顧客との信頼関係を第一に、現場で“伴走”を続ける――弁理士・林一好のこだわり

現在、200名以上の所員を抱える正林国際特許商標事務所。私たちがまだ数十名規模だった時代から、マネージャーとして現場の実務を支えてきた所員がいます。今回は、大企業の研究開発職から知的財産の世界に転身し、誰よりも顧客との信頼関係を大切にしてきた弁理士、林一好のストーリーをお届けします。
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10年以上勤めた大企業の研究開発職を辞し、弁理士の道へ

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誰もがその名を知る、大手印刷会社。正林国際特許商標事務所(以下、正林事務所)の弁理士、林一好は、かつてその大企業に10年間在籍し、研究開発の仕事に携わっていました。

主に担当していたのは食品などの機能性包装材料、つまりさまざまなパッケージに関わる研究開発です。徹底した気密性や安全性が求められるパッケージには、実は高度な科学技術が数多く使われています。そうした仕事のプロセスのなかで、必ず通過するのが特許の取得でした。

林 「自分たちが特許を申請するのはもちろんのこと、社内の知的財産部と連携したり、外部の弁理士と相談しながらトラブルを解決したりする機会がよくあったんです。そのうち特許自体への興味が大きくなっていき、自分も弁理士の勉強をしてみたいと思うようになりました」
学生時代から志していた、研究開発の仕事。当然、このまま研究開発職を貫く選択もありました。当時の仕事内容や会社の環境には何の不満もない。それでも林は弁理士の資格取得を目指し、会社を辞めようと決心したのです。

林 「弁理士を目指すなら、社内で知的財産に関わる部署に異動する道もありましたし、実際そういった声もかけてもらいました。でも私は、そろそろ新しい世界を見たいと思ったんです。約10年同じ環境にいましたからね。どうせなら、今までとはまったく異なるところに飛び込んでみよう、と」
しかし新たな道の選択に際し、不安はなかったのでしょうか。

林 「当然、会社員時代に比べれば、給料もかなり下がりました。でも最初は修行だと割り切っていたので気にならなかったですね。新しい業界であるとはいえ、今まで積み重ねてきたキャリアとの連続性もあって、研究開発で培ってきた技術の経験は活かせると考えていました」
2000年10月、林はそれまで勤めた会社を退職し、所員数名の特許事務所に入所。そして翌2001年に弁理士資格を取得。弁理士としての新たな道を歩みはじめたのです。

小規模事務所で弁理士の実務経験を積み、正林事務所へ

弁理士は、基本的にひとりで顧客に対応し、ひとりで業務に取り組むことが多い職業。そのため組織に所属していても、個人事業に近い働き方になりがちです。しかし林は、最初に少人数の事務所に所属したことで、弁理士業務の全体像をつかんでいきました。

林 「ひとりで仕事をするといっても、同じ部屋の近い場所で仕事をするので、電話でやり取りしている声などがよく聞こえます。そのため仕事の内容全体を見渡すことができ、弁理士のイロハを学ぶのには最適だったと思います」
小規模事務所のメリットを享受し、一通りの弁理士業務を学んだ林。しかし経験を積むうちに、もっと多様な業務に触れたいという思いが強くなっていきました。

そこで、彼が次に門を叩いたのが正林事務所だったのです。

きっかけは、所長である正林真之と出会ったこと。最初の事務所で働きながら弁理士資格取得のために通っていた予備校で、講師をしていた正林にスカウトされたのです。

林 「事務所を移ろうと決断した理由は、ここならより幅広い仕事ができると思ったからです。当時、正林事務所には30人以上の所員がいて、さらに急成長を遂げようとしていました。また、正林が持っていた実業家的な視点にも興味がありましたね。弁理士の仕事は地道な作業が多いので、携わる人も実直なタイプが多いんです。そういう意味で正林は、この業界では珍しい存在だったと思います」
弁理士の仕事に興味を駆り立てられ、研究者から転身した林は、仕事に対して非常に貪欲な一面がありました。そうしたモチベーションや経験値の高さを活かし、林は当事務所の中で、マネジメントも含めた現場運営の中核を担うスタッフとして活躍していくことになります。

