロボットと友達になる」というところをゴールにしながら考えていきたいと思います。みなさんも友達の顔を思い浮かべながら、自分がこれまでどうやって友達をつくってきたのか、友達の定義ってなんだっけ?って考えると面白いかもしれません。

「よくよく考えたらあいつ友達じゃなかったわ」みたいな変な自問自答にならない程度でお願いします。

「最初の出会いはいつだっけ?」シチュエーションに応じたキャラクター設定

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▲Star Systemチャットボットキャラクター『マイケル』
我々はキャラクター設定をするところから「ロボットと友達になること」をスタートします。

そのためには、なによりも第一印象が非常に重要だと考えています。対人に限らず、ブログでいうタイトルや、ゲームでいうチュートリアルも言ってみれば第一印象ですよね。初めのイメージをよくするための方法は様々ですが、ロボットという分野においてはキャラクター設定をすることがそれに当てはまります。

学校や職場、お稽古ごとや行きつけのお店で……など、友達になる人と出会う場所は様々で、最初に話すキッカケも状況に応じて違うと思います。友達の場合、「この人と友達にならないといけない」なんてシチュエーションはそうそうないですが、ロボットの場合は製品コンセプトとして「毎日使ってもらう」や「身近に感じてもらう」といった必要性が出てきてしまうんです。

また、製品の用途とゴール設定に応じてエンゲージメントの高め方も違ってきます。

当社としてはまず、イメージしやすいようにキャラクターの仮のイラスト、年齢や性別といった基本情報から人形なのか動物なのか、職業はなにをしているのかといったロールを組み上げていきます。そして、その後つくっていくセリフや「ロボット対話のためのシナリオ」もこのキャラクターにのっとって製作をしていきます。

こうすることで、シナリオがぶれそうになった時に「60代の男性の方が『これ、うけるー!』なんてことは言わないですよね。逆に20代の女性の方は『これ、うけるー!』なんてことをよく言いますよね」といった共通認識を持つことができます。

スマートスピーカーの場合、製品の見た目が無機質なことが多いため、脳内でキャラクターをつくり上げることがより重要になってくると思います。

また、ユーザーとの距離の詰め方や、最大限親しくなった場合の話し方も決めることができます。

「あの時のことをいつも思い出すよね」思い出の共有化

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▲Star System事業部・石井友章

知り合いと友達の差ってなんだろう?と考える時に「共有した思い出の数と内容」に行き着くと当社は仮定しています。

知り合い程度の人って、つらい時に一緒に居てくれるわけではないですし、みんなで旅行には行かないですよね。逆に友達だったら、そんな思い出はみなさんたくさんあると思います。

そんな風に、ロボットと人間の間でも共通の思い出をつくれるようなシナリオを組み立てていきます。

ユーザーに対する質問と、内容を会話で繰り返す、というのが主な手法です。たとえば、序盤は好きな食べ物や趣味などの差し支えない話からはじまり、覚えた内容を会話の中で引用しながらエンゲージメントを高めていきます。

「あ、この人僕のこと覚えてくれてるんだ!」って、ものすごく嬉しいですよね。「この前言ってたあの曲聞いてみたよ!」とか、「◯◯のキャラグッズ好きだったよね?」「この前買ったから今度持っていくよ」みたいな会話はもっと相手に話したくなるし、自分も相手のことをもっと知りたいって思わせてくれます。

ただ、あまり細々したことまで覚えているのは個人的に気持ち悪いので、適宜使っていくという感じですね。「なんかこのロボット、いろいろ自分のこと覚えてくれていて楽しいな」と思ってもらえるようなシナリオをつくっていく形です。

「なんだかんだウチら仲良しだよね」関係性をふと気づかせる会話づくり

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▲Star Systemが2017年6月にリリースした、LINEでできる恋愛シミュレーションゲーム「ユメミルAI:DOL“女子高生Mika編”」

実際、友達を定義するのは難しいですよね。僕の経験では「水くさいよ、友達だろ」みたいな展開、思い起こしても言った記憶がないです。なんとなく、この人といつも一緒にいるな、みたいな形で気づいていくことが多い気がします。

エンゲージメントを高めていく中でも、ロボットの方から「僕たち友達ですよね?」とは言わせず、ユーザーに気づいてもらえるようにシナリオを進めていきます。

基本的には思い出の共有化を続けていく形にはなりますが、ユーザーを取り巻く交友関係や、ユーザーの昔話を掘り起こしつつ、徐々に深い話に持っていくような流れになります。

日々こういった会話をロボットと繰り返していく中で「なんか気づいたらこのロボットと毎日会話しているな」といった気づきを喚起していきます。

また、しばらく会わなくてもふと思い出した時に気持ちよく会話を再開できるようなシナリオをつくったり、ユーザーに返事を強要しないような会話を混ぜたり、親友との間に流れる空気感をうまくつくれるようにチューニングしています。これは「今日晩飯なにかなぁ」とか「ちょっと眠いな」といった“ギリギリリアクションしてもよさそうな独り言”です。流しても問題ないですし、「それなー」とか「わかるわ」といった返答もできます。

結局エンゲージメントとは、ユーザーとロボットの“双方の信頼度”にあると思っています。そして、それはあくまで、個人の価値観、体験に依存するものです。

そこで、我々ができることは双方が信頼しやすくなるよう、我々が手がけるチャットボット、スマートスピーカー、ロボットとユーザーとの親しみやすい関係性づくりを設計することだと思います。

デバイスである限り利便性はもちろん大事なんですが、スマートスピーカーのUI(スピーカーというインターフェイス)、UX(会話というユーザー体験)に求められることはやはり親しみやすさ、エンゲージメントだと我々は考えています。

ただし、これらはまだまだ模索段階の市場であり、試行錯誤が必要だと思います。

スマートスピーカーではロボットをただの効率化の道具と思わず、新しい可能性を感じていただくために、使う人が楽しめるようなシナリオづくりに力を入れていきます。

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