熱狂せよ!──狂ったほどの熱情が情報革命を加速させる

2019年4月25日。ソフトバンクは国内最大級のキャリアイベント「ソフトバンクキャリアLIVE2019」を開催しました。そこでソフトバンクグループ代表の孫正義が投げかけたのは、「熱狂せよ」という言葉。情報革命の時代に求められているものとは何なのか──孫のメッセージを振り返ります。
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革命の主役は、熱狂する若者たち

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この写真(左)は1900年に撮影されたニューヨークの5番街です。そしてもう1枚の写真(右)は、同じ場所で13年後に撮影されたもの──。

馬車が通りを埋め尽くす中で、自動車は1台しか走っていなかったのが、たった13年でその数を逆転させています。

この間に何が起きたのか?1908年、T型フォードの量産がはじまり、自動車が大衆化したのです。

短い期間で、これほどに景色が変ってしまうのです。まさにこれこそがパラダイムシフト。「世の中の前提は変わる」ということを、表現している写真だと思います。

では、このニューヨークの5番街が、2019年の現在から15年経ったら一体どうなるのか?私の推測では、この通りを走る車のほとんどが、AIを搭載した自動運転車に置き換わります。つまり、テクノロジーの進化によって、100年ぶりにパラダイムシフトが起ころうとしているのです。

真の21世紀がやってこようとしているこのときに、皆さんに伝えたいメッセージがあります。

──「熱狂せよ」

熱狂した一部の人、ほんのひと握りの存在が、集中して、没頭して、世の中を変革させるのです。

かつて日本にもそんな人たちがいました。坂本龍馬をはじめとした幕末の志士たちです。幕末に生きた日本の若者たちは、日本に突然やってきた黒船を見て、「これは大変なことが起きる。日本国家が転覆するかもしれない」という危機感を抱きました。これを防ぐには、古い日本のしきたりを変える必要がある。彼らは狂ったように人生をかけ、大人を動かし、社会を動かし、明治維新という変革をもたらしたのです。

熱狂する彼らにはどんな武器があったのか?権力があったのか?資金があったのか?

彼らにたったひとつあったもの。それは“志”でした。

“志”という言葉を英語で翻訳しようとすると、適切な言葉が見つかりません。似たような言葉なら“夢”というものがあります。しかし私は“夢”と“志”には決定的な違いがあると思います。

例えば「ピアノを買いたい」「かっこいい車を買いたい」。こうした個人の願望は、“夢”という言葉で表現できます。しかし“志”とは言えません。

ひとりの夢ではなくて、100万人、1,000万人、1億人の人々の願望をかなえてあげたいという思い。これを“志”と呼ぶわけです。

一生懸命働いてお金を手にしたい、事業で成功したいというのは個人の願望に過ぎません。

一度きりの人生、仕事を通して100万人、1,000万人、1億人の人々の願望をかなえることに、狂わんばかりの情熱を費やすことができたならば、もっと心が満たされるんじゃないかと私は思います。

そして、私の願望、ソフトバンクグループの願望というのはたったひとつです。それは、私が社会人になったときから、ソフトバンクグループを創業したときから、変わることがありません。“情報革命”です。

情報革命を通して多くの人々に幸せになってもらいたい。これが唯一最大の志です。

震えるほどの衝撃が、情報革命という山を登らせた

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「登る山を決める、それで人生の半分は決まる」

どこかの格言みたいですが、私がつくった言葉です。自分でそう感じたんです。

山を途中で降りて、もう一度登りなおすというのはなかなか大変なんです。それだけで人生の時間の半分を失ってしまいます。だから若いうちに、自分が人生をかけて追い求める、熱狂できるようなテーマを選ぶことが大切なんです。

私が“情報革命”という思いに至ったきっかけは、学生時代にまでさかのぼります。

当時私は、1枚の写真に出会いました。未来都市を上から見た航空写真のような、それでいて工場のような写真。写真が載っていた雑誌をもう1ページめくってみると、なんとそれがマイクロチップであるということを知りました。そのときの衝撃は、ものすごかった。

感動的な映画やドラマ、音楽、小説などで涙を流したことはありますか?指先がジーンとしびれて、体中が震えるような感じになったのではないかと思います。その感覚を、私はマイクロチップの写真を見たときに感じたわけです。

そして、そのマイクロチップが入ったコンピューターがいずれ人類の脳細胞の働きを越えるかもしれないということを想像すると、涙があふれて止まらなくなりました。“情報革命”を起こして、多くの人々に幸せになってもらいたいと思ったのです。

