劇団員から一転し、事業で人を感動させる道へ

▲ホテルや式場など様々な場面で感動を創出する事業を展開しているポジティブドリームパーソンズ

ホテルやレストラン、ウェディングの企画・運営、コンサルティングを事業展開しているポジティブドリームパーソンズにおいて、多様なキャリアを経験してきた本多ですが、実は20代終盤まで演劇の劇団員として夢を追いかけていました。

本多 「 1ステージに 1万円で立つ生活を 30歳目前まで過ごしていました。未経験で入社しましたが、人前に立つ経験はあったおかげか、上司から『きみはプレゼン力がある!』と褒められたのを覚えています(笑)」

2006年に入社して新卒採用の人事からキャリアが始まり、ホテル施設のウェディングの責任者や婚礼ゲストハウスの支配人、コンサルティング、ウェディングプランナー、新規案件の立ち上げなどを経験しました。その間、約14年です。

本多 「これほど異動を経験したのは社内でも私だけだと思います。婚礼組数が多い会場の担当のときは、『自分の人生と会社の未来は自分で設計せよ』の文化のもと、チームで700件ほど担当した時期もあります。」

本多はいつの間にか「再生案件」にアサインされる特命の再生請負人ともいうべき立ち位置になり、GM(ゼネラル・マネージャー)がいる現場で特命GMとして協働で建て直しを行いました。その後、IT部門の責任者と商品企画室のGMを兼任、現在はGMのひとつ上の立場のEM(エグゼクティブ・マネージャー)に従事しています。

来たる2020年1月には、ホスピタリティとテクノロジーを合わせた言葉「ホスピタリティテック」を商標登録までした部署名の責任者になるのです。「ホスピタリティテック」とは一体なんなのか──その全貌をひも解いていきたいと思います。

感動の確率を上げるための「感動の技術化」

▲EM就任当時の本多(写真右から二番目)

属人的になりがちな感動の提供体系をメソッド化していくことを私たちは「感動の技術化」と呼んでいます。たとえば、ウェディングの営業育ちなのか、レストランのサービス育ちなのか、たどってきたキャリアでお客様へのアプローチや考え方は変わってくるもの。そこで、経験則だけに基づかず感動の提供を体系化することにしたのです。

具体的には、結婚式をはじめ、レストランやホテル、宴席やフラワーショップをご利用いただくお客様が抱く感動の確率を上げていくしくみづくりを行っています。もちろん、感動のシーンが自然と生まれる部分もありますが、メソッドを使ってその確率を高くするために、各サービスをご利用いただく中でポイントごとに仕掛けを行っているのです。

本多 「例えば結婚式における事例として、お父さまは新婦である娘さんの結婚式には熱心でも、息子さんの場合は、あまり関わらなくていいとおっしゃることが多いように感じます。ただ、事前に新郎新婦やお父さまにヒアリングすると、それまでの人生で息子さんが子どものころの運動会に参加していないケースもあるんです。だからその場面の思い出の写真は残っていない。
そこで私たちのメソッドを使って、お父さんが息子さんの小学校の運動会に参加したような疑似体験を感じられる場を提供して、感動を演出したりしますね。単純に運動会を演出として取り入れるのではなく、ゲストの皆様が、そのご家族に対して理解が深まり、応援したいという気持ちが入るように設計することが大きな狙いの一つです。」

年に1度のサンクスパーティで数年ぶりにあるご夫婦とお会いしたとき、結婚式まで家族に対して積極的に関わろうとしてこなかったお父さまが「一緒に写真を撮ろう」とか、「旅行に行こう」などと言い始めたという声を聞くのだと言います。

本多 「結婚式をきっかけに感動を受けたお父さんの心と行動が、今までと少し変わっているのです。これを私たちは “心の成長 ”と呼んでいます。
人は感動を得ると “心が成長 ”し、その人自身に変化が訪れる。このレベルの感動を偶然ではなく、必然で生むための方程式を私たちは独自につくり上げました」

5つの大切な感情の種類、記憶を丁寧に抽出して、演出では感情の曲線を描くように、プランナーから音響、お父さまお母さままで全体が一体となって感動の波を起こすためのメソッドとなっています。もちろん新郎新婦によってエピソードは異なりますから、プランナーはメソッドに沿ったオリジナルの企画を真剣に考えます。いわば脚本家のような仕事ともいえるでしょう。

