福祉から人材ビジネスへ――私が本当にやりたかった、 障がい者自立支援

株式会社エスプールプラスが運営する わーくはぴねす農園で働く君和田里奈。彼女はもっと本当の意味での「障がい者自立支援がしたい」と、福祉の職から当社に転職します。障がい者と企業を結ぶ懸け橋として活躍している彼女がたどり着いた障がい者支援のかたちをご紹介します。
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彼女がやりたかったことと、福祉業界での働き方のギャップ

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▲わーくはぴねす農園事業部 障がい者就労支援グループ リーダー 君和田 里奈

2018年に障害者雇用促進法が改正され、民間企業の法定雇用率は2.2%と定められました。

昨今では行政の雇用率水増しニュースも話題になりましたが、企業にとっても法定雇用率を満たしていくことは簡単ではありません。

そんななか、株式会社エスプールプラス(以下SPP)が運営するわーくはぴねす農園では、企業に農園を貸出し、共同農園というかたちで野菜づくりや障がい者の働き方をサポートする取り組みをしています。そうすることで、企業が障がい者を雇用する機会を提供できると考えています。

雇用機会に恵まれにくい重度の知的障がい者も活躍でき、やりがいを持ってはたらくことができる仕組みです。

2017年に入社した君和田里奈は、わーくはぴねす農園で就業を目指す障がい者のサポートや、就業がかなったあとも長期的に仕事ができるよう雇用主である企業に福祉的なアドバイスをおこなっています。

彼女は、自身の幼少期の経験から「社会的に弱い立場になりやすい人の手助けがしたい」と考えていました。

君和田 「あまり恵まれたとは言えない環境で育った自分だからこそ、そういった経験をしている人の背中を押せるのではないかと思ったんです」

中学生のころから福祉の勉強をはじめ、短大では児童養護施設で働きたいと保育を専攻します。

そこで、障がいがある子ども達を取り巻く環境に社会的問題が多いことを知った君和田は、卒業後の進路に障がい児の保護や、自立に向けての訓練をサポートする障がい児入所施設で働く道を選びました。

しかし、施設では障がい者の生活を支えることはできても、障がい者本人の社会進出の後押しはできなかったと言います。

君和田 「調理の仕事に就きたいと話す子がいましたが、さまざまな制約によって、その子の望みをかなえることはできませんでした。そのとき、働くことを希望する人や、就業に向かって努力したいと思う人たちの力になりたいと、強く思いました。」

これを機に君和田は転職を考えるようになります。

第2のジレンマ

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▲オフィスの当たり前は福祉出身者にとってまったく「当たり前」ではありませんでした

自分の仕事にジレンマを感じながら、今の施設で頑張りつづけるのか、福祉業界のなかで新しい施設を探すのか迷っているときに、たまたま転職サイトでSPPの掲載が目に留まります。

君和田 「知れば知るほど SPPのビジネスのかたちに驚き、魅力的な仕組みに興味を持ちました。ただ、自分が民間企業で働くイメージがまったくわかず、まさか自分が働けるはずがないと思っていたんです」

しかし、「あなたのやりたいことや適性から、一緒にできることや強みを見つけていきましょう」という社長のコメントを見て、もし採用されなかったとしても、この人に会ったら自分のキャリアのヒントが得られるのではないかと思い、応募を決意します。

初回から社長面接。

緊張でしどろもどろになりながらも、これまで感じていたジレンマや本当にやりたいと感じていることを包み隠さず打ち明けると、なんとその場で内定決定。

君和田 「たくさん悩んでいたけれど、行動をしたら案外すっと決まっていって……。それはきっと、会社の目指している方向と自分のやりたいことが同じ方向にあったからだと思います」

そしてここから、彼女の民間企業での仕事がスタートします。

君和田 「初めて通うオフィスはまるで外国のようでした。名刺交換や電話の架け方、挨拶の仕方などすべてが異なり、何がわからないのか、誰に聞いたらいいのかも分からなくて。入社時のテレアポ研修では緊張して『お世話になっております』がなかなか出てこなくて、『こんにちはー』と怯えながら架電していました(笑)」

数字目標やKPIなど、彼女にとって今まではなかった考え方や仕事の仕方、時間の流れ方でした。

新しいことだらけの毎日に困惑しながらも、本当にやりたいことのために日々努力を続け、ついに障がい者のコーディネーター業務を任されるようになります。

待ちに待ったポジション。

しかし、はじめのうちはまったく障がい者の就職の機会を作りだすことができませんでした。

君和田 「福祉業界で障がい者に寄り添っていた経験があるからこそ、つい『この人はこういった課題があるから、まだ就職は後押しできない』と、できないことに目を向けてしまっていたんです。」

