M&A後、3期連続130%超の増益を達成したリジョブの組織づくりとは

「美容業界の採用コストを従来の2分の1から3分の1に下げるシステム」を構築し、サービス開始からわずか5年で美容業界の求人メディア事業でトップクラスのシェアを獲得したリジョブ。2014年のじげんグループ加入後も独自の進化を続け、積極的に国内外問わず新規事業を展開するなど、そのパワーはますます加速しています。

突然のM&A発表で組織に衝撃が走った日

▲雇用形態を問わず、リジョブが日ごろ大切にしている思いを共有する「四半期キックオフ」

ある日、突然会社の経営者が変わる――。

ニュースではありふれた出来事でも、いざわが身のこととなると、そう簡単に受け止めることができないのが、M&A。

美容業界に特化した求人メディア事業を運用していた私たち株式会社リジョブ(以下、リジョブ)は、従来になかった低コストの広告掲載費(ランニングコスト)と成功報酬を組み合わせたモデルにより、採用コストを従来の2分の1~3分の1に抑えることに成功。熱意ある社員に支えられ、順調に成長していました。

そんな矢先に、自社が20億円で売却されるという突然の発表が。上場企業によるM&Aのため、全社員が当日まで何も知りませんでした。「雇用は守られる」とはあったものの、不安からか泣いて飛び出すメンバーもいました。

そんな空気を一新させたのは、新代表取締役・鈴木一平による全社員との個別面談でした。鈴木は社員だけでなく、常駐する外部スタッフや内定者なども含め、約50名と個別に面談を実施。

ひとり30分、ときに1時間以上。全拠点に足を運び、鈴木は全社員に直接「いま、どんな業務を行なっているのか」「これから何がしたいか」とじっくり聞いて回りました。

当時、前社長の秘書兼人事担当だった窪田みどり(現・コーポレート推進室 グループマネージャー)は、鈴木についてこう語ります。

窪田 「鈴木の第一印象は、“お釈迦様みたいな人”。“学生時代に創業も経験され、20代でリジョブの新代表に着任”と聞いて、すごいギラギラした経営者をイメージしていたんですが、『もうけたい』『成功したい』のようなギラギラ感は一切ありませんでした。
ビジネスを通じて社会や業界課題を解決したい。自分たちが日ごろ大切にしている思いと同じ姿勢がはっきりと伝わってきました。あの面談で、不安を抱えていた社員たちはとても安心したと思います」

異文化の交じり合う120名の企業でスタートアップ企業のような組織づくり

▲求職者にいつでも春を提供。「日本の技術とサービス」を象徴する、桜がメインビジュアルの新オフィス

社員との面談を通じ、鈴木はリジョブならではの強みを発見します。

じげんグループ(以下、じげん)には“個の力が強く起業家志向で、物事を論理的・客観的に考えられる人が多い”という特徴がありました。

一方でリジョブには“自分がどうなりたいか”よりも“リジョブが会社としてどうありたいか”と、会社を主語に目標を語る社員が多いこと。個人よりもチームや組織を大切にしていることに、驚きました。

鈴木は、このリジョブ独自の価値観と強みを活かした、新しい組織づくりを決意。異文化交じり合う120名規模の会社で、スタートアップ企業と同様の組織づくりに着手します。

さっそく、鈴木は役員やマネージャー層など約20名を集めた合宿を実施。互いの生い立ちや仕事へのスタンスを知ることで一気に相互理解を深めました。

この合宿に新卒3年目で参加した赤羽(現・社長室 兼 リテール営業Div グループマネージャー)は、合宿についてこう話します。

赤羽 「じげんから来た人は、これまでチーム力で成果を出してきた私たちとは違い、個々人で高いパフォーマンスを追求するスタイルの仕事の進め方をされていました。
これらの違いをふまえ、この合宿で改めて個々人が仕事にかける思いをすり合わせたことで、お互い業界や社会に向かう思いが純粋であることを強く感じたんです。
そしてお互いに理解し合って、信頼しあう瞬間を目の当たりにして、新生リジョブで頑張っていきたいと改めて思いました」

このときの個人面談や合宿を経て、新ビジョンは「日本が誇る技術とサービスを世界の人々に広め、心の豊かさあふれる社会を創る。」に決定。

会社ロゴは「求職者にいつでも春を提供するリジョブ」を象徴し、「日本の技術とサービス」に見立てた桜の花びらと、世界一飛距離の長いキョクアジサシをモチーフに表現しました。

心機一転、移転した新オフィスには、桜をメインビジュアルに内装を設計することで、社員はもちろん、採用時の応募者やクライアントにもリジョブの思いを伝えやすくなりました。