また、結婚式が終わった後には、新郎新婦だけでなくご友人も含めて20名ほど、必ずマークシート式の簡単なアンケート調査を取って振り返りと分析をし、次の演出がさら良くなるよう生かしています。

ITを駆使して、もっとお客様と向き合うことにフォーカスする

▲自分たちの介在価値は、お客様の感動の確率を高める「夢の可能性」を与えること

次のフェーズとして、これまで10年ほど行ってきた「感動の技術化」による1万件以上の調査のビッグデータのITと、CS(カスタマーサクセス)の対応をより一体化させていくホスピタリティテック構想を準備しています。

ITとCSと感動の技術化、3つを掛け合わせている観点がホスピタリティテック構想の肝です。さらにCSの中には、顧客ロイヤリティをアップさせる観点を含めています。感動の技術化でメソッドをつくったのが2013年。このメソッドに合う商品開発をしてプランナーのやりがいを新しくつくりつつ、データと連動させることを2019年から始めました。

とくにプランナーは、アナログで地道な仕事も多くありました。より本質的な部分に集中して感動を提供するためは、もっとお客様と向き合える仕事にフォーカスしてもらうために現場のオペレーションを変える必要がありました。

本多 「お客様の感動の確率を高める『夢の可能性』を与えられなかったら、私たちの介在価値はありません。もしそれをお客様に提供するのに不十分な準備をしていたら、厳しく指摘するようにしていますね」

今後の新たな挑戦として、感動とIoTを掛け合わせたシステムを構築し分析することを検討しています。どのシーンの演出でどの感情が起こっているのか、プランナーの設計したシナリオの狙いがどこまで参加者に響いているかなどを判別できたら、もっと緻密な振り返りができるとも思っています。そういったデータを分析することで、料理やスタッフのサービスなどの商品開発にも生かすことができます。こうしてお客様の満足度を上げることができ、プランナーも自信を得てモチベーションが上がることを期待しています。

一方、参列ゲストの満足度が上がることで、次はゲストご自身の結婚式の際に当社を利用していただける可能性があります。これが、ホスピタリティテックにCSの観点を入れている理由です。

従業員もお客様もハッピーにする。新設部署の果たす役割

▲ホスピタリティテックは自身の働く満足度も高めてくれる

2020年1月にホスピタリティテック室を新設。CS、ロイヤリティアップ、IoTの観点で整合性がつく高度なストーリー設計やしくみづくりを行っていくべく、まずは4名で新部署をスタートさせます。

本多 「ただ流行りだからと新しい技術やツールを導入しても現場は歓迎して受け入れてくれませんから、ちゃんとストーリーを持たせてアクションをつけてあげる、それがこの部署の役割です。顧客満足度を高めるためのツールです、工数を減らすためのツールです、といった目的や導入にストーリーを持たせて現場への浸透を図りたいと考えていますね」

また、ウェディングプランナーの仕事をペーパーレスにしてデータ化を進めることで労働時間を削減し、業界内でも半歩先を行ける設計を目指しています。

本多 「自分たちの商品をメンバーたちがちゃんと愛せる環境をつくりたいなって思っていますね。たとえば、私たちの指導不足で、従業員がお客様にご迷惑をおかけしてしまうことも少なくありません。スキルの課題もあると思いますが、会社として仕組みが足りていなくて段取りが悪くなってしまっていることに原因があることも多いと感じています。
お客様の半歩先を先回りしてご提案することで、お客様から感謝をいただけて従業員もハッピーにスムーズになれることがあるなら、積極的に ITで補いたいです」

FAXのつぶれた文字の部分を確認するためだけにパートナー企業様にお電話して確認する。こうした時間をなくし、お客様と本質的に向き合えるために、それ以外の時間を削減してあげることが必要です。小手先の感動の提供ではお客様には満足していただけません。自分たちの商品を従業員がちゃんと愛せる環境をつくってきたいと私たちは考えています。

どちらか片方が良ければ企業やサービスが成長する時代は終わりを告げています。ホスピタリティテック構想は私たち自身の働く満足度をも高め、それが、お客様の満足度や感動にもつながっていく。ポジティブドリームパーソンが描く未来の理想形を目指す、「ホスピタリティテック構想」はまだ一歩を踏み出したばかりです。