地元の石灰を生かして日本唯一「鮮度保持のスペシャリスト」に。波乱万丈な舞台裏とは

古くから石灰のまちとして知られる、大分県の津久見市。株式会社鳥繁産業は、一大産業として地域を支えてきた石灰に新たな価値を見出し、“お菓子の鮮度保持”の分野で全国に進出しています。大手企業に睨まれても、真正面から道を切り拓いてきた当社の歩みと展望について、代表取締役社長の鳥越繁一の半生を振り返りながらお伝えします。

祖父から父、現社長へと受け継がれた、ものづくりとチャレンジ精神

▲1977年頃の鳥繁産業

大分県の東海岸に位置する、人口1万8000人ほどの津久見市。良質な石灰石の産出量は国内トップクラスを誇り、多くの人びとが石灰に関わる仕事に携わってきました。市内には長さ約10km、幅約1kmもの石灰石の巨大な岩体が横たわり、今も採掘が行われています。

1800年代後半、この地で船問屋を営みとした佐次郎とトネがおりました。佐次郎は伝染病に倒れ42歳で命を落とします。その後、妻トネは臼杵の仕入先から味噌醤油お酒等を仕入れ、軒先で小売商を始めます。しかし当時女手ひとつ子ども6人を育てるためには大変家計が苦しいものでした。

そこで、苦しい家計を助けるために石灰を焼き、肥料や工業用に大袋に詰めて出荷する事業を始めた男がいます。現社長の曽祖父・京太郎(佐次郎の長男)です。社名は丸京石灰としました。

ときは流れて1965年、大分市内の海苔屋から、意外な相談が舞い込んできました。

「石灰を乾燥剤に使うので、小袋に入れて納品してほしい」——乾燥剤は、空気中から水蒸気を吸収する物質で、食品の鮮度を保持するために使われます。依頼に応じることを決意した当時、丸京石灰の専務だった克行は、石灰乾燥剤の製造販売会社を立ち上げました。これが鳥繁産業のはじまりです。

繁一 「石灰石を細かく砕き、スプーンで小さな袋につめて、一つひとつ封をする……それは、とてつもなく根気のいる作業だったと聞いています」

現社長の鳥越繁一は、祖父や父の仕事を身近に感じながら育ちました。東京の大学を卒業すると、東京の紙管メーカーに就職。26歳で大分に戻り、当社に入りました。

繁一 「当時の鳥繁産業は創業から20数年たっていましたが、大分近郊のみで石灰乾燥剤を販売していました。従業員は10人ほど。父の克行が社長を務め、営業は義兄と私だけで、近所のおばちゃんたちが商品づくりをするような、こじんまりとした会社でした」

それから30年が経った2018年現在、お客さまや社会のニーズに応じて、脱酸素剤、保冷剤、アルコール揮散剤、シート状乾燥剤といった鮮度保持の商品を開発して、ラインナップを増やしてきました。また、商品の営業エリアは北海道から沖縄まで広がっています。その陰には、たゆまぬ努力とチャレンジ精神がありました。

人との縁に恵まれ、お客さまの声を丁寧に拾ってひとつずつ形にしていった

入社したばかりの繁一は、義兄と共に、自社の製品を持って、意気揚々と九州中のお菓子屋を営業して回りました。しかし「どこの誰?」と門前払いで、相手にされない苦しい日々が続きます。

そんな中、営業で飛び込んだ熊本の片田舎にあるお菓子屋で、思わぬ転機が訪れました。「こんなにちょろちょろ営業してもしょうがない。オレが知っている菓子問屋を紹介してあげよう。四国の松山に、全国でお菓子の材料と厨房機器を販売している組合長がいるから」と店主が声をかけてくれたのです。

すぐさま松山まで行ってみると、組合長は「北海道から沖縄まで各県にお菓子問屋があるから、自分の名前を使って回りなさい」と言ってくれました。それをきっかけに当社は、九州から四国、大阪、東京、東北、北海道へと営業エリアを拡大していきました。

繁一 「問屋さんと一緒にお菓子屋へ行ってみると、いろんな困りごとがありました。同業者はたくさんいましたが、値段が高い、ロットが大きい、納期が遅い、態度がでかい(笑)……と。
そこでうちは正反対をやろうと決め、お客さまの要望を聞いては会社へ帰り、スピーディに対応しました。たとえば、今は業界では当たり前の100個入りですが、日本で初めて小ロット100個入りの乾燥剤を作ったのは当社でした。
手間やコストがかかっても、うちが進む道はそれしかなかった。大手財閥系の同業者に睨まれたこともあるけれど、私たちは他社がやらないことを正々堂々とやって、取引先を地道に開拓してきたのです」

シート型乾燥剤の開発に取り組んだのも、お客さまの声に応じたい一心でした。

袋入りの乾燥剤は、どうしても袋が破れたり幼い子どもが誤食したりするという問題が発生していました。ならば、袋ではなく紙にすればいいのではないかーー。そんな発想から紙メーカーを探し回り、一緒に商品を開発してほしいと口説いて、紙に乾燥剤の原料を染みこませるシート型の乾燥剤が完成したのです。この商品のお客さま第1号は、北海道の有名な老舗お菓子メーカー「六花亭」でした。