人類は、これまでに3つの大きな革命を起こしました。

農業革命、産業革命、そして“情報革命”です。

情報革命の根幹にあるのは、私が衝撃的な出会いを果たしたマイクロチップが入ったコンピューターです。そして、それからの30年間でコンピューターは大きく進化しました。3大コンピューティング要素と言われる、CPU、メモリー、通信速度。この3つが30年間で約100万倍にまでになっています。その進化とともにソフトバンクグループという会社も業態を変化させ続けてきました。

「ソフトバンクグループの本業は何ですか?携帯電話の会社ですか?」と質問されることが多いですが、携帯電話事業が中心だったのは直近の10年ほどの話です。最初はパソコンのソフトウェアの卸売りから始まり、固定通信事業や移動通信事業に参入し、その後もさまざまな会社をグループに加えて、業態を変化させてきました。

ソフトバンクグループは常に、情報革命の最先端のテーマを追い求め、その進化とともに業態を変化させてきたに過ぎません。本質的には私たちは何も変わっていない。

仮に「本業は何か?」という問いに答えるなら、「情報革命屋さん」というのが適当なのです。

群戦略で挑む情報革命の加速。ソフトバンクグループが “ AI ”に注目する

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情報革命屋さんとして、テクノロジーのフロントエンドを追い求めてきたソフトバンクグループが、今最も注目しているのが“AI”です。

この30年でコンピューターが飛躍的な進化を遂げたように、AIのパワーは次の30年で100万倍に進化します。現在ですら、皆さんが天気予報を知りたいとき、自分で推論するより、漁師に聞くより、AIで導かれた予報に頼るほうが確実です。

するとあらゆる産業が再定義されます。建設、ホテル、オフィス、製造業、運輸業。未来の子どもたちの勉強の仕方も変わるでしょう。医療も進化します。

私たちはそんな情報革命を加速させる存在でありたい。もし加速させるために必要なことを、すべてソフトバンクグループの事業だけで行おうとしたら、爆発的にやってくるAIの時代にとても間に合いません。だから私たちは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドをつくったのです。

世界中の若い経営者が創業した最先端企業に、資本や知恵を提供して、成長を促進し事業をスケールアップさせる。仲間をつくって、群戦略で情報革命を加速させるというのが、私の考えです。

世界のベンチャーキャピタルの総資金量が7兆円と言われる中、10兆円規模のコミットメント額をもつソフトバンク・ビジョン・ファンドは、これまでに約70社の企業に投資してきました。WeWorkや、TikTok などで若者に知られているByteDanceもそのうちの1社です。

日本の幕末の志士たちは、狂ったような情熱を持って新しい世の中をつくりました。私たちもまた、世界中の企業と志を共有し、熱狂して情報革命を加速させていくのです。

情報革命の時代に、私たちは何に熱狂すべきなのか?

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情報革命は、人類がこれまでに歩んだ20万年の歴史の中でも、体験したことのないほど大きなパラダイムシフトです。

そんな中、私たちは何のために革命を加速させるのか?何のためにAIを育てていくのか?

人間を不幸にするためではありません。あくまでも人々に幸せになってもらいたいからやるのです。世の中の悲しみを減らしたいのです。

AIによって、自動車運転技術が普及すれば、構造的に交通事故が起きない世界をつくることができます。AIによって、ガンを早期発見することができれば、有効な治療を受けられる患者さんが増えます。AIによって、農業を効率化し、最低限の土地や水で安心安全な食糧を大量生産すれば、食糧危機を解決することもできます。

こんな世界を実現できるなら、AIに関わること、情報革命を加速させることは、情熱を燃やすのに値する仕事です。情報革命が加速する時代に社会人となる人は、大きな分かれ道にさしかかっています。この革命に熱狂せずに何に熱狂するのでしょうか。傍観者であってはいけません。幕末の志士のように、自らが命懸けで、変革のなかに突入し、多くの人々の問題や悩みに向き合ってください。

私は25歳のときに、慢性肝炎で入院しています。余命5年を宣告されました。そんな中、病室を抜け出してまで会社の経営会議に出て、医者に怒られました。

病室で泣きながら「何のために病室を抜け出してまで、仕事をするのか」と、自分に問いました。お金のためでもない。名誉のためでもない。

行きついた答えは「笑顔が見たい」ということ。家族の笑顔が見たい、だから生きていたい。家族だけじゃない。毎日出社して社員の笑顔が見たい。お客さんの笑顔が見たい。地球の裏側で、ソフトバンクグループが提供したサービスによって誰かがニコッと笑顔になる。そんな想像をしただけで、生きる価値があると思いました。

幸いにも病気は完治しました。しかし、そのときに抱いた思いは、今も私の心の根底のところにあるのだと思います。

──さて、皆さんは人生をどのように生きるのか?狂ったように、命をささげても惜しくないと思えるようなテーマ、仕事、会社を探してください。巡り合うことができたならば、あとは登るだけです。それで人生の半分が決まります。

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