若手が子どもたちを育てるKidsVenture。先生も生徒も一緒に成長

「KidsVenture」とは、子どもを対象とした電子工作やプログラミング教室を主催・運営する非営利団体です。2016年に“次世代の創出”に貢献する目的で誕生。しかし、いい意味での想定外がありました。対象とする子どもだけでなく、運営側の若手にとっても、大きな学びと刺激のある場になったのでした。
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子どもたちに学びの場を提供するなら、いっそ提供側も一緒に学ぼう

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▲KidsVentureで共同代表を務める大竹健太(写真左)と尾村亮多(写真右)

「KidsVenture」は2016年6月に、さくらインターネット株式会社(以下、さくらインターネット)、ビットスター株式会社、株式会社ナチュラルスタイル、株式会社jig.jpの4社で設立しました。

電子工作やプログラミングを通じて“つくる楽しさ”を学び、挑戦意欲にあふれる“次世代の創出”への貢献を目標に掲げる団体です。

2018年からKidsVentureの共同代表を務めるのが、さくらインターネットの技術本部に所属する大竹健太と尾村亮多です。ふたりは2014年4月の入社。初めてKidsVentureプロジェクトに参画したのは、さくらインターネットが主催した子ども向けプログラミングワークショップのサポートで、当時はまだ入社2年目。この若手ふたりのKidsVenture参画を提案したのは、人事部マネージャーの矢部真理子でした。

採用面談を担当し、ふたりがはんだ付けや電子工作に興味関心があるのを知っていた矢部は、抜てきの理由を語ります。

矢部 「 KidsVentureは子どもたちに学びの場を提供するのが目的ですが、せっかくなら提供側も若者に参加してもらって、そこから何か学んでほしいと思いました。ふたりにとって良い機会になればいいなと」
尾村 「声をかけられたとき、学生時代に学校主催の子ども向けプログラミング教室を手伝ったことがあって、それを思い出し面白そうだなとワクワクしました。この時は 1回だけお手伝いするイメージでした」
大竹 「僕も同じように学生時代にボランティアで親子パソコン教室の手伝いをした経験がありました。僕はあまり積極的なタイプではないのですが、全くの未経験というわけでもないということもあり、 1度だけだったらいいかと参加しました」

ふたりとも1回きりのサポートのつもりが、2016年にはPCN(プログラミングクラブネットワーク)の認定講師の資格も得て、本格的にワークショップの講師を担当します。子どもたちへのワークショップには、思っていた以上の魅力があったのです。

子どもたちのクリエイティブの扉を開き、生涯心に残る体験にしたい

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「子どもたちは、こんなにもキラキラした表情をするんだー」と、ワークショップで大竹は驚きました。尾村も、子どもの正直で素直な反応に、想いを伝えることの楽しさや発見があるといいます。そうした子どもたちの反応に、やりがいはどんどん増していきました。

大竹 「僕は子どものころからコンピュータが好きだったので、自分が経験してきた楽しさを伝えたいという想いがあります。けっして押し付けるわけではなく、それがうまく噛み合って、子どもたちからよい反応があると嬉しいです。もっといろんなことを紹介したくなります。
何かをやってみたいと思ったときプログラムの知識が少しでもあれば、既成のソフトウェアがなくても“組み合わせればできるな”とか発想できたり、選択肢がちょっと増えたりすると思うんですね。よりクリエイティブな扉を開く、そんなきっかけを子どもたちに与えられるといいなと思っています」

尾村は、幼少期の記憶を重ね合わせます。

尾村 「小学校の低学年だったと思います。地域のおじいさんに教えてもらって勾玉を磨いてつくる体験教室がありました。普通の生活で勾玉をつくることなんてないし、将来に役立つことでもないかもしれないけれど、いまだに特別な体験として覚えているんですね。
たとえワークショップに参加した子どもたちが、将来 IT系に進まないとしても、そんなふうに特別な記憶として心に残ってもらえれば、こんな世界があるんだと知ってもらえて、僕も嬉しいなと思うんです」

当初は“いかに所定の時間内に、問題なく終わらせるか”など、当日の進行をうまく回すだけで大変だった大竹と尾村ですが、子どもたちと触れ合ううちに、自然にその想いは“子どもたちに何を与えられるのか”という視点へと変化をしていきました。

