前人未到の獣道に足跡をつけていく 独立系SIer自社プロジェクト開発の舞台裏

独立系SIer・テックファームホールディングスは近年、受託開発プロジェクトから自社プロダクト開発へと舵を切りはじめました。一見華々しく映るプロダクト開発の世界ですが、その裏には、暗闇のなかを手探りで歩き続けるような困難があるといいます。プロダクト本部の花渕弘至が、プロダクト開発の舞台裏を語ります。
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AI、IoT、さまざまなバズワードにきらめく「プロダクト本部」

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▲プロダクト本部の花渕弘至

当社のプロダクト本部では、「プロダクトオーナー制」という体制を採用しています。

組織統括を行なう部長と、各プロダクトを横串で監修するマネージャーの下に、各プロダクトオーナーがいるという体制です。そしてプロダクトオーナーの下には、個性溢れるさまざまなエンジニアが集まっており、日々苦楽をともにしています。

プロダクトオーナーの責務は、「プロダクトの戦略に関するすべての意思決定」です。プロダクト自体の方向性、機能、マーケティング、顧客カスタマイズなどについてありとあらゆる意思決定が求められます。

プロダクトオーナー制のいいところは、お客様への価値提供に自分の想いを追求できる、いつでも軌道修正ができるという点です。一方、大変なところは、ゴールも正解もないなかで自分たちが納得できる道しるべをつくり、担当しているプロダクトで利益を上げるという責任がある点です。

当社の主なプロダクトには、利用シーンに応じて柔軟に対応できるIoTプラットフォームの「MoL」、フィールドスタッフに特化したタスク管理システムである「Q−GO!」、客室設置型タブレットである「ee-TaB*」などがあります。

私が2018年現在プロダクトオーナーを務めているのは、位置情報を活用したIoTプラットフォーム「MoL」の屋内向けプロダクトです。立ち上げ当初の2016年から担当しているので、私にとっては非常に想い入れの強いプロダクトなのです。

「ちょっとつくってみようか」初めての自社プロダクト開発は偶然はじまった

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MoLが生まれる瞬間は、偶然訪れました。

とある案件でさまざまな製品を調査していたとき、「ビーコン(電波発信装置)」が思っていた以上に使える製品であることに気づいたのです。

ビーコンとは無線技術を利用してさまざまな用途に利用が可能な発信機のことです。スマホなどで汎用的に使える通信規格であるBluetoothが使える点で、MoLというプラットフォームにおけるインターフェース(センサー)として最初に着目したデバイスでした。

MoLは、他にもWi-FiやRFIDなどにも対応しており、今後もどんどん対応する通信規格を増やしていきたいと思っています。

Webやスマホといった世界を中心に開発を行なっていたテックファームでは、この機能が新鮮に映り、調査を深めていくうちにいろいろな可能性を見出すことができました。

「じゃあ、ちょっとつくってみようか」

当社ではこれまで受託開発事業で実績を積み重ねてきましたが、「そろそろ自社プロダクトを持とう」という機運が社内に到来したことも後押しして、自然と開発がはじまりました。

着手した当初は、いろいろな可能性に想いを馳せたり、おもしろいことができそうだとワクワクしたり、とにかく前向きな気持ちが強かったです。

しかし、これが思った以上にキツイということにすぐ気づきました。「アイデアが売れるかわからない」「どういったターゲットに刺さるのかわからない」すべてにおいて、答えが出せなかったのです。

受託開発プロジェクトと自社プロダクト開発は、真逆と言えるほど性質が異なります。受託開発ではすでにお客様がいて、要求も明確なので、ゴールは見えています。

一方、プロダクト開発では、展開できる市場も、想定される要求も、自分たちで仮説を立てるしかありません。メンバーとともにあらゆる仮説検証と試行錯誤を繰り返し、さまざまな展示会でテストマーケティング・リチューンも繰り返しました。

最初の展示会ではまったく受けず、撃沈でした。類似のプロダクトはすでに出はじめており、他社と似たようなアピールしかできませんでした。見向きもされない。何の反応も示してもらえない。そんな展示会は本当に辛いものでした。

そんなとき、誰かがふと口にした「ビーコンを固定するんじゃなく、動かして捉える方が、おもしろいことができそう」という一言が、MoLのターニングポイントになりました。

