「驚くほど任される」正林流マネジメントで組織をつくる――弁理士・星野寛明の想い

現在はおよそ200名の所員を擁する正林国際特許商標事務所。設立からこれまでの間に、20名ほどのメンバーが、わずか1年で100名に急拡大した時期がありました。今回はそんな事務所の現場で長い間チームマネージャーを務め、組織づくりの一翼を担ってきた弁理士・星野寛明のストーリーをお届けします。
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未経験の新人ながら、所長のクライアントを「任される」日々

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当事務所の所長・正林真之は、弁理士資格試験の講師としても知られています。そのため入所した所員の中には、事務所の存在よりも先に、講師としての正林に出会った人も多数います。現在、「特許第二部部門」でマネージャーを務める弁理士・星野寛明もそのひとりでした。

正林に出会った当時、星野は大阪にある化学系のメーカーで働きながら、弁理士を目指していました。30歳を目前にして転職を考えるようになった彼は、まず独立系資格を取ることを考え、どうせなら難関資格にチャレンジしようと決意します。そこで受講したのが、正林の講義だったのです。

星野 「正林の講義は、聞いていて抜群に面白かったんです。だからいざ弁理士業界に入るとき、まっさき彼の顔が頭に浮かび、その事務所の門を叩くことにしました」
星野は弁理士試験勉強中の2003年、正林事務所に入所します。当時は20人ほどしかメンバーがおらず、池袋にあるごく普通のワンルームマンションを、いくつか借りていた時期でした。まだ正林もいち弁理士としてクライアントを多数持っており、星野は正林自らが運転する車に同乗して、一緒に営業に回っていました。

星野 「入所したばかりの頃は、試験勉強と、目の前の仕事を覚えるのにいっぱいいっぱいで。それなのにいきなり、事務所としてもかなり大事な大手クライアントとの初取引を任せてもらうことになったんです。とにかく驚くほど新人に“信じて任せる”文化があるんですよね。それに慣れるまでは、日々かなりの緊張感がありました」
ほとんど未経験でありながら、所長のクライアントを受けもつのは大変なこと。しかし星野はそのチャンスをしっかり掴み、逃しませんでした。その頃担当していた大手企業は、10年以上が過ぎた今でも取引が続く、当事務所の主要クライアントのひとつです。

大事な仕事をどんどん「任される」ことによって、彼の弁理士としてのスキルも次第に磨かれていきました。

1年間で人数は5倍以上。 急成長した組織の真っ只中でマネージャーに

ちょうど星野が入所してから数年の間に、正林は事務所をさらに発展させるべく、一気に拡大路線に転じていきます。急成長を実現するためには、仕事が増えてから人を採用しても間に合いません。積極的に雇用を行い、わずか1年ほどの間に、20名程度だった所員を100人ほどまで増員したのです。

当然、現場では、取り組まねばならない課題が山積になりつつありました。急激に増えた人員をどう束ねていくのか、新人教育はどうするか、仕事の質を落とさないためのチェック体制をどうするのか……。

化学チームのマネージャーを任された星野をはじめ、現場では数名のリーダーが中心となって、組織としての基盤を固めていきました。

星野 「正林もよく話していましたが、人数がいるからといって何とかなるものではないんですよね。でも事務所拡大のためには、まず人数が必要で。そこでさまざまな試行錯誤を繰り返しながら、体制づくりに取り組んでいました。自分たちがどんな状況であれ、仕事の質を落とすことはできません。どんなに長年の付き合いがあるクライアントでも、信頼を失うのは一瞬ですから」
未経験の所員に対してはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を行い、さらに厳重なチェック体制によって業務クオリティを維持。一見すると当たり前のことのようですが、正林はそれをトップダウンで推進しようとしませんでした。人員が急増している時期だからこそ徹底して各チームの裁量に任せ、それぞれがきちんと成果を出すことを求めたのです。

