同年代のロールモデルから、自分の可能性を切り拓いた高校時代

どこかドライ、だけど冷たくはない。

人懐っこいようでいて、アプリ開発のエンジニアという職種ならではの淡々としたたたずまい。

森廣 建都は、単なる“若さ”という表現の枠に収めきれない雰囲気を醸しています。

森廣 「ようやく22歳になりましたが、高校生のときにプログラミングの勉強とアプリ開発をスタートしました。理由は……海外に留学したかったから。いわゆる資金づくりのためのアルバイト感覚でした。そのころから『いつか海外で働きたい』という想いがあって、実現させるための手段として選んだのがプログラミングだったのです」

10代でお金を稼ごうと思ったら、バイトの求人を探すのが常套手段。

「もちろん、最初は僕も見ていましたよ」と言うが、それが海外留学という目標をかなえるための最短ルートではない、と森廣は判断しました。

だったら、どんな方法が良いのか?

ロールモデルとして注目したのが、同年代ながらすでに社会で注目を集めていた、あるエンジニアの存在でした。

森廣 「年齢は自分とさほど変わらないのに、その方は爆発的にヒットしたアプリ開発者として認知を獲得していました。そのアプリの広告収入だけで数千万円近い利益を出したとか。

そういう同世代の活躍を知ったとき、自分は『負けられない』と感じるタイプなんです。憧れじゃなくて、どちらかというと嫉妬。別に目立ちたいとかはないんですが」

YouTuberが現在のように市民権を得る数年ほど前のこと。

年齢も含め、自分が実現しうるモデルケースとして、アプリ開発について学び始めたのでした。

森廣 「大学付属の中高一貫校だったので、自分の好きなこと、やりたいことに使える時間が多かったんですよね。その経験をさせてもらえただけでも、親に感謝したい気持ちがあります。

結論から言うと、10代の学生が個人で開発したアプリでまとまった広告収入を得るのは相当難しい、という現実がありました。でも、挑戦したおかげでプログラミングを知り、その道に進んでいこうと思えた。可能性をひらけたという点では、やってみてよかったと思っています」

プロセスを知り、自ら経験したことでこそ見えてくる新たな道筋。

そこに向けてまっすぐ進むことに、森廣はなんの迷いもありませんでした。

もっと速く、もっと何かを——。大学中退からSHOWROOMへ

大学に進学した森廣ですが、ますますプログラミングに心と時間をつぎこんでいくことになります。

森廣 「大学には在籍していたものの、プログラミング以上に楽しんだり、がんばったりする気持ちをどうしても見いだせませんでした。早くから中退してもっと自分の興味があることに時間を使いたいという気持ちが募っていたのですが、結局それがかなったのは3年生になったころでした」

やりたいことと並行して大学を卒業するという選択肢もあったのでは?という問いに対して出てきた答えこそ、森廣のパーソナリティを象徴する価値観を表していました。

森廣 「時間がもったいないな、って。もう20歳を迎えて、同年代でも芸能人とかYouTuberとかアスリートとか、すでに何かの結果を出して一介の地位を築いている人は少なくありません。

別に有名になりたいわけじゃないんですが、そういう人たちと自分とのギャップを感じると、『もっと何かしなければ』という衝動に駆られることがありましたね」

大学時代には、すでに個人でサービスを開発したり、エンジニアとして業務委託で仕事をしたり……といった展開を始めていた森廣。

大学で知識を蓄えて学ぶよりも、社会で実践的な仕事をしたいという想いに心は傾いていきました。

森廣 「そのころには、留学したいとかお金を稼ぎたいという欲求は、なくなっていました。留学にしても働くにしても、何年も海外に滞在するとなるといろいろなハードルがありますし、自分の中での切実さが薄れていったという感じでした」

プログラミングに没頭して仕事を経験していく中で、森廣の胸の内には新たな想いが生まれます。

それは、もともと興味があった音楽に関わるサービスを仕事にしたいということ。

個人が展開できるサービスに限界も感じていた中で出会ったのが、SHOWROOMでした。業務委託として2017年12月から働くことになりました。

森廣 「SHOWROOMはサービスそのものが音楽とつながりがありますし、プログラミングなど自分のスキルを生かせる環境でもあります。“自分のやりたいこととつながっている”実感を持って働けると感じました」

