楽しい記憶をつくりたい。ママ起業家が「知的好奇心を育てる場所」をつくるまで

千葉県船橋市で「ワイワイキッズスクール西船橋」を運営する、レーコ先生こと種村玲子(たねむられいこ)さん。親子カフェを卒業した子どもたちが、楽しみながら自由に力を伸ばせる教室を目指しています。愛情あふれるレーコ先生が寄り添う、プログラミング教室をのぞいてみました。

気がついたら事務のプローー起業家を支えた組織づくりの力

▲ワイワイキッズスクール西船橋の種村玲子さん

大手町まで電車で26分、都内で働く人たちのベッドタウンでもある千葉県船橋市で、種村さんは2017年5月から「ワイワイキッズスクール西船橋」を運営しています。

母体となるのは、2013年7月にオープンした「西船橋の親子カフェHedgehog the Rainbow(以下、HtR)」。ここで見守った子どもたちが、親子カフェを卒業しても自由な発想や能力を伸ばせる場所をつくりたいと、プログラミング教室の運営に着手しました。

子どもの心にまっすぐに向き合う種村さんの原点は、大学時代にあります。

種村さん 「子どものころから、幼稚園の先生になりたいという夢を持っていました。けれど高校生のときに人間の心の反応や感性のニュアンスに興味を持って、大学での進路を心理学に変更したんです。

ところが進んだ先の大学は大正時代にできた女学校を前身とする学校で、子どもの教育にとても力を入れていて。学内にはテレビの教育番組に情報提供しているクラスなどもあり、必然的に子育てに興味をもちました」


大学を卒業した後、販売業や留学などの経験を経て、がんばる人の夢を支えたいという想いのもと、2000年に起業を目指す人のサポートをメインサービスとするコンサルティング会社に就職。社内の基幹部署に配属され、さまざまな業務を担当しました。

種村さん 「コンサルティング会社では、データ解析や社内研修調整、秘書業務などの事務を担当しました。とまどいや忙しさはありましたが、社内の業務をスムーズに進めるための仕事は、やりがいや達成感がありました」

組織の土台作りのプロとなった種村さんは2004年、すでに起業していた夫の会社に転職。出産・育児と事務業を両立させながら、漠然と起業への夢を描いていました。

種村さん 「起業家をサポートする会社で働いていたので、起業は身近なものになっていました。子どもを育てながら、自分もいつか起業できたらいなぁなんて考えていて。そんな矢先、気に入って通っていた親子カフェが閉店してしまったんです。親子カフェは子どもたちの世話に追われるお母さんたちが、安心して自分の時間を持てる場所。子育てをはじめたばかりのお母さんたちにとって、絶対必要だと感じていたのに、新しい場所ができる気配がありませんでした。それで私がやるしかないと思って、親子カフェのオープンを決心したんです」

ママと子どもが、もっと自由に過ごせる親子カフェを目指して

▲「西船橋の親子カフェHedgehog the Rainbow」でのレーコ先生

2013年7月にオープンした「西船橋の親子カフェHedgehog the Rainbow」は、0~3歳児を対象とした食事持込み型、見守り保育を主体とした親子カフェです。お母さんたちは子どもの相手をスタッフに任せ、目の届く場所にいながら、食事やおしゃべりを楽しむことができます。

種村さん 「HtRは、ママたちが息抜きをするための保育園と児童館のいいとこどりをしたカフェです。小さな子どもをもつお母さんたちは、せっかく集まっても子どもたちから目を離してリラックスすることができません。そこでスタッフが子どもたちを引き受けて、ここにいる間は子どもの心配をせず、のんびり過ごせるようなサービスを提供しています」

自身も幼い子どもを持つ種村さんには、子育て中のお母さんたちにとって、自分の時間を持つことがどれほど難しいか、とてもよく理解できました。

どうすれば、親子カフェに来てくれるお客さんが充実した楽しい時間を過ごせるだろうか。カフェの店長に専念した4年間、スペースを提供し、ベビーシッターを務めるだけでなく、種村さんはその先にある親子の心の充実を目指していました。

種村さん 「親子カフェを続けるうち、大きくなって卒業する子どもたちが増えてきました。カフェは15時30分で閉めていたので、その後の時間を使って、幼稚園や小学校から帰ってきた子どもたちが何かを学ぶ場所にできないかと考えたんです」

かねてからイベント的にではなく、継続的にレッスンのできる英語教室を誘致したいと考えていた種村さんは、近くにある英語教室に出前レッスンを依頼しました。実績のある教室が開いたレッスンは評判もよく、多くの生徒が集まりました。

