機械学習で生み出すセレンディピティ。愉快なる広告の未来

「愉快なる未来を創り、社会にダイナミズムをもたらす」KPIを単に達成するのではなく、さらにその先にある価値を提供することーー。ここにこだわりながら、レコメンデーション(推薦)アルゴリズムの研究開発に従事してきた舘野啓が考える、“広告の未来”に迫ります。
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“普通ではない何か”へのこだわり

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▲ソニー時代の一枚。中央下が舘野。右上の山本はa.i labのリーダーとして今も舘野と研究開発を共にする

現代において、誰もが一度は耳にしたことのあるAI。a.i lab(ア.イ ラボ)は、この正式名称である“Artificial Intelligence”と“ambitious innovation”をかけて命名されました。

このラボはソネット・メディア・ネットワークスの広告配信最適化プラットフォームであるLogicadを機械学習により高機能・高精度化するため、2014年に発足されたものです。具体的には研究開発、システム開発、デジタルマーケティング領域での新規事業のための研究開発をミッションとしています。

このa.i labをけん引するメンバーのひとりとして、シニアリサーチャーを務める舘野。彼は以前、ソニーの音楽配信サービスにおいて、楽曲分類やTV番組表サービスのレコメンデーション(推薦)アルゴリズムの研究開発に従事してきました。そこから自身にとっては未経験の業界である広告業界に身をおくことに。その決断をした理由をこう振り返ります。

舘野「レコメンデーションの技術に携わるなかでは、精度の高い推薦を実現することが求められます。高度な技術で明確なKPIを達成していくというアプローチが一般的なものですが、普通ではない何か、予定調和ではないものを作りたいという想いを元々持っていました。

大学で自然言語処理を学んでいたこともあり、言葉や記号に対して興味があったんです。人間の心理や認知とは何か、人にとっての意外性や飽きとは何かを突き詰めて考えていくなかで、機械学習によるレコメンデーションと膨大なデータを持つインターネット広告は親和性が高く、またそのアウトプットがビジネスに直結することに魅力を感じました。常にユーザーに対する刺激とフィードバックのループがまわり、それらが膨大なデータとして蓄積されているからです」

機械学習のエンジニアリングは、事象から仮説を作りモデル化、検証して新たな事象を生み出すというサイクルを回していきます。舘野は、機械学習の醍醐味を「世界を“意味的”に記述し、その記述に基づいて人間に情報を提示することで介入できるから」と語ります。

機械学習アルゴリズムをフルスクラッチで開発し、サービスのシステム構築まで一貫して手掛けられるa.i lab.。その存在は、舘野にとって研究者、エンジニア、ビジネスプロデューサーの3つの顔を最大限に生かせる環境として映ったのです。

研究所とシリコンバレー、対局にあるふたつの経験が導いた今

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▲a.i lab. メンバーとの一枚。機械学習のエキスパートたちが集う
一般に研究開発は、将来のサービス創造に向けた抽象度の高い先進技術を突き詰め、高めていくことが求められます。一方、2017年現在、舘野が所属するa.i lab.では研究開発とサービスのシステム開発を一貫して担っているのです。

技術を突き詰めるアプローチと、具体的なサービスに落とし込んでいくというアプローチには、思考法やスタンスのギャップを感じる人も多いと言われていますが、舘野はそうしたギャップを感じませんでした。

舘野「以前所属していたソニーの研究所では、技術を磨き込んでいくことが主なミッションでした。しかしそれだけではビジネスへの貢献が十分ではなかった。

その後、シリコンバレーで新規事業開発を担当したのですが、エンジニアのバックグラウンドを持つ自分には、ただひたすらユーザの課題を追うだけでは強いサービスの実現は難しいと痛感したのです。両方の経験から、自分のなかでは研究開発からビジネスを一気通貫で繋ぐことがテーマになり、そして今、携わっているアドテクはまさにぴったりはまる領域だと感じたわけです」

ただ「論理的に仮説検証のサイクルを回しながらも、ビジネスの大きな変化をもたらすトリガーを探し、自分も楽しいと感じられるアウトプットを作りたい」という思いで広告業界を見たときに、違和感を覚えました。

舘野「ある広告を出稿したときに、クリックやコンバージョンを正しく予測してビジネスにしていくというのが現在のインターネット広告のプラットフォームの在り様です。

たとえば、リターゲティングをすれば売上はあがりますが、実はその裏側でユーザーは度々目にする広告を不快に感じていることもあるかもしれません。それでは、せっかく広告主を認知してもらえても、逆にイメージを悪くしている可能性もあります。

