まっくらな画面の向こうにある“あかるい未来”——パソコンが広げた可能性

徳島県徳島市で2017年7月から「ルビーパソコン教室」を運営する新田優子(にった ゆうこ)さん。開校と同時にプログラミング教室をスタートさせました。働きながら自分の「足りないもの」に目を向け、スキルアップしてきた新田さんの教室で、子どもたちが目指すものと、保護者とのつながりに注目しました。
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「なかでは、どんなことが起こっているのだろう?」パソコンの奥にはせた夢

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▲徳島県徳島市で「ルビーパソコン教室」を運営する新田さん

徳島県徳島市にある自宅の一階で、2017年に「ルビーパソコン教室」を開校した新田さん。大人向けのパソコン教室と、子ども向けプログラミング教室を運営しています。

新田さんがはじめてパソコンに触れたのは1985年、小学生のころにさかのぼります。

新田さん 「まだWindowsもなくて、真っ暗なDOS画面に、授業で習った算数の問題が浮かびあがっていました。今思えばとても単純なものでしたが、次々に浮かびあがる文字を見て、このなかではどんなことが起こっているんだろう?と、とても興味を持ちました」

当時パソコンのある家庭は少なく、新田さんも触れたのは授業だけだったといいます。それでも、チャンスを見つけてはパソコンを触っていた新田さん。高校はパソコンについて深く学ぶ情報処理科に進学しました。

新田さん 「とにかくたくさんパソコンに触れることが、何よりも嬉しかったことを覚えています。ただ、そのころはまだシステムエンジニアもメジャーな職業ではなく、パソコンが仕事につながっていくイメージはありませんでした」

授業でさまざまなことを学びながら、新田さんの興味はやはり、「まっくらな画面の奥」に。OSのハードはどのような構造になっているのか、実行ファイルはどうやって作るのか、ひたすらパソコンに向き合いました。

短大でも情報処理科に進学し、さらに知識と技術を身につけた新田さんは、システムエンジニアを志望。男性ばかりの面接を突破し、20歳になる1999年の4月、晴れてシステムエンジニアとして社会人の第一歩を踏みだします。

「仕事をしたら、足りないものが見えてきた」システムエンジニアの修行道

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▲システムエンジニアとして勤務していたころの新田さん

システムエンジニアとして働きはじめた新田さんは、初ボーナスではじめて自分専用のパソコンを購入。同世代の女性はほとんど興味を示さなかったパソコンに、休日返上で向き合います。

新田さん 「社内向けのホームページを作らないかと言われて、イチから自分で作ってみたんです。データを持ち帰って、休日も家で作業しました。そのころはブラウザが違うときれいに表示できなくて、なかなかうまくいきませんでした」

それでも、試行錯誤によって蓄積された確かな知識を評価され、自社ソフトの講習会で講師に抜擢されるなど、着実にシステムエンジニアとしての力をつけていた新田さん。

ところが自身は、接客やコミュニケーションのスキルがないことに悩んでいました。

そこで新田さんは、悩みを解決するために接客のプロを目指すことを決めます。2001年6月の結婚を機にシステムエンジニアを辞め、携帯電話の販売店に就職。お客さまと直接やりとりする窓口業務に就きました。

新田さん 「大変な思いもしましたが、実際にやってみると、接客は経験がなかっただけで苦手ではないと気がつきました。それ以来、自分に足りないことは、経験によって補えると考えるようになったんです」

その後も引っ越しなど人生のターニングポイントにともなう転職では、経験のある仕事ではなく、経理や財務など、自分に必要なスキルを身につけられる仕事を選びました。

そうして新田さんがたどり着いたのは、家電量販店が運営するパソコン教室。まったくパソコンのことを知らないお客さんに、わかりやすい言葉を選び、ていねいに説明する仕事に情熱を注ぎました。お客さんの「わかった!」を感じたとき、新田さんはついに最後の仕事を見つけたと確信。これが、2012年のことでした。

新田さん 「いろいろな職業を経験しましたが、結局どの仕事も必ずパソコンスキルが必要で、改めてその必要性を実感していました。またパソコン教室には、経営する会社の税務処理のためにパソコンを学びたいというお客さんもいて、これこそ自分がこれまで得た知識をフル活用できる仕事だと思ったんです」

