サービスはあえて使わないーーママ友で会社をつくる「ルカフォト」が大切にする信頼関係

制度が整いはじめても、子育てしながら働くことは容易ではない。主なハードルとなるのが時間的制約。それをママ友を巻きこむことで解決し、事業拡大しているのが、ルカフォトです。公園での記念写真撮影サービスを提供している会社のキーワードとなるのは信頼関係。代表・宮川理恵のライフスタイルの変遷とともに紹介します。

「専業主婦になってほしい」一度はあきらめたカメラマンの夢

▲幼少期

いずれ実家の写真館を継ごうーー。大阪で生まれ育った宮川理恵は、大学卒業後、父の背中を追って子どもの頃からあこがれていた写真の世界に飛びこみました。カメラの機材、撮影技術、画像編集……プロとして活躍するため、己のスキルを磨く日々。充実した毎日でした。

しかし結婚を機に、夫の勤務地のある神戸へと引っ越すことに。その後、第1子を出産・妊娠します。

宮川 「私はひとつのことにのめりこみやすいタイプ。しかも限度を知らないので仕事に熱中すると、家のことがおろそかになることもありました。そんな性格を知ってか産後、夫からは専業主婦になることを求められて……。子どもも家庭も大事。だからカメラマンの夢をあきらめることにしました」

夢を追いかけていた日々から一転。家事と子どもに向き合う毎日に、宮川は人生の目標を見失います。

宮川 「産後、言葉の通じない赤ちゃんとふたりっきりで部屋にこもっていると、産後ウツのようになりました。
なんのために大学を出て、なんのためにスタジオの修行に耐え忍んできたのか。子どもを2〜3人産んだ後、社会復帰できるのだろうか。残りの人生は、家事と習い事の送迎で終わるんだろうか……。次々と不安や心配事が出てきて、とても苦しかったです」

「夫の理解を得て働いているママがうらやましかった」と振り返る宮川。しかし可愛いわが子を前に、少しずつ子育てライフを楽しめるようになります。

宮川 「働きたい気持ちはありましたが、1歳の子どもを保育園に入れる勇気はなくて。一緒に児童館や公園などに出かけるうちに、信頼できるママ友もでき、楽しい毎日を過ごせるようになりました」

とはいえカメラマンとして活躍したいという願いは、宮川の心のなかにあり続けました。そこに、転機は突然訪れます。

宮川 「いつものように公園で子どもを遊ばせていたある日、たまたまママ友親子の写真を撮ってあげました。するととても喜ばれて。『起業しよう!手伝ってあげる』と背中を押してくれたんです」

そのママ友こそ、創業メンバーとなった河石亜美。河石の思わぬひとことから、ルカフォトは誕生しました。宮川が撮影担当、河石が撮影中のアシスタントやマネジメントを担当。二人三脚で大きな一歩を踏み出したのです。

1万円で家族写真を撮影。低価格・高品質が話題になり一躍人気サービスへ

▲公園で撮影された七五三の記念写真

記念写真を撮影する際、まず思い浮かぶのはスタジオ撮影。しかし宮川は、スタジオ撮影に疑問を持っていました。

宮川 「価格が不明瞭で、様々なオプションをつけると高額になりがち。非日常的な空間のため、子どもが人見知りをして泣いてしまうこともあります。
『いつもの笑顔を撮ってもらえたり、オリジナリティやおしゃれさも欲しいな』というママ友の声も聞いていました。そのため、写真館の娘であり、ママでもある私だからこその商品をつくれるのではと考えました」

そこで商品化したのが外で遊びながら短時間で撮影、しかも低価格な「こども・家族撮影会」です。当時まだめずらしかった写真データ納品という形が好評で、ママたちは撮影した親子写真を次々とSNSにアップ。あっという間に口コミで広がっていきました。

ルカフォトの会員数は、3年で1000組を突破し、1日数十万円の売上をあげるようになり、このまま成長を続けるかと思われました。

しかし宮川が仕事に夢中になるあまり、家事・育児は後回しに……。仕事とは裏腹に、家庭内では夫と衝突することが増えていました。

宮川 「当時は予約対応、撮影、画像編集、データ送付などすべてをひとりで対応していました。子どもを寝かしつけてからの編集作業。睡眠時間も十分にとれない悪循環に陥っていたのです。
撮影の日に子どもが熱を出した時、預け先がないことも問題で。子どもを持ちながら働くことのハードルの高さを思い知らせれました」

