社歴は浅い、マネージャーでもない、そんな自分がお店を動かす

▲企画者のひとり、レストランサービスの新井 悟

「ただのレストランではおもしろくない」。そのひと言から始まり、現場の最前線で働くメンバーたちがつくり上げたのが、お客様に寄り添うレストランコース「ガストロノミーツーリズム」。

この企画の発起人は、社歴2年目のレストランサービス新井 悟だ。

新井 「“体験型のレストランにしたい”という想いからスタートしました。サービスを考える中で、○○ツーリズムという海外で流行しているものからガストロノミーツーリズム(※1)という言葉にたどりついたんです。

そして、うちのレストランだったらその言葉をどう表現するかと考えたときに、ここに来ることで近畿を旅していると感じられる体験を提供したいと思いました。

具体的には、旅館に来てもらうようなイメージ。“いらっしゃい”ではなく“おかえりなさい”と着物を着た人がお迎えをし、まずお茶で一服、そのままお食事をして帰っていただくというストーリーを持つレストランです」

(※1)その土地ならではの食を楽しみ歴史や文化を知る、食文化と伝統文化を生かした旅。

構想から実際のメニュー実現までは約半年。プレゼンは好感触な反応とともに「大変なのでは」と、心配する反応もあったが、それは新井のさらなる挑戦意欲を刺激した。そんな新井には、プレゼンに臨むまでの企画段階で強い意志があった反面、葛藤もあった。

新井 「社歴が浅くてマネージャーでもない自分がやっていいのか、自分の範疇を超えているのではないかと思いました。

そんなとき、上司から『現場主導でレストランを動かすことは、今後のレストラン事業にとっても必要だ。だから、その力がないと将来的なレストラン事業の成長は難しい』という言葉をもらったんです。 それで、やらせてもらえる環境に驚きながらも『やりたい、やるしかない』と強く決意しました」

サービスマンとして、常に親切であることを大事にする新井。お腹を満たすことのほかにアミューズメントのような、料理や飲みものに何かプラスして持って帰ってほしいという想いを持って働いている。そんな彼の想いの源は、PDPの企業文化にあった。

新井 「PDPは、自分が成長したい・やりたいと思ったことは、やらせてもらえる環境がある。レストランにおけるお客様の満足度って数字で表しにくいんですけど、そこも切り取って考えてくれるので、嬉しいです」

やるならやってやろう。とことん学び、形にする

▲企画から形に、キッチンチーフの本田 行民

「もちろん自分ひとりで形にはできない」新井の企画にあったコース料理の数は、近畿各所の名産を使った料理18皿。

 その料理すべてを担当したのは、キッチンメンバーの本田 行民。この企画の品数を見たときはまず驚いたと言う。

本田 「多い。こんなにやるのかと思いました」

また当時、料理形態や業態変更という新たな試みが続き、本田は今まで積み重ねてきたものが変わることにも若干の抵抗を感じていた。

本田 「ガストロノミーツーリズムが考案される前から、新和食という新たな試みのスタイルに対して自分なりにいろいろと考えて、形にできていたタイミングだったので……。しかし、変わると決まったからには、『今までのスタイルを生かしてやってやろう!』という気持ちになりました」

さっそく、本田は、行動を起こす。

本田 「お寿司もメニューの終盤に一貫組み込んでいるので、元寿司職人のメンバーに協力してもらい情報を集めましたね。たとえば、すし酢のつくり方は元寿司職人のメンバーに聞きましたし、近畿出身のメンバーには、和歌山の食材だったら何がいいかを聞いたり。

それ以外にも、新和食をスタートするときに今まで買ったことがなかった和食の本を買ったり、市場に行って鰹節屋さんを巡ったり、大阪の星付きの割烹や徳島の有名な和食のお店に実際に食べに行き、お店の方と交流をして自分なりに情報収集をしました」

