“人”が会社の優位性になる──機械化の中で光る人財とは

▲品川センターに導入された自動梱包機の様子

今日、宅配クライシスの深刻化や働き方改革の必要性が叫ばれる物流業界は、まさに転換点にあると言える。多くの企業で機械化の重要性が取り沙汰される中、エスプールグループ初の新卒社長である小林正憲は、これからの物流アウトソーサーとしてのエスプールロジスティクスでは人──つまり従業員が最大の競争優位性になると考えている。

小林 「物流業界において装置産業化──つまり機械による物流業務の代替は、技術の進歩や人手不足の現状を鑑みれば当然の流れです。しかし、それはあくまで業界全体の潮流であって、機械化を推し進めることが個々の企業にとっての競争優位性獲得にはつながりません」

では物流業務が完全に機械によって代替された世界で、物流アウトソーサーと呼ばれる事業者が生き残っていくにはどうすれば良いのだろうか──。

その答えは、物流の“構築”にある、と小林は考えている。

小林 「物流の構築とはどういうことかと言うと、われわれのような物流アウトソーサーが画を描き、 EC事業者と二人三脚でその EC事業者独自の物流網を築き上げていくということ。どのような方法で商品を倉庫に入れ、在庫管理をしながら日々の入出荷の作業を行っていくのか。それらを考え、実際につくり上げていきます。機械はあくまでその物流網を構築するための手段に過ぎません」

独自物流の構築者が物流アウトソーサーの次なる姿だと考える小林。その背景には機械によって代替されていく人間としての危機感がある。

小林 「機械化は人間の不得意な部分を補完する効果がある一方、機械によって代替される職に従事する人間を淘汰していきます。物流では “ミスしない・疲れない ”機械が単純作業を代替することによって、品質の改善や効率化が期待されています。反面、そのような分野でしか活躍できない人間は職を失うかもしれない。
そんな未来がすぐそこまで来ているのです。そんな世界で “人財 ”としての価値を発揮していくには、人間にしかできないことで力を発揮する人財を育成する。それが私の大きな使命のひとつだと思っています」

人材育成は使命──。その言葉通り、エスプールロジスティクスは物流を通して社員にさまざまな挑戦をさせている。

人と関わるのがいやだった──物流業界への就職

▲日々佐久間が勤務する品川センター

高卒新卒としてエスプールロジスティクスに入社した佐久間南那。彼女は2019年現在、入社5年目を迎えた。物流業界でこれまでに多くを経験してきた彼女が、数ある選択肢の中で物流業界への就職という道を選んだ理由──その原点は「人と関わるのがいやだ」という“苦手意識”だった。

佐久間 「もともと梱包などの細かい作業は好きでしたし、自分に合っているんじゃないかと思ったのが、物流業界を就職先に選んだ理由のひとつでした。でも正直に言って、最も大きな理由は “人と関わりたくない ”というところだったんです(笑)」

昔からポジティブ思考というよりはネガティブ思考に近いと自分を認識していた佐久間にとって、倉庫内での梱包作業を主とする職種への就職は、手先の器用さを生かせることも相まり、“人と関わらない”で行うことのできる仕事としてはベストな選択肢のように思えたのだ。そしてその認識は、働き始めてから確信へと変わった。

佐久間 「実際に働いてみると、作業レクチャーを受ける際や指示を仰ぐときなど、ちょっとした人との関わりは絶えずある仕事ですが、それ以外の梱包作業などをしている間は自分だけで集中して作業ができるます。なので、就職前にイメージした物流業界とほとんど違いはなかったですね。倉庫での仕事は、好きです」

また、佐久間は自分のことを「ネガティブ思考だ」と考えているものの、ネガティブ思考であることが物流アウトソーサーとして有利に働く局面もあるという。

佐久間 「物流は EC事業者にとって、お買い上げいただいた商品をお客様に届けるという意味で非常に重要度が高い業務ですが、その反面特別な能力を必要としないので、ミスには常に細心の注意を払わなければなりません。
ひとつのミスが個人情報の流出など大変な事故につながり、 EC事業者の世間的な信頼を損ねてしまう危険性もあります。その点もともとのネガティブ思考から、常に最悪を想定して動く癖がついているので、ミスを防ぐという意味では役に立っているのかも(笑)」

そしてついには、そんな佐久間の仕事ぶりが評価され、センターにある5フロアのうちの1フロアの責任者を任されるのだった──。

フロアを管轄する責任者に!? 求められる挑戦と成長

▲業務に従事する佐久間

人に関わらなくて済む仕事をしたいと選んだ物流業界において、皮肉にもフロア長という立場で他の作業者の管理までを任されることになった佐久間。当時の心境はそのほとんどを不安が占めていたという。

