Retty創業者・武田和也が語る、起業家として大事な3つのこと

2011年にサービスを開始した実名グルメサービス『Retty』は、2017年5月に月間ユーザー数3,000万人を突破。たくさんの方が利用するサービスに成長しました。Retty株式会社を創業した武田和也は、なぜこの事業を立ち上げようと考えたのかーー当時のことを、本人にできる限り思い出してもらいました。
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最初は「教育」で何かをしようと思っていた

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▲2017年6月に麻布十番へオフィスを移転、同年11月現在の社員数は100名を超えた
基本的にあまり振り返るということをしないんですよね。だから忘れてるんですよ、ほとんど。思い出せるかなぁ……(笑)

起業しようと思ったのは、大学生のとき。でも実家が事業をやっていたので、いつかはやるんだろうっていうのは、小さい頃からなんとなく思ってましたね。

家に商売の電話がかかってきて「これは重要なお客さんだからこういう対応をしておかなきゃいけないな」とか、そんなことがきっかけだった気はしますね。

18歳で東京に来て、大学2年生くらいの頃でしょうか。起業しようと決めて、インターンを始めました。そうしたら、おかしいと思うことがすごく多くて……。会社の人たちが全然楽しそうじゃないんですよ。学生ながら、「日本はこれでいいのか?」みたいなことを思って。

ちょうどその頃、海外によく行っていて、日本という国を外から見るようになったタイミングだったんですよね。たとえばアメリカは裕福な人は裕福だけど、平均値で見れば日本人の方が豊かだし、インドと比べたら、日本は圧倒的に裕福。

「なんでこういう国ができたんだろう」って思うようになった延長で、「日本はなんでこうなったんだっけ?」みたいなことを、ちょっとずつ考えるようになったのかもしれませんね。

そうして考えていくうちに、根本は教育なんだと思うようになりました。親が仕事の愚痴を言っている家で育てば、子どももそうなる。だからそのときは、自分の人生を使って「教育」で何かをしようと思っていました。

いろいろな職種で活躍している人たちが、それぞれの成功事例を紹介する授業をやると、みんなが夢を持てていいんじゃないか。そう考えて、実際に青学の教授に提案したりもしたんです。

そのときは、お金儲けはしなくていいからNPOでやろうと思っていました。でも、インターン先の社長に「世の中の人にインパクトを出せるのか?」と言われて、「確かに!」と。

事業は、継続的に収益があって、大きくならない限りは影響力が持てない。だったら大きな会社やサービスを作る方向がいいんじゃないか。そう思うようになって、今に至るんです。

大きな会社を作って、社会的に意味があるものが作れれば、それを通じて世の中の人の役に立てる。

会社を作るだけならいくらでもできると思うんです。日本に400万社もありますし。でも大きな会社、大きなサービスを作るためには、全く違うことをやらなければいけない。それでそういう起業の仕方をしようと思いました。

今でも、自分がどうなりたいっていうのはあまりなくて。何をやってもそれなりに楽しく生きれるし、幸せでいれる自信があるから、そういう意味でどうにでもなれると思ってる(笑)。

貧しい家系ではなかったですし、僕はそれなりに恵まれて育ったんです。だからあまり物欲みたいなものがない。というか、ほぼゼロ。それで世の中に対して何かやりたいと思った。それがベースですね。

中国か、シンガポールか、それともアメリカか

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▲事業アイデアを考えるため渡米を決意、退職したネットエイジ(現ユナイテッド)での送別会にて
大きな会社を作ろうと決めたあとに、商売を学びたいと思って、インターン先でECサイトを立ち上げました。どんな商売をやるのか決めて、商品を作って、売り方を考えて、お金を回収して、配送する。そのワンサイクルを経験できるから、ECがいいと思ったんです。

ECの経験からモバイル広告が伸びると確信していたので、次はネットエイジ(現ユナイテッド)という会社に転職。モバイルの広告代理店の営業をやって、3年経たないくらいで退職しました。IT業界で起業する人の登竜門的な会社だったので、もともと起業する前提で入ったんです。

それで辞めて間もなく、アメリカへ行きました。

ネットエイジにいた頃、25歳くらいでしたかね。、起業や新規事業に特化した大前研一さんの『アタッカーズ・ビジネススクール』に行っていたんです。そのときに「日本にいてもしょうがない」ということをいろいろなデータで見せられて、いったん海外に行かないと、グローバルなところも含めて、長期的に自分がやりたいことができないと思いました。

あとはその頃にソフトバンクの孫正義さんが、「登りたい山を決める。これで人生の半分が決まる」ということをよくおっしゃってたんです。ECの経験を通じて「どのプラットフォームで何を売るのか」という最初の入り口の選定が重要であることを実感していましたし、モバイル広告の営業でもさまざまな業界やクライアントを選定していく中で、どの領域を選ぶかによって大きく差が出ることを感じていました。だからこそ、その言葉がストンと腑に落ちた。

