すべては結果を出すためにーー接客好きのエンジニアがつくった新たな “仕掛け”

栃木県小山市で「キュリオステーション小山店」を運営する齋藤 裕之(さいとう ひろゆき)さん。「栃木は東京とは違う」、そう断言する齋藤さんが目指したのは、地元のライフスタイルにフィットする教室でした。教材選びや教室のあり方について、確固たる信念を持って進む齋藤さんの軌跡をたどります。
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接客が忘れられないシステムエンジニア

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▲飲食店を営んでいたころの齋藤さん(中央)。接客に大きなやりがいを感じていた

栃木県小山市で、小学生から大人までを対象としたパソコン教室と、小学3年生以上を対象としたプログラミング教室「キュリオステーション小山店」を運営する齋藤さん。生徒にも評判の熱い指導と、人とのつながりを大切にする温かな人柄が持ち味です。

齋藤さんがコンピューターに出会ったのは、小学5年生のころ。ファミコンが登場する前のテレビゲームでは物足りなかった齋藤少年が、高性能なパソコンでゲームをすることに夢中になったことがきっかけでした。

齋藤さん 「小学生のころはゲーム以上のことをパソコンでやってみたい気持ちにはならなかったんですが、高校の担任の先生から『今後はコンピューターを使う仕事が増える』と聞き、改めて興味を持ちました。一度触れたことがあったからか、大学でプログラミング言語のC言語を専攻することにも抵抗はなかったですね」

1989年に入学した大学で、C言語を学んだ齋藤さん。最初の一年こそ覚えることが多かったものの、自分でソフトが作れるようになり、失敗をくり返しながらもプログラムをすべて作れるようになると、前向きに取り組めるようになりました。

齋藤さん 「大学で学んだことを生かして日立ソフトエンジニアリングに就職し、システムエンジニアとして3年間勤務しました。ただ、システムエンジニアの仕事は人と接することが少なくて、大学時代のアルバイトで楽しさを感じていた接客業に、思いきって転職することにしました」

そして1996年、25歳の時に念願だった接客の仕事に転職を果たします。

一見、人当たりが良さそうに見えるものの、実は人見知りだという齋藤さん。接客業にやりがいを感じたのは、そんな自分でも仕事となれば変われたことがひとつの理由でした。「どうしたらお客さんに喜んでもらえるか」ということに集中していると、恥ずかしがらずにコミュニケーションを取ることができたのです。

その後、2006年には地元に戻ってフランチャイズ展開していた飲食店の店長となり、全国の店舗とサービスの充実度を競う大会で優勝。順調な経営を続けていましたが、病気で手術を受けたあと、後遺症でフライパンを握る力がなくなり退職を決意しました。

地元に根付いた自由な教室を作りたいーーTFEを選んだワケ

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▲地元にフィットしたサービスの提供を目指す「キュリオステーション小山店」

退職後、自分のやり方で仕事がしたいと考えた齋藤さんは、システムエンジニアとしての経験を生かし、2010年5月に地元でパソコン教室「キュリオステーション小山店」を開校しました。

開校から5年目にはこれからの時代を見すえ、ロボットプログラミングと、子ども向けプログラミング言語のScratchを使ったレッスンをスタート。プログラミングが必修化される流れを受け、よりカリキュラムが充実した教材を探していたところ、日本パソコン教室経営者連合会を介して、子ども向けプログラミング教材のTech for elementary(以下、TFE)と出会います。

齋藤さん 「プログラミング教材は、大手も含めてたくさんの会社を比較しました。TFEを選ぶ決め手になったのは、加盟しても決まりが少なく、自由にやりやすいと感じたところですね。

栃木は東京と比べると、賃金も物価も低い土地です。それなのに習いごとの月謝が東京と同じでは、生徒は集められません。TFEは月謝の最低ラインだけが決まっていて、あとは教室の裁量で設定していいところが魅力です。少しでも多くの子どもたちにプログラミングにふれてもらうには、できる限り費用を抑える必要があるんです」

また、主な交通手段が車にかぎられる地域の事情にも、TFEは寄り添ってくれると齋藤さんは話します。

齋藤さん 「栃木では、子どもが電車やバスを使って習いごとに通うケースは少なく、多くは保護者が車で送り迎えをします。そのためレッスンの時間が固定されていると、保護者の都合で欠席の振り替えができない場合が多いんです。