今回のコースの考案に生かすためにさまざまなものを見た本田。この成果がコースストーリーに不可欠な18皿を誕生させていた。

ガストロノミーツーリズムを通じて見えてきた新井と本田に共通する、やり遂げようという強い想い。彼の料理人としての力量の高さを新井はこう表現する。

新井 「もちろん実現まで大変でしたが、苦労というのはあまりなかったです。本田さんとは1年くらいずっと一緒にやってきたので、信頼関係を築けていると自分では思っていて。今回もポッと言っただけなのに、すごくいいメニューを納品してくれましたし、良い意味で予想を裏切ってくれます」

それぞれが同じゴールに向かい挑戦する関係。それは、実際に「ガストロノミーツーリズム」の企画が現実のものとなったときも変わらない。

やりとげるということへの信念と信頼

▲部署は違えどそれぞれが大事にしている信念がある

お客様の“今”の状況を受けて料理を変えていく──本田の大事にする想いがそこにはある。

本田 「十人十色の料理と接客があると思っています。
お酒を飲む、飲まない、年齢層、男女、シチュエーションに合わせて、決まったメニューでも味付けなど変えていきます。たとえば、以前にこの施設で婚礼を挙げてくれたおふたりが再びご来店してくださったときは、盛付けを婚礼のときと同様のスタイルで再現しました。ウェディングプランナーへ当日どんな風に過ごされていたのかなど、何かしらの情報を受けて変化をつけます」

しかし、この想いは、当然のことながらキッチンやサービスのメンバーの協力があってこそ実現できるものである。

本田 「その日その日に来られる一人ひとりをサービスがしっかり観察してくれるからこそ、それを受けて料理に変化をつけることができています」
新井 「本田さんやキッチンメンバーのお客様ファーストで考えてくれる姿勢は、すごくありがたいです。キッチンが主導で、自分がつくりたい料理をつくって、それがおいしい!みたいなのではなく、常にお客様のことを考えてつくってくれています。なので、こちらからするサービスのお願いもスムーズに通してくれますね。

それに、ここは曲げられないけどここは配慮するというお互いにリスペクトしたやり取りなので、プライドを持って、お客様に合ったサービスを提供できています」
本田 「キッチンはキッチンだから、プランナーはプランナーだから、サービスはサービスだから……。とやっていると、お客様ファーストなサービス提供ができなくなるので他部署とのコミュニケーションは自分から積極的にすることが大事ですね」

成長を愉しみ、挑戦し続け、いずれNo.1に

▲高みを目指す挑戦者たちがつくる、大阪の新たなレストラン「THE BLINK all day dining」

PDPのレストランは、培ってきたノウハウを全国に横展開させながら、日々進化をしている。さらに大阪の御堂筋にも新たなレストランがオープンした。挑戦を続ける彼らは今後の未来をどう描いているのか。

新井 「人って自分が成長したとき初めて、愉しさを感じると思うんです。だから、メンバーにも愉しく働いてほしいなと思っています。漢字も『楽しく』ではなく『愉しく』」

ただ与えられるものを楽しむのではなく、想いや考えを表現することで愉しみは見出される。新井の視線は、仲間だけでなく、メニューの方へも向いていた。

新井 「季節によってガラッと変えたり、流行りのものを入れたりできる、ワインに特化した部署をつくりたいです。今はラインナップ自体が少なく、ワインと料理の組み合わせであるぺアリングも弱いので、それを強化してワインと料理のマリアージュというコンセプトをしっかりと立てていけるレストランにしていきたいです」

さらに、新井には個人としても大きな目標があった。

新井 「飲料の強化。その先の自分の大きな目標は、ミシュランの星を取ることです。これは言い続けるようにしています」
本田 「これだけオープニングを担当してきたので、この経験を今後の新たなオープニングにも生かしていきたいです。個人の展望を大事にしながら、今のレストランで大阪No.1にはなりたいですね。

もちろんミシュランや雑誌で評価されるのも嬉しいですが、僕の中では食べに来てくださったお客様が友人と、“あそこのレストランって大阪で一番いいよね”という会話をされているときがとても嬉しいです」

高みを目指し続ける姿勢は、今後のレストラン事業の発展に欠かすことはできない。

“まだまだ未熟だ”、“新たなことを生かし前へいく”──そんな彼らの挑戦はこれからも続いていく。