基礎力は興味のあることで育てる―—学習塾経営者がプログラミングを導入したワケ

福岡県粕屋町で「粕屋松陰塾(かすやしょういんじゅく)」を経営する河野雅史(こうのまさし)さん。学習塾・そろばん・ロボット教室・速読・オンライン英会話・パズル道場・各種検定(英検、漢検、数検)講座を開講しています。河野さんが多くの選択肢を用意し、目指すものは何なのか。教室が目指す役割を考えました。
  • eight

早くビジネスの世界へ行きたい―—好奇心の先にあったもの

Cdf5d5f7c09af96ff1ec583a6da4b5b15511f0ed
▲会社員時代の河野さん。がむしゃらに働きながらも、つねに好奇心を持っていた

河野さんは福岡県粕屋町で、自ら学ぶ子どもを育てる「粕屋松陰塾」を経営しています。学習塾に加え、そろばん・ロボット教室・速読・オンライン英会話・パズル道場・各種検定(英検、漢検、数検)講座など、小学生から中学生を対象としたレッスンは非常にバラエティー豊かです。

河野さん 「大学時代は理学部の地球惑星科学科で、生物の起源を科学的に探る研究をしました。『火星からの隕石に生命の痕跡を発見』というニュースに、好奇心がそそられたんです。バイクでの北海道一周やタイとベトナムへの一人旅など、 “やってみたい!”と思う気持ちを大切にしていました」

昔から好奇心旺盛だった河野さん。多くが大学院へ進学する理系の学部でありながら、「早くビジネスの世界へ行きたい」という強い気持ちがあり、大学院への進学はしませんでした。

河野さんが大学を卒業した2001年は「ベンチャービジネス」という言葉が注目され、個人での起業が増えつつあった時代。ニュースや書籍でさまざまな事例を知り、将来は自分も会社を作りたいと考えていました。

河野さん 「卒業してすぐ起業することは難しいと思っていたので、30歳を独立の目標にしていました。だから就職でも、起業するための力をつけられる会社や部署を選びました」

希望通り “営業のやり方を学べて多くの業務経験ができる会社”に就職を果たした河野さんは、つねに“起業”を意識しながら働きました。

最終的に退職を決意したのは、2013年34歳のとき。曖昧だったビジネスプランがはっきりとした輪郭を持ったためだと話します。

河野さん 「勤めていた会社では、人事採用にも関わっていました。大学生の面接などを担当して、『この場に立ったとき、通用する人間を育てるためには何が必要なんだろう?』とよく考えていたんです。会社でも後輩や部下ができて、人を育てることの難しさを感じていました。そんなときに“これだ!”と思う指導方針を持った塾に出会って、すぐに退職を決めました」

自分で学力を上げる力を、小学生から伸ばす意味

A65076d23b65c26a953615fb17e54977141c40da
▲2017年現在の河野さん

河野さんが出会ったのは、「松陰塾」という自分で考えることを大切にしたフランチャイズの学習塾。教え込むのではなく考えさせることに重心を置いた授業は、これなら結果が残せると自信を持てるものでした。

河野さん 「わからないところを教えるだけでは、生徒たちはいずれ忘れてしまいます。間違いやわからないことは、なぜわからないのか、どうすればわかるようになるのかを自分で考えさせたかったんです。そうでなければ自分の欠点を知り、学力、ひいては能力を上げる力は身につかないと感じていました」

河野さんは教育方針を見定めるだけでなく、子どもたちを正しい方向に導くため、自分でも資格を身につけました。

生徒のやる気を引き出し、前向きに学習に取り組む姿勢を身につけさせるための「コーチング」。将来の目標を明確にし、具体的な努力をつみ重ねられるようアドバイスする「進路指導アドバイザー」。より低年齢の子どもや子育てに悩みを抱える保護者に対して、前向きな反応や個々の良さを引き出すための「基礎心理カウンセラー」。

一人ひとり違う能力や悩みを持つ子どもや保護者に対して、適切な引出しをたくさん持っていられるようにと河野さんは積極的に資格を取りました。

また教室には、学習塾だけではなく、そろばん・ロボット教室・速読・オンライン英会話・パズル道場・各種検定(英検、漢検、数検)講座などを取り入れています。

河野さん 「小学生のうちに勉強の習慣や集中力などを身につけていなければ、中学生になって塾で勉強しても学力を上げるのは難しいことがわかりました。そこで小学生のあいだに学ぶ姿勢と基礎的な力を身につけておくために、興味を持てる入り口をたくさん用意しようと考えたんです」