経営者の仕事は“雇う”ことではなく“助けてもらう”こと

▲(左から5番目)宮川とルカフォトで働くママ友メンバー

仕事・家事・育児に手一杯な宮川。そんな様子をみて、河石は宮川にチームづくりをすすめます。

宮川 「抱えている仕事を分散するよう言われ、近所のママ友に声をかけはじめました。仕事と家庭どちらも大切にしたいから『助けて!』というと、驚くことに『協力する』と近所のママ友から次々と手があがったのです」

あれよあれよという間に、ルカフォトには経理、WEBシステム、グラフィックなどの専門性を持つスタッフが集まりました。近所のママ友は、かつて何かのプロフェッショナルだったーー。

この気づきはルカフォトの方針を定める決定打となります。

ママ友チームのメリットは3つある、と宮川は考えます。

宮川 「ルカフォトはママ世代に向けた商品。スタッフがママであることでお客さんのニーズを理解することができますし、口コミの原点にもなります。
2つ目はスタッフみんな気が合うこと。これはとても重要だと私は考えています。なぜなら遊びと仕事の境目がないから。信頼関係があれば意見もしやすいですし、能動的に動いてくれます。
3つ目はスタッフ同士で子どもを預けあったり一緒に遊ばせたりする間に、仕事ができること。託児サービスを利用しなくても、社内で頼り合えるってすごく心強いです」

チームとなったルカフォトは、2018年現在着付け師や衣装屋さんなど様々なプロとも連携。事業の幅を広げています。

宮川 「着付け師や衣装屋さんと提携することで、ロケでの七五三撮影が可能になりました。また広告代理店から『ママカメラ教室』や『親子撮影会』を依頼されたり、ママ向けイベントを探している企業さんに『ママ向け写真教室』を提供する機会も増え、売上も伸びています」

仕組みが整ったことで宮川の労働時間は減少し、夫との関係も改善。2018年現在は3児の母として、子どもとの時間も大切にしながら仕事も楽しんでいます。

ルカフォトなら安心!と言われるチームを目指して

▲3番目の子どもと宮川

第2子、第3子の出産前後もルカフォトの仕事を中断せずに済んだのは、チームの支えがあったから。宮川は一匹狼のフリーランスではなく、チームとして働く大きなメリットを感じています。

2018年現在は複数のカメラマンとも提携。宮川が不在でも撮影の受注から納品まで回るようになり、ルカフォトはさらに一段ステージを上げようとしています。

宮川 「ルカフォト=宮川が撮影するというイメージだったので、2人目を出産した際はほかのカメラマンにお願いすることができず、撮影も編集もすべて自分でやっていました。でもふたりの子育てをしながら働くのは本当に大変で……。第3子妊娠を機に、ようやく提携カメラマンを募集しました」

宮川以外のカメラマンが撮影した写真も、お客様からも好評。「宮川に撮影してもらいたい」から「ルカフォトなら安心」に変わってきました。

宮川 「ルカフォトにはプロが集まっているから、誰が撮影しても大丈夫とお客様にもっと思ってもらえるようになりたいですね。
妊娠・出産というハードルがなければ、その一歩を私は踏み出すことができないままでした。だから妊娠は決して仕事の障害ではなく、フリーランスからチームへ変わるきっかけを与えてもらったのだと思っています」

家事も子育て支援も買い物も、ネットで予約できる時代。仕事の時間を捻出するために、様々なサービスを使って効率よく生活を回すことが、できるビジネスパーソンであるようにも思います。

しかし宮川はあえて便利なWEBサービスから距離を置き、近くのママ友に「助けて!」の声を上げ続けます。それはお互いを理解し合えているママ友こそ、信頼できる存在だから……。

これからもルカフォトは、顔の見えるあたたかな関係性を大切に、親子の笑顔を撮影し続けます。

関連ストーリー

注目ストーリー