人材派遣業界で25年、自ら選んだ“いばらの道”――「PERSOL」で働く社員の“本音”

パーソルテンプスタッフが創業して間もない1990年、まだ発展途上だった派遣業界に飛び込んだ上園裕二。あらゆる事業を手掛け、子会社の代表などを歴任してきた彼は、2015年より、販売支援サービスや人材サービスを主とするP&Pの代表を務めています。しかしその道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
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社員わずか数名のパーソルテンプスタッフに、新卒で飛び込む

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▲創業者の篠原(写真右)との距離も非常に近い

1990年、上園は新卒一期生としてパーソルテンプスタッフ(旧社名:テンプスタッフ)に入社しました。同期が大手の商社や銀行などに就職するなか、当時はまだまだ規模が小さく、発展途上だった派遣業界に飛び込んだ理由は、ひとえに「当時のパーソルテンプスタッフにいたメンバーの人柄にひかれたから」でした。

以来、彼は25年以上にわたり、パーソルグループのさまざまな部署や会社で活躍し続けることになります。

入社後、上園は事務派遣領域を担当する部署に配属されました。10年間の業務経験を経て、今度はエンジニア派遣領域の新規立ち上げに参画。来るべきIT社会を前に、ニーズの高まりを見せていた領域にて経験と見識を付け、その後ほどなくして、テンプスタッフテクノロジー(現パーソルテクノロジースタッフ)の社長に就任することになります。

社長業を立派にこなし、会社を軌道に乗せた上園は、2014年にテンプスタッフテクノロジーを離れ、パーソルテンプスタッフに戻ってきました。

上園 「テンプスタッフテクノロジーの社長を退いた背景には、次の世代のためにポストを空けないといけないな、という思いがありました。業績としては絶好調で、自分ができることはやりきった気がしていたんです。
そうした充足感もある一方で、『このままではいけない、自分の成長が止まってしまう』という危機感も芽生えはじめていて。 
それを水田さん(パーソルホールディングス代表取締役社長  CEO)に相談したら、『もう一度、戻ってこい』と言われたんです。そのときはちょうどホールディングス化がはじまる前後で、『お前がパーソルテンプスタッフを変えてくれ』と。これはまたとないチャンスだと思い、戻る決意を固めました」

上園がテンプスタッフテクノロジーの経営を担っていたおよそ10年の間に、事務派遣の業界も大きく変動しており、当時のテンプグループ(現パーソルグループ)で3万人近い社員が所属する大企業に変貌していました。

「浦島太郎になったような気分」を感じた上園は、離れていた間の勘を現場で取り戻しながら、徐々に組織全体の変革・マネジメントを任されるようになります。

パーソルテンプスタッフに戻って1年、必要なインプットを済ませ、社内の全容を把握しつつあった上園。いよいよこれから、本格的な施策を打って社内を変えていこう……そう意気込んでいた矢先、思わぬ転機が訪れます。

それは、直近のM&Aによってグループ傘下に入った会社、P&Pの経営を担うために出向してくれないか、という打診でした。

上園 「正直、はじめて言われたときは『え、俺が?』と戸惑いました。パーソルテンプスタッフを変えるために戻ってきて、『ここからが本番だ』というタイミングでの話だったので。 
けれども、これまでの経験から上層部の判断を信頼していましたし、動揺したのは最初に打診されてから3時間くらいで、その後はすぐに『新たなチャレンジだし、楽しもう』と気持ちを切り替えました。この辺りは、いい意味での自分のいい加減さ、楽観的な思考が発揮されたのかなと感じます」

文化や価値観の異なる出向先での戸惑い

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▲テンプスタッフテクノロジー時代の上園。経験から得た経営手腕をP&Pでも発揮した

上園が出向したP&Pは、小売業や流通業などに特化した人材サービス会社です。これらは労働環境の保全が難しい業態でもあり、事務職など、比較的長期的で安定的な職種の取り扱いが多かったパーソルグループにとって、今までそれほど取り扱ってこなかった領域でした。

グループの拡大とグループ一体化の過渡期にあったパーソルテンプスタッフにとって、未知なる挑戦のかじ取りを任された上園。2015年7月に、P&Pの副社長として新天地へと赴きます。しかしそこで彼の前に立ちはだかったのは、想像よりも遥かに大きな障壁でした。

上園 「そもそもの文化や価値観が大きく異なる会社が、M&Aで突然一緒になったわけですからね。P&Pのみなさんの立場に立ってみれば、外部からいきなり知らない人間がやってきたことになります。お互いに、どうやって接していけばいいのかわからない状態でした」

そんな環境下で、上園は会社の現状を把握するべく、周囲とのコミュニケーションを取ろうと奮闘します。しかし、そう簡単に距離は縮まりませんでした。

上園 「P&Pグループはそれまで堅実な成長を続けていましたが、外部環境の変化などによって苦戦を強いられていた側面がありました。そんなP&Pの課題をクリアし、さらに事業を成長させること――それが私に与えられていたミッションです。 
出向した初年度は、とにかく現状把握に努めました。ただ、当時は私も状況を把握しきれず、すぐに具体的な変革に着手することは難しかったですね。私自身、この業界が未経験だったこともあり、どこから手をつけるのがベストか、かなり逡巡しました」

2016年の4月より、P&Pの社長に就任した上園。市場環境も厳しく、状況がなかなか好転していかないなか、上園がその空気を打開するために取り組んだことは、至ってシンプルでした。それは「周囲の力を借りながら、結果を数字で出すこと」です。

