花の名ではなく、IT企業として――「SAKURA」を海外に広める、ある女性ふたりの挑戦

情報インフラは快適で安定している、これは日本では当たり前のこと。でも、まだまだ高嶺の花でしかない国があることをご存知でしょうか?さくらインターネット株式会社はそういった国に向け、サーバーの寄付や、子どもたちへプログラミング教室の場を設けています。今回はその施策をリードするふたりの女性のストーリーです。
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エンジニア、そしてパラオ帰りのダイバーという異色のタッグ

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▲吉田(左)と田村(右)。異色のタッグで海外事業を展開している

まず、海外CSRを担うふたりについてご紹介します。

ビジネス推進グループ 海外事業チームの吉田美香がさくらインターネットに入社したのは2013年7月。高等専門学校で物質工学を専攻していましたが、当時は就職氷河期で就職が難しい時代。卒業後は化学系の企業への就職をあきらめ、未経験でも採用枠があったIT企業にプログラマーとして就職します。その後、インフラエンジニアの仕事に興味を持ちキャリアチェンジしました。

吉田「何年か仕事をした後、転職エージェントにさくらインターネットを紹介してもらったんですが……。面接で社長の田中邦裕がいきなり出てきて、これは何か試されているのかと思いました(笑)」

そしてもうひとりのメンバー、田村瑠美の経歴はまさに異色です。大好きなダイビングをライフワークとするためにパラオへ移住。エステティシャンの資格を取得していたので、現地のサロンに勤務しながらダイビング中心の生活を謳歌。のちに帰国し、2015年11月にさくらインターネットに入社しました。

田村「データセンターについての記事がさくらのオウンドメディアである『さくらのナレッジ』に掲載されていて、すごく雰囲気がいいなぁと思ったんです。そこから入社したい気持ちが高まりました」

入社後、吉田はネットワークエンジニアとして、田村は東京拠点のデータセンター運用担当として勤務をスタートさせます。そんな、正反対のキャリアを歩んできたふたりの運命が交錯したのは、2016年のことです。

吉田「会社の組織変更でエンジニアを続けるべきか、ビジネス推進をサポートする部署へキャリアチェンジするか悩んでいた時、社長に言われたんです。『鉛筆を転がして決めたら?』と。要するにどの部署に行っても、会社は同じ。そこまで悩む必要はない、という意味でした。それで、海外の方にもさくらインターネットのサービスを使っていただき、ファンになってもらう活動を担う海外事業チームへ異動することを決心しました。
せっかくチャレンジするんだから、取引先も自分で探したい。そう思い、海外企業が参加する国内外のイベントなどに出かけました。あちこちに声をかけ、前に勤めていた職場の役員にフィリピンの企業を紹介してもらったんです」

しかし、吉田は英語が喋れません。そこで海外で生活した経験がある田村にオファーを出したのです。

田村「吉田さんに『海外生活の経験あり』と話したところ、『英語が苦手な私と組んでほしい』と、誘われて。マニュアルのあるデータセンターと違い、海外事業チームにはなんの正攻法もない。だから不安はありました。でも、海外で仕事をしたい、ゼロから新規事業に携わりたい……不安よりもやりたいことの方が強くて、やろうと決めました! 」

はんだごてが熱くならない、テレビもない……トラブルが止まらない!

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▲フィリピンの子どもたちに向けてプログラミング教室を開催した

吉田が最初に取り組んだもの、それは子どもたちへのプログラミング教室の開催でした。この着想には、さくらインターネットをはじめとする数社で運営する非営利団体「KidsVenture」が主催の、吉田自身も参加している子ども向けプログラミング教室のCSR活動がヒントになったのです。

吉田「紹介してもらったフィリピン企業が、幅広い年齢層の子どもたちを対象に私立の学校を運営していて。『うちでプログラミング教室の募集をかけてみるよ!』と言ってくださったんです。すると、10歳から18歳までの現地の子ども10人が集まりました」

開催は決まった。しかしここから、立て続けに想定外のトラブルが頻発します。

ちなみに使用するのは「IchigoJam」という子ども向けプログラミング専用パソコン。テレビやモニターとキーボードをつなぐだけで準備が整うという優れもの。ところが、現地にはテレビもモニターもまだまだ高価で準備ができない、キーボードもないことが判明。当初、IchigoJamのみを寄付する予定でしたが、急きょモニターとキーボードも寄付することに。

送って一段落……とはいきません。現地に届くまで時間がかかったり、届いてからも英語配列でないといけないキーボードが日本語配列だったりとトラブルはどこまでも続きます。結局、アルファベットなどを書いたマスキングテープをキートップに貼り付け、しのぐことになりました。

