掛売り決済に革命を。“確実な信頼”なしに成り立たない新規事業の立ち上げ秘話

企業間取引では、「掛売り決済」が9割以上を占めます。しかし、未回収リスクが付きまとい、入金管理の手間が発生するという問題も。そこで、ラクーンが立ち上げたのがBtoB向け決済サービスの「Paid(ペイド)」です。顧客ニーズに応えて誕生したサービスでしたが、当初はさまざまな壁が立ちはだかっていました。
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私たちが鉄壁の守りを敷くことで、企業は"攻め"に集中できる

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▲株式会社ラクーン副社長兼Paid事業推進部長、株式会社トラスト&グロース代表取締役社長・石井俊之

私たちラクーンは、「企業活動を効率化し便利にする」という理念を掲げて事業を展開しています。Paidというサービスもそのうちのひとつ。そして、Paid事業の先頭に立つのは、副社長兼Paid事業推進部長で、株式会社トラスト&グロース代表取締役社長の石井俊之です。

石井 「企業活動において、請求業務や入金管理に追われること、未回収リスクを抱えることはマイナスです。ベンチャー企業様を中心に、回収作業に人手を割けないという問題もあります。
我々がスピード感をもってしっかりと取引先を審査し、請求書の発行から代金の支払い管理、督促をすべて請け負う。"守り"の部分をしっかり固めることで、クライアント様には営業や商品企画などの"攻め"の部分に注力していただけるでしょう。そうやってWin-Winの関係を築けると思っています」

ラクーンは、1995年に現・代表取締役社長の小方功が創業。インターネット黎明期の1998年には、企業向けに過剰在庫品を販売する「オンライン激安問屋」というサイトをオープンしました。そして、クライアント様から「新商品も扱って欲しい」というご要望を受け、2002年には小売店向けの卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」を開設したのです。

石井 「当初はスーパーデリバリーもクレジットカード決済のみでした。インターネット販売だと、日本全国の顔の見えない方との取引になります。月数万円の取引のために北海道や沖縄に行くわけにもいかないので、なかなか『後払いでいいですよ』とは言いづらいですよね。
でも、クライアント様からは掛売り決済をしてほしいというご要望をたくさんいただいていました。ニーズにお応えすべく、金融機関と提携しながら2004年ごろ掛売り決済の仕組みをつくっていったんです。大変でしたが、喜んでいただけましたし売上が増えましたね」

そうすると、今度は「どうすれば掛売り決済できるの?」「自分たちもやりたい」とご相談される機会が増えたのです。掛売り決済サービスを使ってビジネスを展開したい企業様が多いことがわかり、Paid事業の構想がはじまります。

石井 「Paid事業立ち上げの随分前から構想はありましたが、我々が100%信頼される存在でなければ決済サービスは成り立ちません。2006年に東証マザーズに上場したことや、2010年に売掛保証をしている株式会社トラスト&グロースがグループ会社になったことで、事業をはじめる準備が次第に整っていったんです」

イノベーションを起こす人々の苦労――焦りを乗り越えて黒字化へ

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▲Paid立ち上げメンバーの面々

満を持して、2011年にPaid事業がスタート。

立ち上げを任せられた石井は、ビジネス部門の4名と数名のエンジニアとともに、8~9か月ほどかけてPaidの構想・開発を進めていきました。しかし、乗り越えなければいけない壁はいくつもあったのです。

石井 「まず、決済には法律が絡んできます。当時世の中にはなかった新しいサービスでしたから、顧問弁護士と毎週のように打ち合わせを重ね、法律の壁をクリアしていくのが大変でしたね。また、決済関連のミスは絶対にあってはいけませんから、開発部門も苦労していました。喧々諤々の議論を重ね、さまざまなケースを想定して二重三重にも"守り"を固めながらシステムを構築していったんです」

Paidサービスができあがると、いよいよ営業開始。すでに関係性が構築されていたスーパーデリバリーの顧客を中心にPaidのサービスをご案内していきました。しかし、思うように売り上げは伸びず、なかなか黒字化しません。

スーパーデリバリーでの利益を削りながらやっている事業なのに、どうすれば売上が上がるのかわからない。「早く黒字化しなくては」という思いばかりが空回りし、メンバーの表情には焦りが見えるようになっていきました。