レジに並んでいる人にビラを配るのではなく、潜在ユーザーの態度変容を促すような、本質的な価値提供をできないかと考えるようになりました」

こうした問題意識から、Real Time Bidding(RTB)を最適化し、精度を向上させる目的で搭載している人工知能「VALIS-Engine」の開発に携わるなかで、「セレンディピティ」というキーワードにたどり着きます。

価値ある偶然の発見が、本質的な価値提供につながる

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▲VALIS-Engineのロゴ

人工知能「VALIS-Engine」の特徴は、特定の行動を起こす確率の高いユーザーを高い精度で発見できる点です。

精度を高めるということは、KPIを向上させること。ですが、その過程においても質的な転換がなければ、ユーザーや広告主にとっての本質的な価値の提供にはつながらないと舘野は考えています。では、この特徴の“価値”とはどのようなものなのでしょうか。

舘野「我々は『レコメンデーションの墓場』と呼んでいるのですが、当たり前と感じられるものが提示されるだけでは、いずれ飽きてしまいます。

リターゲティングで効率を追い求めるだけでなく、ユーザー・広告主・そしてメディアも含めてハッピーになる広告とは何か。そう考えると、未知のものに驚きをもって出会えるセレンディピティを考慮するのは必須とも言えます。そしてそれこそが我々が提供していかなくてはならない“価値”です」

舘野が所属するa.i lab.には、「お行儀よくきちんと管理する」面と「突き抜けた新しいものを創る」というふたつの側面があります。また、個人の発想を大事にし、制約をつけずに動ける環境があると、舘野は自負しています。

突き詰めた技術を創るためには、人に依存する部分がどうしてもある。だからこそ、ディスカッションや勉強会などの機会も活用しながら、自分で考え学べる風土が必要。そしてa.i lab.にはそんな環境がある。理想の環境だったからこそ、ここ2,3年の舘野のチャレンジが形になってきました。

舘野「ソネット・メディア・ネットワークスに移ってからは、機械学習の基盤部分の開発に時間をかけてきました。ここにきてKPIを最大化するユーザーのターゲティングや配信ロジックだけでなく、広告主にとってのユーザーの興味関心やその時系列的な変化を捉え、マーケティングのPDCAを支援する“VALIS-Cockpit”という製品へのVALIS-Engineの組み込みが進んでいます。

これによって、AIが代わりを務めてくれるため、人間は高次の戦略的な思考に集中できるようになります。そして次はいよいよユーザーの態度変容を引き起こす、セレンディピティ・エンジンとでもいうべきものに取り掛かろうとしています」

出会い、満足、刺激が満載の愉快なる未来

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▲2017年現在の舘野。シニアリサーチャーとしてa.i labをけん引する

データ分析から仮説を構築し、機能に落とし込んで作りこみ、それをお客様に見せてフィードバックを受けるーー。そうしたなかで、論理的に正しいだけではないサービスが開発できると舘野は考えています。そのプロセスには、苦しさもあると言いますが、舘野自身の興味関心はどのような点にあるのでしょうか。

舘野「機械学習に長く携わってきていますが、個人的にはAI(人工知能)よりも、IA(Intelligence Amplification;知識増幅)に興味があります。

もともと自然言語処理を修士の研究テーマにしたのも人間の知性に興味があったから。人間の外側に模造品としての知能を創りたいのではなく、機械学習やアルゴリズムがどこまで人の役に立てるのか、その可能性を探求したいですね」

ソネット・メディア・ネットワークスのミッション「情報通信の進歩を人に優しいかたちにして、愉快なる未来を創る」、ビジョン「発想力と技術力で社会にダイナミズムをもたらすユニークな事業開発会社になる」の策定にも携わっていた舘野が考える、これからのチャレンジとは。

舘野「ミッションの『愉快なる未来』とビジョンの『社会にダイナミズムをもたらす』というのが、キーワードだと考えています。社会にダイナミズムがあるということは価値交換が生じ、たとえば経済活動が活発な状態です。

ただ、単に最適化が進むだけ、効率一辺倒ではなく、常に多様性が生まれ続けるような、発散方向の力も働くのが“愉快”であることだと思っていて。

そのひとつがセレンディピティです。自分にぴったりなものだけでなく、今まで知らなかった意外な商品やコンテンツに出会い、それを刺激としてさまざまなレイヤーでのアクティビティが活発になる……そんな未来を思い描いています。

仮にターゲットを絞って一点突破の技術力で勝負するにしても、その価値として何かしらの質的な変化をもたらすことは常に狙っていきたいです。技術力と発想力で戦うという意志があるからこそ、自社開発にこだわっているというのも当社の特徴です。

技術と発想の両輪でつきぬけることは私自身も目指していますし、そうした想いのある方にはぜひ仲間になっていただきたいです」

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