40年の歴史を持つ建設・不動産会社が突然、農業とバイオマス発電をはじめたワケ

トーヨーグループは株式会社トーヨー建設をはじめ、昭和40年代より建設業・不動産業全般を中心に事業を展開してきました。堅実に実績を積みながらも、時代の風を読み、新規事業にも積極的に参入。農業とバイオマス発電という、一見関連のなさそうな分野ですが、じつは丹念に練り上げられた一気通貫の事業構想なのです。
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建設業のいち社員が、畑違いのアグリ事業とバイオマス発電事業に飛び込んだ

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株式会社トーヨーエネルギーファームは2012年8月にトーヨーグループとして創業。2018年4月現在は再生可能エネルギー事業、アグリ事業を通じて、持続可能な事業の仕組みづくりに取り組んでいます。

その社員である川内栄治は、再生可能エネルギー事業の中のバイオマス発電事業を担当、草野雅利はアグリ事業を統括している人物。ふたりとも、それぞれの事業のエキスパート……というわけではなく、もともとは、トーヨー建設の建設部門に所属する社員でした。

川内は大型施設を得意とする一級建築士。ある日川内は、トーヨーグループの代表である岡田吉充に、埼玉県羽生市で水耕栽培の植物工場(ビニールハウス)を建設するからと、その設計担当を任ぜられます。

岡田は安定した収穫と高収益がのぞめる水耕栽培に着目し、アグリ事業に参入することを決めたのです。

川内 「羽生にはすでに1000坪のビニールハウスがあり、同じ形状で2倍規模のものをつくるのがミッションでした。私は鉄骨や鉄筋を使った大規模な構造物の設計を得意としていたんですが、巨大ビニールハウスの設計はまったく経験がなく、最初は戸惑いましたね。工法も特殊だし、そもそもビニールの素材は何がいいのか?というところからはじめて、試行錯誤で進めていきました」

さらに当社では、木質バイオマス発電およびメタン発酵ガス化発電にも着手。アグリ業との連携事業であったため、川内がバイオマス発電事業と兼任していたのですが、事業が進展するにつれて手が回らなくなり、アグリ事業部を草野が引き受けることになったのです。

草野は1級建築施工管理技士として木造建築など戸建て住宅の現場統括を経て、当時は設計士として建築に携わっていました。それが水耕栽培のビニールハウス建設を進めるとともに、すでに運営されている既存のハウスの管理も担うことに。

川内も草野も、それまで想像もしていなかった新しい世界に飛び込むことになったのです。

“道なき道をいく”、を体現するような試行錯誤の連続

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建設会社に勤めていたはずが、バイオマス発電事業やアグリ事業を担うことになった川内と草野。道のりの険しさは、生半可なものではありませんでした。

川内は現在、バイオマス発電事業の一環として、発電にともない産出される液肥を農業利用するため、兵庫県但馬地域の農家に委託し、米の試験栽培を行なっています。

その道のりも決して簡単なものではありませんでした。農業のイロハも知らない新参者が訪ねていって米づくりを引き受けてもらえるほど、甘い世界ではありません。

農業の知識ゼロで、はじめは農家さんが何をおっしゃっているのかすらも分からなかった川内。農家の方からすれば、米を収穫したらJAにおさめるのが慣習で、東京から来た素性もわからない人間になぜ渡さなきゃいけないのかという感覚でもあります。

川内 「これはもう、まず顔と名前を覚えてもらって、怪しい人間ではないと思ってもらうところからはじめないといけない、と、東京から但馬に週に2回通いました。まずは挨拶だけ、それから地区の水路掃除や農作業を手伝ったりもして。そうやって徐々に受け入れてもらっていったんです。
私たち建築の人間は、契約書を結んで判子を押して、というのが仕事の基本。ダラダラと時間をかけないで早く契約書を交わすべきだという声もありましたが、私たちの常識を押しつけてもうまくいくものじゃないと思いました。自分のやり方が正しいのかどうか、ノウハウがないからわかりませんが、結果として試験栽培は引き受けていただくことができました」

一方、草野は埼玉県羽生市で、太陽光利用型の植物工場の増築および、レタスの栽培・販売を統括しています。草野もまた、生産管理から人事、流通までをすべて見なければならないという、これまでとはまったく違う業務に携わっており、毎日新たな課題にぶつかる日々です。