そろばん教室に来ていた子が英会話に興味を持った。パズル道場へ通ううち、算数検定を受けてみたい気持ちになった。「粕屋松陰塾へ通っていたから、好きなことが見つかったと言ってもらえる場所にしたい」と河野さんは語ります。

進度は気にしない―—やり込み要素抜群の教材を楽しむ

24d0ccf0892df9e5ac374d827a3b2241f192cd4a
▲プログラミングのレッスンでは、“深めること”に重点を置いている

理系で学んだ経験から、論理的な考え方を大切にしてきた河野さん。以前から論理的なことを楽しく学べるレッスンとして、プログラミングに興味を持っていました。

ただ“自ら学ぶこと”を大切にしてきた河野さんにとって、既存の教材には満足できるものがありませんでした。

河野さん 「自分で教材を作ろうかと考えていたとき、インターネットで子ども向けプログラミング教材のTech for elementary(以下、TFE)を見つけました。まだ加盟教室を募集する前だったんですが、ブログやホームページを読んで絶対やろうと思いましたね」

問い合わせからやりとりがはじまり、代表の尾市とも直接話した河野さん。メールや電話の雰囲気そのままの柔らかい物腰からは、「ひとりでも多くの子どもにプログラミング教育を届けたい」という理念を感じて話は進みました。

河野さん 「粕屋町は情報の多い都会でもなく、プログラミングはまだ地域に浸透していませんでした。だからTFEの成長とともに、5年ほどかけてプログラミングを学ぶ環境を作り上げていけばいいと思っていたんです。子どものペースに合わせて、じっくり進めるつもりでした」

粕屋松陰塾は、2016年4月にTFE初の加盟教室としてスタートしました。

教室では低学年でもゲーム作りに没頭し、話し声もほとんど聞こえません。制作がいきづまった生徒には動画の講義に戻り、自分のプログラミングとどこが違うかを見比べ、自分で間違いを探すように指導しています。

ここでのやり方になれた子どもたちは、何度失敗しても自分で間違いを見つけ、どうすれば正しく動くのかを自分の力で検証しています。“自分が作ったゲームを動かしたい”子どもたちは何度も手にした成功を再び味わうため、黙々と作業しています。

河野さん 「レッスンは月2回と4回のコースがあります。月2回なら負担なく続けられ、4回のコースではじっくりゲームを作り込むことができます。TFEの課題は子どもたちが自由に発想を広げていけるので、それぞれこだわりのあるゲームを作っていますね」

子どもたちが“興味のあること”を見つけられる場をつくる

4d3d00f94b9a63657820a06046c4f4f3b85e4fa9
▲生徒が集中しているので、レッスン中は静まりかえっている

河野さんは、プログラミング教育を子どもの興味の対象のひとつとしてとらえています。

河野さん 「粕屋松陰塾で開講しているオンライン英会話やそろばんなどのレッスンを見ていると、子どもの能力が伸びるのは、自ら興味を持って学んでいるときです。この先小学校での必修化が進むと、プログラミングの能力についても同じことが起こるのではないかと考えています。

ですから、プログラミングを特別なものと捉えてみんなが等しくできるようになるべきだと考えるのではなく、子どもたちが能力を伸ばすためのひとつの手段であると、考えればよいと思っているんです」

子ども自身がやりたいことでなければ、能力を伸ばすことは難しい。

コーチングやカウンセラーの資格も取り、なおかつ多方面から子どもの能力を引き出すための方法を探ってきた河野さんは、“やりたいことを見つけること”は学ぶ姿勢を身につけるために不可欠であり、粕屋松陰塾がそれを見つけられる場所でありたいと考えています。

河野さん 「カリキュラムの柔軟性に加えて加盟料がリーズナブルで、生徒の月謝を抑えられることはTFEの大きな魅力です。保護者に過大な負担をかけることなく、生徒は継続して好奇心を追求していくことができます。一方で教室の運営者としては入会をすすめやすく、金銭的な理由での退会が起こりにくい、良心的な教材だと思っています」

学びの機会をさらに広げるTFEと手を取り、河野さんは今後も積極的にレッスンのジャンルを増やしていきたいと考えています。

子どもたちの興味の入り口を作る。それはここで学ぶ子どもたちと、粕屋松陰塾を受け入れてくれた地域の人たちへの最大の恩返しになると、河野さんは信じてこれからを見すえています。

関連ストーリー

注目ストーリー