「誰かと一緒に生きていく」 ゼクシィとともにその普遍的テーマに向き合っていきたい

結婚情報誌「ゼクシィ」での編集歴は2018年で10年目。2018年12月現在、首都圏版編集長を務める平山彩子。編集職について3年ほどはスキルが伸びず、常に「65点」の記事しかつくれなかったと言います。編集者として「覚醒」したきっかけ、現在も編集者として常にこだわっていることを聞きました。
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伝えたい想いが形になり、ヒットCMが生まれた

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2017年4月。結婚情報誌「ゼクシィ」の新しいCMが放映されました。

ウエディングドレス姿の花嫁が新郎とともに、風船にぶら下がり空に昇っていく映像。そこに、花嫁の声のナレーションが流れます。

70億人が暮らすこの星で結ばれる。珍しいことではなくても、奇跡だと思った。結婚しなくても幸せになれるこの時代に私は、あなたと結婚したいのです――

ネット上では、「"結婚しなくても幸せ"って、ゼクシィが言うとは」、「結婚しない人の価値観を認めながらも、結婚の価値をしっかり伝えている」といった大きな反響が巻き起こりました。

このCMをリーダーとなり仕掛けたのが、ゼクシィ首都圏版編集長の平山彩子です。

ライフスタイルが多様化し、結婚という選択が至極当たり前のことではなくなっている時代に、ゼクシィ編集部ができることは何か。自分たちが「結婚」という事業に向き合うのはなぜか。議論の末に出した答えが、ただ真っ直ぐに「誰かと一緒に生きていくことを応援したい」でした。

そんな想いを込めたCMを創るため、広告代理店に向けコンペを実施。参加したクリエイターたちへのオリエンテーションでは、このCMを見るときのターゲットのシチュエーション、心情までを想定してオーダーしました。

「家に帰って普段のリズムの中生きているとふとTVから流れるCM。何気なく見入ると、ぐっと何かが込み上げてくる。そして、夜ベッドの中で、自然と大切な相手を思い浮かべ、思わず結婚式を想像して、育ててくれた家族を想いながら……眠りにつく」そんなCMを創ってください。

こうしてあのヒットCMが誕生。世間の好反響はゼクシィの部数アップにも貢献し、「結婚」そのもののプロモーションという面でも成果を挙げました。

言葉の裏側にある本音、リアルな感情にフォーカスする

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子どもの頃から、小説を読むのが大好きだった平山。日常生活の中で人とコミュニケーションをとるとき、建て前の裏側に本音が隠れていることを察していました。

表には出てこないけれど、自分とは異なる考え方や感情がある。それを教えてくれたのが本でした。そして、「いつかは出版の仕事に携わりたい」と考えるようになったそうです。

編集者となってからも、人を観察し、裏側にある想いにフォーカス。電車のなかで浮かない顔をしている人を見たり、行きつけのカフェの店員さんがいつもより楽しそうだったりすると「何があったんだろう」と想像を巡らせます。それは仕事においても同様です。

平山 「社内のメンバーと話していると、『カスタマー(読者)がこう話してくれました。だからこうなんです』という説明を受けることが多い。
カスタマーの発言はもちろん大切な事実だけど、その人がその日、どんな気持ちで過ごしたことでその発言に至ったのかを想像する必要があると思うんです。そこにこそ大切なヒントがありますから」

企画会議では、編集メンバーたちがそれぞれにターゲット像とコンセプトを設定した記事企画を持ち寄ります。平山は「ターゲットは、本当にそう思っている?あなたが思い込んでいるだけではないか」と問いかけると言います。ターゲットの本音を捉え違えると、記事で深掘りするべきポイントも変わってくるからです。

記事タイトルや誌面で大きく打ち出すフレーズでは、目にする読者がどう感じるかを想像。機嫌がいいとき、式の準備に追われて疲れているとき、彼とケンカして落ち込んでいるとき。どんなタイミングで見るかによって、受け取り方は変わってくるはず。さまざまな立場の人に想いを馳せながら、表現を磨き込んでいきます。

「編集者として平均点以下」のコンプレックスを克服した日

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平山は新卒でリクルートエージェント(現:リクルートキャリア)に入社。転職希望者たちと接するなかで、「どう働くか」の大切さを知り、「本当にやりたい仕事をしよう」と転職を決意します。出版関連の求人を探しているなかで、ゼクシィ編集部へ入社しました。

最初から「敏腕編集者」だったわけではなく、入社から数年間は、編集者としてのスキルが伸びずに悩んでいました。自分がつくった記事を面白いと思えないことも多かったと言います。

転機となったのは、2年が過ぎた頃。それまでは関西の編集部に所属していましたが、組織改編で東京に異動。企画会議で他のメンバーたちの企画プレゼンを聞き、自分との差を感じます。

平山 「メンバーのなかには、突拍子もない企画を出して怒られる人もいたけど、そういう人ほど素晴らしいヒット企画も生み出す。一方、私は常に 65点の編集者でした。
もともと器用貧乏タイプで、不可はないけど可もない、だいたいいつも平均点という感じ。このままではいけないと思い、面白い企画とはどのようにつくられているのか、皆の企画プレゼンを真剣に聞いてインプットに努めるようになりました」

ある日、平山は第一特集の担当を任されます。号のトップに掲載される、12ページにわたる大型記事です。

ところが、誌面レイアウトをグラフィックデザイナーに発注する間際になって、編集長からダメ出しを食らいます。「こんなのダメ。イチからやり直し。本気でやってみなさい」。

「本気でやる」。そう覚悟を決めるとアドレナリンが噴出。イチから誌面構成に取り組み、一気に12ページをつくり上げました。平山は一言一句を練り、ライターが書く余地がないほどまでに誌面を埋めました。

「この日に『覚醒』しました(笑)」と、平山は当時を振り返ります。それまでノウハウとして頭に蓄積してきたことが、自分で手を動かして作り上げる経験を機に、ようやく自分のものになったのです。それは「何があったの!?」と周囲も驚くほどの変化でした。

平山 「それまでは既存の型にとらわれていたんですよね。『こういうもの』という感覚だけでつくっていた。でも、このときは、本当に言いたいことをいかに面白く見せるかを考え抜いた。こんな見せ方もあるんじゃないか、というアイデアが浮かんできて、ようやく『柔軟な発想でつくればいいんだ』と気付いたんです」

それは入社から3年ほど経った頃のこと。それから、約半年後に編集デスクに昇格し、3年後の2015年に西日本版編集長、翌年の2016年に首都圏版編集長に就任します。

「結婚」に紐づく普遍的なテーマに取り組み続けたい

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「今後の目標は?」という問いかけに対し、「目標を掲げるって、実は一番苦手なんです」と苦笑いする平山。

これまでも明確な目標を持っていたわけではなく、「正直、誰かが期待してくれることに応え続けようとしていたら今に至った」と言います。

しかし、ゼクシィの編集を手がけて10年の間に、明確になった軸があります。入社前は「とにかく出版関係の仕事に就きたい」という想いが、今では、「結婚」「結婚式」というテーマが自分の軸へと変化しました。

平山 「『誰かと一緒に生きていく』って、人生の普遍的なテーマだと思っています。それに関われる今の仕事は、私にとって天職なんじゃないか、って。
時代の移り変わりとともにゼクシィも変化させていかなければならないけれど、そのテーマは変わらず大切にしたい。これからも追及し続けていきます」

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