弁理士事務所に営業マン? 急拡大中の事務所で見つけた自らの役割とは

林が正林事務所に入所してまず驚いたのは、弁理士事務所であるにも関わらず、営業専任のスタッフが社内にいたことでした。2000年代前半、急拡大を図っていた当事務所では、弁理士以外に営業のエキスパートが在籍していたのです。

林 「当時はまだ、弁理士の仕事は基本的に受注産業で、依頼が来るのを待つものだという先入観がありました。弁理士事務所に営業担当者がいるなんて、あまり聞いたことがなかったですね」
特許申請が必要な案件をひとつのクライアントが大量に抱えていることは少なく、事務所の規模を大きくするためには、新規開拓のための営業が必要。しかし入所したばかりの林は、「営業を入れたからといって、本当に仕事が取れるのか?」と半信半疑でした。

しかし営業に同行した先で、次々に顧客が増えていくのを目の当たりにし、その考えは大きく変わっていきました。

林 「正林や営業担当者が受注のきっかけを作ってくれるので、そこからが私の仕事だと思うようになったんです。私は営業トークは得意ではありませんが、長い間をかけてお客さんと信頼関係を作っていけるという自信はありましたから」
さらにもうひとつ、林自身がその役割を果たそうと手を挙げたのが、現場のマネジメントでした。積極的な営業体制によって急拡大の渦中にあった正林事務所では、業務範囲が一気に広がり、まだ経験が少ない若い弁理士が増えていたのです。そのなかで、誰かが束ねないと現場の業務レベルが下がってしまうと感じたためでした。

以来、林は所内の中間管理職として、プロフェッショナルな仕事内容と顧客との信頼関係を守り続けています。事務所の規模が拡大することを歓迎する一方で、仕事の質が守れないと思うときは、所長の正林とぶつかることも辞しません。

林 「基本的には会社の方針を支持しますが、タイミングや内容によっては異を唱えたこともありました。現場が破綻しそうなときははっきりと意見をする。それが今の自分の役割だと思っています」
どんなに新進の気質に富んだ組織でも、現場がしっかりしていなければ顧客から信頼を得ることができず、拡大も存続も不可能です。当事務所では彼の存在が、実務の“質”の部分を長年にわたって支えてきたのは間違いありません。

かつて勤めた企業をはじめ、顧客の事業に伴走するパートナーとして

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現在も、林は当事務所の弁理士として、主要顧客との信頼関係を大切にしながら、そのパートナーとして伴走を続けています。彼は、それが自分自身の一番大きな「役割」だと考えているからです。

林 「弁理士として今後のキャリアを考えるなら、海外に進出したり、専門分野の業務を追求するのもいいでしょう。でも私は、企業の中で新たな研究開発に取り組み続けているクライアントに寄り添い、その事業を支えることを何より大事にしていきたいと思っているんです」
林が積んできたキャリアのなかには、彼の姿勢を象徴するような、とても印象深い経験があります。それは、かつて自身が研究開発職として所属していた企業から、退職後10年のときを経て仕事の依頼があり、その企業を自ら担当するようになったことです。

林 「古巣の会社から、弁理士として仕事の指名を受けたときは本当にうれしかったですね。大企業を飛び出して、イチから弁理士の修行をしてきた努力が実ったと感じた出来事でした」
それは丁寧な仕事をひとつひとつ積み重ね、クライアントとの良好な関係を構築し、現場主義を貫いて来た林だからこそ、引き寄せることができたひとつの“縁”だったのでしょう。

そんな林は今、これからの弁理士のあり方について考えています。

以前は弁理士の資格自体を持っている人材が少なかったため、特許の申請書類を作れるだけでも存在価値がありました。ところが今は資格取得者が増え、会社側にインハウスの弁理士がいることも多くなっています。そのため、弁理士も変わらなければならなりません。

林 「指示された書類を揃えるだけの“代書屋”では、もう通用しません。知財のプロとして常にお客様の半歩先を見据え、共に歩むパートナーにならないと」
多くの企業のパートナーとしてその役割を果たし、現在の正林事務所の基盤をつくりあげてきた林。これからはその姿勢を次の世代へと受け継ぐことも見据えつつ、変わらず現場でその力を発揮してくれるはずです。

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