クラウド×宮本武蔵!? 企業の中核を担う“ナイスミドル”を育てるサービスの誕生秘話

クラウドを利用し、動画による"ナレッジ"の投稿・共有・評価を行うことのできる「TANREN」。
これまでアナログ対応が主流だった“営業”という仕事に、なぜクラウド利用という発想が生まれたのか? その創業・サービス誕生背景には、代表を務める佐藤勝彦のある原体験があった。
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元調理師が身につけた独自の営業ノウハウ

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(※ 当時25歳。スタッフにアナログな営業研修をしている佐藤)

もともと国内屈指の日本料理店「なだ万」の調理師として働いていた佐藤。過酷な下積み時代に耐え切れず、早々に割りの良いアルバイトとして、携帯電話の販売業務に従事することになった。当時のことを、「鍛錬が足りなかった」と佐藤は振り返る。しかし、このアルバイト経験こそが、その後の佐藤の人生を大きく変えることになるのだった。

販売本数に成果が出てきた2000年頃、ちょうどPHSが衰退を見せ、ADSL回線が立ち上がりはじめていた。今では主流とも言える、パソコンの販売コーナーでのブロードバンド販売だが、当時は前例のない販売スタイルだった。そのスタイルを佐藤は“第1号”として実行し、大きな成果をあげていったのだ。

量販店販売が、初年度で前年比1,400~1,500%という売上。その実績を認められ、佐藤は500名の販売スタッフに対してその販売ノウハウを教え、統率するという役割を担うことになった。

しかし当時、佐藤の中にそのための論法は存在していなかった。あくまで実践で培ってきた販売スキル。一流の販売員だったはずが、いくらそのやり方を伝えても、反響が得られなかったという。

佐藤 「属人的な考えは、いくら伝えたところで誰もついてこないんです」


当時の上司から諭された佐藤は、渋々ながらも本を読んで論法を学びはじめた。例えば「AIDMAの法則」や「応酬話法」。まるでスポンジのように知識を吸収していった。それもそのはず。これまで「知らなかった」というだけで、実はそれらは、実際に佐藤がこれまで行ってきたことだったのだ。

そして2001年株式会社テソロを共同創業。約10年間、そのノウハウを営業研修を通して伝えてきた佐藤は、理詰め論法・ノウハウの体系化を実現する。そしてクラウド全盛の2011年、その独自カリキュラムが認められ、遂に大手通信キャリア販売店における国内の指定研修会社となった。

しかし、研修ニーズが増えれば、当然ながら講師の存在がより多く必要になる。その育成、そして実際の研修はアナログであり、限界を迎えるのにそう長くはかからなかった。「人が足りない」ニーズがあるのに応えることができない状況は、佐藤にとって非常にもどかしいものだった。

独自のノウハウに、ITを掛け合わせ導き出された「TANREN」という答え

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当時は、ちょうどクラウド文化が世の中にも浸透し始めた頃である。Twitterを利用すれば、オンラインで多くのビジネスパーソンとも繋がることができた。それまでアナログ主体の環境に身を置いてきた佐藤にとっては、まさに衝撃的な出来事だっただろう。

佐藤 「ITの便利さを知り、“スイッチ”を入れ替えなければいけないと痛感しました」


自分のノウハウをすべてクラウドに入れてしまいたい。そう考えた佐藤は、2013年から本格的に企画書の作成をはじめる。クラウドなら、単価も下げることができる、そうすればもっと多くの人に自分のノウハウを伝えることができる。その想いが佐藤の原動力となったのだ。

多くの企業に企画書を見てもらっては、ニーズの有無を確認。賛同してくれる企業に対しては深掘りを行い、徐々にアイデアを形にしていった。目の前にある課題を丁寧に解決し続け、「これがダメ、あれもダメ」と、あらゆる方法を試してきた。そして2015年4月。ついに誕生したのが、ナレッジシェアアプリ「TANREN」である。

佐藤 「ロープレなど営業/接客練習は多くの現場において日々取り組まれています。中には閉店後や朝礼前など、まさに涙ぐましい努力が行われていることでしょう。しかし店舗数が増えると、どうしてもその内容はバラバラになってしまうんです」


そこで「TANREN」は、現場の成功事例などナレッジそのものを動画撮影・共有という方法を提案。撮影された動画は、パソコンやタブレット、スマートフォンから視聴可能。いつ、どこからでも、現場の状況を見ることができるだろう。そうすれば、教育・研修全体の効率化にも繋がっていく。