そして2018年5月、森廣は正社員としてSHOWROOMにジョイン。大学は中退しましたが「後悔はまったくない」と、すがすがしく断言します。

こうして、SHOWROOM最年少の正社員・森廣 建都が誕生したのです。

爆発的なスピード感が唯一無二の武器。その目が映すのはゴールだけ

時に、年齢はひとつの個性となりえます。

たとえば、若さに付随する感性、テンション。

場合によっては、“知らない”ことさえも価値ある武器にしうるでしょう。

では、森廣の武器は——

それは、人生観をまるごとぶつけてくるほどのスピード感です。

森廣 「現在は新規事業のアプリ開発に携わっているのですが、なかでも自分が担当しているのはプロトタイプの開発。いわゆるモックですね。たとえば当社の役員が資金調達のために株主と折衝するときなど、とにかくスピード重視で大枠を仕上げることが求められる局面があります。そのスピード感への対応こそ、自分の得意分野なんです。

ビジネスの段階の中では、きちんとした構造をつくり込むことが重要になるフェーズも確実にあります。同時に、それよりもスピードが重要になる段階も確実にあって、そのときにこそ自分の強みを発揮できると自負しています」

スピードアップのスイッチが入ったとき、森廣の目はゴールしか映さなくなります。

四六時中、何をしていても意識はすべてひとつのことに向ける。

やめようと思っても自制できないほどの集中と熱意が、森廣を目指す先へと突き動かしていくのです。

森廣 「明確なゴールや目標に焦点が定まったら、そこに向かう瞬発力は誰にも負けたくないと思っています。その判断は直感的ですが、できると確信したら一切迷わない。もちろん、その判断が正しいかどうかは別次元の話ですけど」

傍目には、猪突猛進の若者に見えるかもしれません。

しかし、無謀ではない。少なくとも、森廣自身にとっては。

森廣 「僕はスーパーマンじゃないから、なんでもできるわけじゃないし、なんでもスピーディなわけじゃありません。進むべきだと確信できるゴールが見えたときに、最短ルートをダッシュするだけなんですよ。

たとえば、僕、ブラインドタッチはできないんです(笑)。パソコンで文字を打つのは遅いけど、成果を出すまでが早い……って言ったらかっこつけすぎですね(笑)」

その機動力の根底に、負けず嫌い精神が流れていることは言うまでもありません。

活躍している同年代に負けたくない。

業務委託だとしても、正社員のエンジニアには負けたくない。

秘めたる精神力の強さこそ、スピードアップの起爆剤になっているのです。

未来よりも今を見つめて。22歳、チャンスも可能性も目の前にある 

「未来のことはあまり考えない」「正直、40歳まで生きているかどうかもわからないし」

こんな台詞も刹那的に響かないのが、森廣のキャラクターが成す不思議なところです。

森廣 「いつ死んでも後悔しないように、今できることに全力を尽くす。そんなスタンスで生きています。自分にとっては、大学も一般的な就職活動も遠回りに感じてしまったから、そこじゃない道を選んだ……というだけなんですけどね。普通の感覚からしたら、たぶんすごく良くない人間ですよ、僕は(笑)。

スタートアップって、ビジネス自体がものすごいスピードで変化します。遠い未来を考えても結局変わってしまうものだし、そもそも見えないことも多い。だから、未来よりも今、目の前を見つめて全力を尽くすというスタンスになっていったんだと思います」

とはいえ、22歳の目の前には、たくさんのチャンスと可能性が広がっています。

未来よりも今という言葉は、手を伸ばせば届くチャンスにくらいつきながら、着実に前進し続けていくのだという姿勢とも言い換えられるかもしれません。

つまりは、確実に前進し続けるうちに、気付いたら“いつかの未来”が今になっているということなのです。

そんな森廣に、あえて「これからやってみたいことは?」と聞いてみると——。

「社内に外国籍の社員も増えたのでこれを機に英語で仕事をできるようになりたい」という、意外にも22歳の等身大のような答えが返ってきました。

森廣 「前田さんとの『公開1on1』でも相談したんですよ。そしたら『リーディングで幅広い情報をインプットしてから、アウトプットするのがいいよ』というアドバイスをもらいました。自分としてはリスニングが先だと考えていたので意外でしたけど、このアドバイスの真意と解釈は、これから自分の中で消化していかないといけないですね」

さらにもうひとつ、SHOWROOMにジョインしたきっかけでもある“音楽”という軸が森廣にはあります。

森廣 「音楽を含め、エンタメとカルチャー、トレンドは切り離せない面が多いと思っています。だからこそ、日ごろから世の中の流行にはしっかりアンテナを張るように意識していますね。定番はきっちりと押さえつつ、さらに世の中では何が求めらているのか、何がヒットしているのか。そういう目で物事を見るように心がけています」

だって、世の中に発信して受け入れられるサービスをつくる仕事が大好きだから——。

熱く「好き」を語る森廣の姿は、「やっぱりこの人もSHOWROOMの人だな」と思わせるに十分な輝きに満ちていました。