準備はすべて整った――自宅ではじめたパソコン教室

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▲友だちと意見を交換しながらゲーム作りをする子どもたち

出産後、わが子の成長を見守りながら仕事がしたいと考えていた新田さんは、社会復帰を機に起業を決意。2017年7月、自宅の一階に「ルビーパソコン教室」をオープンしました。

当初は基本的なパソコン操作や、ワードやエクセルを学ぶ教室を想定し、プログラミング教室は考えていなかった新田さん。ただ小学2年生と4年生のわが子には、市販の教材を使って子ども向けプログラミング言語のScratchを教えていました。

ところが市販の教材は使用される言葉や漢字が難しく、行きづまることがありました。その様子を見て使いやすい教材を探していた新田さんは、インターネットで子ども向けプログラミング教材のTech for elmentary(以下、TFE)を見つけます。

新田さん 「文字を読んで進めるテキスト学習ではなく、映像授業なのがいいと思いました。加盟にかかる費用が安かったので、はじめは、自分の子どもだけに使わせてみようと思っていたんです。でもせっかくなら教室でもやってみようと思って、起業と同時にTFEを導入しました」

プログラミングを学ぶことで、子どもたちがパソコンに触れる機会が増えたらという軽い気持ちでした。

ところがはじめてみると、TFEは予想以上に「ルビーパソコン教室」にフィットした教材であることがわかった新田さん。基礎的な部分をひとりで学習し、欠席した場合も焦ることなく自分のペースで進められる教材に大きな魅力を感じています。

新田さん 「パソコンの操作にもプログラミングにも必要となる基本的なスキルはいくつかあって、ローマ字などは学年によって習っていない場合もあります。そんなときでも、習っていない子はその子なりのやり方で、習っていれば無駄に待つ時間を過ごすことなく次に進めます。

自分のペースで進められることで、子どもたちはストレスを感じることなく学習に取り組んでいます。人と合わせる必要はない、けれど自分の作品は完成させるんだという思いで、自発的に学ぶことや忍耐力を養っていますね」

子どもたちはときに頭を抱えながら、必死で「何が間違っているのか、どうすればよいのか」を考えています。

パソコンスキルがあれば、未来の選択肢も増えていく

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▲プログラミングをきっかけに、子どもたちのパソコンへの興味も引き出している

プログラミング教室をはじめてから、新田さんは保護者の存在を意識するようになりました。普段から子どもの様子を間近で見ている存在だからこそ、子どもにとって最適な教室のあり方に気づけるのではないか、と感じたのです。

新田さん 「お母さんたちには、子どもたちのその日の様子や、がんばったことなどを報告しています。レッスンが近づくと楽しみでソワソワしているなど、おうちでの様子を教えてくれることもありますね。来られない方には、メッセージで報告しています。

月2回では学んだことを忘れてしまうから、レッスンを月4回にしてほしいとか、プログラミングだけではなく、ワードやエクセルにも触れさせてほしい、といった希望を伝えて下さる方もいます」

保護者からの要望が聞けたことで、希望者にはプログラミングに加え、タイピングやワード、エクセルを学ぶパソコンのレッスンを追加できるようにしました。2時間半のレッスンのあいだ、子どもたちはその時々で興味のあることを学んでいます。

新田さん 「これからの時代は、パソコンスキルがなければ選べる仕事が少なくなります。私自身、どんな仕事に就くときも、パソコンが使えることは大きな強みになりました。一方で子どもたちを取りまくパソコン環境は充実せず、大人になるまでスマホしか触らない子どもが増えています。

教室には、パソコンに関するさまざまなスキルを身につけられるレッスンとともに、子どもたちが興味を持って学べる、ゲーム的なコンテンツも積極的に導入したいと考えています」

新田さんがのぞいた真っ暗な画面の向こうには、自分を成長させてくれたたくさんの経験が待っていました。今度は子どもたちをその世界に送り出してあげたいと、新田さんは今日も教室で、レッスンの準備をしています。

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