その一言を軸にして、MoLの開発は再び走り出し、改めて展示会に出展し続けました。

それでも、無反応やネガティブなフィードバックによって何度も心が折れ、撤退を考えることもありました。そんななかで来場客からの「これ良いね」というたった一言に「我々が歩む道はこっちで良かったんだ!」とひとすじの光明を見出すことができました。

「この人たちのために」エンドユーザーとの出会いがチームをひとつにした

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最初の顧客を見つけたのも、繰り返しと積み重ねによるものでした。

地道なマーケティング活動を積み重ねた結果、受託開発で関わりのあった企業に借りた展示会のブースが、初めての顧客との出会いの場となりました。

その時点では、既に競合他社を検討されており、採用するにあたって作られた顧客内の比較表でもMoLは実績という点において不利な状況でした。

しかし、足繁く訪問し我々プロダクトの魅力をお伝えしたり、顧客が抱えている本質的な課題への提案をしたことで、結果的に定量的な機能比較だけではない「人と人の繋がりを感じる」「肩を組んで取り組み続けられるパートナー」といった定性的な評価から、MoLに軍配が上がりました。

実際に契約が結べたときは、本当にうれしくてしょうがなかったですね。

しかし、そこからも苦労は続きました。MoLは位置情報を取り扱うプロダクトなので、お客様の現場に合わせたカスタマイズを行なう必要があります。

現場を知らない状態で設計したものは、「机上の空論」で終わってしまいました。屋内では、電波の反射や機器を取り付けるターゲットの軌道などによって、うまくいかないことが多かったのです。

そのため、現地に赴き、現物を使って何度も機器の位置や角度を細かく調節しては計測を繰り返すといった、地道な作業を積み重ねてきました。その作業を通して、現場を知ることの大切さや、現場のエンドユーザーとの信頼関係の構築が非常に重要であることを学びました。

そう気づいてからは、「この人たちの役に立つようなプロダクトをつくろう」という想いが強くなっていました。

また、「実際に購入して、使ってくれるお客様がいる」という自信やモチベーションが、売り込みに対する心理的なハードルを下げてくれるようになったのも収穫でした。

華々しく見えるプロダクト開発ですが、その舞台裏では「現場100回」の言葉通り、非常に泥臭く地道な仕事を乗り越えなくてはなりません。

ときにはヘルメットを被って、現場で働くエンドユーザーと日々対面コミュニケーションを繰り返し、「タダでもいいから現場に行かせてください」と迫ったこともあります。

MoLの開発は、これまでとはまったく異なるチャレンジングな取り組みでしたが、それをクリアしたからこそ、お客様にとっての価値に繋がったと信じています。MoLの拡販に向けて、私たちはこれから先も、地道な活動を続けていくことになります。

プロダクト開発に大事なのは、暗闇のなかを歩き続ける勇気

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プロダクト開発のZERO to ONE、ONE to TENを乗り越えたいま、言えることがあります。

「プロダクト開発は、暗闇のなかを歩き続けるようなものだ」ということです。「仮説検証」「試行錯誤」「一喜一憂」これらを繰り返すということは、誰も踏み入れたことのない暗闇に獣道をつくっていくようなものなのです。

私たちは、プロダクトの立ち上げから初めての顧客獲得へとステップアップしていくうちに、徐々に暗闇のなかを歩く勇気が持てるようになってきました。そしてそのことを、ようやくメンバーとともに分かち合えるようになってきました。

Web完結のプロダクトなら、もっときらびやかな世界かも知れないですね。だからこそ、MoLをはじめとした、現実世界に物理的にフォーカスしたプロダクトの価値が、お客様に響いたのだと思っています。

プロダクト開発というものは、自分たちでプロダクトを「どうとでもできてしまう」がゆえの楽しさ、そして苦しさがあります。

これからも、まだまだ苦難はあると思います。現状の課題は、以前に比べて市場が活性化し競合他社が増えてきたことです。現在提供できているプロダクトの価値をどう成長させ最大化していくか、検討を続けていく必要があります。

そして今後は、現行プロダクトを充実させると同時に、暗闇を歩ける人と新しいプロダクトをどんどん生み出していきたいですね。

「イマジネーションを持ち、発信できる人」

「自分なりの仮説検証を行なえる人」

「道のないところに道をつくることを楽しめる人」

「時間を忘れてプロジェクトに没頭できる人」

「アドベンチャーマインドを持った人」

そんな人たちが集まれば、プロダクト開発はもっともっと楽しくなっていくのではないかと、私は考えています。

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