これからくるであろう中国か、それともアジアの中心のシンガポールか、シリコンバレーかで悩みましたが、新しいネットのサービスの流れや本質を理解していかないと、世の中にインパクトを残せる会社は作れません。

そのゴールを目指すなら、やっぱりシリコンバレーがふさわしいと思って、アメリカに行くことを決めました。

すべてのカテゴリーで次世代のサービスが生まれることを確信していた

英語は全然話せないし、コネも全くない。1年以内に帰ることだけ決めて、結局10〜11ヶ月滞在しました。住んでいたのは、お風呂共用でボロボロの、家賃7万円くらいの部屋。起業して何をすべきかを集中して考えたかったので、シェアじゃなくて個室です。

当時は、とにかくいろいろな人に会っていました。あとは流行っているサービスを調べたり、使ってみたり……。ネットの使い方に関した人間観察もずっとしていましたね。

たとえば当時2010年でしたけど、ホテルの受付のネットサービスに関心がなさそうな人でも、ずっとFacebookを見ているんですよ。初対面で会った人と名刺じゃなくてFacebookを交換してたりとか。Facebookは実名だから普及しないと日本では言われていたのに、アメリカでは普通の人が日常的に使うことによって生活が大きく変わっている。このことに大きな衝撃を受けました。

ソーシャルとグルメを組み合わせるアイデアでいくことを決めたのは、渡米して8ヶ月後くらいの頃です。

ソーシャルメディアとスマホが、世界を変える、とんでもなく大きなことだっていうことがよく分かったんです。多少細かなところがずれても、これから訪れる変化の大きな方向性は絶対に変わらない。ファッションだろうが、人材だろうが、ECだろうが、全てのカテゴリーでソーシャルメディアとスマホによって次なるサービスが生まれることを確信していました。

どのカテゴリーでもチャンスがあると思っていたから、もう楽しくてしょうがなかった。その中でどれを選ぶかを決めるときに、「より多くの人に対して」という自分のやりたいことを考えて、食がいいと思ったんです。

「次の世代のグルメサイトってなんだろう」と考えながら、その当時あったグルメサイトの構造を徹底的に調べていったら、代表的なサイトの中身はコミュニティであることが分かった。口コミが発生するコミュニティがどのようにできているのかがCGM (※)の本質なので、そこが次の時代のものに変われば、新しいサービスが生まれます。

当時の口コミは匿名でパソコンから投稿するのが一般的でしたが、誰もが発信できるスマホと、Facebookのオープンな性質が融合されることによって、ここがどう変わるのか。その辺を考えた結果、絶対にいけると思いました。

※“Consumer Generated Media”の略称で、Webサイトのユーザーが投稿したコンテンツによって形成されるメディアのこと。ブログサービスやSNSがこれに該当する。

起業家として大事な3つのこと

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▲会議室ではなく、オープンなスペースで打ち合わせをすることが多い
起業家として一番大事なのは、まずは大きな目標があること。全てはそこから始まる気がするんですよね。それによって、会社の作り方が変わってくる。小さく成功するための方向性と大きく成功するための方向性は、全部が違うと思うんです。だから、どのレベルを目指すかが何よりも重要。

ふたつ目は、全力投球すること。「それしか考えない」くらい没頭することが大事です。そうすると周囲への巻き込み度合いが変わってくるんですよね。

起業して事業を成長させていくことは、ひとりではできない。どれだけ多くの優秀な人と一緒にやっていけるかが重要です。そのスタートラインに立つためにも、社長が誰よりも没頭していることが前提だと思います。

そういう気質は子どもの頃からあったのかもしれないですね。小学生のとき、ソフトボールの大会に出るために地元の子を集めて、夏休みの40日間、朝から晩まで毎日特訓してましたから。それでリトルリーグの大会に出て、素人軍団で頑張って、結局決勝で負けちゃったけど、全力投球してました。目標を決めて、誰よりも熱中して、人を巻き込んでいく。それがたまたまいい方向に向いたんで、よかったですよね(笑)。

そして最後に、市場とタイミングを見極めること。大きな市場には、すでに大きな競合が存在している。そう簡単に成長することはできませんが、時代の変わり目のような適切なタイミングであれば、波にのって一気に成長していくことが可能です。

Rettyは外食産業という非常に大きな市場で、非常に大きな競合サービスも存在します。でも、スマホやソーシャルの「時代の変わり目」のタイミングでスタートできたことが大きな成長ドライバーになりました。これこそがスタートアップの戦い方だと思うんです。

今はユーザー数も伸びて、次なるフェーズに向かっているタイミング。みんながそれぞれの強みを発揮して、新しいやり方にシフトしていくことが重要です。これまでのやり方に固執しない、柔軟性のある会社でありたいですね。

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