障がい者を理解したい気持ちが、背中を押したい気持ちを邪魔しているーー。

彼女は再びジレンマに陥ります。

苦悩の先にやっと見つけた、自分だからこそできる障がい者支援

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▲19上期キックオフMTGでは「貢献チーム代表」として社内表彰を受けました

そんなとき、君和田の尊敬する上司からあることを言われます。

「その人を守ろうとしすぎることは、障がい者本人が頑張ればできることも奪ってしまうことになる。障がい者のことをよく理解している君和田だからこそ、その人が特性上難しいことでも、周囲がどんな配慮をすれば出来ようになるのか考えてほしい。

私たちの仕事は、頑張りたいと思う障がい者の背中を押すこと。君和田自身がやりたいと思ったこと、良いと思ったことは何でも提案してやってほしい。」

この言葉を聞いて、君和田は今までジレンマを感じていた施設での働き方から自分自身が変われていないことに気がつきます。そして、この言葉が彼女の考え方や行動を180度変えるきっかけとなりました。

君和田 「たとえば、言葉を発して相手に伝えることが難しい人には、意思を表現するカードをつくって気持ちを伝えられるようにしたり、人生で初めて働く知的障がい者には、社会人としての自覚を持ってもらえるような心構え 10カ条を作り、常に見えるように掲示したりしました」

そして君和田は、普段からも改善したいことや取り入れたいことを迷わず発言するようになります。時には社内のメンバーともぶつかりながら、より多くの障がい者が長く楽しく働くためには何をすべきなのか真剣に考え、行動に移していきました。 

2019年3月現在、君和田が関わり就職をとげた障がい者の数は2年間で約200名に達しています。さらに30社の参入企業すべてに毎週、福祉的な見解からの雇用継続に向けたアドバイスを行っています。

わーくはぴねす農園での障がい者の定着率は92%超。「楽しく長く働こう」という君和田の考えたスローガンは農園に浸透しています。

農園で働く障がい者や、その雇用主である企業からの信頼も厚く、いつもさまざまな相談を持ちかけられるため「現場ではなかなか捕まえられない君和田さん」と言われるほど毎日を忙しく過ごしています。

その努力が認められ、2018年12月からはリーダーとして自分のチームを先導する立場に大抜擢されました。

彼女の熱い想いが変化を起こす

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▲これからも障がい者が楽しく、長く働けるよう全力でサポートしていきます

障がい者に対し、誰よりも熱い想いや信念を持つ彼女の存在は、チームメンバーや参画企業にも大きな影響を与えています。

君和田の考案により事例を共有する勉強会が発足しました。これまでの経験や知識を積極的に発信することで、社内の専門的な知識の底上げにつながっています。

障がい特性毎の配慮方法が整理され、会社のノウハウの蓄積とともに、より多くの障がい者が働ける可能性を引き出すことができました。

そんな彼女の原動力の裏には、ある障がい者の親御さんからの言葉がありました。

「今まで息子の就職は雲の上の上のことだと思っていました。この子は死ぬまで働けないだろう、親としてこれからどうしたらいいんだろう、と。

でもここにきて、本人も私も、人生が変わったんです。人としてちゃんと生活をしていて、楽しそうに仕事から帰ってくる息子の姿を見ることができて本当に嬉しいです。ーー」

知的障がいの方のなかには、なかなか企業とのマッチングができず、就職に至ることができない方も少なくありません。

この言葉を聞いた彼女は、「民間企業に飛び込み、がむしゃらに努力してきた日々がすべて報われた気がしました」と目を細めます。さらに、私が仕事を楽しんでるのには、もうひとつ理由がある、と続けます。

君和田 「単純にこの仕事が大好きで、彼らと一緒に仕事ができること自体が私にとっての働きがいなんです。障がいがある人もない人も関係なく、同じ人間なのだからもっと普通に接し、社会参加できるようにしたい。
知的障がい者に対して、子どもに話しかけるような言葉で話すメンバーがいたら、注意します。分かりやすく話すという配慮は必要ですが、子ども扱いをするのは違うと考えています。目上の方であれば敬語でお話します」

君和田の障がい者に対する敬意や想いは社内外に伝播し、応援や連携を申し出ていただく特別支援学校や福祉機関もどんどん増えています。

君和田 「これからも自身の経験を活かし、また新しいことを吸収して、より多くの『頑張りたい』と思う障がい者の就職を後押ししていきたいです」

幼い頃から描いていた夢に向かって、君和田は日々まい進しながら成長を続けています。そんな彼女の熱い挑戦はまだまだ続きます。

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