“世界初”の全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」が生まれるまで(後編)

「洗濯物を畳む手間から開放されたい……!」その願いを叶えてくれる世界初の全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」。初のプレゼン後、一般公開に向けて改良を続けるXプロジェクト。しかし、会社の存続が危うい事態に……。まだまだ多くの困難が待ち構えていました。
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資金が底をつき、会社存続の危機に

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▲はじめての社外に向けたプレゼンテーションの様子
はじめての社外に向けたプレゼンテーションで、大きな手ごたえをつかんだランドロイド。しかしその一方で、代表取締役社長の阪根信一は資金調達に苦戦していました。ランドロイドの商品化を考えると、30億円以上の資金を援助してくれるスポンサーが必要だったのです。

阪根 「当時は、カーボンシャフトの『セブンドリーマーズ・シャフト』を売り始めてまだ日が浅かった。そのため知名度も低く、当社は世間から見たら“何も売っていない会社”に等しかったんです」

2014年の年明けからスタートした資金調達に向けた活動も、気づけば8月まで長引いていました。半年以上かけずり回り、ようやく2社に対して試作機のプレゼンを行い、出資の約束をいただいてひと安心したのもつかの間。ある日、阪根のもとへ1本の電話が入ります。その相手は、最初に出資の意向を示してくれたベンチャーキャピタルでした。

すぐに来てほしい、そう言われて阪根が慌てて駆けつけてみると、先方から突如「お金を出せなくなりました」と告げられます。

阪根 「突然のことで、途方に暮れました。実はそのときすでに、7月末で当社の資金が底をつきかけたんです。しかし8月末には出資いただくお金が振り込まれる予定だったので、それを頼りに、なんとか銀行からお金を借りて凌いでいるような状態でした」

このままではランドロイドの発売どころか、会社の経営そのものが危ない……。阪根はすぐに、出資を決めてくれていたもうひとつの会社に出向きました。

阪根 「ベンチャーキャピタルからの出資が帳消しになったので、投資の考えが変わるか尋ねに行ったんです。そしたらその社長様から、出資する意向は変わりませんと言っていただいて……。その方のおかげで、何とか経営を続けることができました」

ギリギリのところで、どうにか会社存続の危機を脱した私たちは、ランドロイドの開発をさらに進めていけることになったのです。

「仕事内容は教えられません。世界が驚愕する家電を作っています」

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▲ロボティクス事業部 北川宏司
資金調達に加え、ここにきて新たな課題として持ち上がったのは人材不足でした。当時、人工知能による画像処理を担当していた主要メンバーが、プロジェクトを去ることになってしまったためです。新卒で入社して以降、ずっとランドロイドの開発に参加してきた北川宏司は頭を抱えました。

北川 「その頃は、まだその人しかできない仕事がありました。それらをカバーするのが非常に難しかったんです。なんとか既存のメンバーで兼任し合い、中断させないように研究を進めていきましたが、現状維持に時間がかかり、改良がスムーズに進まないまま時間が流れてしまって」

ようやく資金の目処がついて採用活動をはじめたものの、当時のセブンドリーマーズが発売していたのは、一般医療機器の「ナステント」とカーボンゴルフシャフトの「セブンドリーマーズ・シャフト」のみ。そもそも、なぜこんなに多くの技術者を募集しているのか、外から見るとわかりづらい印象しかなかったのです。

阪根 「それでも面接にきてくれた人もいて、もちろん『どういうお仕事をさせてもらえるんですか?』と聞かれるわけです。でも、私たちは『言えません』と(笑)。ランドロイドの開発は極秘プロジェクトだったので、他に表現がありませんでした」

「世界が驚愕する家電を作っています」――それでも、その言葉に引き寄せられるように、技術者が少しずつ集まってきました。立ち上げ当初はわずか4、5名だったXプロジェクトも、いつしか12名にまで増えていました。

メンバーが増えたことにより、今までは一番重要である折りたたみの技術改良をメインに行ってきた研究に、変化が訪れます。

北川 「今までの試作機は全て、市販の部品で作っていました。しかし商品化するとなると、量産する必要がある。家庭用として販売するため、数百万円から大幅に費用を押さえなければいけませんでした。加入した新メンバーの助言により、コストの削減を意識した開発へと舵を切ることができました」

資金調達と人材採用。このふたつの大きな課題をどうにかクリアしたメンバーたちは、次なる目標を設定する事にしました。それはIT技術を披露する国際展示会である「CEATEC JAPAN」への出展。阪根は2014年に展示会を見学し、翌年の秋に、ここでランドロイドを披露しようと決意したのです。