佐久間 「もともと人と関わる仕事はしたくないということで選んだはずだったのに、管理者を任されることになったときには、正直不安しかありませんでしたね。管理者というと積極的に相手に働きかけて指示をしたり、親身になってアドバイスしたりしなければいけませんよね……もともと苦手なことを進んでしなければいけないというイメージがありました」

そんな佐久間の予感は的中する。当時は数多くの壁にぶつかり、くじけそうになったことも一度や二度ではなかった。

佐久間 「管理者になりたてのころは本当に大変でした。壁にぶつかったというより壁しかないという感じでしたね(笑)。とくに大変だったのは自分の作業にだけ集中していれば良いという環境ではなくなったということでした。業務上で何かしらのミスがあった際には、フォローするだけでなく再発防止策まで自分の頭で考えなければいけない。
これまでは誰かの指示で動いていれば終わっていた 1日が、自分で考えて自分が指示を出さなければ何も進んでいきません。当然その分責任も重くなるので、逃げ出したいと思うこともありましたね」

数多くの壁にぶつかりながらも、フロア長としての責任をまっとうしてきた佐久間。そして、「たしかに成長している」という手応えを感じている。

佐久間 「コミュニケーション能力はかなり上がったと思います。以前は人と話すのがあまり好きではありませんでしたが、半ば強制的に人と話さなければならない環境に身を置くことによって、知らず知らずのうちに成長していたのかもしれませんね」

そんな佐久間は現在、日々EC事業者の資産である数多くの商品の在庫管理を的確に行うかたわら、他の作業者への作業内容のレクチャーや入出荷状況の進捗管理など、複数の業務をマルチタスク的に行っている。忙しい日常を駆け抜けるその姿からは、「人と関わるのがいやだ」と言っていた就職前の姿は想像もつかない。

ゆっくりと、だが着実に成長を遂げてきた佐久間だが、本人はまだまだ成長していかなければならないと考えている。

佐久間 「会社として信頼して任せてもらっているなと感じることが多いですが、まだまだその信頼に完全には応え切れていないと感じることもあります。佐久間に任せれば大丈夫と言ってもらえる存在になれるように、がんばりたいです」

彼女の道のりはまだまだ始まったばかり。

チャレンジングな環境が、彼女の積極性を育んだのだ。

「真の物流アウトソーサーを育成する」──掲げる理想と現状

▲SLG社長の小林は、「人財」について独自の理想を掲げる

佐久間だけでなく、エスプールロジスティクスではアウトソーサーとして次の時代でも戦える人財の育成に力を注いでいる。

しかし社長の小林は、現状に強い課題感を感じている。

小林 「正直課題は山積みですね。直近の最も大きな課題は、目の前の業務で社員の手をいっぱいにしてしまっていること。頭を使って、業務改善や学習など『真のアウトソーサー』としての価値向上のため行動を取ってほしいと思う反面、そのような機会や時間的な余裕を与えることができていない現状は、すぐにでも改善しなければいけないと考えています」

十分な機会や時間を与え、真のアウトソーサーを育成するための体系を整える──一朝一夕で解決しないこの問題に、小林はこれからも根気強く向き合っていく覚悟だ。

では、小林が考える理想的な人財である真の物流アウトソーサーとは、そもそもどのような存在なのか。

小林 「私は真の物流アウトソーサーとは、経営者としての視点を持っている人だと考えています。物流戦略は近年、経営戦略の中でもその重要度がとくに上昇していて、私が知っている経営者の方々でも物流戦略に課題を持つ方は非常に多いです。そういった経営者の方々に真の物流アウトソーサーとしての価値を提供するには、経営者の方々と同じ視点で話ができる存在でないといけないと思います。
その上で各社の経営戦略に最も適した物流戦略を提案・実行し、日々運用を回していく中で能動的に改善提案をしていくことで、お客様からの信頼を得ていく。社員一人ひとりが、そうした能力を持った会社にしていきたいです」

一人ひとりが経営者としての能力や知見を持った真のアウトソーサーで構成される会社。それが小林の掲げる究極的な目標であり目指す理想なのだ。そのためには物流業界の常識すら打ち破っていかなければならない。

小林 「物流業界は 1日単位、 1月単位で予測のできない物量の増減が頻繁に起こります。そうした場合に備えて、各物流業者はアルバイトや派遣など一時的な人員の確保を行うのが通例です。
しかし真の物流アウトソーサーを目指す私たちは、全員が高いスキルを持った社員で構成されるべきだと考えます。つまりアルバイトや派遣社員ゼロです。その代わり日々の物量の増減には機械を用いて対応していく」

機械の台頭に脅かされることのない人材を輩出し続けるため、これからもエスプールロジスティクスの挑戦は続く──。