厳しい寒さがあるからこそ、結晶は形作られる。“信頼の結晶”を胸に歩んだ軌跡

いつの時代も、会社をつくるのは人材です。その人材を育てるために、30年以上力を尽くしてきたサピエントの代表取締役社長・湯川智子。人と人、会社と会社を繋げる“信頼”を築くため、日々、クライアントの期待値を超えるアンサーを提示しています。そんな湯川の胸に輝く「信頼の結晶」に迫ります——。
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男性主体の時代に、女性が輝く人材派遣会社を起業

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▲自動車メーカーに勤務していたころの湯川

これまで4つの会社を起業してきた湯川ですが、その秘訣は「丁寧な信頼の積み重ね」に尽きるでしょう。

サピエントは、人材派遣や人材育成、イベント運営などを行なう会社です。2016年からは、観光産業のひとつ、クルーズ事業にも事業領域を広げています。

湯川のキャリアスタートは、自動車メーカーの宣伝部販促課。自社の製品や展望をPRする専門部隊として活躍しました。ここで湯川は、きちんと自社のPRをするため、商品知識、自動車工学、ビジネスマナー、プレゼンテーションなどを徹底的に学んだのです。

当時、クリスマスケーキと表現されていた女性の退職適齢期は24歳か25歳。長く仕事をしたいと考えていた湯川に、海外勤務が前提の企業からスカウトの声が掛かっていました。そんなとき、同僚だった友人から一緒に起業しないかと相談されたのです。

展示会などで会社の製品や展望をPRする人材は、コスト面からどの会社でも正社員としての雇用ができるとは限らない。だからこそ、世間に需要があるのではないかーー。

湯川は悩みましたが、若いときはたとえ失敗してもやり直せると思い、起業の道を選びました。友人とともに展示会でナレーションや商品説明、通訳などができる人材を教育し、派遣する会社を設立したのです。

時代は、人材派遣法がその4年後に制定されたという黎明期。非常にいいタイミングでした。

湯川が設立した会社では、同業他社で同じようにPRをしていた人材も集まってきて、若くて華やかな女性たちが輝きを放っていました。それは、その時代において特殊な集団。ちょっとした注目を浴びます。

経験のない営業も存在自体がユニークと評価され、まずは先方にお会いすることはできました。ところが、当時はまだ実績もなかったため、なかなか仕事に繋げることができなかったのです。

そこで湯川が考えたのは、営業先に“お土産”を持って行くこと。

湯川「お土産と言っても、お菓子やお花ではありません。“情報”というお土産です。相手にとって、有益な情報を持っている人材になることで、『じゃあ、これチャレンジしてみる?』と小さなものから少しずつ発注されるようになりました」

その情報の源は、学びと湯川独自のネットワーク。相手にとって自分を価値ある存在にすることで、相手からの信頼と仕事を、少しずつ増やしていったのです。

会社を変えていくような人材を育てることが、社会を変えていく

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▲湯川が育て上げた教育チームのメンバーと

2社目に起業したのは、人材教育の会社。きっかけは、知人が、「CI=コーポレートアイデンティティ」が注目されていると教えてくれたことでした。

会社のシステムや評価を変えるためには、人が変わらないといけない。会社を変えるような優れた人材を育てる会社が必要だ、それがひいては社会を変えていくーーという考えから、湯川は、マネジメントコンサルティングの草分けといわれる会社と、ジョイントベンチャーを立ち上げたのです。

協業した会社の社是は「共創」。大変なことをみんなで楽しくやろう、そうすればいいものができるはず、という思いが込められていました。

ここでは、湯川が最初に勤めた会社で受けた“徹底的な人材教育”が非常に役立ちます。ただ、会社にとって優れた人材を教育するためには、会社の仕組みや事業の進め方にも精通する必要があったのです。

湯川「この会社で学んだことが、今の礎になっていると思います。最初に勤めた会社で専門領域を学び、起業した1社目と2社目で、会社をどう進化させていくか、事業をどう進めていくか、そこに対する熱意も含めて教えてもらいました。それらを、日々自分たちのなかで進化させています」

3社目は、最初に勤めた自動車メーカーから声をかけられてスタート。「新しく高級車を販売するプレミアムチャネルを創る。その販売は女性を中心に構成したいので、人材育成などを一手に引き受ける会社を起こしたい」とのこと。共同出資という形で立ち上げました。

