AIで与信審査が可能に!20万社以上の独自企業データを活かした開発ストーリー

Paidは2018年1月、AI(人工知能)による与信審査を導入しました。深層学習や検証のために豊富なデータを必要とするAI。私たちがAIを導入できたのは、長年のサービス運営で蓄積された20万社以上の与信に対する実績データがあったからです。自社開発で取り組んだAIシステムの開発秘話をご紹介します。
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3営業日が1秒に。AIが与信審査に変革をもたらす

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▲AI導入の効果

Paidは、事業者間取引の後払いで発生する与信管理から代金回収までを一括して代行するFintechサービスです。そして、サービスの基盤となっているのが与信審査です。審査では販売企業の取引先(以下、取引先企業)に対する事業者確認と与信(支払い能力)の調査を行ない、Paidで決済できる金額の限度として利用可能額を設定します。

これまでの与信調査はさまざまな情報を元に、すべて人が判断していたため、最大3営業日かかる場合がありました。

また、初回の与信審査時には、基本的に一律の利用限度額を設定しているため、本来大きな利用可能額を設定できるはずの企業でも、一時的に小さい額しか付与できないケースが発生していました。

今回AIを導入したことによって、取引先企業ごとの多岐にわたる情報を過去の実績データに照らし合わせて総合的に判断し、瞬時に利用可能額を設定できるようになりました。与信審査にかかる時間は、最短1秒に短縮しています。

さらに利用限度額を信用度に応じて柔軟に設定することも可能になります。導入にあたってのテストでは、8割以上の取引先企業で初回に設定される利用限度額が向上し、従来比3倍以上になる企業も存在しました。

このような効果が出ているAIですが、PaidがAIを導入できた背景には膨大な量のデータと、そのデータをAIに適用するために必要な経験や実績がありました。

将来を見据えたAI導入。自社開発を実現したエンジニアの技術力

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▲AI開発に携わったメンバー。(左:渡邊政則 中:及川哲哉 右:羽山純)

PaidがAI導入に向けて動き出したのは2017年1月頃。さまざまな業界でAIへの注目が高まり、AIの活用が盛んになっている時期でした。

AI開発にあたって責任者を務めた及川哲哉は、AI導入の背景を次のように説明します。

及川 「今は審査を人間の主観でやっていますが、どうしても拾いきれない細かな情報があります。 AIを導入することで、そういったところも網羅した結果が出せるのがメリットのひとつです。
また、今後 Paidが大きくなればなるほど、審査業務は増えていきます。 AIがあることで人を増やさずとも対応できるようになりますし、逆に審査量が増えた分だけ精度が上がりコストも下がる好循環が生まれます。
世の中的にも AIの流れがある中で、それに乗り遅れてしまわないように、新しい技術を積極的に取り入れていきたいという思いもありました」

そこで、AI導入に向けてのプロジェクトチームを結成。

エンジニアとして加わったのは、テクニカルディレクターの羽山純とシニアエンジニアの渡邊政則です。特に、開発の中核を担った羽山は、それから半年ほどかけてシステムを構築しました。もちろんこれまでAIを導入したことはないので、手探り状態でのスタートです。

羽山 「 AIについてだけでなく、社内で保持している与信審査に関わるデータを半年間ほど調査しながら、どのようにすれば与信審査に AIを導入できるかを検討しました。まさに暗中模索です。苦戦はしたものの、調査をする中である程度傾向が見えてきたので、システムのプロトタイプをつくっていきました。
もちろん開発を外部にお願いすることもできましたが、与信審査は Paidのサービスにとってコアな機能です。そこを外部に出してしまうと、ビジネス自体が外部依存になりかねません。それに、継続的なメンテナンスが必要ということもわかっていたので、自社で開発しようと決めていました」

当社では、システムの開発をすべて内製化しているため、自社開発を前提で進めることができました。そして、AIを導入するうえで開発技術に加えて必要だったのが、膨大なデータでした。