さらに旧リジョブの当時20代だったメンバー3名が責任者に抜擢された新規事業がスタートするなど、新生リジョブへの期待感が高まりました。

経営幹部候補制度を導入。「LOVEとPOWER」を雇用形態ごとに定義

▲個人ではなくチーム制で“仲間と新規事業を創造する”のがリジョブ流。毎年夏に行われる、事業創造合宿

次に解決するべき大きな課題は、「人材採用と育成方針の再構築」「多様なバックグラウンドと雇用形態の垣根を超えた社内コミュニケーションの活性化」でした。

まず“自分たちの手で新生リジョブをつくる”という当事者意識の高いメンバーを集め「経営幹部候補制度」を制定。

M&A直後は即戦力となる中途採用に注力する組織が多いなか、中長期的な視点から、あえて「新卒経営幹部候補」の採用に踏み切ることに。新たな文化を伝え、人を採用していくことが組織づくりには不可欠だったため、この幹部候補メンバーやマネージャー層がリーダーシップをとり採用活動を開始しました。

社会や業界や他者のために自分の力を活用したいと思う人材が多いこと。それは共通してこれからも持ち続けたいリジョブの強みでした。その強みを「LOVEとPOWER」として、新たな採用育成のキーワードとしました。

かみ砕くと「他者や社会に対する愛」と「そのLOVEの実現に向けて実行し自己成長する力」です。どちらも全員に持っていてほしい。

ただ、チームがより強くなるためにLOVEを発揮する対象や範囲はそれぞれの価値観を尊重したいと考えました。

リジョブには契約社員や業務委託、アルバイトなどの多様な雇用形態で働くメンバーがいます。そこで「LOVEとPOWER」を雇用形態やポジションごとに再定義し、その定義に沿った採用活動やチームづくりが行なえるようにしました。個々人がその価値観に合ったキャリアステップを歩むことができるように。

社会を変えたいと思う人もいれば、となりの誰かのために頑張りたい人もいる。個々の考えや思いを大切にしていきより強いチームをつくっていくために、「社会を変えたい」「業界を変えたい」「クライアントに貢献したい」「となりの仲間に貢献したい」など、みんなが持っている志向をあえて明示化しました。

窪田 「雇用形態の違いは、決して上下関係ではなく、どこを見据えて行動するかの違いがあるだけです。経営幹部候補とアルバイトさんで必要とされる資質は異なりますが、遠くを見て仕事をするメンバーも、となりにいる人のために仕事をするメンバーもどちらも大切で事業運営には欠かせません」

あえて雇用形態ごとに「LOVEとPOWER」を明示化することで、自身の志を大切にし、ひとりでは成しとげられないことをチームで成しとげられる強い組織にしていこうと決めました。

窪田 「今後は雇用形態別だけでなく、メンバー個々人のキャリア志向やライフステージを尊重し、応援する組織づくりを進めていきたいと思います。
この数年のみんなの頑張りにより文化が醸成され、M&A時を知らないメンバーも一人ひとりが“会社を創る”ことを当事者意識を持って考えてくれているので、さらなる仕組みづくりに会社全体で着手できてきています」

目指すは「おもてなし業界のSPA構想」。日本の高い技術を世界に届けたい

▲途上国女性の経済的自立を支援する「咲くらプロジェクト」。就業支援イベントをフィリピンにて開催

新ビジョンや採用・育成キーワードを策定後、実際にそれらを体現し、社内一人ひとりが「会社をつくる」取り組みが展開されています。

ビジョンを象徴する桜を咲かせるイメージにちなんで社員サポート制度「Blooming!」では、社内にコミュニケーションスペース「さくらBar」の設置や、チャリティヨガイベント「咲くらヨガ」の実施、途上国支援の「咲くらプロジェクト」を展開するなど、社員の自主的な取り組みにより、所属する部署の垣根を超えたタテ・ヨコ・ナナメ、全方位の社内コミュニケーションが活性化しています。

その結果、全社大運動会や四半期ごとの全社キックオフなどへの、アルバイトの参加率が右肩上がりに上昇。M&A後は3期連続130%増益を実現し、3年間で社員数は1.5倍に増加、売り上げは2倍以上に成長しました。

赤羽 「M&A後はやることが多すぎて大変でしたが(笑)、 いまは全メンバーが同じ方向を向いている。リジョブには他者を思いやれるメンバーや、自分たちの組織を楽しんでつくってくれている方が多いと感じています。」
窪田「悩んでいるメンバーがいたら、すかさず誰かが相談にのったり、採用面接に他部署のマネージャーが出てくれていたり。「LOVE×POWER」をベースに“みんなで会社をつくっていく”という当事者意識が広がった結果が、業績向上にも直結していると思います」

リジョブの次なる事業構想は、「おもてなし業界のSPA構想」です。美容・ヘルスケア・介護といった、リジョブが支援する業界を“おもてなし業界”ととらえ、業界を志す専門学生の支援、CtoCのサービス提供まで、リジョブがプラットフォームとなり一気通貫で提供することを目指しています。

赤羽 「国内に目を向けると、インバウンドの海外旅行者のうち、1割が美容サロンに立ち寄っているというデータもあります。それほど、日本の美容・ヘルスケアの施術は海外からも高い評価を受けています。
それなのに集客方法が、値引き競争メインになってしまったりしている。本当にもったいない。もっと日本ならではの技術力やホスピタリティの高さ、心のこもったおもてなしが評価される仕組みを構築していきたいです」

M&A後、3年がかりの組織づくりで土台がゆるぎないものになり、ビジョン実現に向けた勢いは、ますます加速しています。

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