収益を上げるためには生産体制の見直しも必要。今まで経験してこなかった組織の再編も経験しました。

草野 「建設業には『引き渡しの原則』というのがあって、竣工して鍵を渡す日までに、何があろうと建物を完成させないといけないんです。これを農業にも当てはめられないかというのを今考えています。農業は天候や環境に出来高が左右されますが、その振れ幅をなくすために植物工場という方式をとっています。高収益を安定して出すために、工夫は日々必要ですね。
農業のことは何もわかりませんから、毎日、調べて人に聴いて、の繰り返し。でも、違う畑から来た人間だから見えてくるものもあるだろうとポジティブに考えて、業務改善に取り組んでいます」

建設業がアグリ事業やバイオマス発電事業に参入する真の理由

建設業、不動産業のふたつの柱で40年以上ものあいだ事業展開してきたトーヨー建設。2012年にトーヨーエネルギーファームを設立し、まずメガソーラー太陽光発電事業、そしてアグリ事業、バイオマス発電事業へと、次々に新規事業を展開しています。

建設業から農業の世界に飛び込んだ川内や草野のように、まるで関連のない新規事業へと参入を進めているかのように見えるかもしれません。しかし、未経験ながらも事業の成功をめざして歩を進めるうち、川内や草野には、これらの事業がすべてつながっていることがよくわかるようになりました。

川内 「そもそも太陽光発電事業は、2011年の震災を機に、日本のエネルギー需要に変化が訪れたのにともなってはじめた事業です。またトーヨー建設のルーツでもある福島の復興という思いも込められているんです」

そして太陽光を利用した水耕栽培は、農地の多い葛飾区に拠点をもち、かねてより農地利用のサポートをしたいと考えていたことから生まれた事業です。

バイオマス発電事業も、地産池消によるリサイクル材を利用する発想から生まれたもの。さらなる発展型として、熱や肥料を農業利用する道筋がつけられています。

最終的にこれらの事業が完成すれば、植物工場やバイオマスプラントをパッケージとして販売、建設業の利益を生み出すことも見据えているのです。

まったく畑違いの業務で、行く道が合っているのかもわからないけれど、とにかく一歩ずつ進んでいく。逆風の中で踏ん張っていけるのは、川内も草野も、その未来が見えているからです。

川内 「やり遂げるために必要なのは、知らないことを知る努力は当然必要ですが、それ以上に最後までやり抜く決意とタフネス。ふつう、この歳になったら、ある程度わかっていること以外はやりたくない人がいっぱいいます。見えない道を走り続けることができるかどうかですね」
草野 「正直、設計だけやっていたいって、思っていましたよ、はじめは(笑)。でも、今のポジションに就いたことで、入口から出口戦略まで考えるという、建築の技術者をやっていたころには経験できないことが得られました。今はもう建築に戻りたいという思いはなくて、事業を成功させたい、それだけですね」

収益を上げ、かつ建設業に還元できるスキームの構築をめざして

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埼玉県羽生市の植物工場で生産している機能性レタスは、すでに市場で好評を得ており、2018年3月には新しいビニールハウスも竣工。今後一層の増産が予定されています。

宮崎県には高品質なトマトの生産を行なっている専門業者を保有し、そのブランドトマト「ごくとま」は、クルーズトレイン「ななつ星in九州」のダイニングで採用されているなど、着々と実績を伸ばしています。

バイオマス発電事業においては兵庫県養父市でバイオメタン発電所を建設中で2018年秋頃の完成を予定しています。また、石川県輪島市では木質バイオマス発電所を建設中。チップ工場はすでに完成し、ガス化プラントは2018年7月の完成を予定しています。

これらの新規事業が軌道に乗り、ワンストップのスキームができあがれば、パッケージとして建設業や不動産業の売上になる――代表の岡田はそこまで見据えて事業を立ち上げているのです。

川内 「当社の代表の考えは、建設だけやっていたらいずれは先細りになるということ。相互にシナジー効果があり、なおかつ持続可能な事業のアイデアを実現させて、本業の建設のほうにも還元させていこうとしているんです。
私たちはその先発隊。正直、現状では私たちの部署は利益を上げていなくて、建設や不動産の部門に支えてもらっている状態です。何年後かを見据えての話になりますが、必ず結果は出していきたいです」

今はそれぞれの事業を成長させていくことが当面の目標です。やがて建設、不動産、エネルギー、バイオマス、すべての事業が有機的に循環して相乗的に発展していく未来をめざし、一歩一歩、勇気をもって道を進んでいきます。

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