働くことを諦めないで。TFE創業者の妻が目指す、ママが輝くためのプログラミング教室

2016年4月に、夫である尾市守がリリースした「子ども向けプログラミング教室Tech for elementary」の営業やサポート、総務などを担当する澤部愛子(さわべ あいこ)。澤部はかつて、時代の最先端を走る企業で働いていました。全国の加盟教室のオーナーや、ママ起業家にかける思いの原点をたどります。
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エネルギッシュなキャリアウーマンが、出産で経験した挫折

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▲TFEの代表であり夫でもある尾市を支える澤部

2016年から、夫・尾市守がリリースしたフランチャイズの子ども向けプログラミング教室“Tech for elementary(以下、TFE)”の取締役を務める澤部。全国に広がる加盟教室とのやりとりをはじめ、さまざまな業務を担当しています。

「好きなことならがんばれる」と話す澤部。そんな彼女の強さを作り出したのは、小学校のころに習っていたピアノでした。

澤部 「音楽好きな母は、私を音大に入れるためにピアノを習わせていました。大手のピアノ教室でレッスンを受けて、地元の茨城から東京まで、演奏の実力を測る試験を受けに行かせるほど熱心だったんです」

結局、音大には進学しませんでしたが、練習すればするほど上達するピアノに、澤部は地道な努力が実を結ぶことの喜びを学びました。

2000年、20歳で短大を卒業した澤部は、画廊に就職します。営業部に配属されると、新卒なら怖気づくほどの目標をこなし、短期間で係長まで昇進。「やればやるほど売れる」営業は、地道な努力が得意な澤部に向いている職種でした。

その後、2005年に26歳で派遣社員としてリクルートに入社。

澤部 「リクルートは自由で、いろいろなことにチャレンジさせてもらえる会社でした。責任もありますが、任された仕事を自分で進めていくことができる社風は、とても自分に合っていました」

風通しがよく上司になんでも話せる雰囲気に後押しされた澤部は、成果を出し、契約社員として雇用されます。多くのプロジェクトを任され、後輩を指導する立場も確立したのち、2012年に出産。復帰後もこれまでと同じように働くつもりでいました。

しかし、育児をしながらの職場復帰は、澤部が思い描いていたほど簡単ではありませんでした。

澤部 「復帰後も、一緒に働いていた仲間はそれまでと同じように私を信頼し、ついてきてくれました。けれど子どもを抱えながら仕事をするには、任される仕事の量と責任が大きく、周囲の期待に応えることができなくなってしまったんです」

社会人としての自分を育ててくれた職場を、「逃げるようにやめた」と話す澤部。突然やめることがどれほど職場の負担になるかは誰よりも知っていたはずなのに、と自分を責めました。

ところが、澤部の退職はそれまでのキャリアを知る知人に伝わります。そこで、文部科学省(以下、文科省)が2014年からスタートしようとしていた、官民協働で若者の海外留学を支援するプロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」への誘いがかかったのです。

しばらく休職しようと考えていたものの、澤部にとって「働くこと」は自分自身でいること。受け入れてくれる場所があるならと転職を決めます。

追い風が吹いた!プログラミング教育必修化による躍進

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▲文科省での勤務していたころの澤部。TFEへはあたたかく送り出してもらった

一方、夫の尾市は、結婚した年の2011年にITコンサルティングをメインのサービスとした株式会社エクシードを設立。2015年からはボランティアでプログラミング教室をはじめていました。

そのころの澤部は、文科省の仕事で忙しい毎日を送っていました。尾市がコンサルティング業務のかたわら、休日返上でプログラミング教室のあり方を模索しているにもかかわらず、十分に応援できないことに歯がゆさを感じていたのです。

そこで澤部は、TFEが本格始動する直前の2016年3月に文科省を退職。4月からはホームページへの問い合わせ対応など、加盟教室獲得への準備をはじめとするバックオフィス業務に従事しました。

4月にはじめて加盟教室が誕生したときは、「本当に加盟してくれる人がいるのかと感激した」と振り返る澤部。尾市や小高直樹、竹下仁ら開発メンバーが、およそ2年の歳月をかけて撒いた種が芽を出した瞬間でした。

ところが、その後も地道な営業活動を覚悟していたメンバーに、ビッグニュースが飛び込みます。

澤部 「2016年4月に、安倍首相がプログラミング教育を小学校の学習指導要領に含めると提言し、5月に成長戦略が発表されました。そこで爆発的に問い合わせが増えて。必修化などは予想せずに開発を進めてきたんですが、強力な追い風が吹いたように感じました。これなら “ひとりでも多くの子どもにプログラミングの機会を提供する” という目標の実現も、夢ではないと思えるようになったんです」

