ビジョンとミッションだけでは走れない状況に

スマートキャンプ株式会社は「Small Company, Big Business.」をビジョン、「テクノロジーで社会の非効率を無くす」をミッションとしてSaaS比較プラットフォーム「BOXIL(ボクシル)」、インサイドセールス支援サービス「BALES(ベイルズ)」を展開しています。

2014年6月に代表取締役CEOの古橋智史(ふるはし さとし)が創業。5期目となる2018年11月には、社員数はパート・アルバイト、インターンの仲間を含み、約100名まで増えていました。

古橋 「 20名を超えたあたりですかね。事業が伸びて社員数が増えて、急に忙しくなったんです。すると、『頑張っているけどなかなか賞賛されない』『どんな行動をとるべきなんだろう』『スマキャン(スマートキャンプの愛称)らしさってなんだろう』とか、そんな話がちょこちょこ出るようになってきて……」

まだ10人しかいなかった頃は、行動指針や評価制度がなくても、それぞれが独立して頑張ることができていました。ビジョンとミッションのもとに、メンバー同士が戦略や目標をすり合わせながら進められていたのです。

ですが、いろいろなバックグラウンドを持つメンバーが増え、いよいよ30人の壁を前にしたとき、『スマキャンらしさ』に向き合う必要に迫られました。当時のことを取締役COOの阿部慎平はこう振り返ります。

阿部 「バックグラウンドが違えば仕事の仕方や考え方も違います。するとあの行動は良い、良くないといった声ももちろん出てきて、このままでは 30人の壁を越えられないと思いました」

たとえば、営業以外のメンバーは売り上げ数字が出るわけではないので評価が曖昧でした。 しかし、評価に繋がりづらいフォロー業務はたくさん存在しているーー。行動指針がないということは、どんなアクションを取ればよいのかわからないということ。手探りでとにかくガッツで頑張る状態だったのです。

阿部 「会社が持続的に成長していくためには、会社にとってプラスとなる取り組みをした人たちを、正当に評価する機会や、個々の成長を支える仕組みづくりが必要だと感じました」

スマキャンらしさを反映した行動指針「SOCS」の制定

人事担当の内堀奈美は、「スマキャンらしさってなんだろう」と悶々と考えました。そして、阿部に仕組みや制度について提案。それからはふたりでブレストを重ねる日々が続いていきます。

内堀 「当事者意識、優しさ、思いやりとか、思いついたことをとにかくバンバン出していましたね。その後、リーダークラスの人たちを巻き込み、ひとりずつ個別に、何度も話し合いました。約 2カ月くらい “スマートキャンプらしさ ”について、考え続けたんです……」

ただ、どれだけ練っても仕上がった言葉は、不恰好。バラバラで、覚えづらい。そこで外部のアドバイザーに相談したところ、提案いただいたのが「SOCS(ソックス)」でした。

これは、スマートキャンプらしさを「Smart Thinking」「Ownership」「Collaboration」 「Speed」の4つにまとめ、それらの頭文字をとった言葉です。

阿部 「スマキャンらしさをうまくカタチにしてくれた!と思いました。納得感があるだけでなく、覚えやすくて思わず口にしてしまいたくなる言葉なんです。正直に言うと、私と内堀だけではスマキャンらしさをカタチにすることは難しかったと思います。でもいろんなメンバーを巻き込むなかで、最後に SOCSにまとまったときは嬉しかったです」

こうして2018年1月、行動指針「SOCS」は誕生しました。最初は行動指針の通り動けている人はハイソックス人材、そうでない人はルーズソックス人材と呼び、盛り上がっていきます。

しかし、しばらくすると、「SOCS」を語る社員は減っていきます。せっかくつくりあげた「SOCS」をもっと普及させたい。形骸化しないための仕組みをつくりたいーー。そんな強い想いからはじまったのが、「ピア・ボーナス」を送り合えるツール「Unipos(ユニポス)」の導入です。

ピア・ボーナスとは、働く仲間同士が、互いの良い仕事やおこないに対する感謝として第3の給与と呼ばれるインセンティブ(成果給)を送り合う仕組み。そして、「Unipos」は2017年Fringe81株式会社が提供を開始した、ピア・ボーナスを簡単に実現できるサービスです。

ポジティブな文化を加速させた組織のツール「Unipos」

▲テニス部のメンバー
阿部 「もともと人への思いやりが強く、感謝を伝え合いたいという想いが根底にあるメンバーが多かったんです。カルチャーに合っていたこともあり、すぐに受け入れられていきました」