そして2015年の春、Xプロジェクトは相模原の工場から都内の研究所へと拠点を移します。ここから、ランドロイド初の一般公開となるCEATEC JAPAN2015に向けた準備が本格的にスタートしました。

CEATECの本番が迫る中、衣類がたためない事態に

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▲ランドロイドの初期デザイン

CEATECの本番は秋です。北川たちは同年春から、急ピッチでランドロイド試作機の改良を進めていきました。

阪根 「CEATECでは、お客さんに向けて一日に何回もプレゼンテーションを行います。当時の試作機は、まだ一連の動作に時間がかかっていた。そこで時間を短縮するため、衣類の投入口と出口を同じ場所にすることにしたんです」

しかしここにきて、この改良作業がうまくいきませんでした。再び、開発が暗礁に乗り上げました。

阪根 「ロボットアームがすぐにたたみ始める改良を目指していたのですが、これが全然うまくいかない。カメラの視野が狭くなり、衣類を認識できずに折りたためなくなってしまいました」

本番1週間前になっても、試作機は衣類をたたむことに成功しません。これにはさすがに、阪根をはじめ、メンバーの北川たちもかなり焦りはじめました。

こうなるともう、時間短縮どころの問題ではありません。かなり行き詰まった現場の状況に絶えかねた中核の技術者が、「課題山積みやわーーー!」と叫んで出て行ってしまうほど……。

それでも、時間は止まってはくれません。メンバーはひたすら、問題の検証と改良を本番直前、ギリギリまで続けました。

CEATECの本番前日には、宣伝のためにマスコミを呼んでインタビューなどが行われる「プレスデー」が設けられています。多くの企業がここで取材を受ける中、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズはすべての取材をお断りし、出展ブースも黒幕で覆ったままの状態にしていました。

阪根 「ランドロイドは、展示会当日に披露すると決めていたんです。リハーサルも音量を小さくして行い、情報が漏れないように徹底しました」

そして、いよいよ一般公開の日を迎えることになります。Xプロジェクトが発足してから10年。度重なる苦難を乗り越えてきたメンバーたちの努力が、ようやく日の目を見る瞬間が刻一刻と迫っていました。

ついに迎えたプレゼンテーション。周囲の反応は……

▲laundroid ceatec2016 present | ランドロイド | セブンドリーマーズ
「これが、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが開発した世界初の全自動衣類折りたたみ機、『ランドロイド』です」――ついに迎えたCEATECの初日。はじめてメディアや一般の方々に向けたプレゼンを行う阪根の姿を目で追いながら、北川の緊張はどんどん高まっていきました。

北川 「もう本当にドキドキでしたね。今までにない新しい商品を作っていましたし、周りに発表せず、水面下で行っていた開発だったので……。どんな反応をされるのか、全く検討がつきませんでした」

最後の最後まで北川らを悩ませたロボットアームの改良も、どうにか当日に間に合わせることができました。ブースで流れるプレゼンテーション映像の中で、ロボットアームが次々と衣類をたたんでいきます。会場を訪れた人たちの多くは、その映像を見て驚きの表情を浮かべていました。

会期中、初日の夜にTV放送されたWBSの密着取材による反響もあり、会場にはランドロイド目当ての見物客が日に日に増えました。はじめての一般公開は、大盛況でした。

阪根 「結果としては、予想以上の反響をいただきました。約500人を収容するブースに、1,000人ほどが見学に集まるほどの盛況。当社のブースは、4日間で13,800人の来訪者を記録しました。海外メディアからの反応も大きく、世界各国でプレゼンテーションの模様が放送されました」

こうした反応を見て、ランドロイドの開発に長い歳月を捧げてきたXプロジェクトのメンバーも、ようやくホッと胸をなでおろすことができました。

CEATECによってランドロイドの認知が高まり、これまで公表できなかった業務内容が明らかになったことで、当社には家電メーカー出身の開発経験者から応募が急増しました。これまで日本を代表する家電を作ってきた歴戦の技術者たちが、ひとつのチームに集結することになったのです。

2017年現在、ランドロイドは一般発売に向けた準備を行っています。ここまでこぎつけることができたのは、出資などを通じて私たちを支援してくださったみなさまをはじめ、多くの方に支えていただいた結果です。

そして何より、12年間という長きにわたり、片時もランドロイドのことを忘れず、どんな困難に直面してもあきらめずに、全力で立ち向かってきたXプロジェクトのメンバーたち。彼らがいなければ、こうして「世界初の全自動衣類折りたたみ機」が世の中に送り出すことはできなかったでしょう。

しかし、本当のスタートはこれからです。多くのご家庭で「ランドロイド」を利用いただけるよう、私たちはこれからも、新たな技術の追求を続けていきます。

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