全国の学習塾をはじめ、さまざまな機関からの問い合わせや資料請求が舞い込む日々がはじまりました。加盟教室は増え、2017年1月からは尾市もTFEに関わる業務に専念。3月末時点で、目標としていた全国100教室を達成しました。

TFEで学ぶ生徒はなぜやめないのか?練り上げられた教材とサービスの行方

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▲東京在住のTFEメンバー。映像教材開発担当の竹下(左)、代表の尾市(右)と。

TFEの映像教材は、これまで子ども向けプログラミング言語のScratchを徹底的に研究してきた竹下が制作し、パソコンやプログラミングに詳しくなくてもレッスンができることが強みです。

「自分がプログラミングなんて教えられるだろうか?」と恐る恐るスタートした加盟者も、レッスンの進行は映像教材に任せ、子どもたちの気持ちを余裕をもって受け止めています。

澤部 「必修化の政策が追い風になったのは確かですが、加盟教室が増えた最大の理由は、教材へのこだわりだと考えています。子どもたちはプログラミングを勉強としてではなく、ゲームを作るための手段として学び、先生にあたたかくサポートしてもらえることで、苦手意識を持つ前に成功体験ができるように作られているんです。集客に苦労したと話す加盟教室でも、入会した生徒はやめていません」

澤部がそう話す根底には、本部の「生徒と加盟教室ファースト」の意識がありました。

澤部 「尾市をはじめとする開発メンバーは、いかに子どもたちにとってよい教材が提供できるか、どうすれば加盟教室がスムーズにレッスンを進められるかを、いつも優先的に考えています。有意義な教材の提供と、加盟教室が安心して集客できるバックアップがあれば、最終的には本部も収益を上げていけるだろうと、長い目で教室の発展を考えているんです」

夫婦で経営に携わっている以上、会社の利益は生活にも大きく影響します。けれど全国の子どもたちと加盟教室のために献身的に働く尾市を、澤部は尊敬せずにいられないと語ります。

澤部 「今までたくさんの会社で、“すごい”と思える人を何人も見てきました。そのなかでも尾市は抜群に努力していて、そしていつも、人のためにというマインドを持っているんです。一緒に仕事をするまではまったく知らない一面でした」

加盟教室のオーナーが口をそろえて「息ピッタリの夫婦なんだよ」と語るその裏には、尾市への絶大な信頼と、尊敬の気持ちがありました。

能力あるママに働く場をーー挫折経験に教えられた、プログラミングの可能性

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▲女性加盟者の“輪”が全国に広がっている

契約後も加盟者とのやりとりが多い澤部にとって、これまで出会ったことのない人とのつながりは、仕事をするうえでの大きなモチベーションです。

澤部 「退職されたシニアの方や、地方に移住して教育に関わる仕事をされている方、そして子育てが一段落した主婦の方など、これまで働くなかでは知り合ったことのない人とつながっていけることが、楽しくて仕方ないんです」

一方で、ママ起業家としてこれから教室を立ち上げようとする人たちには、自分が仕事と育児の両立を挫折した苦い経験から、共感できる気持ちがあるといいます。

澤部 「ママ起業家としてがんばろうとしている人から、『私なんかが、プログラミング教室をしてもいいんですか?』と聞かれることがあるんです。出産するまでは豊富な社会経験をつみ、スキルや知識や資格を持っていて、子どものことをこれ以上ないほど理解しているにもかかわらずです。

Scratchは難しくなく、TFEでプログラミングを教えるのに、ママたちはとても適した人材です。私はママたちにこそ、働くことをあきらめず、自分らしさや夢を追求してほしいと思っています。TFEならそれができる。そう思って他の加盟教室同様、全力でサポートしています」

周囲の期待に応えられず、逃げるように職場を離れた澤部。あのときの自分のような、悲しい気持ちや悔しい思いを抱えた女性にとって、TFEが輝ける場所となれるならーー。思いは未来へと続きます。

澤部 「TFEではSNSに加盟者さんたちのグループを作り、情報を共有しています。加盟者さんからいただいた『仲間がいるようで力強い』という言葉に、今後はママに特化したメディアも作って、よりたくさんの女性が安心して自分の教室を持てるような、一層踏み込んだサポートが展開できればと考えています」

開発メンバーの思いがつまった「子どもが輝くプログラミング教室」は、澤部の手によって、女性も輝ける場所に成長しようとしています。

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