投稿する際は「SOCS」のどれかを#(ハッシュタグ)でつけるルールを設けました。「その行動はSOCS?」「ハイソックス人材になろう」などを合言葉に、平均利用率は90%を保っているといいます。

阿部 「営業事務のメンバーが、コーヒーを置いている棚の汚れに気づいたとき、綺麗にしてくれていたんです。それに対して『 Unipos』でみんながピア・ボーナスを送っているのを見ると、やっぱりいい文化だなあって思います。

Slackのチャンネル上でやるのとまたちょっと違うんです。他の人にも見えますしね。うちの代表もよく言うんですけど、『 Unipos』はポジティブな人や組織をよりポジティブにするツールなんです。

ポジティブな気持ちが溢れると、生産性も上がります。弊社ではリモートワークも積極的に取り入れていますが、そのメンバー同士が送りあうことで交流が深まっているのを見ても、やはり働き方に合っているなと思いますね」

時短勤務で関わっているメンバーは、「Unipos」を導入したことで、残業できないプレッシャーや、周囲にフォローしてもらう申し訳なさから解放されました。

内堀 「時短勤務の社員は、自分ではもう作業はできないけど、他のメンバーに引き継ぎをしたときに『ありがとう』と言ってもらえると安心すると言います。また、人事評価では加味されづらいフォロー業務でも、周囲からの評価につながることが実感できるんです」

仕事以外の部分にも良い影響を生んでいきます。他のチームのことを「Unipos」で知り合える環境が生まれたことで、「SOCS」のひとつでもあるコラボレーションが飛躍的に増えていったのです。

阿部 「個人が自主的に資料作成講座を開催したり、野球部やテニス部をはじめとした部活動が生まれました。私も高校以来久しぶりにテニスをやったのですが、メンバーに、『阿部さん、もうちょっとラケット持ったほうが上手く打てると思います』って言われて直したら本当に上手になれたので、終わった瞬間はすぐに『 Unipos』を送りましたね(笑)

業務じゃないことでもウェルカムなんです。その方が人となりも知ることができます。私はよく週末に『 Unipos』のチャンネルを見ているのですが、しあわせな気持ちになります」

部署が違う相手のことを理解しあい、仕事の中身だけでなく、その人自身を受け入れて、認め合う文化が広がり、もっと歩み寄ろうという雰囲気も漂っています。

阿部 「月に 1度の全社会議では、『 SOCS』賞を決めています。より多く共感を得られた『 Unipos』の投稿文や、 一番ポイントを獲得した人を発表してるんです。半年に 1回 SOCS MVPを決める表彰もあります。賞があるとモチベーションも高まりますよね」

2017年度のSOCS MVPは、社内投票で決定しました。「SOCS」のそれぞれについて、誰が一番よかったかコメント付きで投票。一番票が集まったのは、カスタマーサクセスのメンバーでした。

「お客様の視点に立ち、常に最善の提案のために試行錯誤していたから」「とにかく行動が早い、思い立ったらすぐに実行している」「Slackをいつも見ていると、他人の業務に対してもフォローや巻き取りをする姿がよく見られた」など、社内からはたくさんの称賛の声が集まりました。

定量と定性――どちらも大切にしながら進むSOCS型組織

▲社員たち

どんなアクションを取ればよいのかわからず、とにかくガッツで頑張る状態が続いていた2017年10月頃。1年を経て2018年11月の今、スマートキャンプ社は「SOCS」という独自の行動指針をもとに、率先して動き、お互いの頑張りや、優しさに感謝しあう会社に生まれ変わりました。

今では採用基準や評価制度づくりもこれをベースに進めています。社員同士で『Smart Thinkingは◎だけど、Ownershipは△だね』などと話しながら、共通言語があるからこそスムーズに進んでいきます。

阿部 「一般的には定量に重きをおく評価制度の会社が多いと思うんです。でも弊社の場合は定量も大事ですが、どちらかというと定性のほうを大切にしています。

この実態に合わせて、今後はバランスをうまくとった評価制度をつくりたいと思っています。このままのペースでいくとあっという間に正社員も 100人を超えると思うので、そこに備えて整えていきたいですね」

スマートキャンプは、この『SOCS』型組織を一般的に広げていきたいと思っています。ついてこい!というようなリーダーシップよりも『全体のコラボレーションを進めるためにそれぞれがオーナーシップをもつ』この組織のかたちは、会社と人の心をどんどん優しくしていくからです。

私たちは、これからも組織の働き方、生産性、快適さ、幸せを追求していきます。