上園 「もうシンプルに結果を出して、P&Pにとってのプラス要素を作っていくしかないと思ったんです。そのために注力したことはさまざまありますが、ひとつは『情報の共有』ですね。 
目の前で起こることをタイムリーに共有し、従業員からの意見も募り、解決策を検討していくこと。『全員経営』の考え方にもとづき、それを丁寧に、徹底的に行ないました」

まずは結果を出し、代表としてのスタートラインに立つ

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▲P&PのHPに載っている上園の写真。笑顔の裏に、苦労と葛藤があった

社員と一丸となり、さまざまな角度からP&Pの業務のさらなる最適化を進めた上園。その結果、P&Pの業績は再び右肩上がりになっていきました。

上園 「課題が多いということは、それだけ伸びしろがあったとも言えるんですよね。まさに、打てば響くといった感触で。組織としても成長できる余地が多分にあったため、システムが完成している大企業ではできないような、ダイナミックな変革をしかけられました。それは、仕事としてすごく面白かったです。
P&Pに来た当初は経営者として、課題解決の難しさを感じていましたが、この頃になると家族からは『毎日楽しそうだね』と言われるくらい、イキイキと働けていました」

そして上園はあらためて、社員との関係性の構築に切り込んでいきます。まずは、業績がより向上したことによって出た利益を、オフィス環境を改善したり、通常の給与にインセンティブを乗せたりするなど、社員に還元していきました。

数字を出すだけではなく、それを一人ひとりが肌で感じられるような形で実感できるようにする――社員に寄り添った上園の施策が、少しずつ、はじめはぎこちなかったお互いのコミュニケーションを変えていきました。

上園 「P&Pに来た初年度は、何をやっても空振りでした。その反省を生かして、次の年度は周囲の力を借りながら数字を出すことに集中した。そのおかげで、社内でも存在が認めてもられるようになって。今年度から、ようやくスタートラインに立てた気持ちです」

「この会社はもっとよくなる。そのためにできることは、まだまだ山ほどある」と意気込む上園。彼はこれから、「もっと社員と仕事でも遊びでも時間を共にしたい」と目論んでいます。

上園 「やっぱり、『この会社で働くことが楽しい』と感じてもらいたいんですよね。それには、仕事を離れたところでの場づくりも、とても重要で。最近、社内で企画グループを作って、仕事以外のイベントをどんどん準備しているんです。先日は、休みの日にゴルフに行ったりして。
これまでのP&Pは、お客様のためにとことん働くことが美徳となっていました。みんな真面目で、『遊んでなんかいられるか』という空気が流れていたと思います。でもよりいい仕事をしてもらうためにも、プライベートも充実させて、もっと人生を楽しんでほしい。 
キツくても、結果がついてくるから楽しい。この人たちと働けるのが楽しい……そう感じられる空気づくりのためにも、もっと社内の人たちと公私ともに関わって、一緒に食事をしたり、さまざまなことを話したり、遊んだりしていきたいですね」

パーソルグループとして、業界の健全化を目指していく

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▲P&Pの新卒研修にて。社員と交流する中で、上園が学びや気付きを得ることも多い

20年以上のキャリアがすでにあったにもかかわらず、P&Pでの経験を通して、上園は「視野が広がった」と感じています。彼がいま向き合っているのは、今まで見えていなかった、けれども確実にそばにあった、この国が抱える課題です。

上園 「あえて社会で働く人たちを勝ち組/負け組にわけるならば、その間に大きな差が生まれているのは事実です。格差社会は私たちの目の前にあり、職種による賃金差も存在しています。
そして、一概には言えませんが、販促支援、軽作業などの労働現場は、お世辞にもよいとは言えない環境であることが多い。現場で必死に働いている人たちが、軽んじられている傾向にあると思います。 
P&Pで向き合っているスタッフさんたちも、どちらかと言えば賃金が低く、良好とはいえない労働環境におかれています。この業界の人たちは真面目で顧客志向が強く、ハードワークの方が目立ちます。日々すり減るような働き方をしても、先に明るい未来が見えず、身体を壊して辞めていってしまう人たちも、少なくありません」

上園は、「パーソル」という大きなブランドがこの業界に参入することの意義を、真摯に受け止めています。

上園 「私たちの生活は小売業や流通業の現場で働く方々彼らの労働のおかげで成り立っている部分が大きいんです。社会を支えている彼らの仕事の価値が認められ、より豊かな暮らしができるように環境を整備し、この業界で働く方々の社会的地位を上げていくことが、パーソルグループの使命だと思っています。
パーソルグループは、人に関するあらゆる悩みを解決し、業界全体をけん引するグループに成長しつつある。私たちがもたらす変革は、大きな流れを生み出し得るんですよね。まだまだコンプライアンスに対する甘さなど、問題が目立つ小売・流通の派遣業界を、健全な方向に引っ張っていけるよう、P&Pの仲間とともに邁進していきたいなと、強く思っています」

EC取引やAI(人工知能)ビジネスの隆盛によって、激動の時代を迎えている小売・流通の世界。変化の目まぐるしい今こそ、多くのビジネスチャンスが眠っています。

上園 「P&Pは、まだまだ伸びしろのある会社です。パーソルグループが持っているナレッジやリソースを活用することで、もっといい会社になるはず。社員には、『パーソルグループに入ってよかった』と思ってもらいたい。その上で、少しずつ『パーソルというブランドを背負っている』という、いい意味でのプライドを持ってもらえたらうれしいですね」

バブル崩壊やリーマンショックを乗り越え、求められている以上の成果を、堅実に上げ続けてきた上園。そして2017年、かつて数名ではじまったテンプスタッフがパーソルグループへと進化を遂げた今だからこそ、P&Pでの仕事は彼にとっての集大成となるはずです。

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