入会前に、TFEなら映像授業に沿って生徒がそれぞれのペースでレッスンを進められると説明すれば、保護者の方には費用を無駄にせず学ぶことができると安心してもらえます」

費用を抑えると経営の面では苦しいものの、継続的なレッスンで着実に力をつけている生徒の様子を見て、斎藤さんは理想としていた教室が実現できつつあることを感じています。

“疲れた”は本気の証拠――目に見える成果を残すために

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▲プログラミングに取り組む生徒。静かに取り組む様子が本気度を伝える

TFEは映像授業だけでもレッスンが成り立つものの、進め方はそれぞれの教室に任されています。

齋藤さん 「キュリオステーション小山店では、レッスンのはじめに前回の内容を口頭で質問します。これまでの内容を理解しているかを確認して、十分でなければ復習として課題を出し、そこで定着させています」

「教室に来たからには、必ず成長してもらいたい」。斎藤さんは教室を開いたときから、成果や結果につながる授業を目指してきました。

また、レッスンを続けるうち、「この教室なら技術や知識が身につく」と感じた保護者からは、プログラミングだけでなく、タッチタイピングや社会に出てから必要となるワードやエクセルも学ばせてほしいとの要望が多くよせられました。

そこで斎藤さんは、プログラミングと合わせてパソコンの操作を学べるコースを設置。月2回のプログラミングのみのレッスンに加えて、それぞれのレベルに合わせたスキルが身につくカリキュラムを用意しています。

齋藤さん 「月に2回、教室でパソコンにふれるだけで子どもの興味を持続させるのは困難です。学んだことを発展させるレッスンや、他のスキルを身につけるレッスンがあることで、家でもパソコンを使ってみようと子どもたちは考えるようになります。

“自分で考える”というプログラミング教育が目標とする能力を身につけるには、自ら行動を起こせるようになることが必要なんです」

プログラミングに退屈するポイントを知り尽くした齋藤さんのレッスンでは、生徒は自然に“本気の”ゲーム作りへと誘われていきます。

子どもたちが黙々と作業をし、独り言を言いながら悩む姿を見て、齋藤さんは「楽しいと思えるところまで導くことができた」とひとつのステップを超えたことを感じています。

齋藤さん 「60分の授業のあと、『疲れた……』とぐったりしている子どもたちは、本気で取り組んだことで、次につながる達成感や考え方をつかんでいます。失敗や困難にぶつかって悩み、乗りこえることで子どもたちは一歩ずつ成長しているんです」

目標を達成できる教室を目指して

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▲検定試験の合格を目標に、レッスンに取り組む生徒たち

2017年10月、「キュリオステーション小山店 」にはScratchを活用し、プログラミングスキルを測定する「ジュニアプログラミング検定」一級の合格者が誕生しました。

結果にこだわってきた斎藤さんにとって大きな成果ではあるものの、彼の存在はそれ以上の影響を教室に与えたと話します。

齋藤さん 「検定に合格したH君は、ロボットプログラミングを学びながら月に4回TFEのレッスンも受けています。家でもヒマさえあればScratchをするほどプログラミングが好きな生徒です。他の生徒も、彼と同じことが簡単にできるとは思っていません。

ただ彼を見て、『自分も検定を受けてみたい』とか、『彼のようなゲームを作るためには、こんなにも努力が必要なんだ』と、他の生徒もはっきりした目標を持ってプログラミングに取り組めるようになったんです」

齋藤さんは入会を決めた保護者や生徒にも、せっかく興味を持ってプログラミングを学ぶのであればと、ジュニアプログラミング検定1級の受験をひとつの目標とすることをすすめています。TFEのカリキュラムを学ぶだけでなく、受験の準備もできることは教室の強みとしていきたいとも考えているのです。

齋藤さん 「周辺には他のパソコン教室もあり、独自性を打ち出さなければ生き残れない地域でもあります。キュリオステーション小山店は、『あそこへ行けば資格が取れるよ』と言ってもらえる教室にしたい。少しずつ受験級のレベルを上げることで、子どもはやりがいと達成感を感じて物事をうまく組み立てる能力を身につけます。検定合格というはっきりした結果を出すことで、保護者の方にも『習わせてよかった』と思ってもらえるようにしたいですね」

結果、やりがい、達成感ーー。齋藤さんの口からは、学びに対する熱い言葉が飛び出します。一方で「この教室へ通うことで、これからの社会でも立派に通用する人間に成長してもらいたい」と、わが子のように生徒を見守る眼差しには、やわらかく温かな光も灯っているのです。

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