そこで、石井はあらためてPaidというサービスを見つめなおすことにしました。

石井 「"請求の効率化"と"未回収リスクがない"こと。このふたつをPaidの強みとしてメンバーで再認識しました。不安な取引先だけPaidにして、他は自社掛けで手作業で請求書を発行するとなると、かえって業務が煩雑化します。Paidに一本化すると、ぐっと楽になるんですね。
この強みを訴求できるように、HPの内容も案内の仕方も方向修正していきました。また、インターネット上で卸売をやっている企業様や人手を割けないべンチャー企業様にも案内を広げることで、喜んでいただけるようになりました。
責任感の強いメンバーばかりですし、ニーズがあるのかどうかわからない状況のなかで働くのは、本当につらいものがありました。1年~1年半ほど暗闇のなかで光を探すような状況が続いていたんです。だからこそ、先行投資分を回収して黒字化したときは、メンバーみんなとても喜びましたね」

売上が伸びてPaidというサービスの価値を実感することで、メンバーのモチベーションもぐっと上がりました。そして、事業はどんどんいい方向に向かっていったのです。

ある新入女性社員の活躍。"知らない"からこそできた限界点の突破

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売上が伸びていくなか、さらに社内を盛り上げるエピソードも。

ベンチャー企業様を中心に導入が進んでいるフェーズで、誰でも知っているような一部上場の大手企業様が新規事業でPaidを導入してくださるという好機が訪れました。当時担当していたのは、入社したばかりの若手女性社員。「大手企業様に導入していただくのは難しいのでは」と考えるメンバーもいるなか、いい意味で期待を裏切られることになります。

石井 「彼女はとにかくクライアント様のニーズを丁寧に伺い、Paidがお役に立てるようなカスタマイズのご提案をしていきました。新入社員だったからこそ、私を含め先輩社員やサポートデスク、エンジニアたちを巻き込んで提案を進められたという部分も大きかったでしょう。
導入後には、『Paidがなければこの事業は立ち上がらなかった』というお言葉もいただきました。社員の活躍も、社員を褒めていただけたことも嬉しかったですね。
また、大手企業様が導入してくださったことで、Paidというサービスがさらに信頼していただけるようにもなりました」

その後も、Paid事業部はクライアント様からの期待に確実に応える努力をしていき、サービス導入の実績を積み重ねていきました。そして、2016年には東証一部に上場。2018年現在、お蔭様でPaidのご利用社数は2,600以上になり、Paidのビジネス部門も20名を超えるほどに成長したのです。

副社長の声も新入社員の声も平等。事業を俯瞰して見つめる機会を大切に

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▲合宿の様子

Paid事業部では一泊二日の合宿を毎年恒例化していますが、このような意図があります。

石井 「普段から社員たちは商品を改良していこうという意識を持っていますが、業務をしながらではどうしても個別のニーズに対応していく"積み上げ式"の改善案になってしまいます。ひとつのニーズに応えると、どこか違うところで不利益が生じる、ということもあるんですね。年に一度は、会社から離れた合宿の場でPaidの将来をあらためて見つめなおす機会が必要だと思うんです」

合宿の数週間前に、全員がサービス改善のアイデアをプレゼン。ここでは批評は一切せず、合宿先でアイデアだけを書いた紙を並べて「ああでもない、こうでもない」と話し合うという流れです。

石井 「大体誰のアイデアなのか覚えているとは思うのですが、名前が書いてあると却下されたときに自分自身が否定されたような気分になりますよね。だから、あえて書かないようにしています。
新卒の子が斬新なアイデアを出すこともありますし、私のアイデアがガンガン却下されることもあります(笑)。誰のアイデアかで優劣をつけるのではなく、アイデアそのものに対して真剣に話し合うことが大事でしょう。
そして、煮詰まったら足湯にいってリフレッシュすることも大切ですね(笑)。2017年の春にリリースした『Paid定額自動請求』サービスも、この合宿の場から誕生したんです」

「Paidのおかげで売上が上がった」「新規事業をはじめられた」というお声もたくさんいただいています。目の前のニーズにお応えしていき、その結果クライアント様のインキュベーターのような役割を担えるなら、これほど嬉しいことはありません。

社員が成長することで、ラクーンやPaidが成長していくはず。これからも私たちは意欲的に学び続け、新しいインフラサービスを創造していきます。

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