“地元密着型”建設会社が、再生可能エネルギーで開く、世界のトビラ

40年以上もの年月をかけて、地元に密着した建設業と不動産業で実績を重ねてきたトーヨーグループ。一方で2012年からは、全国・海外展開を視野に入れた再生可能エネルギー事業に着手しました。下町でものづくりを続けてきた企業が考える「地域貢献」とは。技術の現場が見すえる未来のエネルギーのあり方を考えました。
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東日本大震災で見直した、エネルギーの使い方と作り方

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▲エネルギー分野での存在感を高めている、私たちトーヨーグループ

トーヨー建設は1971年東京都葛飾区柴又に設立され、40年以上、地元密着型で建設業と不動産業にかかわってきました。2012年にはアグリ事業と再生可能エネルギー事業を扱う株式会社トーヨーエネルギーファームを設立。

さらに、2017年にはプラントエンジニアリングを担うパートナー企業が前身となる「株式会社トーヨーエネルギーソリューション」を設立。

これにより、環境・エネルギーマーケットに対する深い専門性と、EPC、発電所のO&M業務を、多様なソリューションをもってワンストップで提供できる体制を確立。当社グループが蓄積した木質バイオマス発電、メタン発酵ガス化発電、小水力発電、小型焼却炉事業等の環境・エネルギー関連技術をトーヨーエネルギーソリューションに集約し、他社に類をみないプロダクトやサービスを提供します。

2011年に東日本大震災を経験したエンジニアたちは、十分でない電力を前に「原子力でなければならない理由はあるのかを考えた」と話します。

震災のあと、日本では再生可能エネルギーが大きく見直されることになりました。

減少した原子力の発電量をおぎなうためとはいえ、火力発電など環境に負担の大きな化石燃料による発電が疑問視される状況下で、「日本のエネルギー政策は変わっていくと確信した」とトーヨーエネルギーソリューションのCTO(chief technical officer)として、木質バイオマスプロジェクトを率いる安部義男(あべ よしお)は振り返ります。

助成制度を追い風に。プロジェクトが目指す後継機のコスト減

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▲輪島にある木質バイオマス発電所です
安部 「原子力や火力発電をおぎなうエネルギーには、水力・風力・太陽光などがあります。再生可能なエネルギーはほかにもないか、と考えたとき、日本には山がある、木という資源がある、と思ったんです。日本は国土のおよそ 3分の 2が森林です。この資源を活かさない手はない。そこで取り組んだのが “木質バイオマス”でした」

木質バイオマスとは、木材に由来する再生可能な資源のこと。木質バイオマスプロジェクトでは、森林管理のために伐採された間伐材を無酸素状態で蒸し焼きにし、そこで発生したガスを燃焼して発電します。

森林大国として資源には事欠かない国土ではあるものの、これまで日本でメジャーではなかった事業を立ち上げ、プラント(工場)を建設し、運営するには莫大な費用がかかります。一方でかかるコストに対する発電量はまだ十分なものではありません。

事業として成立させるには困難だった“木質バイオマスプロジェクト”が軌道に乗った背景には、2012年のFIT制度のスタートがありました。

FIT制度とは、再生可能エネルギーによって発電された電気を、電力会社が20年間にわたり固定価格で買い取ることを国が定めたもので、事業として安定した運営が見込めるようになりました。

2018年8月には、1号機となる石川県輪島市のプラントが試運転を開始。これまで日本での成功例があまりない、大規模なプラントが稼働します。

安部 「エネルギー事業は変化し続けていくものであって、木質バイオマスも今から10年くらいがピークになると思っています。その後はまた、新しいエネルギーが登場するでしょう。
ただ木質バイオマス資源をエネルギーに変える技術は、ほかの資源にも応用していけるものなんです。だからこそ、ここで大きなエネルギーを生み出せるプラントの運営事例を作り、コストを下げ、FIT制度が今ほどの買取価格を維持できなくなった場合にも、事業として成立するノウハウを積み上げたいのです」

ヨーロッパの技術と設備を、前例を持たない日本へ

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▲トーヨー養父バイオメタン発電所は、スケールの大きな取り組みのひとつです

