企業からNGOへ。「好き」を大切に、セクターを越境して活躍

1981年の設立以来、絵本をひとつの軸としてアジアの子どもたちへの教育支援や緊急救援活動をおこなってきたNGO、シャンティ国際ボランティア会。広報課に所属する平島容子は、もともと「ボランティア、社会貢献活動などに全く関心がなかった」と言います。そんな彼女が、シャンティで働くようになったきっかけとは?
  • eight

企業から、「関心がなかった」NGOへ

Cc097115f7cae5df2ff0061259c3a12e05300c31
▲事業内容に惹かれてシャンティに入職した平島容子。(「おおきなかぶ」福音館書店)

シャンティ国際ボランティア会(以下、シャンティ)は、1981年にカンボジア難民キャンプで図書室の設置や絵本の読み聞かせなどの教育・文化支援活動をおこなうために設立されました。

一時的に満たされるものではなく、子どもたちが自身の手で未来を創造する力を育むための支援活動を目指し、設立以来37年以上にわたって活動をおこなってきました。

絵本をひとつの軸として、アジアの子どもたちに現地語に翻訳した絵本を送る「絵本を届ける運動」をはじめとする図書館事業、学ぶ環境を整える学校建設事業、図書館員の育成などをおこなう教育事業など、多岐にわたる活動を続けています。

現在、カンボジア、ラオス、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、アフガニスタン、ミャンマー、ネパール、タイの7つの地域での事業のほか、国内外での緊急救援活動もおこなっています。

2011年からシャンティで働く平島容子は、広報課に所属し、団体の広報業務と、寄付者とのコミュニケーションをおこなう業務を担当しています。そんな彼女のシャンティに入職したきっかけは意外なものでした。

平島 「実は、ボランティアや社会貢献というキーワードには、特に関心がなかったんです」

新卒でアパレル会社に入り、その後広告代理店で働いていた平島。広告代理店で忙しく過ごすうちに、「もの」を扱う仕事に憧れを持つようになりました。

幼少期から自身で絵本をつくって遊ぶなど絵本に親しみ、絵本に関わる仕事に就くことを考えていた時に、当時の職場の人から「アジアで絵本がある国は少ない」という事実を知らされ、衝撃を受けます。

そしてその後、転職先を探すときに検索したキーワードが「絵本 求人」。結果として出てきたのが、当時募集していたシャンティの求人でした。

平島 「絵本を知らないアジアの子供たちに絵本を届けるすてきな事業だなと思ったんです。 NGOに対してイメージをまったく持ってなかったので、とてもフラットな目線で転職先の選択肢として、シャンティの求人に関心を持ちました」

そして、2011年2月、シャンティに入職することになります。

関わる人それぞれの想いに感動した転職直後

シャンティ入職直後の平島が携わったのが、「絵本を届ける運動」でした。

「絵本を届ける運動」は、1999年からはじまったシャンティの基幹事業のひとつです。子どもが気軽に触れることができる本が足りない地域に向けて、日本の絵本に現地語の翻訳シールを貼り、子どもたちが母語で読める絵本として届けます。

絵本を届ける先はカンボジア、ラオス、ミャンマー、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、アフガニスタン、タイ。手軽に参加することのできる国際協力として、多くの方に長年親しまれ、1999年から2019年2月13日までに 30万冊を超える絵本を送り出しています。

これまでボランティア活動をした経験はなく、シャンティが平島にとって初めて関わるNGO。民間企業から転職して感じたことは、関わる人それぞれの想いの強さでした。

平島 「入職してすぐに関わっていた『絵本を届ける運動』では、全国各地からボランティアの方がつくってくださった絵本が事務所に届いて、事務所から海外に発送するんですね。
ボランティアで絵本をつくってくださっているのに、さらにお手紙で温かい言葉を伝えてくださる方がいたり……。直接的に感謝の言葉をもらうことなんて、企業で働いていたらあまりないですよね。感謝するのはこちらの方なのにそのお気持ちがとても嬉しくて。
パートさんやボランティアさんの多さにも驚きましたし、働きながら関わる方みなさんの想いが強くて、感動しました。いまでも感動する場面がたくさんあります」

2013年からは、広報課にうつり、寄付者とのコミュニケーションをおこなう、マンスリーサポーターに関わる業務を一手に担っています。

平島 「新たにマンスリーサポーターになっていただくための施策を企画したり、説明用の資料を作成したり、すでにマンスリーサポーターとなっている方からの問い合わせの対応や日々の連絡などをおこなっています。
マンスリーサポーターの方に、お誕生日のお祝いにオリジナルグッズをつくって贈ったりもします。シャンティの広報としては、報告会やワークショップなどのイベントの企画や運営、図書館とのつながりを構築するための業務もおこなっています」

自立して業務に取り組める環境で活きた今までの経験

201b9a20541efed22de9f8fefa82e4271a5f1835

2011年に入職し、2013年から現状の業務を担当していますが、こんなに長く続くとは本人も思っていなかったと言います。今では自身のキャリアのなかで最も長く勤めている職場になっているという平島。

平島 「最初はこんなに長く続けると思っていませんでした。けれど、たとえば新卒の時に働いたアパレルでの人との接し方、その後の広告代理店でのコミュニケーション施策の考え方など、これまで働いてきた会社でのそれぞれの経験やスキルが、すべて活用できる環境なので、こんなに続いているんだと思います。大好きな絵本に関われていることもとても大きいです」

絵本を扱うので力作業が多く、企業とは異なり自分たちでやることの範囲も広いですが、それぞれが自立して業務に取り組める環境だと語ります。

平島 「やろうと思えば何でもできる環境なので、新しいことをたくさん覚えることができます。何かひとつ挑戦することで、新しい世界を知ることができて、おもしろいですね」

出版社の編集者や絵本作家など、絵本に関わる人が集まる機会などもあり、そこで新たな出会いや、久しぶりの再会を果たすこともあるそう。

平島 「絵本作家のかこさとし先生に生前お会いした時に、『本当にいい事業をしていますね』と言っていただいたことがあります。シャンティで働いていると、各セクターの皆さんと企業にいた時のようなお付き合いではなく、事業や取り組みに対する共感からさまざまなサポートや取り組みが進むことが多く、そういった場合もやりがいを感じます」

業務の最終地点は、初めて絵本を手にする子どもたちの笑顔

NGO職員というと海外を飛び回っているイメージがあるかもしれませんが、海外の活動地への出張は年に1回程度。海外の事務所で働く職員以外は、基本的に日本事務所で業務しています。 現地駐在の日本人職員が一時帰国する際や現地職員が来日する際に、子どもたちの様子、事業地の現状などを内部・外部講演で知ります。

平島 「目の前の業務に忙しく追われると現場のことを忘れがちになってしまいますが、意識的にデスクワークの中でも現場を想像しています。そうすると、今取り組んでいる業務の最終地点を思い返すことができます」

企業からNGOに転職し、今ではシャンティで長く働く平島だからこそできることがあるといいます。

平島 「企業と同じように、長い歴史を持つからこそ変化しにくいという課題はありますが、今後シャンティとしてきちんと組織運営をして、より拡大していきたいという想いがあります。あとは、以前の私のように NGOや国際協力に関心のない人と、一緒にできるようなことを企画してもっとやっていきたいですね。それは私だからこそできることだと思います」

「好き」を大切に、それを追い求めて辿り着いた場所。自身も組織も、ともに成長できる環境で、子供たちの笑顔のための活動はまだまだ続きます。

関連ストーリー

注目ストーリー