例えば店舗へ向かう前に、営業ロープレの動画を確認する。そうすれば、事前に教育ミッションを明確にしたうえで現場へ向かえるだろう。いざ行ってから課題を見つけ、対策を考えるのでは遅すぎる。目的やシーン設定などを事前に指示して動画を撮ってもらえば、より効率化できるはずだ。つまり、わずか5分程度の動画を視聴するだけで、教育にかかる全体的な時間が大きく削減できるのだ。

オーナーと店長、エリアマネージャー、そしてスタッフ。特に教育において、エリアマネージャーの負担と役割は大きい。しかし、この流れをスピード化すればスタッフ個々の能力が上がり、売上にも繋がるだろう。また、スタッフの能力が“見える化”されていれば、これまで多くのエリアマネージャーが苦戦していた「評価」も容易になる。

つまりワークスタイル全体が見直され、結果的にマネージャーの負担も軽減。能力やモチベーションも向上し、企業の中核を担う“ナイスミドル”の育成にも繋がっていくのだ。

「原石を磨きあげ、宝石を生み出したい」自身の体験が生んだ“大義名分”

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「TANREN」は、パソコンやタブレット、スマートフォンからアクセスできる利便性もあり、主に他店舗経営に取り組む企業様から、多くのご支持をいただいている。

しかしその本質は、「TANREN」に備わっている評価機能にある。投稿動画に紐付けて、フィードバックを行うことができるのだ。これによって、スタッフ全員が自身のスキルを磨きあげていくことができる。

佐藤 「いくら磨いても光らない、そんな人はいません。調理師の下積み時代に耐えられなかった私でさえ、褒められ、認められることが嬉しくて、ここまで頑張ることができました。向上意欲の持ち方を、『TANREN』によってデジタルによって提供したいと思ったんです」


佐藤もまた、これまで成果に対し評価を受けることで、より大きな成長を目指してこられた。だからこそ、誰もが評価機会を得られれば、宝石のように輝けると信じている。これはこの事業を推進していくにあたって、我々が最も大事にしている価値観である。

“原石を磨き上げ宝石たる人財となすのが我々の大義であり、0から1を考え創出する事が我々の名分である”

TANRENがマネージャーとスタッフとを繋ぎ、そのフィードバックが個々の向上意欲を引き出す。アナログと比べ、その機会は格段に増えるだろう。そして意欲が高まれば「もっと頑張ろう」という思考になり、さらに成長していく好循環が生まれる。TANRENは、誰もが宝石のように輝ける環境を提供できるツールなのだ。

2020年、世界に誇れる「日本の“おもてなし力”」を高める

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かの剣豪・宮本武蔵がしたためた「五輪書」にはこんな一節がある。

“千日(3年)の稽古をもって鍛とし、万日(30年)の稽古をもって錬とす”

この「鍛錬」の語源になったといわれる名言こそ、「TANREN」というサービス名の由来だ。2015年現在、佐藤が独自の営業ノウハウを編み出しはじめてから、ちょうど15年の月日が経った。そういった意味では、現在は真の「鍛錬」となる“中間地点”と言えるだろう。

佐藤は、これから15年に向けたマイルストーンとして、2020年の東京五輪に向けた2つの事業展開を目指している。

第一段階となるのは、教育業界との連携だ。それは、各教育分野における有名な事業者・人物が、動画に対してフィードバックしてくれる仕組み。例えば動画を見て「笑顔が足りない」と思ったら、該当するボタンをクリックすることで教育事業者にデータを送付。提供可能な教育カリキュラムや、見積りが届くという流れだ。これなら社内のみならず、社外のノウハウを容易に取り込むことができるだろう。

そして、次の段階がセンサリングだ。例えばお客さんに、Wi-Fiに繋がった機器を持ったまま店内を歩いてもらう。その動きを解析し、そのマーケティングデータをもとにして最適なスタッフが対応に当たれば、売上も飛躍的に上がるはずだ。

その結果として得られるのが、“おもてなし力”の向上である。個々人の営業スキルが高まり、お客さまに対し最適かつ満足度の高い対応ができること。特に2020年に向けた“おもてなし力”の向上は、まさに急務と言えるだろう。そのために「TANREN」は、クラウドを軸とした新しい教育・研修の形を提案していく。

そしてその先の2030年へ。「TANREN」の「鍛錬」は、まだまだ終わらない。

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