安部と同時に、トーヨーエネルギーソリューションに加わった石坂 浩一(いしざか こういち)。 「メタン発酵ガス化発電プロジェクト」のチーフエンジニアです。

石坂の手がけるメタン発酵ガス化発電プロジェクトとは、廃棄された食品残さや、家畜の排せつ物、下水道の汚泥といった有機物を原料にメタン発酵によりガス化し、そのエネルギーでエンジンを動かして発電させるもの。

メタン発酵ガス化発電はFIT制度が早くから導入されたヨーロッパでは広がっていたものの、制度が整い買取価格が安定するまで日本では普及していませんでした。技術も実績もない日本にプラントを建設するために、石坂たち技術者は海外での視察を重ねました。

石坂 「ヨーロッパでは早くからFIT制度が整っていましたが、それ以上に発生した消化液を肥料として、ダイレクトに農地で使用できる環境が整っていました。一方日本では、発生した肥料に対して使用できる農地が圧倒的に少ない。
そのため発生した消化液(肥料)を脱水して固形分と液体分に分け、固形分は肥料として利用し、液体分は高度排水処理をおこない再生利用するなど、ヨーロッパでは不要な技術も必要になったんです。ただ、プラント自体はヨーロッパから取り入れたので、部品ひとつとっても日本では調達が難しい。1号機にはコストも人手もかかります」

なんとか建設にこぎつけた1号機は、兵庫県養父市で2019年春の本格稼働を目指して建設中です。

このプロジェクトもまた、木質バイオマスと同じく2号機3号機の建設を視野に入れ、建設や運営にかかるノウハウを蓄積し、人的・時間的コストを下げるアイデアを稼働後早急にまとめる必要があると話す石坂。メタン発酵ガス化発電プロジェクトは、日本国内だけではなく、東南アジアへの普及も当初から視野に入れており、FIT制度のあるベトナムのハノイ市ではすでにプラント建設の計画がはじまっています。

異なるプロジェクトにかかわるふたりが、ともに目指すそれぞれの後継機。これほどまでにコストダウンに執着し、展開を急ぐ事業の根底には、トーヨー建設を育てた「地元」にかける思いがありました。

地方への貢献とこれからのエネルギー事業

これまで主に関東での事業が中心だったトーヨー建設にとって、遠く離れた土地でのプラント建設では、予想以上に建設先の地域経済への影響が大きいことがわかりました。

石坂 「メタン発酵ガス化発電のプラントができれば、これまで焼却するか、切り返しによる堆肥化をおこない、農地に還元するしかなかった食品残さや家畜の排せつ物からエネルギーを回収すると共に、悪臭問題やCO2の削減などの問題を解決することができます。
畜産農家では毎日発生する家畜の排せつ物を堆肥にする労力も減らせます。大規模なプラント建設によって、地元企業との取引や雇用も生み出すことができます。
現在は企業から出てくる産業廃棄物を対象としていますが、今後一般家庭やレストラン、旅館、ホテルやコンビニなど、市町村単位での一般廃棄物を対象にすることができれば、地域のごみの量を減らすこともできるはずです」

再生可能エネルギー事業をはじめとする「エネルギーの循環」に取り組むトーヨーグループにとって、常に最先端の技術で高効率の装置を生産し、さらにコストダウンに成功した後継機をより多くの地方や海外で稼働することは、グループ全体の夢を実現していくことを意味します。

安部 「今後日本や世界にとって、かぎりある資源をエネルギーに変えていくことは不可欠です。本事業により山林の管理、CO2削減、雇用の創出など、社会に貢献できることがたくさんあります。1号機が稼働し、それがいかに地域や人の未来にとって意味のある施設であるかを伝えることができれば、この事業に注目が集まり、よりよい環境や制度を整えることにもつながると思っています」

1号機の稼働が目前となった今、「地元の小学生や中学生が、工場見学に来るかもしれませんね」と楽しそうに話す安部や石坂の手にはもう、未来へつなげるバトンが握られているのです。

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