AI実現のカギは20万社以上の企業データと長年培ってきた審査ノウハウ

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▲エンジニアのふたりは当社が提供する他のサービスにおいても開発の中核を担っています

そもそもAIとは、入力された内容から自動的に答えを判断するプログラムです。その答えを判断するにあたってのルールを人間がプログラムするのではなく、AIが自動的に学習してくれます。

しかし、AIの回答の精度にはどうしてもばらつきが出ます。なので、一定以上の正答率になるようにデータを使って学習を繰り返します。

つまりデータが多ければ多いほど、回答の精度を上げることができます。今回、PaidがAIを導入できた一番のポイントは、まさにこのデータ量なのです。

Paidの与信審査を行なっているグループ会社の株式会社トラスト&グロースは、保証会社としてこれまでに数十万件の審査データを蓄積していました。この膨大なデータの中から必要なデータを抽出し、20万件超の学習に使うデータを整理していきました。

渡邊 「開発で大変だったことはデータの整理です。 AIでは審査データをそのまま使うことはできないので、元々数字ではないデータを数字に近い形にする必要があります。その変換をバイアスがないように綺麗に整理するのに苦労しました。
しかし、このデータの下地がなければ、そもそも AIを導入することは不可能だったと言っても過言ではありません」

審査に利用するデータには自然言語と言われるAIでは扱いづらいデータ、いわゆる日本語の文字データもあるので、それらを整理して数字に割り振るなど工夫をしました。たとえば都道府県を1-47に置き換えるなどです。

この変換も、AIが正確な回答を出すうえでは重要です。ここで、長年にわたって企業を審査してきたことで培われたノウハウが活かされました。

こうして、独自のAI与信のシステムが完成し、2018年1月に運用をスタートしました。しかし、AIはつくって終わりではありません。これからも少しずつ手を加えていく必要があります。

「Paid」のさらなる進化を目指して。AI技術の活用で便利なサービスに

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▲これからもAIの活用に取り組んでいきます

ようやく導入にいたりましたが、いかにAIの精度を上げていくかが今後の課題になります。

羽山 「導入以前は AIを導入していない状態での結果に基づいた学習でしかありませんが、導入後は AIの結果を見たうえで学習するので、傾向なども変わるはずです。
また、 AIは常に増えていくデータを元に日々学習を繰り返しており、与信を判断する条件もより実績に基づいたものに近づいていきます。定期的に見直しを入れていき、AIの精度を上げていきたいと思います」

今後はAIによる最高1000万円の初回付与も視野に入れ、より一層の与信判定の精度向上を目指していきます。また、今はPaidの与信審査の部分にしかAIを導入していませんが(2018年5月時点)、今後はその適用範囲を広げていくことも検討しています。

及川 「銀行などでも、 AIを導入して数千人の行員を削減するという話も出ていました。最近では融資の審査にも AIが導入されるなど、次の段階もはじまっています。 Paidでも AIを使える領域はほかにもあると考えています。
今回、 AI導入の経験が積めたことで、今後適用範囲を広げたり、横展開したりということも取り組みやすくなりました。実際に、審査以外の部分でも AIの技術を使っていく計画をしています」
渡邊 「 AIは実用的に使える技術です。将来的に全部が全部 AIになるわけではないですが、選択肢のひとつにはなっていきます。
単純に Aか Bかを判断するだけのシステムなら AIを使わずにプログラムで書けばいいだけの話ですが、人の肌感覚に近い、やわらかい感覚で判断するようなものは AIを活用すべきだと思います。開発チームとしても、さらに新しいことに取り組めるように技術力も向上させていきたいですね」

そもそも、ビッグデータを持つFintechサービスと、深層学習にビッグデータを要するAIは親和性が高いと言われています。Paidをさらに使いやすく便利なサービスにしていくためにも、今後もAIを最大限に活用していきます。

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