星野 「本当にびっくりするほど、現場の私たちに権限をもらっています。小さな弁理士の個人事務所が、所内にチームとしていくつもあるようなイメージが近いでしょうか」
こうした「社内独立」というマネジメント方針のもと、星野をはじめとするマネージャーは何年もかけて所内のしくみを整え、業務の質を高めていきました。

採用、営業、給与のインセンティブにも直結する「社内独立」システムとは

「社内独立」という考え方のなか、各チームのマネージャーに任されているのは、教育体制や業務の品質管理だけではありません。人員の採用から、仕事の獲得、売上の管理まで、全てが連動するしくみになっているのです。

星野 「自分の裁量である程度自由に仕事ができる分、もちろん責任も重大です。それぞれの給与もチームの売上や利益と連動しているので、成果を出さなければ、自分を含むメンバーの給料が下がることになるんです。そこはすごくわかりやすく、明瞭なシステムになっていますね」
チームそれぞれが個人事務所のようにスキルを磨き、売上を立て、利益を上げていく。そのためマネージャーは人を束ねるだけでなく、経営センスも要求されます。

星野 「だから正直、辞めて独立しようという気持ちにならないんですよね。もうすでに、社内で個人事務所を経営しているような感覚なので」
間違いなく年ごとに給与が上がるというシステムではないため、必然的に営業にもアグレッシブになっていく。星野も日頃、事務所の営業部と連携しながら、積極的に新規クライアントを開拓しています。

星野 「前年比でどれだけ売り上げをアップさせるか、チームの目標が設定されています。私たちはマネージャーとしてチームを運営し、それを越えなければなりません。責任を果たさなければいけない緊張感はありますが、こうしたマネジメントのシステムこそが、自ずと業務の質を向上させる要因にもなっていると感じます」
「任せられる」ことはプレッシャーでありつつも、それが星野にとってのやりがいにも通じています。こうした「社内独立」の考え方が、彼のように現場を束ねる弁理士のスキルを高め、ひいてはそれが急拡大を遂げた組織を支えてきたのです。

自ら新たなことにチャレンジし続け、受け取ったバトンを次の世代へ

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正林自らが “仕事のデパート”と称するほど、当事務所には現在も多様な業務があります。そしてかつての星野がそうだったように、たとえ未経験であっても実力さえあれば、手を上げた者に仕事を任せていく土壌も変わらず残っています。

星野 「私自身、入所当時から大きなクライアントをいくつも担当させてもらったり、チームのマネージャーを任されたり、さまざま仕事をやり遂げてきたことで自信がつきました。そうした一つひとつの経験の積み重ねが、今の自分につながっていると思います」
2003年に入所して以来13年の年月がたち、弁理士としての経験も厚くなってきた今、星野は今後は自分がもっている権限を、どんどん若手弁理士に委譲していきたいと考えています。

星野 「自分ひとりでできる仕事の規模には限界があります。幸いなことに今はチームの仕事が増えてきて、全員でとにかく猛ダッシュしているような状態。だからこそ大きな仕事を任せることで、メンバーに成長してもらい、チーム全体のパフォーマンスをさらに上げていきたいと考えています」
さらに現在、星野は引き続きチームのマネジメントに取り組みながら、自分自身も新たなチャレンジとして、海外の案件に積極的に携わっています。自らが挑戦し続けることで、若手のメンバーにも道を示す星野。自分のチームだけではなく組織全体を見渡すと、まだまだやるべきことがあると感じています。

星野 「若い弁理士が僕たちのような上の世代を見たときに、自分が将来どうなれるのか、できる限り多様な可能性を感じてもらえるようにしておきたいですよね。厳しい仕事の先に新しいステージが待っていることが、やる気やモチベーションにつながると思うので」
若かりし日に、星野自身が正林から与えられたチャンスを、今度は彼流のやり方で次の世代へ。そうして彼の手から渡されていくバトンが、組織としての正林事務所を強く支えているのです。

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