日本で唯一!幅広い鮮度保持のスペシャリストとして、お菓子を無料で分析

ひと口に「お菓子」といっても、その製法や状態は実にさまざまです。鮮度を保つために、パリパリのお菓子には「乾燥剤」、少し水分があって柔らかいものは「脱酸素剤」、しっとり感を保つ「アルコール揮発剤」、温度を下げる「保冷剤」など、一つひとつに適切な鮮度保持の製品があります。

2018年現在、当社には乾燥剤4種、脱酸素剤、アルコール揮散剤、保冷剤2種がそろっています。これだけ幅広く扱う会社は、日本で当社が唯一。ですから、どんなたべものに対しても適切な管理方法をご提案できるのが強みです。

そこで「お菓子の相談室」を開設。「お菓子をおいしく届けたいと願うお菓子屋さん」の悩みについて、鮮度保持アドバイザーが解決をお手伝いしています。

「この商品にはどんな鮮度保冷剤を使ったらいいの?」
「カビが生える原因がわからない」
「賞味期限はどのくらいに設定したらいい?」

そんな声にお応えして、この10年間で3,500件以上の商品を分析してきました。

繁一 「取引先でなくても構いません。商品を送ってもらえば、無料で商品を分析してレポートをまとめてお返ししています。鮮度保冷剤って、作り手の思い込みで選ばれていることが結構あるんですよ。例えばドライトマトだけど水分が残っていて、乾燥剤だけでは日持ちしなかったり」

ときには商品そのものではなく、包装に問題が隠れていることも。たとえば、お菓子の大きさに対して小さすぎる袋を使っていると、無理やり入れて完全に密封ができていなかったり、封の部分に粉が噛みこんでいたりというエラーが発生。すると水分や酸素が入り、中の状態が変わってカビてしまうのです。そんな場合は一歩踏み込んで、包装のサイズや方法まで提案するのが当社ならではの特徴です。

「この商品に当社の製品は使えません」という結果を返すこともあります。当社の製品を使えば多少長持ちしても、おいしさを保てない場合は「しっかり温度を管理して、短い賞味期限で食べられるように販売や生産数を工夫したほうがいいですよ」とアドバイスします。

繁一 「それじゃあ商売にならないと驚かれますが、お客さまのお菓子がおいしい状態で売れて、皆さんに喜ばれることが第一なんです。もともと相談事業は無料ですから、収益につながらない。でも、私たちがこれまで培ってきた知見で少しでもお役に立てればという思いでやっています」

津久見の水を生かした「アクアサニター」で幅広い業界に貢献したい

▲代表取締役社長・鳥越繁一

2010年、ピンチがチャンスに変わる出来事がありました。ケーキの持ち帰りに使う保冷剤で「水カビ」が発生したのです。

食品に関わるため、安易な防カビ剤は使いたくない。防カビの性能が持ちながら、安全で環境に負担のかからないものがないかと、社員総出で必死に探し回りました。

そんなある日、「アクアサニター(微酸性電解水)」に出合いました。微酸性電解水は森永乳業の工場で、清掃メンテナンス用に開発された水です。残留性がほとんど無く、当社の保冷剤に使用してみると、水カビのトラブルはゼロになりました。

そこで、アクアサニターの生成機を導入し、地元・津久見市の水で作ってみたところ、非常に高い除菌能力を持っていることが判明。石灰石にふれた地下水は弱アルカリ性で、計らずとも微酸性電解水の生成に絶好の条件だったのです。「このお水を使えば、お客様の衛生管理に持ってこいではないか」との意見がでて、製品開発を進めました。

これまで相談室を通して関わってきたお菓子屋の中には、鮮度保持は適正でも、厨房が衛生的でないために、お菓子が酸っぱくなったり香りがおかしくなったりするというケースも少なからずありました。この水を使えば、そんなお客さまの衛生管理もプロデュースできるのです。

高い除菌能力で幅広い菌に対応できる上に、人の肌にやさしいpHで安全性が高い当社製のアクアサニター。まさに「人と地球にやさしい除菌水」です。私たちはアクアサニターに、果てしない可能性を感じています。高い除菌力と消臭力は、病院や介護、ペット業界まで、幅広く活用できると考え、医療業界等と連携して商品開発を進めています。

繁一 「津久見市は、日本屈指の石灰石の産地として知られています。しかし、太古の恵みである石灰石は限りある資源です。石灰石から乾燥剤を作ってきた私たちは、無尽蔵に供給できるその副産物である石清水を活用してアクアサニターを製品化することに成功しました。
私は祖父と父の大きな背中を見て育ち、東京でお世話になった社長に教わった『いま咲く花は綺麗だけれど、明日咲くつぼみを持っているか?』という言葉を胸に刻んでいます」

これからも私たちは、津久見という土地や人々への感謝を忘れることなく、従業員一同、力を合わせて、多くの人びとの幸せに向かって挑戦していきます。

関連ストーリー

注目ストーリー