りょかち「アバターと本物を行ったり来たり。全然違うふたつだけど、どっちもわたし」

IT企業で正社員として働く一方で、個人としても物書きとしても注目を浴びる“りょかち”。「奇跡の自撮り」が話題になり、現在は若者やインターネット文化について幅広く執筆活動をおこなっている。一見すると、若くから業界内で広く知られるようになり、臨むままに自己実現できているように思える彼女が本音を吐露する。
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批判を100%受け止めるのはしんどい。客観的な視点を持つことで傷つかずにいられる

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“りょかち”という名前と、“自撮ラー”という肩書きが注目されるようになったのは、SNSにアップした1枚の自撮りがきっかけでした。はじめての就職でIT企業に入ることになり、当時大流行していたカメラアプリも触ってみようと思って、自撮りを試していたら、奇跡の一枚が撮れたんです。

当時の私は、メイクやファッションにあまり興味がなくて「カメラアプリでこんなに可愛くなるの!?」と驚きました。

撮った写真に写っているのは自分自身という感覚はなくて「自分にそっくりの可愛い“アバター”ができた!みんなにシェアしよう」ーーそんな気持ちだったんです。

“りょかち”が少しずつ有名になっていくに連れて、批判を受けることもありました。そんな批判を100%受け止めるのは、もちろんしんどい。


でも、私の場合は“りょかち”というアバターへの意見だと、一歩引いた視点で客観的に見ているから、傷つかずに済んでる部分があるかも。

“りょかち”とオフラインで生きる本当の自分が別のものって、自分の中で分けられているんですよね。

慌しい東京の街で唯一本当の自分で居られる場所は、好きな人の隣

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やっぱり“りょかち”は自分のなかで、お仕事モードのキャラクターなんです。

だから、そのキャラクターだけを求めて私に近づいてくる人とは恋愛できない。

前にすごく好きだった人は、私とは全然ライフスタイルが違って、SNSをやらない人だった。

私はいつもTwitter見てて、テレビなんて見なくなっちゃったけど、彼は話題のテレビ番組を知ってたりして。

情報がたくさん溢れていて、慌しい東京の街で唯一本当の自分で居られる場所って、好きな人の隣なんです。ちょっとエモすぎますかね?(笑)

心が落ち着く場所をつくってくれるのは、私と真逆でオフラインの世界を楽しめる人なんですよね。

もし、“りょかち”だけを好きになられても、それは本物じゃない……と思ってしまいます。

恋愛でも、ずっと“りょかち”を求められたら、着ぐるみを着たまま恋愛してる感覚。

仕事と恋愛で求められる機能が違うと思うから。

でも、そうなると出会いの数って減っちゃいますよね(笑)。

アバターと本物の自分にギャップはある。でも、ふたつあるから“自分”を守れる。

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新卒として社会に出た時も、“りょかち”と“本物の自分のギャップはあって。

自撮りが話題になったのは入社する前だったから、会社に入った時点で、新人社員としての私を知る前に、“りょかち”を知ってる人がいたんです。不思議な感じだった。

私、会社に入ったばかりの頃、全然仕事ができなかったんですよ。右も左も分からないし、周りにすごく迷惑をかけてしまって「私って社会人としてダメなんじゃないか」と落ち込んだりもしました。

でも、その一方で、“りょかち”として発信した文章を通して読者が自分を肯定してくれた。すごく助けになってましたね。

実は、私は豆腐メンタルだから、精神的に潰れないためにも、それぞれのキャラクターをつくって使い分けをはじめたのかもしれません。

自分のアイデンティティがふたつあるから、上手く自分の感情を分散させることができているんじゃないかな。そうやって自分で自分を守っていたのかも。

自分らしいことって、“たったひとつの自分”じゃなくてもいい

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自分自身で、“りょかち”がすべてになってしまうと個人作業ばかりで寂しくてしんどくなることも分かってるし、普段の私の活動が“りょかち”のハードルになることもあります。

ふたつのキャラクターが似通ったり、離れたり、時期によってちょうどいい距離感が違うけど、その瞬間瞬間でベストな距離感をつくれている気がします。

自分らしいことって、「たったひとつの自分」じゃなくてもいいと思ってます。

好きな人と一緒に過ごす時の素の私も、お仕事モードの“りょかち”も、どちらも私で、どちらも自分が納得して選んでいる。

結局、自分で考えて、自分が納得しながら一歩ずつ前進することが「自分らしさ」を楽しむ上で大事なのかなって思ってます。

<Profile>
1992年生まれ。京都府出身。IT企業の社員として働くかたわら、通称「自撮ラー」を名乗り、SNSに自撮りをアップしつづける自撮り女子。若者文化やセルフィーアプリに関心を持ち、自撮りを始めとするインターネット文化についての取材も多数受ける。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)がある。

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