湯川がまず取り掛かったのは、人材育成を行なう教育チームの雇用。湯川は、経験者ではなく、面接をしてポテンシャルを感じられる未経験者を雇用し、一から仕事を教えていったのです。

湯川「笑い話なんですけど、そのとき育てた女性営業スタッフが自動車メーカーの男性社員と結婚して、辞めてしまうことが頻発しました。礼儀やマナーがちゃんとしているし、きれいだしって。それだけ立派に育てられたということなんでしょうけど、それが一番の悩みでした(笑)」

ところが、3社目の創業から7年が経ったころ。共同出資した自動車メーカーの大株主が変わったことから、湯川は3社目を買い取り最初に起業した会社(以下、1社目)に吸収させることにしました。

そして、3社目の吸収から10年後——。湯川に大きな転機が訪れたのです。

会社を離れることで見えてきた、確かな“信頼”

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▲サピエント創業1年目で集まってくれたメンバーたち

転機は、同じく人材派遣を行なっていた大手企業の廃業に端を発しました。その企業の関連会社を1社目に買収することになったのです。

規模を大きくした1社目ですが、湯川は方向性の違いを感じはじめるようになりました。もともと女性社員が多く、一つひとつ丁寧に仕事をして、クライアントと非常に良い関係を築いて、大事に育ててきた会社——。その構図が変化してきたのです。

グループに迎えた同業の会社は、もともと湯川の会社と協力関係でした。お互いの得意分野が異なっていたので、足りないパートを補完していたのです。

湯川「私のマネージメント能力が足りず、このふたつの会社をまとめあげることができませんでした。このままでは、せっかくのふたつの個性が埋もれてしまうと予感し、創業者ではありますが、自らが会社を去ることを決断しました」

「置かれた場所」で花を咲かせるのではなく、「花を咲かせる場所」をもう一度創ろうーー。

湯川は散々迷った結果、思い切って会社を手放すことにしました。そして2ヶ月後、湯川に賛同し集まったメンバーと共に、4社目であるサピエントを起業することに決めたのです。

いつか未来を担う人材が現れるまで、“信頼”で大きな土台を作り続けたい

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▲2017年現在の湯川

サピエントを起業すると決めて準備をはじめた湯川。しかし、創業前ということもあり、オフィスを借りることすらできませんでした。そんな湯川たちを支援してくれたのは、今まで一緒に活動をしてきた仲間やクライアントだったのです。

彼らは、「きっと湯川は、また会社を立ち上げるだろう」と温かく見守りながら待っていてくれました。

無事に登記して、「会社」という受け皿ができると、実際に、今まで信頼を築いてきたクライアントが次々と仕事を依頼してくれました。その実績を見て、今度は新規のクライアントが仕事を依頼してくれるようになっていったのです。

湯川「サピエントは、今までお付き合いしてきた仲間やクライアントからの信頼なくしては、起業できませんでした。だからこそ、当社の社是は『信頼の結晶』。社員一同、社会からの信頼を得るために、スペック通りの仕事をするだけではなく、期待値を超える仕事をするよう心がけています」

信頼は魔法のように一瞬でできるものではありません。困難を乗り越え、コツコツと実績を積み重ねることで、雪のように優しく降り積もり、結晶化していくのです。

正直、一筋縄では軌道に乗せることはできませんでした。ですが、これまで積み重ねてきた信頼のおかげで、湯川とサピエントの今があります。そして近年、自社で企画するクルーズ事業を展開するまでに成長しました。

今後、サピエントは中期的には観光産業に力を入れていく予定です。クルーズ振興を通して、歴史があり、美しく、魅力的な日本をもっと元気にするために役立つ会社でありたいと考えています。

湯川「その武器になるのが、展示会やブース運営などを取り仕切るのに欠かせない、女性的なきめ細やかさとオペレーション能力です。考え方やノウハウがクルーズと非常に似ています」

そして、中・長期的な未来、「自分を超えていく経営者が欲しい」と湯川は語ります。その人が、この会社ですでに働いている人材から出てくるのか、これから新しく現れるのかは、まだ誰にもわかりません。

そういう人材が育つ、あるいは現れるまで頑張って、現れた暁には全力でサポートしたいと、湯川は未来に向けて目を輝かせます。

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