アニメがわからなくても、アニメを楽しむファンの心理はよくわかる

▲アニメガの責任者になった当時、アニメに関する興味はほとんどなかったという廣瀬

2011年夏、コミックの売上が低迷する中、当時の社内ではコミックだけでなくグッズなどの商材にまで取扱い商品の幅を広げていこう、という動きが起こり始めていました。そんな中、上層部からキャラクター/アニメ専門店「アニメガ」事業の立ち上げ責任者に任命されたのが廣瀬でした。

廣瀬 「突然の打診に驚きました。私自身は当時アニメにほとんど興味がなかったので、自分にアニメ専門店の責任者が務まるだろうか? と1週間ほど真剣に悩みました」

しかし、もともと音楽が大好きで、以前は音楽関係の仕事をしていた廣瀬。自分の大好きなものに熱狂するファン心理と、ファンに喜んでもらえる商品企画やお店づくりについては自信がありました。

廣瀬 「熱狂的なファンに喜んでもらうための仕掛けを考えるという意味では、音楽を仕事にしていた時の経験が生きるのではないか、と次第に思うようになりました。

アニメのことがよくわからなくても、ファンに喜んでもらえるために何をすれば良いか? を突き詰めて考えればアニメ専門店の店舗運営もやれるかもしれない、と考えてアニメガ事業立ち上げの責任者を引き受けることにしたんです」

廣瀬は徹底した顧客目線で、書籍だけではなくコミックの関連グッズやCD、ゲームなどを複合的にそろえる「提案型」の店舗運営をこころがけてきました。

廣瀬 「アニメガとして大事にしてきたのは、商品単体ではなく『コンテンツをまるごと楽しんでもらう』という考え方です。

ひとつの作品があった時、そこに関連するキャラクターグッズやゲーム・CDなどの商品を一通りそろえて、お客様には作品全体の世界観や背景を含めてコンテンツを楽しんでもらいたいと思っています」

最初は書店に併設するかたちで始まったアニメガ事業ですが、キャラクターグッズを中心に取扱い商品が増え、今では全国に単独で出店するまでになりました。

アキバは私たちにとって新しいフィールド

▲アニメガ×ソフマップAKIBA4号店。ソフマップAKIBA4号店(アミューズメント館)の6階で女性メンバーを中心に運営

コミックだけではなく、キャラクターグッズやゲームなどとコラボした商品展開を推し進める中で、2019年11月にソフマップと一体となって「アニメガ×ソフマップ」としての新しいチャレンジがスタートしました。

廣瀬 「ゲームやCDなどの取り扱いに強みを持つソフマップとコラボすることで、今後は関連グッズの企画・展開の幅がもっと広がっていくだろうと感じています」

もともと圧倒的に女性客が多いアニメガでしたが、ソフマップの顧客の中心層は男性です。得意としていた女性向けの商品・イベント企画だけでなく、今後は男性向けの企画も立てやすくなるに違いありません。

得意とする顧客層の違いによって、このコラボレーションには大きな相乗効果があるはずだと廣瀬は言います。

廣瀬 「女性にとって普段行き慣れたアニメガの店舗で、ソフマップが得意とするパソコンやスマホなどの商品にも気軽に触れてもらえる機会が増えるはずです。

アニメガとソフマップそれぞれにとって、これまで単独では考えられなかった新しいフィールドでのビジネスチャンスがつくれると感じています」

周囲の声に耳を傾けて、まとめあげることを大切に

▲現場スタッフの声もファンの声代表として積極的に耳を傾ける

「アニメガはお客様の手によって育てられているもの」と話す廣瀬がアニメガ立ち上げ当初から大事にしてきたのは、周囲の声に対して私見を挟まずフラットな気持ちで向き合うこと。

廣瀬 「アニメガは、とくに女性のお客様の声に積極的に耳を傾けてきました。もともと、女性スタッフたちから『女性客にも熱心なアニメファンが多いことを踏まえて、もっと女性に支持される作品を取り扱ってほしい』という提案があったことがきっかけです。