田村「IchigoJamを使いはじめる際に必要なはんだごての性能も低く、電力が不安定なことが相まって全然作業が進まないということもありましたね。熱くならないから全然はんだ付けが進まない。それでも作業するみなさんを見て『器用だなぁ』とむしろ感心しました(笑)」

サーバーが送れない!?折れそうな心を支えたのは、現地の人たちの熱意

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▲文化や言語の違いはあれど、とても熱心に話を聞くフィリピンの人々

大規模なものから企業内にある小規模なものまで。日本人エンジニアにとって、サーバーは身近なものですが、前述のとおり電力が安定していない海外では当たり前のものではありません。フィリピンではサーバーなど、ネットワーク機器が稼働している様子を見たことのないエンジニアも少なくないようです。

「じゃあ、私たちが!」と、海外事業チームは現地エンジニア向けにインターネットインフラについてのトレーニングを企画。まず、新旧サーバーの入れ替えにより使わなくなった古いサーバーを検証用として寄付することにしました。

田村「送ったのはサーバー20台とスイッチやルーターなどネットワーク機器8台。荷物の量も多かったので、ひとつの荷物として大きな木箱にまとめて入れました。
海外にサーバーを送る、というのが初の試みだったので、どんな問題が出てくるのか全く見当がつかず。フィリピンの税関職員に産業廃棄物が送られてきたと疑われ、チェックに時間がかかる場合もあるというお話も聞いていたので、不安な気持ちが強かったです。とにかく分からないことばかりで、大変というレベルではなかったですね」

数々のトラブルに見舞われ心が折れそうになることもあった、と振り返る吉田と田村。しかし、現地の人たちが持つ前向きな姿勢が彼女たちの心を支えていたのです。当たり前ではない機会だからこそ、現地の参加者はとにかく、前のめり。日本人の勤勉さとはまた違う、熱意がひしひしと伝わってくるのです。

吉田「行間を読む日本とは文化が違いますから、YesかNoかという二択の質問をしなければならないなど学ぶことができました。『どうなっていますか』とメールしても、具体的に書かなければ彼らには伝わりません。
ただ、彼らは友好的ですし、取り組み方も前向き。現地に行って、ちゃんと指示すればきちんとやってくれるんです。開催までは大変でしたが、やった後の達成感は言葉では言い表せることができないほど、大きなものでした」

SAKURAと聞いて、花と一緒に想起される存在に。それが私たちの夢

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▲寄付したサーバーのトレーニングの様子。海外での認知度向上に日々取り組んでいる

フィリピンへの訪問回数はまだ片手で数えられるほどですが、ふたりは確かな手応えを感じています。そして渡航するたび、ふたりの意識にも変化が起こっていました。

田村「エンジニアも子どもたちも、とても興味を持ってくれて、質問が飛び交うんです。吸収しようという意欲の高さがとにかく嬉しくて。
あと、この経験は自分自身を大きく変えてくれました。以前はデータセンターのことだけ考えていましたが、役割が変わったことで、今は会社全体に目を向けられるようになりました。社長の田中が抱く『さくらインターネットを海外にも広げたい』という想いも、自分ごととして、しっかり捉えられるようになってきたと思います」
吉田「田村と同じように、私もビジネス視点を持てるようになりました。あと、『できたらいいな』という憧れ程度の気持ちだった英語が、目的を達成するために身に着けなければならない技術のひとつだということにも気づくことができました」

さらに、この取り組みを通じて、ふたりの間に、会社で実現したい夢も生まれました。

田村「海外では『さくら』は花の名前として知られています。でも、これからの私たちの活動を通して、『さくら=IT関連の教育や、サーバーの寄付など、CSRにも取り組んでいる会社』と認識されることを目指しています」
吉田「そう、MicrosoftやAWSと同じぐらい、名前を聞くだけで『IT企業だな』とイメージしてもらえるようになると嬉しいです。
それからもうひとつ。日本のエンジニアはほかの国に負けないぐらい優秀。なのに、英語ができないせいで、国際的な大会でのスコアが低いんです。もし、社内のエンジニアがこの活動に興味を持ってくれて、海外に教えに行くといった流れができれば、“国際的にも優秀”とみなされるいいキッカケになると思うんです」

「『やりたいこと』を『できる』に変える」をスローガンに掲げるさくらインターネット。まさにふたりは生まれたばかりの海外事業チームで、夢を実現しつつあるのです。

参考情報:初の海外開催!KidsVenture in フィリピン 現地レポート



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