「ただ遊びに来るのではなく、何かを学べる場所にすれば、もっと子どもたちのためになることができる」。確信を強めた種村さんは、本格的なレッスンを行うため、英語やSTEM教育(プログラミングや理数系分野の教育)など、子どもたちを柔軟に成長させることのできるテーマを探しはじめます。

「都内じゃなくても、成長できる場所はある」船橋ではじめる習いごと

▲「ワイワイキッズスクール西船橋」でのレッスンの様子

種村さんは、船橋市に住む保護者は習いごとに対する意識が比較的高いと感じていました。ただ、教育に高い関心を持つ家庭の多くは、学びの場を都内に求める傾向にありました。

種村さん 「船橋は大手町まで電車で26分。都内で仕事をする人も少なくありません。より質の高い習いごとをさせるために、子どもを都内まで通わせることには全く抵抗がないんです。一方で、地元ではプログラミング教育はあまり浸透していない。学校とも塾ともちがう、子どもの力を伸ばせる場所を作りたいという思いが強くなっていたとき、子ども向けプログラミング教材のTech For Elementary(以下、TFE)と出会いました」

きっかけは、以前から注目していた都内にある親子カフェがTFEを取り入れたこと。発信されるそこでの取り組みに、HtRでも取り入れてみたいという思いがふくらみました。導入までにはTFEだけでなく、プログラミング教育のさまざまな資料を集め、子どもたちが楽しんで取り組める教材を吟味しました。

2017年6月のスタート以来、子どもたちの様子を見るたび、種村さんはプログラミング教育を導入してよかったと感じています。

種村さん 「TFEでプログラミングに取り組む子どもたちには、『なぜやっているのかわからない』という意識がありません。目的はゲームを作ることであって、そのために必要なことを学んでいる。学んだことはすぐゲームづくりにいかせて、少し手を加えるとオリジナリティを出すこともできます。

教材の完成度の高さと、表現力の余地があること。このふたつはTFEの大きな魅力でした」


「キッズプログラミングTFE西船橋校」は、幼稚園児2名、小学生1名でスタートしました。

都内ほどプログラミング教育が浸透していない船橋市では、子どもたちがプログラミング教育を通してどのような能力を伸ばせるのか、まずは保護者に理解してもらうことを優先し、大々的な集客はしていません。

種村さん 「授業はあいさつからはじめ、その日に取り組む課題の説明をし、ときには保護者の前で発表もさせます。子どもたち自身が授業をひとつの流れとして認識し、目標を達成するにはどのようなプロセスが必要か、自発的に考えられるように進めています」

心理学を学んできた種村さんは、「保護者に成長のエビデンスを示し、理解してもらうこと」は子どもたちの成長のために不可欠な要素だと考えています。

プログラミングは楽しい。その記憶は、きっと未来に繋がっていく

▲親子カフェ「Hedgehog the Rainbow」でのクリスマスイベント

プログラミングを学んでいる子どもたちは、知らない世界にふれたことや、はじめて出会う習いごとに好奇心をかきたてられています。ときには親でさえ知らない知識を得ることで、これまでにはなかった自信をつけています。

種村さん 「はじめてからまだ5か月ですが(2017年11月現在)、子どもたちは少しずつ、物事にははじめと終わりがあり、流れを作ってゲームを動かすにはどうすればよいかを自分で考えられるようになってきています。幼い子が多いので、レッスン中はたくさん会話をして思考や行動を促しています」

「どう思う?やってみようか!」と笑顔で声をかける“レーコ先生”のそばで、子どもたちは元気いっぱいゲーム作りに取り組んでいます。

これからの「ワイワイキッズスクール西船橋」は、好奇心と探求心を育てる総合スクールにしたい。そう考えて導入したTFEのレッスンで、子どもたちはワクワクしながら学び、これまでの学校教育では身につけることができなかった能力を伸ばせていると、種村さんは感じています。

種村さん 「TFEで学ぶ子どもたちは本当に楽しそうで、その記憶は、大人になってプログラミングにふれたとき、“プログラミングは楽しいものだった”と思えるきっかけになります。それはいくつになっても、創造力や自己表現力、問題解決能力となって、子どもたちの未来をひらくと信じています」

「ワイワイキッズスクール西船橋」に通う子どもたちは、レーコ先生の大きな愛情のもと、楽しい気持ちをエネルギーに、今日も豊かに生きる力を育んでいます。

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