新たに女性向けの商品展開に注力した結果、アニメに関心を持つ女性客の影響力の大きさが露わになり、今やアニメガの全売上の8割を女性が占めるまでになっています」

お客様の想いを真摯に受け止め、それをどれだけ具現化できるか。

廣瀬 「まわりの声に対して常にフラットでいられるのは、おそらく自分自身がアニメ作品そのものにそこまで興味がないからだと思います(笑)。

特定のアニメ作品にのめり込んでしまうと、お店づくりにも自分の主観が入ってしまって、それが物事の判断に悪い影響を及ぼしてしまう可能性があります。

だから、私は自身がアニメを見るよりも、あえてニュートラルな目線で多くの人の意見を聞きたいと思っています。

たとえば、アニメがTVでオンエアされている時間帯は、アニメではなくむしろそれを視聴している人のSNS投稿を意識的に見て、ファンの反応をチェックしています」

あくまでも多くの人の意見に耳を傾けて、総合的に物事を判断しているという廣瀬。

廣瀬 「私はアニメを楽しむ『ファンに対する好奇心』が旺盛で、違う角度から見ればアニメビジネスそのものに強い関心があるのだと思います。

どうしてこの作品を好きになったのか? 社会現象になるようなファンの熱量や勢い、そこにあるファン心理はどんなものなのか? というところに着目して想いを巡らすことがとても楽しいんです」

これからも刻々と変化するアニメファンの声に耳を傾けて、柔軟にお店づくりに生かすこと。そしてその姿勢を維持し続けることが大切だと廣瀬は考えています。

「アニメガ×ソフマップ」に変わっても、これまで掲げてきたそのスタンスは変わりません。

アニメを世の中に浸透させていく。その文化づくりを担う醍醐味

▲AKIBA4号店の7階には2019年に「カフェ」も開設。女性向けのコラボカフェイベントも実施しています

昔の「アニメオタク」のイメージとは異なり、今では多くの女性客がファッションやグルメを楽しむのと同じ感覚で、アニメ作品や関連グッズの収集を楽しんでいます。

「オタク」に対してポジティブな印象ができ始めている中、たとえばアパレル系の百貨店では、アニメガのようなアニメ専門店やコラボカフェの出店によるカルチャーフロアづくりの取り組みなど、アニメとアパレルを融合させた新しいお店のかたちを模索し始めています。

廣瀬 「以前、お台場でコラボカフェを展開していた時、女性客の長蛇の列ができたことがあり、その時に施設の方が『こんな行列がほしかった。なぜ、この行列をアパレルでもレストランでもなくアニメショップがつくれるんだ?と驚いた』とおっしゃっていたのが印象的でした。

施設の方に言われるまで私たち自身は気付いていませんでしたが、この行列はターゲットのニーズを的確に捉えてお店づくりができている証しなのだ、とその時に実感しました」

すっかり市民権を得た「アニメ」「オタク」文化ですが、一方で、今はまだ電車の全面にアニメ関連の広告が出ると少し違和感を抱く方もいるかもしれない、と廣瀬は感じています。

しかし、数年経てばアニメコンテンツが秋葉原のような特定のエリアだけでなく、もっと当たり前に全国の至るところに浸透していくに違いない、と廣瀬は言います。

廣瀬 「今後、アニメは『オタク』だけのものではなくなり、さらに人々にとって身近な存在になっていくはずです。だから、この業界にはまだまだのびしろがあると感じています」

これまでのアニメガに加えて新たにソフマップとしての強みも加わった今、両者一体となった「アニメガ×ソフマップ」を通じて、総合エンターテインメントによる新しい文化、新しい価値づくりに、これからも廣瀬は挑んでいきます。

●アニメガ×ソフマップ AKIBA4号店
https://www.sofmap.com/tenpo/contents/?id=shops&sid=animega_akiba04
●ステラマップカフェ
https://www.sofmap.com/tenpo/stellamap/