その変化こそが、ふたりの成長のしるしでもありました。仕事でも徐々に変化をもたらし始めたのです。

なんでも正直に反応する子どもたちに、コミュニケーション力を磨かれる

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KidsVentureで学んだものは「コミュニケーション」だというのがふたりに共通の意見です。というのも、子どもたち相手のワークショップではいろいろな対応に迫られるからです。

尾村 「たとえば集中力が続かなくなって遊びだす子もいます。そんなときは隣に座って一緒にしばらく遊びます。一旦程よい距離感まで近づいて、安心してもらう。それから “そろそろこっちもやってみようか ”と声をかけると自然にワークに戻れます」

こんな対応の工夫は誰かに教えられたのではありません。自分たちで考え失敗と成功を繰り返すなかで身につけてきたものです。

尾村 「子どもは大人より感情をストレートに表現することが多いと思います。だから、子どもの反応を見て、楽しんでもらえるように話し方や接し方を変えたりと試行錯誤しています。こうしたフィードバックは本業でのコミュニケーションにも自然に生かすようになりました」

さくらインターネットのKidsVentureプロジェクトには技術部門だけでなく、さまざまな部署の社員が参画しています。それによる学びや刺激もありました。

大竹 「技術部門内で話すときは説明がなくても伝わっていた内容が、エンジニアでない人に説明するときは、同じ言い方では伝わらないことがあります。これは KidsVentureの取り組みのなかで気づく機会が多くなりました。伝え方のバリエーションを意識するようになって、視野が広がったと思います」

KidsVentureを共同で主催する他社や、またKidsVentureと同じく、子どもたちがモノづくりやプログラミングに関わる機会を提供しているPCN(プログラミングクラブネットワーク)など、他団体との交流も増えています。

尾村 「 KidsVentureに入るまでは社外に出る機会はあまり多くなかったのですが、社外のつながりも増えました。そこで、いろんな考えや意見を聞くことも、とても刺激になっています」

KidsVentureらしさ、さくらインターネットらしさを表現したい

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▲KidsVenture運営メンバーでのディスカッションの様子

共同代表に就任したのは、2018年4月。KidsVentureのサポートからはじまってほぼ2年が経ったころでした。「意外にすんなり受け入れられた」と大竹はいいます。

大竹 「ずっと講師でもいいかなと思っていたのですが、前代表の弊社執行役員の高橋から “若手が次世代を育てていく組織にしたい ”と言われて、僕たちが次世代を育て、教える側もどんどん若手に世代交代するということは、わりと自然に受け入れられました。僕たちが『チャレンジ』を後押ししてもらったのと同じように、いずれは僕たちも次の世代に引き継いでいく。そこを見据えて動いていこうと」

人をまとめたり組織化したりという経験のないふたりですが、そこに対する不安はあまりありません。社内のプロジェクトメンバーは現在20名弱。技術、人事、総務、営業など所属部門はさまざまです。

大竹 「得意分野がみんな違うので困ったときは相談できる。サポート体制も整っているので、かなり恵まれた環境で成長するステップを踏ませてもらっています」

代表になって自身の想いの変化を尾村は感じています。

尾村 「団体運営の視点で物事を見られるようになってきました。ただし本来僕らが見るべきゴールは “子ども ”にあるので、軸はぶらさないように意識しています」

そのうえで考えているものがあります。現在のワークショップは、IchigoJamを使ったゲームづくりとしては有名なコンテンツですが……。

尾村 「 KidsVentureらしいカリキュラムをいま構想中です。せっかくなので、やはりさくらの強みであるインフラも活かしたいと思っています。そのうえで “子どもたちに、どんなものを与えられるか ”までを考えていきたいです。最初はサポートからはじまって、今は代表としてそういう想いを持って動けるようになりましたね」

これまで何十回とワークショップを重ねてきてやはり純粋に嬉しかったのは、独自に考えたアイデアや説明の仕方に、子どもたちがよい反応を見せてくれたとき。大竹も尾村も同じです。

代表となった彼らがいま目指すのは、さくらインターネット“だから”できること。KidsVentureと共に、ふたりも新たなステージに足を踏み出しました。

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